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可視化実験装置および仕様

第1章  序論

2.4  油膜の可視化装置

2.4.2  可視化実験装置および仕様

使用したエンジンはボア 96.9 mm,ストローク 75 mm のエンジンⅢを使用した.スラ スト側が上側となる2番気筒のライナをサファイアライナとし観察を行った.装置の概 略図を図 2-9(a)に示す.サファイアライナはエア圧力を利用しヘッド側に押付ける事 により固定した.エンジンに組み込まれたサファイアライナ部の写真を図 2-9(b)に示 す.観察するシリンダのスラスト側はエンジン上側であるためミラーを取付けカメラを エンジンの前にセットし(図 2-11 参照)撮影できるようにした. 

ライナの温度はスラスト側の Top リング上死点位置から 27.5 mm の点を素線径φ0.2 の熱電対をライナの外周表面に貼り付けることによって測定した.撮影の時のライナ温 度測定点はスラスト側とほぼ同じ温度を示すエンジン後側へ 90 度ずれた位置(Top リン グ上死点位置から 27.5 mm)で代用した. 

ライナとして用いたサファイアの主な物性値を表 2-9 に示す.非常に硬く機械的強度 もありエンジン用透明ライナとして用いることが可能になっているものの,熱膨張率が 小さいため 2.5 節において後述するようにピストンとライナのクリアランスがエンジン 運転時には小さくなるので組込クリアランスにより調整する必要があった.また透過波 長域も広く入射光と蛍光の波長はこの範囲にあり,特に問題はない. 

   

                                                                         

(a)  可視化エンジン構造略図  サファイアライナ

エア圧によるライナの固定 (ヘッド側への押付け)

反射防止のコーティング(黒)

図 2-9  油膜可視化装置(エンジンⅢ)  (b)  可視化気筒外観 

シリンダヘッド 

カムシャフト  ミラー 

可視化部  (Cyl. No.2) 

(b) 可視化装置仕様 

試験に使用した蛍光剤,光源,光学フィルター,高速度CCDカメラなどの実験装置 仕様概略を表2-10に示す.フィルター・蛍光剤の選定試験(5.2.1項)に供試したフィル ターの特性図を図2-10(供試したフィルターのみ

で囲み示す)に,クマリン系の蛍光 剤の物性は表2-11に示した.表2-10に示した蛍光剤,蛍光剤濃度,フィルターは予備試 験を行い最終的に決定した仕様である.これらをセットしたエンジンを含む装置全体の 写真は図2-11に示す.UV光源装置からの光はファイバーを用いて可視化シリンダの近 くから照射できるようにした.2.4.2(a)項でも記述したが観察するシリンダのスラスト 側はエンジン上側であるためミラーを取付け(図2-9(b)),カメラをエンジンの前にセッ トし撮影できるようにした.なお,本エンジンは反スラスト側も観察可能となっており 図2-11の写真では反スラスト側を照らすストロボがセットされている. 

     

化学式  Al2O3  融点  ℃  2040 

モース硬度  9 

引張り強さ  MPa  275.4〜413.6  ヤング率  MPa  3.455×105 

ポアソン比  0.29  熱伝導率  W/mK  27.21  熱膨張率  1/℃  8.4×10-6  透過波長域  nm  150〜5500   

   

装置  内容 

蛍光剤  (株)林原生物化学研究所  NKX-1595 

エンジンオイル中に 0.5g/㍑,溶剤:ジクロロメタン  UV光源 

(株)YLT 

200Wキセノンランプ,3台  3000mW/cm 365nm フィルター  ストロボ  ㈱菅原研究所  SLA-154A 15W,3台 

フィルター:HOYA㈱  B-390 

高速度CCDカメラ 

VisionResearch 社(米)  Phantom V5.4 

連 続 撮 影 ( U V 光 源 ) : ク ラ ン ク 角 度 3 度 ご と(1200rpm の 時  2400 コマ/sec) 

