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問題の構造と解の特徴づけ

ドキュメント内 立教大学ビジネスデザイン研究科 (ページ 67-71)

第 5 章 取締役の合理的な交渉プロセス② 株式評価の不確実性

5.4 問題の構造と解の特徴づけ

まず、われわれの問題を交渉問題として定式化しよう。締結可能な契約における買収対 象会社 と買収会社 の効用水準は、交渉曲線によって表されるが、式5-1より交渉曲線は、

関数E = T" /U − "h: E 0の"h: E > 0の範囲のグラフである。また、交渉が決裂し、売 買が行われなかった場合の買収対象会社 と買収会社 の効用水準は、各々、T" U , " 0 = 0であるから、交渉の基準点は , = T" U , 0 である。協力実現可能集合を特徴づけ るために以下の命題が重要な役割を果たす。

命題5-1:

E = T" /U − "h: E 0は、凹の厳密な減少関数である。

証明5-1:

"D- ∙ > 0, "- ∙ > 0の仮定から、

"h:i E = 1

1 "⁄ h:i E > 0

より、

E

E = T"-/U − "h: E 0/−"h:- E 0 < 0

の解という。なお、次節以降において、1 , を単に解と呼ぶことがある。

100 Kalai(1977)は、特にA = 1のとき、比例解は平等解と呼んでいる。

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ここで、Uの有界性と、" , "-の連続性から有界収束定理によって保証されるものとする。

また、"-- ∙ , "-- ∙ < 0の仮定から、

"h:ii E = "-- E

"- E 6> 0 より、

6E

E6 = T j"--/U − "h: E 0/−"h:- E 06k + "-/U − "h: E 0/−"h:-- E 0 < 0

よって、E = T" /U − "h: E 0は、凹の厳密な減少関数である。(証明終)

交渉曲線が交渉の基準点よりも上に位置するとき、その時に限り、互いに効用が増大す るような売買価格が存在し、われわれの問題は交渉問題として定式化できる。

以下では、交渉曲線と交渉の基準点にこのような位置関係が成り立つとき、交渉が本質 的であるということにする。

! , ! は、次のように定義される。

" ! = T" U T" U − ! = " 0

! は、買収対象会社 がその金額が得られるならば、株式,を失っても良いと考える最低 金額と解釈できるから、この値を株式,についての買収対象会社 の確実同値額と呼ぶこと ができる。一方、! は、買収会社 が株式,を保有することができるならば、失っても良い と考える最大の金額と解釈できるから、この値を株式,についての買収会社 の確実同値額 と呼ぶことができる。

ここで、売り手と買い手の立場の違いが、確実同値額の定義の違いとなっている。この ため、たとえ買収対象会社 と買収会社 が同一の効用関数を持っていたとしても! と! は 異 な る 値 と な り 得 る 。 こ の よ う に 、! < ! の と き に 交 渉 が 本 質 的 と な り 、 そ の と き

! ≤ ! ≤ ! が妥結する可能性のある価格の範囲となる。交渉曲線の厳密な凹性より、いく

つかの価格を確率的に選ぶ契約は、買収対象会社 、買収会社 のどちらにとってもこの範 囲にある価格による契約よりも劣る。こうして、次の2つの命題が与えられる。

67 命題5-2:

交渉が本質的であるための必要十分条件は、! < ! となることである。

命題5-3:

交渉が本質的であるとき、交渉領域は、交渉曲線の! ≤ ! ≤ ! に対応する部分である。

次に、交渉問題の3つの解を適用して契約価格を特徴づけることを考えよう。以下では、

Nash解、Kalai=Smorodinsky解、比例解における売買価格を、各々、!l, !m, !nと表す。

命題5-3より、Nash解は、! ≤ ! ≤ ! に対応する交渉曲線上で、 E − E − を

最大とする点である。すなわち、最大化問題、

opMaxqoqor/E − T" U 0E

sbuject to E = " ! , E = T" U − ! , ! ≤ ! ≤ !

の解 E , E であり、この点に対応する売買価格が!lである。よって、!lは、次の最大化問

題の解である、

opMaxqoqor/" ! − T" U 0 T" U − !

1階の条件は、

"- !l T" U − !l − /" !l − T" U 0T"- U − !l = 0

であり、ここで式5-2として、

" !l − T" U

"- !l =T" U − !l

T"- U − !l (式5 − 2) 1 ! =" ! − T" U

"- ! , 5 ! =T" U − ! T"- U − !

と定義すると、次の命題が成立するので式5-2の解は一意である。

命題5-4:

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! ≤ ! ≤ ! において関数1 ! は厳密な増加関数、5 ! は厳密な減少関数である。

証明5-2:

一般に2回微分可能な関数ℎ ! において、

! tℎ !

- ! u =ℎ- ! 6− ℎ ! ℎ-- ! ℎ- ! 6

より、

! tℎ !

- ! u > 0

であるための必要十分条件は、

1 ℎ- ! ℎ-- ! < 0のとき、

- !

-- ! < ℎ ! ℎ- !

2 ℎ- ! ℎ-- ! > 0のとき、

- !

-- ! > ℎ ! ℎ- !

である。

ℎ ! = " ! − T" U とすると、

1 ! = ℎ ! ℎ- !

! ≤ !の と き 、ℎ ! ≥ 0 , ℎ- ! = "- ! > 0, ℎ-- ! = "-- ! < 0、 よ っ て 、ℎ- ! ℎ-- ! <

0, ℎ- ! ℎ⁄ -- ! < 0 ≤ ℎ ! ℎ⁄ - ! 。したがって、1 より1- ! > 0である。

また、ℎ ! ≥ T" U − ! とすると、5 ! = − ℎ ! ℎ⁄ - ! 。! ≤ ! のとき、ℎ ! ≥ 0 , ℎ- ! =

−T"- U − ! < 0, ℎ-- ! = T"-- U − ! < 0 。 よ っ て 、 ℎ- ! ℎ-- ! > 0 で あ り 、

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- ! ℎ⁄ -- ! > 0 ≥ ℎ ! ℎ⁄ - ! である。したがって、2 より5- ! < 0である。(証明終)

次に Kalai = Smorodinsky 解における売買価格を特徴づけよう。理想点は 、 , =

/" ! , T" U − ! 0である。Kalai = Smorodinsky解は、 , と , = T" U , 0 を 結 ぶ 直 線 と 交 渉 曲 線 と の 交 点 で あ り 、 こ の 点 に 対 応 す る 売 買 価 格 が!mで あ る 。 よ っ て 、

/" !m , T" U − !m 0と , を結ぶ直線が、 , と , を結ぶ直線と傾きが等しい

とおくことによって、次の等式を得る。

T" U − !m

" !m − T" U = T" U − !

" ! − T" U

この方程式が一意解をもつことは、交渉曲線の形状より明らかである。

最後に比例解における売買価格を特徴づける。定義より、比例解/" !n , T" U − !n 0と

:, 6 = T" U , 0 を結ぶ直線の傾きがAでなければならないので、

T" U − !n = A/" !n − T" U 0 (式5 − 3)

を得る。この式5-3が一意解をもつことは、同様に交渉曲線の形状より明らかである。

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