第 5 章 微分 65
5.11 偶関数や奇関数の微分
関 数 f(x) が 偶 関 数 で あ る と す る 。す な わ ち, f(−x) =f(x)が恒等的に成り立つ。この両辺をxで微 分すると, −f′(−x) =f′(x)となる(左辺は合成関数の 微分!)。すなわち, f′(−x) =−f′(x)が恒等的に成り立 つ, すなわちf′(x)は奇関数である。偶関数の導関数は 奇関数なのだ!
● 問125 奇関数の導関数は偶関数であることを示せ。
● 問126 nを0以外の任意の整数とする。以下の関 数について, 偶関数の導関数が奇関数になり, 奇関数の 導関数が偶関数になることを実際に確認せよ。なお, 単 に「確認した」というだけではレポートにはなりません!
(1) f(x) =x2n (2) f(x) =x2n+1 (3)
f(x) = 1 1 +x2
(4)
f(x) = x 1 +x2 ヒント: (3), (4)は問112に出てきた。
よくある質問70 数IIIをやっていないのでテストができま せん。... もう高校時代は終わったのだから「XXXをやって いないから」というのはやめましょう。やっていなければ,今, やればいいのです。高校で数IIIをやった人も,それなりの苦 労や努力をしたのです。
演習問題
演習13
(1) y = 1/xn と置き, その両辺をxn 倍し, その両辺を xで微分する,という発想で, 式(5.62)を導け。
(2) y=x1/nと置き,その両辺をn乗し, その両辺をx で微分する,という発想で,式(5.69)を導け。
演習14 逆関数の微分の公式(式(5.64))を, グラフの
「接線の傾き」という観点で示せ。ヒント: 逆関数のグ ラフは, もとの関数を, 直線y=xに関して対称移動し たもの。
演習15 nを0以上の整数とするとき,以下の式で定義 される関数Pn(x)をルジャンドル関数という*15
Pn(x) := 1 2nn!
dn
dxn(x2−1)n (5.117) (1) n = 0,1,2,3,4のそれぞれについて, Pn(x)を求
めよ。
(2) n が偶数のときは Pn(x)は偶関数であることを 示せ。
(3) n が奇数のときは Pn(x)は奇関数であることを 示せ。
問題の解答
答103無限小dxに対して,g(a+dx) =g(a) +g′(a)dx と書けるとき, 右辺のdx の係数g′(a)のこと。もし くは,
g′(a) = lim
∆x→0
g(a+ ∆x)−g(a)
∆x
のこと(どちらでも可)。注: この問題で,あなたはgをf と書いたりaをx0と書いたりしなかっただろうか?本文に出 てきたf(x)やx0という記号は,説明のための便宜的なもの であり,この問題のように,設定に応じて変わるものである。
*15この関数は,実は原子の電子軌道(K殻とかL殻とか)と密接 な関係がある。
5.11 偶関数や奇関数の微分 83 答104
f(x+dx) =p(x+dx) +q=px+q+p dx
=f(x) +p dx
dxの係数に着目して, f′(x) =p。特に, f(x)が定数関 数の場合はp= 0だから,f′(x)は恒等的に0。 ■ 答107
(1) f′(x) = 2x+ 1 (2) f′(x) = 8x+ 5 (3) f′(x) = 6x+ 3 (4) f′(x) =−5/x2 (5) f′(x) = 1 + 1/x2
答108
(1) f′(x) = (x2+x+ 1)′(x2−x−2) + (x2+x+ 1)(x2−x−2)′
= (2x+ 1)(x2−x−2) + (x2+x+ 1)(2x−1)
= 4x3−4x−3 (2) f(x) =x4−2x2−3x−2
f′(x) = 4x3−4x−3 答109
(1) (g(x) =x3, f(x) = 3x2+ 2とみなせばよい。) F′(x) = 3(3x2+ 2)2(3x2+ 2)′
= 3(3x2+ 2)2(6x) = 18x(3x2+ 2)2 (2) (g(x) =x3, f(x) =x2+x+ 1とみなせばよい。)
F′(x) = 3(x2+x+ 1)2(x2+x+ 1)′
= 3(x2+x+ 1)2(2x+ 1)
(3) (g(x) =x2, f(x) =x5+x4+x3+x2+x+ 1とみ なせばよい。)
F′(x) = 2 (x5+x4+x3+x2+x+ 1)
×(x5+x4+x3+x2+x+ 1)′
= 2 (x5+x4+x3+x2+x+ 1)
×(5x4+ 4x3+ 3x2+ 2x+ 1) (4) (g(x) =x2, f(x) = 1 + 1/xとみなせばよい。)
F′(x) = 2( 1 + 1
x
)(1 + 1 x
)′
=−2( 1 + 1
x ) 1
x2 =−2( 1 x2 + 1
x3 )
答110 関数1/u(x)は, 関数1/xと関数u(x)の合成関
数である。(1/x)′ =−1/x2だから,
(1 u
)′
=(
−1 u2
)u′=−u′ u2
答111 関数v(x)/u(x)は, 関数v(x)と関数1/u(x)の 積である。
(v×1 u
)′
=v′(1 u
)+v(1 u
)′
=v′(1 u
)+v(
−u′ u2
)= v′u−vu′ u2 答112
(1)
− 2x (1 +x2)2
(2)
1−x2 (1 +x2)2 答113
(1)
−1 x2
(2)
− 1
2x3/2 =−1 2x−3/2 (3)
2 3x−1/3
(4)
−5x−6 答115
(1) ヒント: g(x) = √