サイクル変動撮影(ストロボ):720 度毎に1枚,10 秒間以上 撮影 

画像:512×512 ピクセル 

露光時間:51〜58μsec(UV光源),11μsec(ストロボ)  カメラフィルター  HOYA㈱  Y44(UV光源用)および Y-48(ストロボ用)   

表 2-10  可視化装置の仕様  表 2-9  サファイアの物性値 

                                                                             

図2-10 フィルター特性 

(a) ストロボ用フィルター特性  (b) カメラ用フィルター  試験に供試したフィルターを  で示す 

   

蛍光剤の  種類 

最大吸収波長  nm 

最大蛍光波長  nm 

可溶性  mg/100ml  (トルエン) 

化学式  分子量  NKX-846  464  494  310  C20H16N2O2

350.4  NKX-1595  479  507  4900  C26H26N2O2

430.6  NKX-2401  416  520  1800  C32H42N2O2

518.8   

                                                       

表 2-11  蛍光剤特性 

(株)林原生物化学研究所  感光色素研究所製 

UV光源 

高速度CCDカメラ  ストロボ光源  (反スラスト側) 

可視化気筒  (スラスト側, 

Cyl. No.2)

 

図 2-11  可視化実験装置全体(エンジンⅢ)  UV光源用 

ファイバー 

(c) ピストンおよびリング仕様 

スカート部の潤滑状態の解析においては以下の要因が重要と考えられる. 

①ピストンが下降行程の時にスカート下端から流入するオイル 

②スカート上部から流入するオイル 

①に対してはプロファイル下部のバレル寸法 Bd およびスカート下端形状の影響が考え られ,②に対してはスカート上部のプロファイル Tp 寸法,オイルリング溝部のオイル 戻り穴の形状およびピストンリング張力の影響が考えられる. 

以上の項目の影響確認のため供試したピストンスカート部の仕様を表 2-12 に示す.

ピストンリングは表 2-3 の合計張力 51 N と 29 N の2水準を用い,ピストンとリングを 組合せた仕様は A1〜D1 の7種類とした. 

ピストン A1 と A2 はスカート上部のプロファイル Tp が異なり,ピストン A2 と D1 と ではオイル戻し穴形状が異なる.ピストン D1 のスカートを単に短くしたピストン C1,

C2 はピストンは同一でリング張力のみ異なる.ピストン B1 と B2 はスカート下端のバ レル寸法 Bd が異なる.なおオイル戻し穴形状は2種類あり,スロットタイプはオイル リング溝部に幅 1.6 mm の溝がスラスト側と反スラスト側に切ってあり,ホールタイプ ではφ3 の穴がスラスト側,反スラスト側にそれぞれ4個あいている.A1,A2 がスロッ トタイプ,B1〜D1 はホールタイプとなる.なお,スカート部,ランド部には反射防止 のため有機系樹脂をバインダーとし二硫化モリブデンのコーティング(黒色)を行った.

これはフリクション低減などの目的で最近広く採用されているコーティング(57)(58)であ る.なおピストンの組込クリアランスの目標値は 105 μmとした.組込クリアランスの 目標値については後述(2.5 節)する. 

                                 

19.3 294 100

9.1

42.1 560

Piston B1 Piston B2

10 51.0

Hole

Piston D1

20

50.2 300 51.0

400 22.1

Hole 5.1

50.2 37.4

100

Piston A1 Piston A2 51.0

300 20 22.1

6.1 400 Total Ring Tension N

Skirt Length L mm Skirt

Profile

Bd μm Tp μm

TpL mm BdL mm Ovality μm

20 28.1

5.1 300

400

51.0 29.0 Piston C1 Piston C2

Type of Oil Drain Hole Slot Hole

530

Bd Tp

L TpL BdL

表 2-12  ピストンおよびリング仕様 

組込クリアランス目標値 105 μm