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博 士 論 文

製造業中小企業の新製品コンセプト開発への

情報発信の効果について

- 資源創出理論の視点からの分析 ―

Effect of information dissemination on

new products development of manufacturing SMEs

from resource-creation view-)

2019 年 9 月

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科

テクノロジー・マネジメント専攻博士後期課程

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立命館大学審査博士論文

製造業中小企業の新製品コンセプト開発への

情報発信の効果について

- 資源創出理論の視点からの分析 ―

Effect of information dissemination on

new products development of manufacturing SMEs

from resource-creation view-)

2019 年 9 月

September 2019

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科

テクノロジー・マネジメント専攻博士後期課程

Doctoral Program in Technology Management

Graduate School of Technology Management

Ritsumeikan University

大谷 隆児

OTANI Ryuji

研究指導教員:名取 隆 教授

Supervisor:Professor NATORI Takashi

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要旨 製造業中小企業が限られた資源を用いて環境変化に対応して新製品という新たな経営資 源を創出することは重要な課題の一つである。現在の商品や技術についての情報発信が、 新製品を開発する際に必要な、新たな市場、ニーズや機会についての情報を得るのに役立 つのではないか、限られた資源から新製品という新たな資源を創出するのに役立つ要因と メカニズムを知りたい、というのが問題意識である。新製品開発の成功には、新製品コン セプトの創造と情報発信、ソーシャル・ネットワーク、資源調達能力、知識結合能力が有 用であることは先行研究により示されている。しかし、その促進メカニズム、および、資 源創出の際の情報発信の役割については十分に研究されていない。そこで、製造業中小企 業の新製品開発という資源創出活動において、情報発信がその他の要因とどのようなメカ ニズムで新製品開発に寄与するのかについて仮説検証し、資源創出の視点から情報発信の 効果を明らかにすることを本研究の目的とした。 アンケート調査を行い PLS-SEM を用いた定量分析を行うとともに、ケース・スタディ による定性分析を組み合わせて仮説の検証とメカニズムの考察を行い、資源創出の視点か らの考察を加えた。 その結果、情報発信から新たなニーズや機会が得られ、新製品コンセプト創造が促進さ れること、ソーシャル・ネットワークと資源調達能力は情報発信を介して新製品コンセプ ト創造を促進すること、知識結合能力は新製品コンセプト創造を促進すること、創造され た新製品コンセプトが新製品開発の成功を促進することが検証された。また、特定の関係 者への情報発信ではニーズだけでなく顧客やシーズ情報も合わせて得られることがあっ た。 情報発信への反響には現製品に関する案件だけでなく、現製品で対応できない案件も含 まれる。その現製品で対応できない案件に着目することが重要で、そこから、新たな市 場、顧客、ニーズを発見し把握することが可能となることが示された。新たなニーズ情報 を把握することで、保有する資源の価値を見直すことができる。そのように視点を転換さ せる触媒として情報発信が作用し、ソーシャル・ネットワークを活用して資源調達能力を 発揮し、得られた知識や資源を保有資源と組み合わせて結合する知識結合能力により新た な市場に向けた新製品コンセプトの創造、新製品開発、すなわち資源創出を促進するとい うメカニズムが明らかになった。

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Abstract

For small-to-medium-sized manufacturers, resource creation through development of new products is an important issue. When developing a new product, it is necessary to obtain information on new markets, needs and opportunities. The research questions of this study are how the dissemination of information on current products and technologies encourages obtaining information on new markets, needs and opportunities, and what factors and mechanisms promote resource creation.

The purpose of this study is to examine how information dissemination, social networks, resource procurement ability and knowledge combination capability affect the new product development of small-to-medium-sized manufacturers, and to determine the mechanisms regarding how the information dissemination promotes new product development and resource creation.

The author conducted a questionnaire survey and quantitative analysis using PLS-SEM, as well as case studies.

The results are as follows: Information dissemination attracts new needs and opportunities and promotes the creation of new product concepts; social networks and resource procurement ability promote the creation of new product concepts through information dissemination; knowledge combination capability also promotes creation of new product concepts; the new product concept promotes the success of new product development; and there are differences in effectiveness between disseminating information to an unspecified large number of people and to specific stakeholders of social networks.

In addition, among the responses to information dissemination, it was found to be important to focus on the inquiries to which the current product does not fit. From such inquiries, it is possible to discover and obtain information on new markets and new needs in different fields that may not have been known before. Therefore, information dissemination functions as a catalyst for discovering new merits in resources and promotes the process of resource creation. Furthermore, information dissemination plays an important role in the development of new products for new markets based on resources possessed.

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目次

1.序 ... 1 1.1 背景と問題意識 ... 1 1.1.1 製造業中小企業の位置付け ... 1 1.1.2 製造業中小企業を取り巻く環境の変化 ... 1 1.1.3 環境変化への対応 ... 4 1.1.4 製造業中小企業の特性と新製品開発の課題 ... 5 1.1.5 問題意識... 6 1.2 研究目的 ... 8 2.先行研究レビュー ... 9 2.1 新製品開発と促進要因 ... 9 2.1.1 新製品開発プロセスと新製品コンセプト ... 9 2.1.2 新製品コンセプト創造の促進要因 ... 10 2.2 資源創出の理論 ... 14 2.2.1 リソース・ベースト・ビュー(RBV) ... 14 2.2.2 資源創出の理論について ... 15 2.2.3 重要な資源の一つである知識の創造について ... 19 2.2.4 重要な資源の一つである組織能力の構築について ... 19 2.2.5 資源創出の理論についてのまとめ ... 20 2.3 先行研究のまとめ ... 21 3.研究枠組みと仮説 ... 26 3.1 研究枠組み ... 26 3.2 仮説の導出 ... 26 4.研究方法 ... 30 4.1 研究方法について ... 30 4.2 アンケート調査の方法 ... 30 4.2.1 アンケート質問票 ... 30 4.2.2 調査対象... 32 4.2.3 アンケート実施方法と有効回答 ... 32 4.3 アンケート結果の分析方法 ... 32

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4.3.1 PLS-SEM(Partial Least Squares Structural Equation Modeling) について ... 33 4.3.2 PLS-SEM を選定した理由 ... 33 4.3.3 PLS-SEM の分析と評価 ... 34 4.4 インタビュー調査に基づくケース・スタディの方法 ... 35 4.4.1 調査対象の選定 ... 35 4.4.2 インタビュー方法の選定 ... 36 4.4.3 インタビュー調査のプロトコルと検証の基準 ... 37 5 結果 ... 39 5.1 アンケート調査の定量分析結果 ... 39 5.1.1 観測データの統計量 ... 39 5.1.2 PLS-SEM 分析の結果と評価 ... 40 5.1.3 PLS-SEM 分析結果からの発見事項、確認事項 ... 44 5.1.4 制御因子の影響についての相関分析結果 ... 44 5.2 インタビューの結果と定性分析 ... 45 5.2.1 三郷金属工業株式会社のインタビュー内容 ... 45 5.2.2 チトセ工業株式会社のインタビュー内容 ... 48 5.2.3 インタビュー内容の定性分析による仮説の検証... 50 5.2.4 インタビュー内容の定性分析からの発見事項と確認事項 ... 60 6.考察 ... 66 6.1 メカニズムについての考察 ... 66 6.1.1 メカニズムの説明と考察 ... 66 6.1.2 情報発信の役割、もたらす効果 ... 68 6.1.3 メカニズムを発現させるために重要な点 ... 68 6.2 資源創出の理論の視点からの考察 ... 69 7.結論 ... 72 7.1 仮説検証と発見事項について ... 72 7.2 情報発信が新製品コンセプト創造を促進するメカニズムと資源創出の理論への知見 について ... 73 8.貢献と限界および残された課題 ... 75 8.1 学術的な貢献 ... 75

