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受寄者の自己執行義務(民法第658条)

ドキュメント内 民法(債権関係)部会資料 (ページ 90-93)

民法第658条第1項は,受寄者の自己執行義務を定めるとともに,その例外と して,寄託者の承諾を得た場合に,再寄託を行うことを認めている。受寄者が自己 執行義務を負う理由は,寄託が,寄託者の受寄者に対する対人的信頼関係を基礎と するためであるとされる。このため,例外も,寄託者の承諾を得た場合にのみ認め られるとされている。

これに対して,寄託と同様に対人的信頼関係を基礎とする委任については,復委 任を認める明文の規定はないものの,同法第104条を類推して,委任者の承諾を 得たときのほか,「やむを得ない事由があるとき」に復委任が認められると考えられ ている。この場合にも復委任を認めることが,委任者の利益になるからであるとさ れる。このような委任についての解釈との対比で,寄託についても,解釈により,

「やむを得ない事由があるとき」に再寄託を認めるべきであるとする見解が主張さ れている。

以上のような見解を踏まえて,再寄託の要件について,復委任の要件との整合性 をとりつつ見直すべきであるという考え方が提示されている。具体的には,委任に 関して,解釈により復委任が認められている「やむを得ない事由があるとき」とい う要件について,複雑化した今日の社会状況を考慮して,「受任者に自ら委任事務を 処理することを期待するのが相当でないとき」と拡張する方向で見直すという考え 方が提示されており(前記第3,2(3)参照),これに平仄を合わせる形で,「受 寄者に寄託物の保管を期待することが相当でないとき」に再寄託が認められること を条文上明確にすべきであるとする考え方が提示されている。

このような考え方について,どのように考えるか。

(2) 適法に再寄託が行われた場合の法律関係

民法第658条第2項は,復代理に関する同法第105条を準用し,適法 に再寄託がされた場合の受寄者の責任を限定しているが,この規定について は,第三者が寄託物を保管することについて寄託者が承諾しただけで,受寄 者の責任が限定される結果となるのは不当であるとして,受寄者の責任を限 定することについて寄託者の承諾があった場合に限定して解釈すべきである という見解が有力に主張されている。このような問題意識を踏まえて,適法 な再寄託がされた場合における受寄者の責任について,受寄者は,自ら寄託 物を保管する場合と同様の責任を負うこととし,例外的に,寄託者の指名に 従って再受寄者を選任したときに限って同法第105条第2項ただし書を準 用することとすべきであるという考え方が提示されている。

また,民法第658条第2項が,同法第107条第2項を準用し,寄託者 と再受寄者との間に相互の直接請求権を認めている点については,再委任の 場合とは異なり,再受寄者の行為の効果が直接寄託者に帰属するという関係 にないこと等を理由として,立法論として適当でない等の批判がされている。

このような批判を踏まえて,再寄託については,寄託者と再受寄者との間に

直接請求権を認めないこととすべきであるという考え方が提示されている。

以上のような考え方について,どのように考えるか。

(補足説明)

1 適法な再寄託による受寄者の保管義務の見直し

民法第658条第2項は,復代理に関する同法第105条を準用し,適法に再 寄託がされた場合には,受寄者は,再受寄者の選任及び監督についてのみ責任を 負うとしている。

しかし,この規定については,寄託者が,第三者が寄託物を保管するというこ とについて承諾しただけで,受寄者の責任が限定される結果となるのは不当であ ると批判されている。その上で,受寄者がどのような責任を負うかという点につ いては,当事者間の合意によって決せられるものであり,受寄者の負うべき責任 が再受寄者の選任及び監督に限定されるのは,その旨の寄託者の承諾があった場 合に限定されるべきであるという見解が有力に主張されている。

このような問題意識を踏まえて,適法な再寄託がされた場合における受寄者の 責任について,受寄者は,自ら寄託物を保管する場合と同様の責任を負うことと し,例外的に,寄託者の指名に従って再受寄者を選任したときに限り,民法第1 05条第2項ただし書の規律を維持する方向で見直すべきであるという考え方が 提示されている。このような考え方について,どのように考えるか。

2 寄託者と再受寄者との間の直接請求権の見直し

民法第658条第2項は,同法第107条第2項も準用し,寄託者と再受寄者 との間に相互の直接請求権を認めている。

しかし,この規定については,その妥当性を疑問視する見解が主張されている。

すなわち,再委任の場合には,復受任者は,委任者の名で法律行為を行うことを 受任者から委任されており,復受任者の行為の効果が直接委任者に帰属するので あるから,委任者と復受任者の間には委任関係があるとして,相互的に直接請求 権を認めるのが適切である。他方,再寄託の場合には,受寄者が自らの名で物の 保管をするものであり,再受寄者の行為の効果が寄託者に直接帰属するという関 係にないのであるから,寄託者と再受寄者との間に直接請求権を認める必要はな いというのである。そもそも,この規定の立法過程においては,当初,起草者か ら,上記の趣旨の説明がされた上で,民法第107条第2項を準用しないという 原案が提出されていたが,再寄託は寄託者の承諾がある場合に限られるから同項 を準用するのが便利であろうという理由で,同項を準用する旨の修正案が可決さ れたという経緯があるが,このような立法過程についても,修正の理由が合理的 ではないと批判されている。

また,このほかにも,再受寄者は,寄託者との関係では,受寄者の履行補助者 に過ぎないとして,寄託者と再受寄者との間に直接請求権を認めるべきではない という批判もある。

以上のような批判を踏まえて,再寄託については,民法第107条第2項を準 用せず,寄託者と再受寄者との間に直接請求権を認めないこととすべきであると

いう考え方が提示されている。このような考え方について,どのように考えるか。

ドキュメント内 民法(債権関係)部会資料 (ページ 90-93)