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モデルの設定

ドキュメント内 立教大学ビジネスデザイン研究科 (ページ 111-114)

第 8 章 株主の権限行使① 株主総会の機能

8.2 モデルの設定

取締役、アドバイザー、アドバイザリーファーム、株主の4者からなる2期間モデルを 考える。各G期において取締役はアドバイザーからの投資アドバイスを受けた後に2つの買 収プロジェクトA,N から1つを選ぶ。投資Aは「買収を実施」、投資Nは「現状維持」を 表している。

投資の成果は各G期 G = 1,2 に決まる自然の状態š∈ &}, ›'に依存する。自然の状態は各 期に共通かつ独立に確率 ∈ &0.5,1'で›に決まる。œ• š= › = は各者の共有知識

(common knowledge)である。

自然の状態がš ∈ &}, ›'のときに買収プロジェクトが実施されれば株主は各期末に便益 wžŸを得る。ここで、買収プロジェクトから株主が得る便益について、w~ > 0 > wかつ、

w+ 1 − w~+ < 0 (式8 − 1)

を仮定する。

買収プロジェクトの実施は自然の状態にかかわらず、アドバイザーとアドバイザリーフ ァームに対して便益 > 0をもたらす。買収プロジェクトが実施されず、現状維持がとられ

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た場合に株主、アドバイザー、アドバイザリーファームが得る便益を0とする。したがっ て、株主にとっては自然の状態がš= } の場合にのみ買収プロジェクトが実施されるのが 望ましいのに対し、アドバイザー、アドバイザリーファームにとっては現状維持が選択さ れるよりも買収プロジェクトが実施された方がよい。

各期の自然の状態šについて、取締役と株主はどちらの状態が実現したのかについて、

その事前確率のみしかわからないのに対し、アドバイザーはどちらの状態が実現したのか を正確に知っている。アドバイザーは経営を担当している取締役が買収を選択する際に、

自然の状態š∈ &}, ›'についてのアドバイスŠ∈ &}, ›'を送る。ただし、アドバイザーが自 然の状態についての正しい情報を伝えるとは限らない。

ゲームのタイミングは次のとおりである。

第1期

1. 自然の状態š:がランダムに決まる。

2. アドバイザーが自然の状態と現職のタイプを認識したうえで、取締役に自然の状態 š:についてのアドバイスŠ: š: ∈ &}, ›'を送る。

3. 取締役が投資 : Š: ∈ &,, ˆ'を選ぶ。

4. 第1期の投資の成果F ∈ &w~, w, 0'が実現する。

株主総会

1. 株主が第1期の投資の成果を観察した後に、現取締役か新取締役のどちらかに投票 する。

第2期

1. 自然の状態š6がランダムに決まる。

2. アドバイザーが自然の状態と現取締役のタイプを認識したうえで、取締役に自然の 状態š6についてのアドバイスŠ6 š6 ∈ &}, ›'を送る。

3. 取締役が第2期の投資 6 Š6 ∈ &,, ˆ'を選ぶ。

4. 第2期の投資の成果が実現する。

8.2.1 株主・アドバイザリーファーム

第G期に投資 Š が選択されたときの株主とアドバイザリーファームが得る期待利得を それぞれ¡ Š , ω , / Š 0とすると、

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¡ Š , ω = £w~ e1 Š = ,, š= } w e1 Š = ,, š= ›

0 e1 Š = ˆ (式8 − 2) / Š 0 = ¤ e1 Š = ,

0 e1 Š = ˆ (式8 − 3)

と表せる。

8.2.2 取締役の期待利得

取締役には、アドバイザリーファームと癒着しているか否かで区別されたGood Typeの

取締役とBad Typeの取締役の2種類のタイプが存在する。第1期の現職取締役がGood

Typeの取締役である確率を¥ ∈ ¦0、とする。アドバイザーは取締役のタイプを識別でき るが、株主はそれを識別できないものとする。

Good Typeの取締役は社会的余剰を最大化するように投資選択を行う。第G期に投資

Š が選択されたときの社会的余剰¨ Š , ω は株主とアドバイザリーファームが得 る利得の和として、

¨/ Šω0 = £

w~+ e1 Š = ,, š = } w+ e1 Š = ,, š = ›

0 e1 Š = ˆ (式8 − 4)

と表せる。

一方、Bad Typeの取締役は、アドバイザリーファームの利得 / Š 0と経営を担当する

ことから得る取締役レントP > 0の和を最大化するように投資を選ぶ。取締役レントP > 0 は会社経営を担当することからのみ利得として享受することができる、取締役としての社 会的地位、さまざまな権限などを表している。両タイプの取締役ともに経営の座にないと きの利得は0であるとする。

いま、株主総会での取締役としての再選任確率を© : Š: , š: 、割引率をƒ ∈ 0,1 とし

て、Good Typeの現職取締役の期待利得を"ªn、Bad Typeの現職取締役のそれを"«nとす

ると、

"ªn Š , ω = ¨ : Š: , š: + ƒ © : Š: , š: ¨ 6 Š6 , ω6 (式8 − 5)

"«n Š , ω = : Š: , š: + ƒ © : Š: , š: (P + 6 Š6 , ω6 + (式8 − 6)

と表せる。

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8.2.3 アドバイザーの期待利得

アドバイザーの地位は株主総会によって影響を受けることはなく、取締役のように交代 する可能性はないとする。現職取締役が再選任することでアドバイザーが獲得する取締役 との癒着レントを > 0で表す。これは退職後の斡旋や人事での優遇など、同じ取締役が2 期間続くことで発生する、取締役との癒着によってアドバイザーが享受することとなるレ ントを表している。アドバイザーはアドバイザリーファームの利得と取締役との癒着レン トとの和を最大化するように買収アドバイスを行う。

アドバイザーの期待利得を" とすると、

" Š , ω = : Š: , š: + ƒ © : Š: , š: ( + 6 Š6 , ω6 + + ƒ(1 − © : Š: , š: +( 6 Š6 , ω6 +

と表せる。

アドバイザーの期待利得は、第1期の現職の買収から生じるアドバイザリーファームの 利得、第2期においては現職が再選任を果たした場合の癒着レントとアドバイザリーファ ームの利得、現職が再選任されず新任者が投資選択を行った場合にはアドバイザリーファ ームの利得、それらの和の期待値である。

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