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8.2 実践的な貢献 ... 75 8.3 限界 ... 76 8.4 今後の課題 ... 76 謝辞 ... 78 参考文献 ... 79 付属資料 ... 87

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1.序 1.1 背景と問題意識 1.1.1 製造業中小企業の位置付け 中小企業基本法では、製造業の場合、資本金 3 億円以下または従業員数 300 人以下の企業 を中小企業と定義している。従業員 4 名以上の製造業の事業所のデータを集計している、 経済産業省の工業統計調査(2016)によると、従業員 4 名以上 299 名以下の製造業企業の 2014 年の事業所数は約 20 万事業所で従業者数は約 507 万人、製造品出荷額は約 150 兆円 である。事業所数では製造業全体の 98.4%を占め、従業者数で 68.4%、製造品出荷額でも 48%を占める。この統計数字から製造業中小企業は日本のモノづくりを担い、雇用を維持す る非常に重要な位置を占めていることがわかる。 1.1.2 製造業中小企業を取り巻く環境の変化 製造業中小企業を取り巻く環境は変化している。図 1 は日本国内の製造業事業者について 従業者規模別に 2000 年から 2014 年の事業所数の変化を表したグラフである。図2は同様 に従業者数の変化を、図 3 は同様に製造品出荷額の変化を表したグラフである。図 1~図 3 は経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し作成した。この経済産業省の 工業統計調査(2002, 2016)によれば、従業員 4 名以上 299 名以下の製造業企業について、 2000 年から 2014 年までの 14 年間で事業所数は約 34 万事業所から約 20 万事業所へ約 41% 減少し、従業者数は約 667 万人から約 507 万人へ約 24%減少し、製造品出荷額は約 154 兆 円から約 146 兆円へ約 5%減少している。同じ期間に従業員 300 名以上の製造業企業では、 事業所数が約 3400 事業所から約 3200 事業所へ約 5%減少し、従業者数は約 251 万人から 約 234 万人へ約 7%減少したが、製造品出荷額は約 146 兆円から約 159 兆円に約 8%増加 したことと比べると、製造業中小企業の変化が大きいことがわかる。 モノづくりのグローバル化進展(2015 年版中小企業白書, 2015)などの外部環境変化や経 営者の高齢化と後継者問題(2017 年版中小企業白書, 2017)といった内部環境の変化の影響 を受けているのである。従来は、大企業と中小企業との間に相互依存関係が存在し、受託加 工を事業の中心にしてきた中小企業は、大企業が市場から獲得してきた需要の恩恵を享受 していた。しかし、グローバル化の進展等を背景に、大企業と中小企業との間の相互依存関 係は希薄化し、中小企業は自ら市場と向き合い、需要を獲得する必要に迫られているのであ る(2015 年版中小企業白書, 2015)。

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図 1 従業者規模別事業所数の変化 (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成) 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 4人~299人 300人~499人 500人~999人 1000人以上 (所数)

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図 2 従業者規模別従業者数の変化 (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成) 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 9,000,000 10,000,000 4人~299人 300人~499人 500人~999人 1000人以上 (人)

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図 3 従業者規模別製造品出荷額の変化 (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成) 1.1.3 環境変化への対応 人口減少に伴う総需要の縮小、消費者ニーズの多様化、モノづくりのグローバル化進展、 大企業と中小企業・小規模事業者との間の相互依存関係の希薄化といった環境変化は、構造 的なものである。したがって、中小企業が持続的に企業体を維持し、発展するためには既存 事業の枠組みにとらわれず、変化する顧客のニーズをとらえた新たな製品やサービス、新た な事業を創造することが必要となっている(小川・西岡, 2012; 2017 年版中小企業白書, 2017)。 0 50,000,000 100,000,000 150,000,000 200,000,000 250,000,000 300,000,000 350,000,000 400,000,000 4人~299人 300人~499人 500人~999人 1000人以上 (百万円)

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1.1.4 製造業中小企業の特性と新製品開発の課題 池田(2012)は製造業の中小企業を、独立型と受注生産型に分類し、さらに、受注生産型 を親企業との取引関係が対等かどうかと親企業からの要求に対する反応によって自律型、 自立型、狭義の下請けの3つに分類した。独立型中小企業は自社ブランド製品を持つ企業で ある。自律型の中小企業は親企業から関係特殊的技能の形成や品質・コスト・納期について 要求された際に、前向きに受容しその中で自社の技術力を高め、価格決定権を握り、親企業 との対等の取引ができる受注生産型の企業である。自律型の受注生産型中小企業は、技術力 を背景に親企業に対して良好な関係性を構築し、親企業に対して技術的な提案を行い、納入 した部品が親企業の製品の品質改善やコストダウン等に寄与するような積極的貢献活動を 行う。自立型の中小企業は、かなりの程度高い技術力をもっているが、親企業との取引関係 が対等でない受注生産型の企業で、親企業から関係特殊的技能の形成や品質・コスト・納期 について要求された際に、取引しないことで対抗できる企業である。これらの受注生産型の 場合は複数の取引先を持つことも多く、取引先によって自律型と自立型を使い分けている。 狭義の下請け企業は、特定親企業との取引が中心で、⾧期継続的取引の下で親企業の求める 技能(関係特殊的技能)の形成が図られる。他社との差別化ができない下請け企業は親企業 からの取引停止に追い込まれる。技術力を高め、価格交渉力を持つようになることで、狭義 の下請けから自立型、自律型へあるいは独立型へ移行することも可能であるが、受注生産の 部分を残すことが多いと指摘している。また、示された調査結果では独立型中小企業は調査 対象の中小企業の約 3 割で、受注型の方が多い。また、独立型中小企業の半数以上は独自技 術を持っていたり、研究開発に取り組んだりしているいるが、商品企画提案力を持つ企業は 4 割強で、新市場開拓の取組を行っている企業は 3 割強である。これは、いずれも受注生産 型よりは割合が高いという結果である(池田, 2012)。 2017 年版中小企業白書によると、新製品開発は中小企業の成⾧に寄与するが、約 76%の 企業は実施していない。その理由として新製品開発にあたって、次の3点が指摘されている。 ①資源の課題:必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している、必要なコストの負担が 大きい。 ②機会認識の課題:市場ニーズの把握が不十分、自社の強みを生かせる事業の見極めが難 しい。 ③市場開拓の課題:販路開拓が難しい、自社の製品・サービスの情報発信が不十分である。 これらの課題に加えて、新製品開発を実施してもその内およそ 70%は成功していないこと

