図 3.2.9 日本における大規模な堆積海岸の分布2
3.3 資料収集・整理
(1) 航空写真・衛星画像の情報検索
1970年代と2000年代(現在)の2時期の海岸線変化量を把握するため、以下の画像類を検 索・収集した。
・ 1970年代:カラー空中写真
モノクロ写真は植生の分布範囲がわかりづらく、砂浜面積の変化のみの判断となるため、1975 年前後に国土地理院が全国をカラーで撮影した縮尺1/8千~1/1万のカラー空中写真を使用した。
この縮尺は通常の海岸侵食等の汀線解析で行っているものであり、汀線の高精度な判読が可能 である。空中写真のオーバーラップ率は通常60%であるが、調査効率を勘案し35%として、汀 線部のハレーションや海岸屈曲部をカバーする。収集した写真は約1,450枚である。
・ 現在:衛星画像 IKONOS ONLINE(イコノス オンライン)
空中写真はコストが高いため現在の海岸線変化量の把握の資料としてIKONOS ONLINEを使 用した。図 3.3.1はIKONOS ONLINEの画像例であり、海岸線の解析や植生分布の抽出に概ね問 題はない。
2須田有輔:砂浜の生態と保全,http://www2.fish-u.ac.jp/LCEC/beachecology.html,2005.
図 3.3.1 IKONOS ONLINEに写る砂丘植生(撮影:2006年)
イコノスオンラインで現在公開している画像は、2000年から 2007 年のものである。撮影需 要の多い都市部での画像は年代が比較的新しい。一方、国土地理院のカラー空中写真は1975年 前後に撮影したものが最も古いが、以後新たにカラー撮影された地区は都市部周辺に多く、地 方では新たなカラー撮影がない場合が多い。
表 3.3.1はイコノスオンラインの撮影年代と最新のカラー空中写真の対比である。備考欄が水 色の北海道と新潟佐渡地方は、カラー空中写真が1970年代後半と古く、イコノス画像が全て新 しい。また、備考欄が黄色の秋田・山形・富山・神奈川・愛知は、イコノス画像とカラー空中 写真の撮影年代が2年程度と近い地区である。
このため、近年の海岸侵食対策などで海岸改変が著しいとされる地区や画像が不鮮明な地区 については最新の空中写真を収集して用いた。
表 3.3.1 イコノスオンラインの撮影年代と最新のカラー空中写真の対比
海区 イコノス カラー空中写真 備考
北海道 1北オホーツク2001-2007 1977・1978 2 紋別 2000-2007 1977・1978 3 釧路 2001-2007 1977
日本海北区 3 秋田 2000-2007 1975・2009(都市部)
4 山形 2007 1975・2009(都市部)
5 新潟 2000-2007 1975-2009 6 新潟佐渡 2002 1976 7 富山 2001(一部)・2002-2007 2007・2009 太平洋中区 8 千葉 2002-2007 2008
9 東京島嶼 2000-2007 1978・2000-2007 10 神奈川 2004・2006 2005・2008 11 静岡 2001-2007 1977-2009 12 愛知 2006・2007 2005-2008 13 三重 2001-2007 1976-2009 瀬戸内海 14 広島 2000-2007 1981-2009
イコノスが最新 ほぼ同年代
地区
汀線や砂丘植生の判読が可能
IKONOS ONLINEサービス
・ IKONOS衛星は2000年から運用開始した高解像度の商用衛星で、Google社の配信サーバソフトウ
ェアを利用したIKONOS ONLINEサービスにより全国の画像をインターネット経由で提供(年間 定額制)している。
・ IKONOS衛星は日本上空をほぼ10時から11時に通過し、11日周期で同じ地区へ戻る。
・ IKONOS ONLINEの画像は、①2000年日本全域を撮影し公開、②需要や要望の多い地区(都市部
に多い)を撮影して順次更新、③最新画像は撮影後2~3年後に公開(現在は2007年が最新)、と している。ただし、この他に雲が多い画像など非公開の画像も存在する。
イコノス画像から最新の空中写真への差し替えをした地区
① 近年の海岸侵食対策などで海岸改変が著しいとされる地区
・ 千葉県飯岡海岸 (イコノス2002年 → 空中写真2008年)
・ 静岡県富士海岸 (イコノス2001年 → 空中写真2005年)
・ 静岡県静岡・清水海岸 (イコノス2001年 → 空中写真2009年)
② 雲などで画像が不鮮明な地区
・ 千葉県部原地区
・ 千葉県平砂浦地区
・ 三重県四日市地区
・ 三重県鳥羽地区
・ 広島県宮島地区
・ 広島県江田島地区
(2) 資料及び現地踏査による海岸特性・勾配情報の収集
前項で収集した空中写真・衛星画像は撮影時点の海岸線が投影されており、潮位条件が一定 でない。このため、後述する平均水面(概ね T.P.0m:東京湾平均海面)を基準とした汀線位置 を補正して高さを統一した。一方、汀線位置補正には撮影時の潮位と汀線付近の勾配が必要と なるため、既存資料や主な海岸の現地踏査を行い汀線付近の勾配データの取得とともに、海岸 特性の情報を収集整理した。なお、汀線位置補正については次節で述べる。
以下は収集・引用した主な資料である。また、都道府県毎に現地踏査の概要を述べる。
表 3.3.2 収集・引用した主な資料
No. 著者 資料名 内容
1 環境省 植生図 1/2.5万現存植生図
2 村井宏ほか 日本の海岸林 都道府県毎に海岸林概要集 3 各都道府県 海岸保全基本計画 平成15年頃に全国の海岸で策定 4 土木学会 海洋工学論文集 年次学術講演会発表論文集 5 土木学会 海洋開発論文集 年次学術講演会発表論文集 6 宇多高明 日本の海岸侵食 全国の主要な侵食海岸の論文集 7 国立環境研究所 快水浴場百選 選定箇所の概要
8 日本の渚・中央委員会 日本の渚百選 選定箇所の概要 9 (社)日本の松の緑を守る会 白砂青松百選 選定箇所の概要
1) 北海道
① 紋別地区
汀線付近の勾配は紋別やサロマ湖西岸で1/8、サロマ湖東岸や常呂で1/11、能取湖では1/15 で底質はいずれも中砂粗砂からなる。
紋別周辺(紋別市) サロマ湖(常呂町)
② 釧路地区
汀線付近の勾配は河口部や漁港周辺では1/20程度と緩いが、その他では大楽毛や釧白で
1/9、音別で1/12、直別で1/8と急であり、底質はいずれも中砂粗砂からなる。
大楽下海岸(釧路市) 浦幌海岸(浦幌町)
2) 秋田県
汀線付近の勾配は能代では1/20以上と緩いが能代港南部の浅内では侵食が著しい。秋田で は汀線付近の勾配は船越で1/10とやや急であるが、南に行くにつれて緩くなり雄物川河口周 辺では1/20と緩い。いずれの海岸も背後には広大な海岸林帯が続いている。
琴浜海岸北側(若美町) 秋田港北側(天王海岸)