第1章 序論
4.4 スカート部フリクション測定結果(分離型浮動ライナ)
4.4.3 スカート部とリング部のフリクション割合
図 4-17 に機関回転速度 1200 rpm におけるピストン AA およびピストン BB(表 2-6)と リ ン グ (表 2-7)の フ リ ク シ ョ ン お よ び ス カ ー ト 部 の フ リ ク シ ョ ン 割 合 を 示 す . 図 4-17(a)はピストン AA, IMEP が 450 kPaの場合でライナ温度が高くなるとともにスカート のフリクションは増加し,一方,リングは減少する.そのためこのスカート仕様ではピ ストン系全体(リング部+スカート部のフリクション)に対するスカート部フリクション の割合は約 60%にもなることが分かった.
図 4-17(b)にはピストン BB, IMEP が 450 kPa におけるスカートフリクションとその 割合を示す.ピストン AA とは異なりライナ温度 80℃で最小となる傾向を示した.この ようにピストンスカートの仕様によってフリクションは大きく異なる傾向を示すことが 分かった.
これらの理由は次のように考えられる.スカートの場合,温度が高くなるとオーバラ ップ量の増加によりオーバラップ荷重が増加し,一方,オイル粘度は減少する.スカー ト剛性が高いピストン AA の場合,オーバラップ荷重の影響がオイル粘度の影響より大 きく表れるためライナ温度の増加とともにフリクションが増加する傾向を示すと考えら れる.一方,ピストン BB ではこのような傾向は見られずあるライナ温度でフリクショ ンの最小値が存在する.これは剛性が低い場合にはオーバラップ荷重増加の影響よりオ イル粘度低下の影響の方が大きく表れるためと思われる.
リングのフリクションは温度の上昇と共に減少しているが,最小値を示した後,さら に高温になると増加する傾向を示した.これはリングの場合,ライナ温度の増加に対し てはリングに作用する荷重(張力と筒内圧)は変化せずオイル粘度のみが低下しフリクシ ョンが減少するが,高温では境界潤滑状態によるフリクションの増加があるためである.
リングの高温での境界潤滑状態の増加は図 4-18 に示したリングの摩擦力波形から判断 できる.図 4-18 には図 4-17(b)のライナ温度 88, 103, 108℃におけるリングの摩擦力 波形を示した.流体潤滑の代表として行程中央の①(図 4-18 の上段図)部分の大きさを 見ると,温度の増加に伴なって摩擦力は小さくなるが,境界潤滑の代表として②部の大 きさは温度の増加に伴なって摩擦力は大きくなっている.これらのことから高温では境 界潤滑の摩擦力増加があるため摩擦平均有効圧(FMEP)は増加に転じると判断できる.
このようにスカートの場合には温度に対する変化はリングとは異なる特徴があること が分った.
図 4-17(c)にはスカート BB における IMEP(図示平均有効圧)の影響を示す.IMEP の増 大によりスカート部,リング部共にフリクションは増大するが,スカート部のフリクシ ョン割合としての変化は少なかった.
以上,実験結果から示してきた各スカートのフリクションの性質は以降の節において,
計算によって詳細を解析する.
1200 rpm, 450 kPa
0 5 10 15 20
40 60 80 100 120
Cylinder Liner Temperature ℃
FMEP kPa
0 20 40 60 80
Skirt Friction Ratio %
FMEP, Ring
FMEP, Piston AA, 51 μm Skirt Friction Ratio of Piston AA
(a) ライナ温度の影響(ピストン AA)
(b) ライナ温度の影響(ピストン BB)
1200 rpm, 450 kPa
0 5 10 15 20
40 60 80 100 120
Cylinder Liner Temperature ℃
FMEP kPa
0 20 40 60 80
Skirt Friction Ratio %
FMEP, Ring
FMEP, Piston BB, 49 μm Skirt Friction Ratio of Piston BB
(c) IMEP の影響(ピストン BB)
1200 rpm
0 5 10 15 20 25
0 200 400 600 800
IMEP kPa
FMEP kPa
0 20 40 60 80 100
FMEP, Ring
FMEP, Piston BB, 49 μm Skirt Friction Ratio of Piston BB
Skirt Friction Ratio %
図 4-17 スカート部とリング部のフリクションおよび スカート部のフリクション割合
図 4-18 ライナ温度とリング部の摩擦力波形との関係 (c) ライナ温度 108℃の場合
Liner Temp. 108℃, 13.0 kPa (FMEP)
-100 -50 0 50 100
0 180 360 540 720
-2 0 2 4 6
Crank Angle deg.
Cylinder Pressure MPa
Friction Force N
Liner Temp. 103℃, 12.6 kPa (FMEP)
-100 -50 0 50 100
0 180 360 540 720
Crank Angle deg.
-2 0 2 4 6
Cylinder Pressure MPa
Friction Force N
(b) ライナ温度 103℃の場合 Liner Temp. 88℃, 14.4 kPa (FMEP)
-100 -50 0 50 100
0 180 360 540 720
Crank Angle deg.
-2 0 2 4 6
Cylinder Pressure MPa
Friction Force N
①
②
Ring Friction Foce Cylinder Pressure
(a) ライナ温度 88℃の場合