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も指摘している(2017 年版中小企業白書, 2017)。 以上の様に、製造業中小企業にも自社ブランド製品を持つ企業はあるものの、総じて独自 技術、研究開発能力、商品企画提案力、新市場開拓力といった資源が不足している場合が多 い。そのため、新製品開発、販路開拓が必要な状況になっても、人材その他の資源不足で市 場ニーズ調査・機会認識ができない、販路もわからないので新製品開発に投資できない、と いういわば三重苦、負のスパイラルの状況がある。この状況を図 4 に概念図として示した。 図 4. 製造業中小企業の新製品開発の課題の概念を示す図 1.1.5 問題意識 製造業中小企業が限られた資源をもちいて環境変化に対応して新製品という新たな経営 資源を創出することは重要な課題の一つである。 保有する資源を活用できる新たなニーズ、市場についての情報はどのようにすれば得られ るのかという課題への対応策として、「お悩み聞き型問題解決サービス」が提案されている。 岸本(2012)は、日本の機械産業の B to B 型の中企業のインタビュー調査から、「汎用性の 高い」部品・装置・作業という切り口で事業ドメインを設定し、それらを用いる顧客に「お 悩み聞き型問題解決サービス」をリーズナブルな価格で供給し差別化していく戦略が有効 であることを指摘した。そのためには、次の3点が必要になる。 ① 顧客の特異的な細かいニーズを把握する。 ② 保有する知識・技術を利用し、既存の製品では対応できない「お悩み」を実現可能にす る。何としても期日までに納品するという強い圧力から、未知の知識・技術獲得し、ゴ ールに辿り着く。 ③ ①②の経験を通じて知識・技術を蓄積する。その結果、お悩み解決に必要な知識・技術 の効率的利用と効果的蓄積のスパイラルを生じる。

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また、「汎用性の高い」ことを考慮して事業ドメインを設定することで、特定の産業、特定 の地域等の栄枯盛衰に依存せず、顧客の産業や地域をシフトできるとしている。コア事業で 持続的な競争優位を構築し、⾧期存続が可能となるのである。この戦略は、保有資源に立脚 しており、保有資源を活用でき、顧客とニーズが明確である。そのため、中小企業白書で挙 げられた機会認識の課題である、市場ニーズの把握と自社の強みを生かせる事業の見極め に有用である。ただし、設定した事業ドメインに、継続して需要があることが前提条件とな る。 ものづくりの海外シフト、第四次産業革命等の環境変化により、その前提条件である需要 が縮小した場合には、新たな顧客・市場に現製品の販路を広げていくか、新たな市場に向け た新製品を開発、販売していくことが求められる。保有する資源を活用できる、新たな市場 やニーズと機会についての情報はどのようにすれば得られるのかが改めて課題となる。 保有する資源を活用できる新たな市場、ニーズや機会についての情報を得るのに、プル戦 略マーケティング(税所, 2004 等)である現在の商品や技術についての情報発信が役立つの ではないか、新たな市場、ニーズ、機会の情報が得られれば適合する資源を調達して新製品 開発を実施し成功できるのではないかというのが本研究の問題意識である。これを図 5 の 右半分に概念図として示した。図 5 の左半分に図 4 のいわば三重苦、負のスパイラルの状 況の概念図を再掲したが、この状況を現製品についての情報発信をきっかけに新製品開発 を成功させるスパイラルアップへ変えていけるのではないかということを概念図として示 した。また、その新たなニーズに適合する新たな資源を調達し、限られた資源から新製品と いう新たな資源を創出するのに役立つ要因とメカニズムを知りたい、というのが本研究の もう一つの問題意識である。 図 5 製造業中小企業の新製品開発の課題と解決策案の概念を示す図

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1.2 研究目的

上述の背景、問題意識から、製造業中小企業の新製品開発という資源創出活動において、 情報発信がソーシャル・ネットワーク、資源調達能力、知識結合能力とどのようなメカニズ ムで新製品開発に寄与するのかについて仮説検証し、資源創出の視点から情報発信の効果 を明らかにすることを目的とする。

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2.先行研究レビュー 2.1 新製品開発と促進要因

2.1.1 新製品開発プロセスと新製品コンセプト

新製品開発のプロセスは、図 6 の様に情報収集して機会(opportunity)を識別し、アイデ ア生成と評価をして新製品コンセプトを創造し、開発計画立案等を行い、開発の意思決定を して、開発段階に進む(Herstatt, Verworn and Nagahira, 2004;Khurana and Rosenthal, 1997 等)。その中で、機会の識別から開発計画の立案までの段階はファジー・フロント・エンド と呼ばれる。このファジー・フロント・エンドにおいて、市場、顧客とそのニーズや期待、 製品が備える競争力のある機能や提供価値、開発プロセス、および開発に必要な資金や人材 などの資源の調達のし方についての不確かさ、曖昧さを削減してから開発ステップに移行 することが重要である(Stevens, 2014;Herstatt et al.,2004)。

また、ユーザーニーズを精確に把握しそれを満足させること、マーケティングと宣伝広告 に注力すること、開発業務を効率的に実施すること、関心のある特定のエリアで外部の技術 やアドバイスを有効活用すること、高位で権力のある人物(発明者、事業イノベータ、最高 経営責任者、プロダクト・チャンピオン)が責任を持つことが、新製品開発を成功させるに は重要である(Rothwell, Freeman, Horlsey, Jervis, Robertson and Townsend, 1974)。さら に、顧客のニーズに合致し、独自で優れ、非常にイノベーティブで高品質な製品であること、 顧客のニーズと要望や値ごろ感、市場規模の可能性、バイヤーの行動や競合といった市場の 重要な側面を深く理解した市場の知識を持ちマーケティングに堪能であること、技術と生 産の相乗効果と熟達が新製品開発の成功に重要である(Cooper, 1979)。 ファジー・フロント・エンドにおいて創造する、新製品コンセプトについて、中原(2011) は、開発前の段階で、どのような市場ニーズに対してどのような技術シーズを適用して製品 を開発するかの基本思想であるとした。より具体的には、提供する製品がどのような人に、 図 6 新製品開発のステップ

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どのような状況において使用することで、どのような利便性を付与するのか、その製品特性 を一般化するために短い文言などにより分かりやすく象徴的に表した製品全体を貫く基本 思想である。そして製品の販売戦略や具体的なプロモーションのアイデアなどを表した商 品コンセプトを包含したものとして製品コンセプトを扱った。また、製品コンセプトは、開 発に係る問題解決のプロセスにおける基本方針、意思決定の基準としての役割、技術ポテン シャルを様々なニーズに適用し一つの製品としてまとめ上げる開発指針、将来展開する製 品の開発方途を予め示す役割、ユーザーニーズや利用可能な技術動向といった情報を製品 開発へ集約し、翻訳していくといった役割を担うことを示した。さらに、製品開発の不確実 性を低減するためには、上述のような製品コンセプトの策定のあり方が重要な課題となる と指摘した。 ファジー・フロント・エンドにおける新製品コンセプト創造のための、このような「探索」 の活動は組織の強みを創造するために必要で、保有する既存の知識や強みを深耕すること で効率的に成果を上げる「活用」と、両立させていくことが、組織が中⾧期的に存続するた めに必要とされている。しかし、「探索」を追及するには組織スラックや実験的な試行錯誤 が必要であり、コストや失敗するリスクが伴う(March, 1991;山岡, 2016 等)。 以上の内容から、曖昧さを削減し、市場・顧客・ニーズ、製品の機能・提供価値、開発プ ロセス、資金や人材などの資源の調達を明確にした新製品コンセプトを創造することが重 要になることが示された。資源や組織スラックが限られた製造業中小企業にとっては、保有 資源を活用できる新製品コンセプトを、コストとリスクを最小限に抑制して、創造できるこ とが望まれる。次に新製品コンセプト創造を促進する要因について先行研究をレビューし ていく。 2.1.2 新製品コンセプト創造の促進要因 (1)情報発信について 山内・米山・三井(2017)は、アウトバウンド型オープン・イノベーションにおける知識 の開示は、開示した技術・ノウハウに対するニーズや活用方法等の情報などのフィードバッ クを受け、外部からの知識・アイデアを取り込むことで、イノベーションの有効性や効率性 を高める効果を持つことを示した。その際、限られたメンバーへの開示より、対象を限定し

