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例外 !

ドキュメント内 数学リメディアル教材 (ページ 40-43)

第 2 章 物理量と単位 19

2.11 例外 !

ここで, 少しやっかいな話。「物理量は数値と単位の 積」と述べたが,そうではない場合が存在するのだ。

もし物理量が「数値と単位の積」なら,その「数値」が 0のときにはその物理量は0である。例えば, 0 mは長 さが0 (無い)ということである。

すると, 「数値が0でも物理量が0にならない場合」

は,「数値と単位の積」ではない,ということになる(こ れは上で述べたことの対偶である。対偶がわからない人 は,索引で調べよ)。そして, 実際にそのような場合があ るのだ!

例2.15 温度はそもそも, 分子の平均運動エネルギーに 比例するような物理量であり, その単位としてK (ケル ビン) が使われる。当然, 分子の平均運動エネルギーが 0 のときの温度は0 Kである。ところが,温度を摂氏で 表すと, 0Cのときは273 Kであり, 0 Kではない。

例2.16 pHは, 水溶液の中の水素イオンの濃度[H+] の指標であり,次式で定義される:

pH :=−log10 [H+]

mol L1 (2.39)

● 問51 次式を示せ:

[H+] = 10pH mol L1 (2.40)

● 問52 pHが−1の水溶液の水素イオン濃度は?

● 問53  以下,必要なら関数電卓を使ってよい。

(1) 水素イオン濃度が0.005 mol L1のときpHは? (2) pH=5.6のとき, 水素イオン濃度は中性(pH=7)の

ときの何倍か?

(3) pH=5.0の塩酸と, pH=3.0の塩酸を, 等量, 混ぜ合 わせたら, pHはどのくらいになるか? ただし塩酸 はすべて解離するものとする。

ここで示した2つの例は, 「数値と単位の積」では ない。つまり, CやpHという単位は, 普通じゃない, 変な単位である。こういう単位は, 単位同士の掛け算, 割り算, 約分はできないし, それを利用した単位換算 法も使えないし, 式(2.14)のような表現もできないし, dimension checkも使えない。なので, こういう単位の からむ計算や変換は, ケースバイケースで慎重に対応し なければならない。

よくある質問31 「ケースバイケースで慎重に対応」って,

具体的にはどういうことですか?... いちばん簡単なのは,単位 換算や他の量と一緒に計算する時にはそういう量を「数値と 単位の積」に書き換えてしまうことです。CはKに, pHは

mol L1に書き換えてしまうのです。

演習問題

演習5 0 Cは273 Kである。つまり,

0C = 273 K (2.41)

である。ところが,この両辺を2倍すると,

0C = 546 K (2.42)

になってしまう。この2つの式に式(1.4)を使うと,

273 K = 546 K (2.43)

となってしまう。どこでどのように間違ったのか? 演習6 生物資源学類で農業を学ぶとき,古い単位が出 てくることがよくある。以下のそれぞれの単位につい て, その由来と, 相互の関係, そしてSI基本単位でどの くらいかを調べよ:

長さの単位: 寸,尺,丈,間,町,里 面積の単位: 畳,坪,畝,反,町 体積の単位: 合,升,斗,石 質量の単位: 貫

演習7 伝統的に, 生物資源学類生の多くには, 教員が テキスト・プリント・口頭で繰り返し注意しても, 必要 な単位を付け忘れるという性質がある。「単位の付け忘 れ」に関する君の体験を述べ,このミスを解消できる,人 道的で手間と費用の少ない教育法を提案せよ。ちなみに

「テストで減点」とか「呼び出して説教」というのはあ まり効果が無いことがわかっている。また, 「テストの 解答用紙に単位を書く欄を設ける」とか, 「テストのた びに, 単位を忘れないように注意を与える」などはむし ろ, 自主的に単位をつけようとする態度や習慣の成長を 阻害する可能性がある。

よくある質問32 教育とは手間のかかるものだと思います...

