第1章 序論
2.7 実働時のスカート変形量測定法
3.1.9 その他の入力項目
スカート部のフリクション計算は以上述べてきた定義や計算式を用いて行うが,ここ でスカートプロファイル(表 2-2, 表 2-6)以外の主な入力データの項目をエンジンⅠと
Ⅱとで整理して示し,あわせてスカート部フリクションの特徴を検討する.
図3-12に2.5節において定義したオーバラップ量(OL),3.1.6項において定義した摺動 面積(SA),オーバラップ荷重(OW)とライナ温度(TL)との関係をオイルの絶対粘度(μ)を 加えて示した.スカートの場合,温度の増加に対してフリクションに影響するのはオイ ル粘度の低下だけではなく,オーバラップ量の増加に伴なうオーバラップ荷重と摺動面 積の増加があるのが特徴となる.またスカートの仕様によってオーバラップ荷重と摺動 面積は大きく異なることが分かる.
図 3-11 スカート荷重計算モデル オーバラップ,ピストン挙動,
スラスト力により生ずるスカート荷重
・・・
・・・
筒内圧 回転方向
図 3-13 はエンジンⅡにおける摺動面積(SA),オーバラップ荷重(OW)など,図 3-12 と同様の 項目を 回転速 度(NE)に対して示 した .エンジ ンⅡの 場合は 回転速 度に 対して ライナ温度は生産エンジンのライナ温度に近い値を目標温度に設定(表 2-5)してあるの で,ライナ温度との関係として見ることもでき,ライナ温度は図中に括弧で示した.こ のエンジンのピストンでもスカートの仕様によってオーバラップ荷重と摺動面積は大き く異なっている.
以上述べてきたように,ピストンスカートの場合,スカートフリクションに影響する 荷重や摺動面積はライナ温度(オーバラップ量)に対して変化し,荷重や摺動面積はスカ ート仕様による影響を大きく受けると言える.
図 3-12, 3-13 にも示されているが,図 3-14 はオーバラップ量とオーバラップ荷重の 関係をそれぞれのピストンごとに再プロットしたものである.オーバラップ量とオーバ ラップ荷重の関係は2次曲線で近似し,それぞれのピストンの2次曲線の係数を表 3-1 に示す.後述する(3.2.7 項)油膜厚さ分のオーバラップ荷重増加の補正はこの表 3-1 の 近似式によって行っている.
図 3-12 ライナ温度とスカートフリクションに影響する各項目との関係 (エンジンⅠ,組込クリアランス25 μmの場合)
(a) ライナ温度(TL)とオーバラップ量(OL)およびオイル粘度(μ)
(b) ライナ温度(TL)とオーバラップ荷重(OW)および摺動面積(SA)
-20 0 20 40 60
40 60 80 100 120
Liner Temperature TL ℃
Absolute Viscosityμ Pa・s 0 0.01 0.02 0.03 0.04
OverlapOL µm
Overlap Viscosity
0 250 500 750 1000
40 60 80 100 120
Liner Temperature TL ℃ Overlap ForceOW N
0 5 10
Skirt Bearing Area SA cm2 Overlap Force, Skirt AA
Overlap Force, Skirt BB Skirt Bearing Area, Skirt AA Skirt Bearing Area, Skirt BB
(a) エンジンⅠのピストンの場合 (b) エンジンⅡのピストンの場合 図 3-14 オーバラップ量(OL)とオーバラップ荷重(OW)
0 1000 2000 3000 4000
0 20 40 60 80
Overlap OL μm Overlap ForceOW N Pistin A1Pistin B1
Pistin C1
0 1000 2000 3000 4000
0 20 40 60 80
Overlap OL μm Overlap ForceOW N Piston AA
Piston BB
図 3-13 回転速度とスカートフリクションに影響する各項目との関係 (エンジンⅡ,組込クリアランス60 μmの場合)
(a) 回転速度(NE)とオーバラップ量(OL)およびオイル粘度(μ)
(b) 回転速度(NE)とオーバラップ荷重(OW)および摺動面積(SA)
-20 0 20 40 60
0 500 1000 1500 2000 2500
Engine Speed NE rpm OverlapOL µm
0 0.002 0.004 0.006 0.008
Absolute Viscosityμ Pa・s
Overlap Viscosity
(98℃) (103℃)
(108℃) (110℃)
0 200 400 600 800
0 500 1000 1500 2000 2500
Engine Speed NE rpm Overlap ForceOW N
0 2 4 6 8
Skirt Bearing Area SA cm2 Overlap Force, Skirt A1
Overlap Force, Skirt B1 Overlap Force, Skirt C1 Skirt Bearing Area, Skirt A1 Skirt Bearing Area, Skirt B1 Skirt Bearing Area, Skirt C1
近似式 y=ax2+bx
係数 a b
ピストン AA 0.0331 1.979 ピストン BB 0.0309 0.7696 ピストン A1 0.0330 2.3415 ピストン B1 0.0260 0.5603 ピストン C1 0.0327 2.8118
計算に用いたスカート表面粗さの諸数値を表 3-2 に示す.lp,awは使用したピストン の表面粗さを実測し求めた(図 2-5(a)に粗さ測定例).条痕の谷の部分の半径Rは正確な 実測が困難であるため加工時の指示値(バイトの刃先半径)を用いた.ピストン AA, BB, A1, B1, C1 ともこれらの数値はほぼ同じであったため,スカートフリクションの計算 はすべて同じ数値を用いて行った.
lp mm aw μm R mm a0 μm lpf mm hb μm 0.23 1.0 0.8 4.15 0.108 7.3
表3-2 スカート表面粗さ諸数値 表3-1 スカート剛性2次曲線係数
(9.8*y:N, x:μm)