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ない幅広い開示の方が技術機会やプロジェクト評価が高い傾向にあることも示した。また、 真鍋・米山(2017)は、アウトバウンド型オープン・イノベーションにおいて、新たなニー ズを把握し用途開発を行うためには、保有技術を他者が容易に理解できるようにして積極 的な情報発信をすることが重要な役割を果たすことを指摘した。その際、既存顧客への情報 発信だけでなく展示会での不特定多数への情報発信も有力な手段となることも指摘した。 さらに、児玉(2017)は、オープン・イノベーションにおいて、大手企業が自社のニーズに 合う技術を持つ中小企業を産業クラスターで探索する際、連携の成立確率は大手企業が自 社のニーズ情報を公開しない場合より自社のニーズ情報を公開する場合の方が高いことを 示した。すなわち、インバウンド型のオープン・イノベーションにおいても技術シーズを探 索するのに情報開示が有効であることが示唆された。 名取(2013)は、技術マーケティングにおいて自社技術をできるだけ「見える化」してウ ェブサイトを活用して情報発信し潜在顧客から「探し当てられる」よう仕向ける戦略は有効 であることを示し、潜在的ニーズを把握できた事例も示した。また、大谷・名取(2016)は、 新規事業、新製品開発への取り組みについての情報開示の程度が、機会の認識にプラスの影 響を与えることを指摘した。 一方で、情報発信に関係する課題も示されている。真鍋・米山(2017)は、情報発信を活 用したアウトバウンド型オープン・イノベーションでは、技術の応用可能性、すなわち他社 による活用のしやすさと顧客に合わせて応用開発することと、他社に模倣されないように 特許によるプロテクトをすることが重要であると示した。亀岡(2008)は、開発を中断した 技術に関する特許が競合他社の開発のヒントとなり、さらにその他社が開発した技術の特 許が自社にフィードバックされて開発を再開し、熾烈な競争をして成功した事例を研究し、 特許での技術の開示による「協力関係にない企業間の研究成果の移転」が新製品の開発成功 に寄与することを示した。児玉(2017)は、大手企業が外部の技術や知識を探索する際、自 社の課題や必要な技術等のニーズ情報を開示すると競合企業に技術開発、製品開発の方向 性を察知されるリスクがあり、そのリスクがインバウンド型オープン・イノベーションの障 害となることを示唆した。名取(2013)は、先述の技術の「見える化」について、模倣リス クがあること、模倣を防ぐためには製造プロセスを開示しないこと、そして開示すべき内容 は加工後の部品などの製品事例やサンプルなどであると示している。また、特化した技術の 説明困難性と顧客が限定的であることも課題であり、顧客の問題を解決する提案力および その為の社内体制整備の必要性を指摘した。以上より、情報発信には2つの課題があること

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がわかる。一つは模倣リスクが伴うことであり、特許によるプロテクトは重要であるが、そ れだけでは不十分な場合もあることである。もう一つは、技術をわかりやすく説明して他社 が応用しやすくすることである。 情報発信についての先行研究からの知見をまとめると、情報発信は新製品コンセプト創造 に必要な市場・ニーズや機会の情報を得るのに有効であること、限られたメンバーへの情報 発信と、対象を限定しない不特定多数への情報発信ではその効果に違いがあること、模倣リ スク回避のための配慮対策が必要であること、わかりやすく説明する情報発信が求められ ることが示された。 (2)ソーシャル・ネットワークと資源の調達能力について

Caniëls, Stobbeleir and Clippeleer(2014)は、組織の従業員の創造活動において、前提と なる個人特性、報酬、グループ(チーム)構成、リーダーシップ、組織の資源が果たす役割 が、創造的プロセスであるアイデア生成段階、アイデア・プロモーション段階、実行段階の 各段階によって異なることを示した。具体的には、アイデア生成段階では創造性、経験への 素直さなどの個人特性、促進支援型のリーダーシップ、知識・専門を補完するメンバーと挑 戦的アイデアを安心して話せるチーム、情報資源などが重要である。アイデア・プロモーシ ョン段階では、忍耐、コミュニケーション力といった個人特性と補完するネットワークを持 つことが必要であり、影響力のある人物との人脈、評価され信頼されているリーダー、組織 構造の見える化が有効である。逆に報酬はアイデア・プロモーションを阻害する。アイデア 実現段階では、柔軟性、目的志向、結果重視などの個人特性、上下関係のリーダーシップ、 専門家を含み役割分担した強いチーム、資金、時間、コンピテンシーといった資源が有効で あることを示した。アイデア生成とアイデア・プロモーションの段階で新製品コンセプトは 創造され、そこにはソーシャル・ネットワーク(知識・専門を補完するメンバーおよびネッ トワーク、影響力のある人物との人脈)、情報資源が重要な役割を果たすことがわかる。

Wang, Ellinger and Wu(2013)は、機会認識と R&D プロジェクトの成功に、現顧客また は顧客候補との関係、サプライヤー、販売業者、製造業者との関係、社会的、プロフェッシ ョナルとしての関係といったソーシャル・ネットワーク、個人の自己効力感、従前の知識、 環境についての認知力が効果を持つことをアンケート調査の分析から示した。Stevens (2014)は、インタビューの分析から、クライアントの知識を使うこと、マネージャが製