それは一般論として正しいけど,「単位の付け忘れ」は小中学 校で矯正されるべきですし,自分でも「単位つけないのはまず くね?」と気づくべきことです。大学がわざわざ「手間をかけ て教育」するようなことではありません。

よくある質問33 テストとかで後から見ると信じられないよ うなミスをします。ミスを減らす方法ってありますか? ... 人 間だからミスはなかなか無くせないですよね。むしろミスし

2.11 例外! 31 てミスから学ぶのです。ただし,ミスを指摘されているのに気

付かずに同じミスを繰り返したり,最初からテキストで注意喚 起されているところをミスするのはダメです。

問の解答

答25 「お互いに単位を揃えることができるかどうか」

という観点で共通する性質。

答26

(1) 500リットル

5 時間 ×2時間= 200リットル

(2) 5 時間

500リットル ×4 m3

= 5時間

500 リットル×4×103 リットル= 40時間 (3) 21000 t

4900 ha= 21000×103kg

4900×104 m2 = 2.1×107 kg 4.9×107 m2

≒0.43 kg/m2

(4) (3)の逆数。 1/(0.43 kg/m2)≒2.3 m2kg1 (5) 0.43 kg

m2 ×260×104m2≒110×104kg = 1100 t (6) 60kg

人 ×130人×2.3 m2

kg ≒18000 m2= 1.8 ha (7) 120 ha×2.5トン

1 ライ ×4.4 バーツ

1 kg × 100 円 33バーツ

= 120×104 m2×2.5×103kg 1600 m2 × 4.4

1 kg×100 円 33

= 2.5×107 円(= 2500 万円)

答28 (略解)いずれも, kg, m, sの3つの単位のどれかで 表すことができる。(1) 60 s。(2) 3600 s。(3) 100 m2。 以下,略。

答30 (略解)

(1) 1 m=103 km。1 m=0.001 kmと書いてもOK。 (4) 1 m2=1×(103 km)2=106 km2

(8) 1 km3=1×(103 m)3=109 m3

(11) 1 dL=101L=101×103m3=104m3。他略。

答31 (略解) (1) 9×103 m2。(2) 3×104 m3。 答32 (略解)

(1) mL=103 L = 103 × 103 m3=106 m3。 cm3=(102m)3=106 m3。よって, mL = cm3。 (2), (3) は 略 。(4) Gt=109 × 103 kg=1012 kg。 Pg=1015 g=1012 kg。よって, Gt=Pg。

答33

2.0 g/s = 2.0 g

s = 2.0 g s

kg 1000 g

3600 s h

= 2.0 g s

kg 1000 g

3600 s

h =2.0×3600 1000

kg

h = 7.2 kg/h 答34 (略解)

(1) 1220 km/h。(有効数字 3 桁とみなした。4 桁で 1224 km/hでもOK)。

(2) 1.08×109 km/h。(3) 1.0 kg/L。(4) 1.0 t/m3。(5) 1.3 kg/m3。(6) 1.4×102g/s。

答35与えられた量に対して0.5倍から数倍の違いがあ る事物でOK(ざっくり!)。以下は例。レポートではこ こに挙げた例を答えてはならない。

(1) 1 mL ... インフルエンザワクチンの容量(0.5 mL)。 (2) 1 m3... 銭湯の小さめの浴槽の容量。

(3) 1 mg ... キイロショウジョウバエ1匹の質量。

(4) 1 g ... 1円玉1個の質量。

(5) 1 kg ... サッカーボールの質量(0.5 kg)。 (6) 1 t ... 軽自動車1台の質量。

(7) 1µm ... 大腸菌1匹の大きさ。

(8) 10000 km ... 地球の直径(13000 km)。 (9) 100000 km2 ... 北海道の面積(83500 km2)。 答37 60×9.8 N≒590 N

答39

(1) 2 kg×3 m s2=6 kg m s2 = 6 N (2) 2 N×4 m = 8 N m = 8 J

(3) (略解) 5 Pa (4) (略解) 200 J 答40(略解)

(1) J = N mの両辺をmで割る。(2) Pa=N/m2の右 辺に,前小問で示したN=J/mを代入。(3)以下は略。

答41式(2.32)の右辺のNに式(2.30)を代入すると, J=kg m s2 m=kg m2s2 (2.44) 式(2.33)の右辺のNに式(2.30)を代入すると,

