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3.研究枠組みと仮説

限られたメンバーへの情報開示だけでなく、不特定多数への情報発信も有力な手段とな り、異なる効果が得られる(山内・米山・三井, 2017; 真鍋・米山, 2017)ことから仮説 3 を次のように設定した。

H3 情報発信には不特定多数への情報発信とソーシャル・ネットワークの特定の関係 者への情報発信があり、その効果に違いがある。

知識・専門を補完するメンバーおよびネットワーク、影響力・情報のある人物やステー クホルダーとの人脈といったソーシャル・ネットワーク(Wang, Ellinger and Wu, 2013;

Caniëls et al., 2014; Stevens, 2014; 大谷・名取, 2016; 水野, 2018; 岸本, 2017)と開発に必 要な資金や人材、外部の技術やアドバイス、情報などの資源を調達できる能力(Stevens, 2014; Rothwell et al., 1974; Caniëls et al., 2014)、および、情報、アイデア、技術、知識を 共有し結合する知識結合能力(Carmeli and Azeroual, 2009; Ruiz-Jimenez,

Fuentes-Fuentes and Ruiz-Arroyo,2016; Enkel, Gassmann and Chesbrough, 2009; 岸本, 2017)が新 製品コンセプト創造の促進要因となる。このとき、資源創出は保有資源を新たな機会・ニ ーズに適合するように用役を変えたり組み合わせたり補完的資産を加えたりすることであ り、保有資源が前提にある。ソーシャル・ネットワーク、資源調達能力はその保有資源で ある。情報発信はニーズ把握、機会認識に重要な役割をしている。これらのことから、保 有資源であるソーシャル・ネットワーク、資源調達能力が前提となり、情報発信によるニ ーズ把握、機会認識を通して、知識結合能力が発揮され、新製品コンセプト創造および新 製品開発が促進されるのではないかということから、仮説 4、仮説 5、仮説 6 を次のよう に設定した。

H4 ソーシャル・ネットワークは情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち新 たな資源の創出を促進する。

H5 資源調達能力は情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創 出を促進する。

H6 知識結合能力は新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創出を促進する。

また、情報発信、資源調達、ソーシャル・ネットワーク、知識結合能力が新製品コンセ プト創造をどのようなメカニズムで促進するのかについて考察する。

仮説と要因の関係を図 9 に示した。要因間の矢印と添えた H1~H6 が各仮説の関係を示 している。

図 9 仮説と要因の関係を示す図

ここで本研究における因子、用語について整理しておく。

新製品コンセプトは市場、ニーズとそれに適合する技術シーズ、資源を組み合わせて、

コスト、販売方法等をおおよそ見積もりしてできた、事業化できそうな新製品や新サービ スの案とする。新製品コンセプトは、野中・紺野(2003)のいうコンセプトにあたる市 場・ニーズについての新たな観点、技術シーズ、資源への新たな観点その他の情報を組合 わせて結合してできる(Stevens, 2014; Herstatt et al.,2004; R. Rothwell 他, 1974; 中原, 2011; 野中・紺野, 2003)。

情報発信は自社の商品、技術等について積極的に開示することとする(山内・米山・三 井, 2017; 名取,2013; 大谷・名取, 2016)。

ソーシャル・ネットワークの特定の関係者は顧客、取引先、地域、業界、専門家や情報 が集まる人物などのネットワークの関係者とする(Wang et al.,2013; 大谷・名取, 2016)。

不特定多数はそれまでつながりがない顧客になってほしい相手とする(山内・米山・三 井, 2017)。

資源創出は、保有しているが十分活用されていない資源や他の用途に用いられている資 源を把握、理解して、用役を変えたり組み合わせたり補完的資産を加えたりして、環境や 新たな機会に適合させ、新たな戦略を競争優位に実行するための資源とすることである

(Bowman and Collier, 2006; Zook(山本・牧岡訳), 2008; 福嶋・権, 2009)。

資源調達能能力は新製品コンセプトの創造から新製品の開発・市場導入に必要な人材、

資金、技術、工場・設備、原材料、販売ルート等を各種補助金や公的機関等の支援活用を 含めて社内外で調達できる能力とする(Stevens, 2014; Rothwell et al., 1974; Caniëls et al., 2014)。

ソーシャル・ネットワークは顧客との関係、取引先との関係、社会的、専門職的な関 係、情報の集まる人物との信頼関係といった関係とする(Wang, Ellinger and Wu, 2013;

Caniëls et al., 2014; Stevens, 2014; 大谷・名取, 2016; 水野, 2018; 岸本, 2017)。

知識結合能力は組織メンバーが情報、アイデア、技術、知識を交換、共有し結合するこ とのできる程度とする(Carmeli and Azeroual, 2009; Ruiz-Jimenez, Fuentes-Fuentes and Ruiz-Arroyo,2016; Enkel, Gassmann and Chesbrough, 2009; 岸本, 2017)。

新たなニーズはそれまで知らなかった思いもよらない異分野の用途のニーズとする。

シーズはニーズを満足させるために必要な技術その他の資源とする。

4.研究方法