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品、マーケット、プロセス、資源といった分野に広がる個人的ネットワークを使って必要な 能力を持つ人を非公式に集めること、および関係者の能力を十分使えるようにする組織の 柔軟性が有効であることを指摘した。大谷・名取(2016)は、ソーシャル・ネットワークに おける情報が集まる人物との信頼関係の程度が情報開示の程度とともに新製品開発の機会 の認識にプラスの影響を与えることを指摘した。 水野(2018)は製造業中小企業の事例研究から、保有資源を生かして新たな事業展開をし ていく戦略を技術ストレッチ戦略、技術スライド戦略、顧客フィクスト戦略の 3 つに整理 した(詳細後述)。技術スライド戦略では、ステークホルダーからもたらされた情報やニー ズをもとに異なる事業領域へ展開するディマンド・プル型が有効であることを指摘した。そ の際、ステークホルダーからの情報が極めて重要であり、ステークホルダーとの関係構築、 人脈や紐帯(Granovetter, 1973, 1974, 1985)の構築がカギとなるとした。 岸本(2017)は、事例研究から、大学・研究機関、企業との連携と共同研究開発のネット ワークに加え、インテグレーション(総合化)能力と実用化(製品化)能力の重要性を指摘 した。インテグレーション能力とは、基礎技術を土台に、新製品の開発・製造に必要とされ る様々な要素技術を掌握しており、さらに優秀な研究者とのネットワークを活用して、先端 的な製品を開発できる能力を指す。実用化(製品化)能力とは、耐久性、サイズ、重量、コ スト、多様なパーツの選択肢、使い易さを考慮しつつ、必要なスペックを満たす最適解を見 つけ出す能力を指している。このようにして新製品を成功させることで、シーズとニーズの 流入、および顧客・パートナー増加へ、そしてさらなるネットワークの拡充へと繋がること を示した。 以上より、開発に必要な資金や人材などの資源の調達(Stevens, 2014)、関心のある特定 のエリアにおける外部の技術やアドバイスの有効活用(Rothwell et al., 1974)の様に必要な 資源を内部または外部から調達できる能力が、新製品コンセプトを創造し新製品開発を成 功させるには重要であることが示唆される。また、ソーシャル・ネットワークが、機会につ いての情報を含む情報資源の源として機能することと新製品コンセプト創造、新製品開発 の成功に重要であることが示唆された。 (3)知識結合能力について

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関係性資産(Relational capital)が先進技術を使う製品の開発のパフォーマンスの促進要因 となることを示した。知識結合能力とは組織メンバーが交換した情報を吸収し結合するこ とのできる程度のことで、情報、アイデア、専門技術、知識を共有し結合することに熟達し ているかどうかで測られる。また、Enkel, Gassmann and Chesbrough(2009)によれば、オ ープン・イノベーションでは顧客、サプライヤー、その他のパートナーを製品開発の中心に 引き入れるが、イノベーションの重要な源の一つは他業界の会社である。なぜなら多くのイ ノベーションは既存の知識、コンセプトおよび技術の再結合をベースにするからで、他業界 で確立された解決策は製品開発を強化しリスクと不確実性を削減すると示唆した。岸本 (2017)が重要としたインテグレーション(総合化)能力は保有知識に新たに得た情報を統 合して製品を開発できる能力である。 以上より、保有知識と新たに得た情報やアイデア等の知識を吸収し結合する知識結合能力 が新製品開発の促進要因となることが示唆された。 (4)新製品コンセプト創造の促進要因についての先行研究からの知見のまとめ 以上の先行研究レビューから、新製品コンセプト創造には情報発信(山内・米山・三井,2017; 真鍋・米山, 2017 など)、ソーシャル・ネットワーク(Stevens, 2014; Caniëls et al., 2014; 水 野, 2018 など)、 資源調達能力(Stevens, 2014; Caniëls et al., 2014; 岸本, 2017 など)、知 識結合能力(Enkel, Gassmann and Chesbrough, 2009; Carmeli and Azeroual, 2009 など)と いった要素が有用であること、特に情報発信がニーズ把握と機会の認識に有効であること が示唆された。しかし、これらの要因がどのように関係して新製品コンセプト創造に影響す るのかは十分研究されてはいないことがわかる。 2.2 資源創出の理論 2.2.1 リソース・ベースト・ビュー(RBV) Penrose(日高訳, 2010)は、資源は、企業が購入したり貸借したり自らの使用のために生 産したりする物的な資源と、それらを企業にとって有用化するために利用可能な人的資源 を含むとした。サービスとは、企業の生産活動に対してこれらの資源が果たしうる貢献であ るとした。まったく同じ資源が、異なる目的や方法で用いられたり、異なるタイプや量の別 の資源と組み合わせて用いられたりすると、異なるサービスないしサービスの集合をもた

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らし、これが個々の企業の独自性の主な源泉となるとした。

Barney(岡田訳, 2003)は、企業の経営資源(firm resource)とは、全ての資産、ケイパビ リティ(能力)、コンピタンス、組織内のプロセス、企業の特性、情報、ナレッジなど企業 のコントロール下にあって、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり実行し たりすることを可能にするものであるとした。経営資源には金銭的資源である財務資本、技 術、工場・設備、立地、原材料へのアクセスなどの物的資本、人材育成訓練、個々のマネー ジャや従業員の保有する経験、判断、知性、人間関係、洞察力などの人的資本、企業内部の 公式な報告ルートを反映した組織構造、計画、管理、調整のシステム、企業内部のグループ 間での非公式な関係、外部企業との関係などの組織資本が含まれるとした。さらに、経営資 源とケイパビリティは同義語として扱い、その企業の保有する経営資源やケイパビリティ が、経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)をもち、その経営資 源を活用するために、方針や手続きが整っている組織(Organization)が競争優位となると した。 石川(2006)は、RBV において競争優位に介在する資源が,どのようにして形成されたの か,いかにして戦略的に効率的なものになったのか,どこからもたらされたのかについて十 分に解明してきたとはいえず、競争優位の源泉が何であるかについて曖昧さを残している ことを指摘し、競争優位を獲得するかどうかは企業家的判断の差異にあるとした。例えば、 カーズナー(Kirzner, 1973)を引用し、企業家は企業家的「機敏性(alertness)」によって、 市場における価格差をどこで発見するか,いかにして利潤機会の可能性を開くのかについ ての知識を得、既存の価格間の不一致に根ざす利潤機会を発見するとした。戦略的機会は, 企業家が形成する様々異なった主観的期待に起因し、その機会をとらえて競争優位を確保 する理想的な資源配分を実現するというのである。 2.2.2 資源創出の理論について (1)資源創出のメカニズムとプロセスについて

Bowman and Collier(2006)は、RBV は競争優位への資源の重要性について価値ある洞察 を示したが、資源創出についてはあまり注目されていないことを指摘し、先行研究のレビュ ーから 1)運(luck)、2)資源採取(resource picking)、3)内部開発、4)アライアンスの 4 つのメカニズムで資源が創出されることを提示した。1)運(Luck)は、企業が将来の価値 を知らずに偶然に獲得または創出した資源が、予期せずレントを生み出すようになること

