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先行研究の評価と課題

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第2章  企業間関係の構築によるコスト低減    に関する先行研究の考察

第4節  先行研究の評価と課題

2−4−1  分析データの年次に関する問題点   

以上は、「企業間関係の構築によるコスト低減と業績の関係」と関連する諸研究について    の文献である。次にこれらの先行研究に対して、本研究のテーマに関連する到達点と先行    研究の領域外になっている範囲を明らかにしながら考察する。それを踏まえた上で、本研究    の領域、実証分析の枠組みなどを提示する。     

まず、日本企業のM&Aに関する先行研究は、1990年代以降の搬Aの実際を必ずしも十分    に反映しているとは言い切れない。前節で挙げた先行研究の特徴としては、1990年代のサ      ンプルの特徴が反映されていない。それは、古いサンプルと新しいサンプルの区別がつい     

ていないためである。たとえば、星野(1990)における研究対象は1955年から1978年ま      での東京■大阪・名古屋の証券取引所の第一部及び第二部に上場された企業のうち、金融・     

保険業を除く約1,700社である。清水(1999)の場合は、束京証券取引所が開設された1949      年時点から1995年末までに東証第一部に上場した企業1,159社である。いずれのデータに     

も半世紀以前のものが含まれており、その結果をそのまま現在の企業間関係の理解にあて      はめるには限界がある。   

一方、提携に関する先行研究では、統計的処理を伴う実証研究は少なく、フィールドの      観察から得られた知識をもとに理論を構築しようとする研究が多い。これらにおける観察     

の対象は1980年代から90年代の企業が中心となっている。   

つまり、M&A・提携に共通して、先行研究は1990年代以前の企業間関係構築と業績の相    互関係の分析を行ったものであるので、最近の企業間関係の実態を反映させた分析を行う      には、少なくとも90年代後半以降のデータによる実証を改めて行う必要がある。   

2−4−2  外部経営資源の利用の目的・効果のとらえ方     

次に、外部経営資源の利用目的と効果のとらえ方に関しては、従来のM&Aの研究では、   

実証研究の場合は、効果を包括的に財務的成果で評価するのが中心となっていた。理論研    究では、狼Aの目的に多様性があることを指摘しているが、実証研究ではM&Aの目的の違い    は無視されているのが特徴といえる。     

提携の研究に関しては、提携によって競争力がある価値連鎖を構築することが研究の目    的となっており、提携の効果も定性的に評価されるのが特徴である。   

(Por t er (ユ985),p.4.)では、競争優位にはコスト・リーダーシップと差別化の基本的    に2つのタイプがあるとするが、そうであるならば、コスト低減や研究開発、市場対応の    ための企業間関係の構築は競争戦略の一環としての活動と位置づけられる。その根拠は、   

競争優位の獲得は、製品市場において競合企業との競争のなかで顧客を獲得することであ    り、企業の事業活動が成功している状態を実態的レベルで表すものといえるからである。   

しかも、M&Aや提携は、コスト低減や研究開発、業界標準の構築を含む市場への対応といっ    た様々な目的のために実施される(鈴木(1999b),P.78−79.)。     

つまり、企業が低コスト化による競争優位の獲得を指向する場合には、当該企業の価値     

連鎖の全体または鵬部に対応するコストの低減が図られる。差別化による競争優位を指向      する場合には、新製品の開発、新技術の研究開発のほか、市場支配力の強化といった手段     

がとられる可能性が高い。   

そこで、低コスト化や差別化という戦略的な目標と、それを実現させる手段としてのM&A      や提携の存在を前捷にすると、企業間関係の構築、コスト低減や共同研究という目標の二      者の間には目的と手段という関係が成立する。すなわち胞Aや提携は、競争優位やその反      映としての「好ましい財務状況」を獲得するための手法の一つとして位置づけられるわけ      である。しかも、計画と予算による提携の管理が好ましいパフォーマンスに影響する(Das     and  Teng(2001),pP.275−276.)。この計画と予算による管理とはコストマネジメントを含    む概念と理解できる。   

2−4−3  研究アプローチの偏り     

以上のレビューの結果を、先行研究に対する評価としてまとめると次のようになる。     

鵬Aの効果に関する実証研究の特徴は、大量のサンプルを用いて、経済的効果の検出を直    接的に試みる、いわばマクロ的な視点によるものである点であるが、M &Aによる経営構造の   

変化が体系的に分析されるに至っていないという側面を否定できない。したがって、M&Aの   

分析に経営構造の変化というミクロ的な視点を持ち込む意義が見出せる。そのための分析    手法として、このミクロ的な視点を実証分析に導入する見地から、低減対象コスト、此Aの   

目的、市場の成長性を変数に取り入れる余地を認めることができる。それは、価値連鎖の    変化や企業対市場の関係の変質が生じるのか否かという問題意識を、搬A研究に導入する意   

義を認識することができるからである。     

提携の先行研究に関しては、提携の導入による経営構造の変化に注目が集まる傾向にあ   

り、大量のサンプルを用いて経済的効果の検出を図るというマクロ的な視点で経済的効果   

を測定しようとする研究が少ない。この背景には、提携の経済効果を個別企業(グループ)   