x, f(x) = 2x+ 3として公式4 を使う。g′(x) = 1/(2√
x)だから, (与式)′= f′(x)
2√
f(x) = (2x+ 3)′ 2√
2x+ 3 = 2 2√
2x+ 3
= 1
√2x+ 3 (2) ヒント: g(x) =√
x,f(x) = 1−x2として公式4を 使う。g′(x) = 1/(2√
x)だから, (与式)′= f′(x)
2√
f(x) = (1−x2)′ 2√
1−x2 = −2x 2√
1−x2
=− x
√1−x2 (3) ヒント: まずx2と√
1 +x2の積と考えて公式3を 使う。その上で例5.15を使う。
(与式)′= (x2)′√
1 +x2+x2(√ 1 +x2)′
= 2x√
1 +x2+ x3
√1 +x2 (4) ヒント: g(x) =x−1/2,f(x) = 1 +x2として公式4
を使う。
(与式)′= −1
2 (f(x))−3/2f′(x)
=−1
2 (1 +x2)−3/2(2x) =− x (1 +x2)3/2 (5) ヒント: g(x) = 1/x, f(x) = 1 +√
xとして公式4 を使う。
(与式)′=−(1 +√ x)′ (1 +√
x)2
=−
1 2√x
(1 +√
x)2 =− 1 2√
x(1 +√ x)2 (6) ヒント: g(x) =√
x, f(x) = 1 + 1/xとして公式4 を使う。
(与式)′= 1 2√
1 + 1x (1 + 1
x )′
= −1
2x2√ 1 + 1x (7) ヒント: x−1と1/(x+ 1)の積と考えて公式3を
使う。
(与式)′= (x−1)′ 1
x+ 1+ (x−1)( 1 x+ 1
)′
= 1
x+ 1 −(x−1) 1
(x+ 1)2 = 2 (x+ 1)2 別解: 与式=1−2/(x+ 1)と変形してから微分して も,同じ結果になる。
(8) ヒント: g(x) = 1/x,f(x) = 1 + 1/xとして公式4 を使ってもよいのだが, 与式を変形してから微分す るほうが簡単。与式の分母分子にxをかけて,
(与式) = x
x+ 1 = 1− 1 x+ 1 従って,
(与式)′=( 1− 1
x+ 1 )′
= 1
(x+ 1)2
答116 f(x) = (1 +x)a と置くと, f(0) = 1。また, f′(x) =a(1 +x)a−1なので, 従ってf′(0) =a。これを 式(5.77)に入れると,与式を得る。
答117
(1) 式(5.79)でa=−1とすれば, 1/(1 +x)≒1−x (2) 前小問のxを−xに置き換えて, 1/(1−x)≒1 +x (3) 式(5.79)でa=−1/2とすれば,
1/√
1 +x≒1−x/2 答118
(1) (0.99)10= (1−0.01)10≒1−10×0.01 = 0.9 (2) 3乗して10に近い簡単な数は何かな?と考えると, 2
が思いつく。23= 8であることに注目し, 101/3= (8 + 2)1/3={
8( 1 + 2
8 )}1/3
= 81/3( 1 + 2
8 )1/3
= 2( 1 + 1
4 )1/3
≒2( 1 + 1
3×4
)= 2 + 1
6 = 2.166· · · 答119
(1)
f′(x) = 5x4+ 6x2 f′′(x) = 20x3+ 12x f(3)(x) = 60x2+ 12
(2)
f′(x) = 1 (1−x)2 f′′(x) = 2
(1−x)3 f(3)(x) = 6
(1−x)4 答120 (1), (2), (3)は略。本文をよく読めば簡単。(4)
「距離を」ではなく「位置を」と言わねばならない。距離 を時刻で微分したものは「速さ」である。(5)間違って いるとは言い切れないが, 「時刻によって微分」と言わ ねば不正確である。
答121 (1) 位置を時刻で微分する: (at2+bt+c)′ = 2at+b。(2)再度時刻で微分する: (2at+b)′= 2a。 答122 問121(2)で, 2aが加速度なので, aは加速度の 次元(SI単位ではm s−2)。問121(1)で, 2at+bが速度 なので,bは速度の次元(SI単位ではm s−1)。もともと x=at2+bt+cだったので, cはxと同じ次元(長さ; SI単位ではm)。
答123(略解)位置は503 m。速度は99 m s−1。加速度 は9.8 m s−2。
答124 r(t) = (v0t,−gt2/2) = (x, y)と置く。(1) x, y から tを消去して, y = −gx2/(2v02)。これをxy平面 にプロットすると, 原点を頂点とする, 上に凸の放物線 になる。 (2) v(t) =r′(t) = (v0,−gt) (3) a(t) =v′(t) = (0, −g)。なお, この点の運動は,水平方 向に初速v0で投げたボールの運動である。
答126 (1) f(−x) = (−x)2n = (−1)2nx2n = x2n = f(x)。よ っ て f(x) は 偶 関 数 。f′(x) = 2nx2n−1。 f′(−x) = 2n(−x)2n−1 = (−1)2n−12nx2n−1 =
−2nx2n−1 = −f′(x)。よってf′(x)は奇関数。(2)以 下略。
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第 6 章
指数・対数
過去の受講生の言葉:「最近ようやく定義を1つずつ確認す る癖がつき,理解しやすくなった。」