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である。その資源の価値は、適切な補完的資産(complementary resource)のコントロール、 資源の独自性、競合の不在などの条件の影響を受ける。2)資源採取とは、他の企業と異な る将来ビジョンを持ち、真の将来の価値よりも安く資源を獲得することである。将来を予知 し、市場情報を収集し評価できること、あるいは可能性を持つ資源を多く獲得することで可 能となる。3)内部開発においては、資源創出プロセスが特異であれば他社が模倣できない ような特異な資源にできる。4)アライアンスによって2つの資源を組み合わせることで、 いずれかを発展させるかまたは新しい資源を創出できる。 Zook (山本・牧岡訳, 2008)は、⾧年の間に自然に蓄積して、すでに自社が所有している が、その価値や性質、可能性が、十分に評価・理解されていない資産を「隠れた資産」と呼 んだ。この十分活用されていない隠れた資産である、過小評価されている事業基盤、未活用 の顧客インサイト、埋もれたケイパビリティを見つけ、理解して正しい新戦略を見つけて実 行することで事業成⾧の成功確率が上がることを指摘した。 福嶋・権(2009)は、先行研究のレビューと事例分析から、「資源の主観的認知」の高低、 および「資源間の結合」の高低を組合せて4つの資源創出プロセスの分類枠組みを示した。 「資源の主観的認知」が高く、「資源間の結合」が低い「視点の転換を通じた資源化」では、 これまで資源と認識できなかったものを、機敏さがある企業家は構築主義的に解釈し資源 として認識し活用することによって創造的な戦略を打ち出すことが出来る。その際、企業家 の機敏さや資源を構築主義的に解釈することの重要性を指摘している。「資源の主観的認知」 が低く、「資源間の結合」が高い「既存資源の結合を通じた資源化」は、分散して存在して いるたいしたことのない資源を、資源同士の結びつけ方を工夫し、集めたり並べたり秩序を 与えたりするだけで新たな価値を生み出すようになる場合である。「資源の主観的認知」が 低く、「資源間の結合」が低い「既存のつながりの多重利用」は、既存の資源と資源をつな ぐ仕組みや関係を別の資源に多重活用可能である場合、それを他の資源と結びつけて新た なサービスやビジネスを展開し、あらたな価値を生み出すことが可能となることである。 「資源の主観的認知」が高く、「資源間の結合」が高い「潜在資源の顕在化」は、仕組みを 作ったり補完的資源を提供したりすることで、競争優位を生み出す資源として顕在化する ことである。ここでいう仕組みとは、公式的な制度、規則、インセンティブシステムやビジ ネスモデルだけではなく、共感を呼ぶような理念や文化などソフト的内容も含まれる。

以上の資源創出のメカニズム(Bowman and Collier, 2006)、「隠れた資産」(Zook (山本・ 牧岡訳), 2008)、資源創出プロセス(福嶋・権, 2009)について表 1 にまとめて示す。

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表 1. 資源創出のメカニズムと資源創出プロセスの整理(Bowman and Collier, 2006; Zook (訳: 山本, 牧岡), 2008; 福嶋・権, 2009 より筆者作成) 出典 分類 説明 Bowman and Collier (2006) 1)運(luck) 運(Luck)は、企業が将来の価値を知らずに偶然に獲得 または創出した資源が、予期せずレントを生み出すよう になることである。その資源の価値は、適切な補完的資 産(complementary resource)のコントロール、資源の 独自性、競合の不在 などの条件の影響を受ける。 2)資源採取 (resource picking) 資源採取とは、他の企業と異なる将来ビジョンを持ち、真の将来の価値よりも安く資源を獲得することで あ る。将来を予知し、市場情報を収集し評価できること、 あるいは可能性を持つ資源を多く獲得することで可能 となる。 3)内部開発 内部開発においては、資源創出プロセスが特異であれば 他社が模倣できないような特異な資源にできる。 4)アライアンス アライアンスによって2つの資源を組み合わせること で、いずれかを発展させるかまたは新しい資源を創出で きる。 Zook(訳: 山本, 牧 岡, 2008) 「隠れた資産」 ⾧年の間に自然に蓄積して、すでに自社が所有している が、その価値や性質、可能性が、十分に評価・理解され ていない資産があり、それを「隠れた資産」と呼んだ。 この十分活用されていない隠れた資産である、過小評価 されている事業基盤、未活用の顧客インサイト、埋もれ たケイパビリティを見つけ、理解して正しい新戦略を見 つけて実行することで事業成⾧の成功確率が上がるこ とを指摘した。 福嶋, 権, 2009 「視点の転換を通じた資源化」(「資源 の主観的認知」が高 く、「資源間の結合」 が低い) これまで資源と認識できなかったものを、機敏さがある 企業家は構築主義的に解釈し資源として認識し活用す ることによって創造的な戦略を打ち出すことが出来る。 その際、企業家の機敏さや資源を構築主義的に解釈する ことの重要性を指摘している。 「既存資源の結合 を通じた資源化」 (「資源の主観的認 知」が低く、「資源間 の結合」が高い) 分散して存在しているたいしたことのない資源を、資源 同士の結びつけ方を工夫し、集めたり並べたり秩序を与 えたりするだけで新たな価値を生み出すようになる場 合である。 「既存のつながり の多重利用」(「資源 の主観的認知」が低 く、「資源間の結合」 が低い) 既存の資源と資源をつなぐ仕組みや関係を別の資源に 多重活用可能である場合、それを他の資源と結びつけて 新たなサービスやビジネスを展開し、あらたな価値を生 み出すことが可能となる。 「潜在資源の顕在 化」(「資源の主観的 認知」が高く、「資源 間の結合」が高い) 仕組みを作ったり補完的資源を提供したりすることで、 競争優位を生み出す資源として顕在化することである。 ここでいう仕組みとは、公式的な制度、規則、インセン ティブシステムやビジネスモデルだけではなく、共感を 呼ぶような理念や文化などソフト的内容も含まれる。

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(2)資源創出を促進する要因について

Mothe and Quelin(2001)は EUREKA R&D consortia のパートナーへのアンケート調査 の分析から、社内の R&D 能力、補完的資産へのアクセス、プロジェクトの戦略的重要性、 パートナーが探索した目的、組織的・経営的かかわり、頻繁な会合が、製品、特許、試作品、 科学的・技術コンピテンシーといった資源の創出に効果を持つことを示した。 水野(2018)は製造業中小企業の事例研究から、知識や情報、技術といった保有資源を生 かして新たな事業展開をしていく戦略を技術ストレッチ戦略、技術スライド戦略、顧客フィ クスト戦略の3つに整理した。これらの戦略の実践により、保有技術の強化や転用可能性拡 大、顧客やニーズ情報の蓄積、新たなステークホルダーとの関係構築など資源が創出される ことを示した。技術ストレッチ戦略は既存技術を同一業界に展開して川上工程および川下 工程に該当する新規顧客をターゲットにする。重要な資源は蓄積してきた知識や、業界や顧 客からもたらされる情報である。また、ステークホルダーからの依頼がきっかけとなる場合 の様に、既存顧客との Win Win の関係が築けることが重要である。新たな気付きを得、 異なる視点をもつ機会となり、情報という新たな資源を蓄積し、中核技術へのフィードバッ クにより、市場競争力強化に結び付く。技術スライド戦略は既存技術を異なる業界に展開し て新規顧客をターゲットにする。このうちテクノロジー・プッシュ型は既存技術がどの領域 に適合するのかが不明であるので、ステークホルダーからもたらされた情報やニーズをも とに異なる事業領域へ展開するディマンド・プル型が有効である。この場合ステークホルダ ーか らの 情報 が極 めて重要 であ り、ス テークホ ルダ ーとの 関係 構築、人 脈や 紐帯 (Granovetter, 1973,1974,1985)の構築がカギとなる。支援機関や大学研究者らとの新たな ステークホルダーとの出会いなど、事前には想定していなかった、さまざまな意図せざる結 果や事後的合理性を得られ、また、中核技術を洗練したり転用可能性を高めたりするのに適 している。顧客フィクスト戦略は、既存顧客に対して新たな技術を開発して、既存顧客に新 たな価値を提供する。この戦略では、業界のトレンドや既存顧客のニーズという情報資源を もとに、業界でボトルネックとなっている問題を解決する技術、製品を開発するが、その技 術の探索に大きな労力を要する。顧客との Win―Win の関係構築は、顧客からの情報、現 場の情報という資源を得るために必要不可欠である。顧客が直面する問題や要望に応える 製品が開発でき、業界や顧客に関する情報という資源が蓄積されるとした。 以上より、資源創出には、社内の R&D 能力、補完的資産へのアクセスといった資源を調