単位で集計される会計データに基づいて測定することを困難だと認識する傾向を指摘でき     

る。このように、企業の財務業績に対する提携の貢献性についての研究がみられない反面   

で、現実には外部資源の導入によって企業業績を改善しようとする活動が日常的に観察さ    れる。それ故、企業の財務業績への貢献性を包括的に扱うことを、提携の研究の主題とす   

る必要性を認めることができる。そこで、提携の経済的効果を包括的に確認する代替的手      段を取り入れることを試みる。   

従前の研究では、M&Aと提携が別個に扱われていたが、そこには、前述のようにそれぞれ      についての問題意識が異なっていたという要因を指摘できる。しかし、M&A、提携ともに、     

企業のパフォーマンスを高めるための外部経営資源の導入手法である以上、それらを並行     

して研究対象とする必要性を認識できる。つまり、M&Aの分析においてM&Aの効果を財務指      標のみで計測するのではなく、価値連鎖や環境条件との関係を含めて測定することと、提     

携の効果に関しての財務指標などによる包括的な確認を行うことにより、従前の研究では     

別個に扱われていたM&Aと提携の経済的効果を同一基準により比較することが可能となる。     

また、従来の研究がコスト低減をM&Aや提携の目的・動機としては中心的なテーマとして      は扱ってこなかったことに対して、M&Aや提携が多目標である中で、コスト低減に着目する      ことは、管理会計的に意味のあるM&A  と提携の経済的効果の測定尺度を提供する可能性を      持つと判断できる。   

2−4−4  本研究のアプローチの方向性   

先行研究に対する以上のような評価を踏まえると、それは、コスト低減のターゲット(低      減対象となるコストの種類)や企業の成長性の違いといった分析対象企業の事業特性を表      す要因も含めた形で、しかも戦略や価値連鎖への観点も交えながら企業間関係の効果を測      定を実施するという点に、本研究の基本的な問題意識を整理できる。   

これは、低減対象コストや企業の事業特性への視点を企業間関係の効果測定手続の中に      ビルト・インできれば、M&A  や提携に際しての意思決定における具体的な判断基準の提供      に資するのではないかという問題意識に基づいている。このような問題意識に基づく測定      作業は、管理会計の視点からみると、企業間関係の構築に関する戦略決定のための意思決    定支援としての意味を持つ。というのは、戦略決定のための情報システムの一部としての   

外部環境調査システムが市場環境における好機と脅威を峻別し、好機を認識するからであ   

る(門田(2001),pP.6−8.)。     

ところで、M&Aと提携では、企業の法人格への影響や企業間の結合度の強弱には差がある。   

提携における企業間の結合の強さはM &Aよりも弓恥、反面、企業間関係の構築・解消に関す   

る当事者の自由度はM&Aよりも高いので、パートナー双方にとって便利な側面がある。一    般的な現象として、提携がM&Aよりも頻繁であるのも、そうした両者の性格の違いを反映   

したものといえる。しかし、外部経営資源を迅速かつ事業目的に応じて内部化する機能は   

両者に共通する。そこに、両者の比較研究によってそれぞれの相違点を検出し、それを企   

業間関係の構築に際しての判断材料として提供する意義がある。     

しかし、前述のように、データ収集を含む測定に困難性が伴うために提携のパフォーマ    ンスに関しては、従前の研究ではあまり注目されていない(Gul at i (1998),PP.306−309)。   

これに対して、企業間関係の構築によって生じる効果を測定しようという観点からみれば、   

M&Aと提携という異なる企業間関係の構築形態について、低減対象コストや企業特性などを    細かく分類・観察することによって、それぞれで異なった経営上の効果が観測される可能    性も否定できない。     

っまり、M &Aと提携を同時に比較しながら、コスト低減目的や、低減対象コストと価値連   

鎖の関係への視点を加えることによって、企業間関係の構築と効果との関係についての従    来の研究を発展させ、現実の企業行動をより反映した企業間関係の構築に係る検証が期待    できる。     

ただし、コスト低減が企業間関係の構築の中で実施されるとしても、実際にM &Aや提携    を行う企業の価値連鎖や企業特性、業種・業態や、企業自体の成長性はそれぞれ異なる。   

個々の企業のコスト構造も多様である。それ故、M&Aや提携を通じたコスト低減を考える場    合には、低減対象コストを分類・特定した上で分析を行うことが重要となる。     

この分類にあたっては、企業の生産活動の川上から川下に至る各段階を包含する価値連    鎖と具体的な低減対象コストとの関連性にも配慮する観点から、価値連鎖上の上流・中流・   

下流の各段階別の類型に着目する意味がある。この方法によれば、脆Aや提携という外部経   

営資源導入手段の選択と、低減対象となる上流から下流までのコストの種類との関連を統    一的な基準によって測定することが可能になる。     

同時に、鵬Aや提携の当事者たる企業を取り巻く環境に関しても統一的な尺度によって    環境条件を分類・特定することが重要となる。この事続きにより、M&Aや提携の効果と低   

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