Pa=kg m s2/m2=kg m1s2 (2.45) 式(2.34)の右辺のJに式(2.44)を代入すると,

W=kg m2s2/s=kg m2 s3 (2.46) 答42 (1) 1 kW h = (103W)×(3600 s) = 3.6×106W s

= 3.6×106 J。(2) 1 hPa = 102 Pa = 100 Pa。

答43 

(1) 1 atm := 1013.25 hPa = 1.01325×103×102Pa

= 1.01325×105 Pa。

(2) 1 atm=101.325×103 Pa=101.325 kPa

(3) (1) よ り, 1 Pa= 1/(1.01325 × 105) atm = 9.86923×106 atm。

(4) 895 hPa = 895×102×9.86923×106 atm

= 0.883 atm。 答44

V = nRT P

= 1.0000 mol×8.3145 J mol1K1×273.15 K 1.01325×105 Pa

= 8.3145×273.15 J

1.01325×105 Pa = 2.2414×102 J/Pa

≒2.2414×102 m3= 2.2414×102×103L

= 22.414 L

なお, J/Paをm3に置き換えたところがわからない人

は,問40(4)を参照せよ。

答45問40(3)より, J=Pa m3。また, m3=103L。 従って, J=103 Pa L。また,問43より,

Pa = 9.86923×106 atm。従って,

J=103×9.86923×106atm L=9.86923×103atm L。 従って,R= 8.3145 J mol1K1

= 8.3145×9.86923×103 atm L mol1 K1

= 0.082058 atm L mol1 K1

答46物質を温めるときに, 投入した熱量をQ, 温度変 化を∆T,質量をmとすると,比熱はQ/(m∆T)と定義 される。常温では液体水は, 1 gに1 cal の熱を与える と1 Kだけ温度が上がる。すなわち,Q=1 cal,m=1 g,

∆T=1 Kをその定義に代入すればよい。すなわち, 1 cal

1 g×1 K = 4.184 J

103kg×1 K = 4184 J kg K

答47おおよその略解(君は計算過程もきちんと述べ,有 効数字を適切に考えること): (1) 約107 J。(2) 約5 K (3)約100 km

答48式(2.6)の左辺は無次元量であり,右辺は面積の次 元を持つ量である。等号の左右で次元が一致していない ので,これは誤った式である。

答49 SI基本単位で表すことを考える。ポテンシャルエ

ネルギーはエネルギーなのだからJ,すなわちN m, す なわちkg m2s2という単位で表される。右辺は,mは kg, gはm s2,hはmという単位で表される。従って, mghはkg m2 s2という単位で表される。左辺と右辺 はともに同じ単位(kg m2 s2)で表されるので,両辺の 次元は一致している。

答50rは半径なので, SI基本単位で表すとmで表現で きる。A君の記憶している公式では,V は「無次元量×

r2」なのでm2という単位で表される。すなわちV が 表すものは体積ではなく面積になってしまう。同様に, A君の記憶している公式では,Sは面積でなく体積を表 すことになってしまう。

答51式(2.39)の両辺に(−1)をかけると,

−pH = log10 [H+]

mol L1 (2.47)

となる。対数の定義から, 10pH = [H+]

mol L1

となる。ここから与式を得る。 ■ 答52式(2.40)の右辺にpH=−1を代入すると,

[H+] = 10(1)mol L1= 10 mol L1 答53

(1) [H+]=0.005 mol L1のとき, pH =−log10 [H+]

mol L1 =−log100.005 mol L1 mol L1

=−log100.005≒2.3 (2) 式(2.40)より,

pH=5.6のとき[H+]=105.6 mol L1 pH=7.0のとき[H+]=107.0 mol L1

で あ る 。前 者 を 後 者 で 割 る と, 105.6/107 = 101.4≒25.1。すなわち,約25倍。

(3) 2つの塩酸の体積をそれぞれxLとする。H+の物 質量は,

pH= 5.0の液には, 105xmol。 pH= 3.0の液には, 103xmol。

2つの塩酸を混ぜ合わせたとき, H+の濃度は, 105xmol + 103xmol

xL +xL = 105+ 103

2 mol L1

= 5.05×104 mol L1 従って, pH=−log10(5.05×104)≒3.3

33

第 3

代数

過去の受講生の言葉: 「予習大切。やんなきゃできない。」

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