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達する能力に加え、プロジェクトの戦略的重要性や探索目的などを含む戦略を実践するき っかけとなる情報が重要であることがわかる。また、そのような情報をもたらすステークホ ルダーとの関係を構築しておくことが重要であることもわかる。しかし、どのようにすれば そのきっかけとなる情報を得られるのかについては十分な検討はされておらず、情報発信 についての言及もない。 2.2.3 重要な資源の一つである知識の創造について 野中・紺野(2003)は、知識創造を、暗黙知を豊かにしつつ形式知化し、それらを組み合 わせて実践に結び付けることで、再び新たな暗黙知を形成する、というダイナミックな螺旋 運動のプロセスととらえ、SECI モデルを提唱した。暗黙知は個人的で主観的な知識で、知 っていても言葉にはできない経験的身体的なアナログの知であり、言葉や文章で表すこと が難しい、思い(信念)、視点、熟練、ノウハウなどが含まれる。形式知は社会的で客観的 な知で、暗黙知を言葉や体系にした、デジタルで共有可能な知識である。SECI モデルは、 共 同 化 ( Socialization) 、 表 出 化 (Externalization) 、 連 結 化 (Combination) 、 内 面 化 (Internalization)を螺旋状に繰り返すことにより知識を創造するモデルである。共同化 (Socialization)は、暗黙知から新たに暗黙知を生み出すプロセスで、個人が身体、五感を駆 使して経験を通じて、他者、環境から暗黙知を獲得、共有、創出する。表出化(Externalization) は、暗黙知から新たに形式知を生み出すプロセスで、個人と集団の相互作用、対話、思考に より言葉(形式知)にし、更に概念(コンセプト)・図像を創造する。連結化(Combination) は、形式知から新たに形式知を生み出すプロセスで、形式知の分割、分析、組合せによる情 報活用と知識の体系化が行われる。内面化(Internalization)は形式知から新たに暗黙知を生 み出すプロセスで、形式知を行動、実践を通じて具現化、市場投入と共に個人の新たな暗黙 知として理解・学習する。また、コンセプトは、新たな視点を提供し、物事の本質をつかみ 取ることのできる観点、思考形式である。個人の思い、認識から生じるアイデアから、背後 にある文脈や具現化するための段取りや枠組みと新しい観点や洞察を含むコンセプトが構 成される。さらに、コンセプトがそれ自身あるいは複数の概念と関係づけられた(因果関係 に裏付けられた)理論(モデル)ができるとした。 2.2.4 重要な資源の一つである組織能力の構築について 藤本(2003)は、トヨタ自動車を中心に日本の自動車企業を研究し、その競争力の強さを

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組織能力で説明し、その組織能力はあらゆる機会から、何があっても学ぶことにより「創発 的に構築され」るとした。組織能力は、生産企業経営の「質」を表す概念であり、「もの造 り能力」「改善能力」「進化能力」の三階層からなる組織能力の体系として具体的に説明でき る。組織能力は①ある経済主体が持つ経営資源・知識・組織ルーチンなどの体系であり、② その企業独特のものであり、③他社がそう簡単には真似できない(優位性が⾧持ちする)も のであり、④結果としてその組織の競争力・生存能力を高めるものと定義できるとした。 また、特定の製品に関して顧客が直接観察・評価できる価格、製品内容、納期などについ ての競争力を支え、企業の組織能力と直接的に結びついている、生産性、生産リードタイム、 開発リードタイムなどの深層の競争を能力構築競争とした。その能力構築は、制約条件の中 で目的を達成するためにある選択肢を、ことを起こす前によく考えて選び取る、「事前合理 的な意思決定」に必ずしもよらず、むしろ、「創発的に構築され」、結果として競争力を持っ た、いわば事後的に合理的な能力構築が重要であるとした。「創発」(emergence)とは、何 か新しいシステムを作ろうとする当事者が事前に思い描いた計画や意図とは違う形で、そ のシステムが出来上がっていくことを指す。意図した成功から体系的に学ぶことに加え、失 敗から学ぶ、意図せざる成功から学ぶ、他者の成功から学ぶなど、あらゆる機会から、何が あっても学んでしまうという「しぶとい学習能力」である。事前合理的な意思決定能力だけ では不十分で、もっと広い意味での合理性、「運を実力に転換する能力」「失敗から学ぶ能力」 「怪我の功名をきっちり生かす能力」「意図せざる結果の意味を後付けでしっかり認識する 能力」など「何が起こっても結局学習してしまう組織の能力」が、組織に浸透している必要 がある。その為には組織の成員が共有するある種の心構え(preparedness)、すなわち、日 ごろからパフォーマンス向上を指向する持続的な意識を保ち、何事か新しいことが起こっ た時、「これはわれわれの競争力の向上に役立たないだろうか」と考えてみる思考習慣を、 従業員の多くが共有していることが重要だとした。 しかし、そのような組織文化が、どのようにして備わったのかは今後の分析が必要として いる。 2.2.5 資源創出の理論についてのまとめ 以上より、図 7 に示すように、資源創出は保有しているが現在は十分活用されていない資 源や他の用途に用いられている資源を把握、理解したうえで、用役を変えたり組み合わせた り補完的資産を加えたり、暗黙知を形式知に転換したりして、環境や新たな機会に適合する

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ようにすることが重要で、そうすることで新たな戦略を競争優位に実行し成功させる可能 性が高くなることが示唆される。そして、その際に重要な点である新たな機会をどのように 把握するのかについては、将来ビジョンを持ち、将来を予知し、市場情報を収集し評価する (Bowman and Collier, 2006)、顧客インサイトやステークホルダーからの情報を使う(Zook, 山本・牧岡訳, 2008; 水野, 2018)、企業家の機敏さ(福嶋・権, 2009; 石川, 2006 (Kirzner, 1973))、失敗や怪我の功名、意図せざる結果などから学習する(藤本, 2003)といった点が 指摘されている。しかし、新たな機会を把握することへの情報発信の効果についての研究は 調べた限りでは見あたらない。 また、創造される新製品コンセプト、開発される新製品は市場、顧客のニーズ情報とそれ に適合させた製品、プロセス、資源等のシーズ情報を含む、新たに創出されたナレッジであ り、企業のコントロール下にあり、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり実 行したりすることを可能にするものであるので、バーニーのいう経営資源である。したがっ て新製品コンセプトの創造、新製品の開発ができたことはそれぞれ資源創出ができたこと になる。 図 7 保有資源から資源創出する概念図

(Bowman and Collier, 2006; Zook(訳: 山本, 牧岡), 2007; 福嶋・権, 2009; 野中・紺野, 2003 より筆者作成) 2.3 先行研究のまとめ 表 2-1、表 2-2、表 2-3 は新製品開発、資源創出に関する主な先行研究が、情報発信、ソ ーシャル・ネットワーク、資源調達、知識結合能力、新製品コンセプト、資源創出、およ び、情報発信が新製品コンセプト創造を促進するメカニズム、情報発信が資源創出を促進 するメカニズムについて研究対象としているかまたは言及しているかを一覧表にしたもの である。表中の〇は研究の対象に該当することを示している。△は関連内容を研究または 言及していることを示している。―は言及がないことを示している。

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先行研究レビューからの知見をまとめると、次の 4 つの点に整理できる。 1)新たな知識、資源の創出にあたる新製品開発を成功に導くには曖昧さを削減し、市 場、顧客、ニーズ、製品の機能、提供価値、開発プロセス、資金や人材などの資源の調達 を明確にした新製品コンセプトを創造することが重要である(Stevens, 2014; Herstatt et al.,2004 など)。 2)新製品コンセプト創造には、情報発信(山内・米山・三井, 2017; 真鍋・米山, 2017 な ど)、ソーシャル・ネットワーク(Stevens, 2014; Caniëls et al., 2014; 水野, 2018 など)、 資源調達能力(Stevens, 2014; Caniëls et al., 2014; 岸本, 2017 など)、知識結合能力 (Enkel, Gassmann and Chesbrough, 2009; Carmeli and Azeroual, 2009 など)といった要 素が有用である。この資源調達能力は、必要となる知識や人材やその他の資源そのものを 保有していなくても、ソーシャル・ネットワークを活用するなどして、調達できる能力で ある(Stevens, 2014; Caniëls et al., 2014; 岸本, 2017; 水野, 2018 など)。

3)資源創出のための新たな機会をどのように把握するのかについて、将来ビジョンを持 ち、将来を予知し、市場情報を収集し評価すること(Bowman and Collier, 2006)、顧客イ ンサイトやステークホルダーからの情報を使うこと(Zook(山本・牧岡訳), 2008; 水野, 2018)、企業家の機敏さ(福嶋・権, 2009; 石川, 2006(Kirzner, 1973))、失敗や怪我の功 名、意図せざる結果などから学習する(藤本, 2003)といった点が指摘されている。しか し新製品開発においてニーズ把握と機会の認識に有効である情報発信の効果(山内・米 山・三井,2017; 真鍋・米山, 2017 など)を資源創出に展開した研究は調べた限りでは見あ たらない。 4)表 2-1、表 2-2、表 2-3 から、情報発信が新製品コンセプト創造を促進するメカニズム についてヒントとなる先行研究はあるが、ソーシャル・ネットワーク、資源調達能力、知 識結合能力を含めた研究、情報発信の効果について資源創出の観点からの研究は見当たら ないことがわかる。

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23 表 2-1 先行研究のマッピング(1) 著者, 発行年 情報発信 ル・ネットソーシャ ワーク 資源調達 知識結合 能力 新製品 コンセプト 情報発信が新製 品コンセプト創 造を促進する メカニズム 資源 創出 情報発信が資源 創出を促進する メカニズム

Baker & Sinkula, 1999 △新製品開発

Caniëls et al.2014 〇 〇 △ idea creation

Cooper, R. G, 1979 〇 △新製品開発

Cooper, R. G, 1988 〇 〇

Herstatt, Verworn and Nagahira, 2004 〇 〇

Hughes & Morgan, 2007 △新製品開発

Khurana and Rosenthal, 1997 〇 〇

Khurana, Rosenthal, 1998 △ △ 〇 米谷雅之, 2002 米谷雅之, 2003 △新製品開発 Narver et al., 2004 △新製品開発 中原秀登, 2011 △ 〇 太田一樹, 2008 〇 △ 〇 △

Pullen, Weerd-Nederhof, Groen, Song

and Fisscher, 2009 △新製品開発

Rothwell, Freeman, Horlsey, Jervis,

Robertson and Townsend, 1974 〇

Stevens, 2014 〇 〇 〇

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24 表 2-2 先行研究のマッピング(2) 著者, 発行年 情報発信 ル・ネットソーシャ ワーク 資源調達 知識結合 能力 新製品 コンセプト 情報発信が新製 品コンセプト創 造を促進する メカニズム 資源 創出 情報発信が資源 創出を促進する メカニズム

Ardichvili, Cardozo and Sourav, 2003 〇 △機会認識

Dutta and Crossan, 2005 △機会認識

Enkel, Gassmann and Chesbrough.

2009 〇 〇 〇 オープンイノベーション △

Herstad, Bloch, Ebersberger and Van

De Velde, 2010 △情報開示 〇ネットワーク △吸収能力 オープンイノベーション 亀岡京子, 2008 〇特許開示 △ 岸本千佳司, 2017 〇 〇 オープンイノベーション 児玉俊洋, 2017 〇 〇 桑嶋健一, 2002 〇 〇新製品開発 松井憲一, 魯雪娜, 2010 顧客発掘時 顧客発掘時 △ △新製品開発 真鍋誠司, 米山茂美, 2017 〇 △ △ 名取隆, 2013 〇 〇 △ 大谷隆児, 名取隆, 2016 〇 〇 〇 〇

Ozgen and Baron, 2007 〇 △機会認識

小澤伸光, 町田欣弥, 安積淳, 2009 〇 △新製品開発

Singh et al., 1999 〇 △機会認識

Wang, Ellinger and Wu, 2013 〇 〇 〇

山内勇, 米山茂美, 三井絢子, 2017 〇 △ △

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25 表 2-3 先行研究のマッピング(3) 著者, 発行年 情報発信 ル・ネットソーシャ ワーク 資源調達 知識結合 能力 新製品 コンセプト 情報発信が新製 品コンセプト創 造を促進する メカニズム 資源 創出 情報発信が資 源創出を促進 する メカニズム Barney(岡田訳), 2003 〇

Bowman and Collier, 2006 〇 〇

Carmeli and Azeroual, 2009 〇Relational Capital 〇 〇

Edith Penrose(日高訳), 2010 〇 藤本隆宏, 2003 △能力構築 福嶋路, 権奇哲, 2009 〇 △ △ 〇 出井優駿, 杉野涼太, 武藤恵太, 木見 田康治, 下村芳樹, 2016 △価値協創 石川伊吹, 2006 △ △ 伊丹敬之, 2008 △新製品 △知識蓄積 河野英子, 2014 △知識創出 岸本太一, 2012 △ △ △ △新製品開発 △ 児玉充, 2006 〇 △ △ △知識創出 March, 1991 △知識創出 水野由香里, 2018 〇 △ △ 〇

Mothe and Quelin, 2001 △ 〇 〇 △ 〇

野中郁次郎, 紺野登, 2003 〇 △ 〇知識創出

大江秋津, 2014 △知識創出

小澤りりさ, 中本龍市, 2018 △知識創出

Jimenez, Fuentes-Fuentes,

Ruiz-Arroyo, 2016 〇 〇知識創出

鈴木修, 2013 △新製品開発 △知識創出

山岡徹, 2016 △知識創出

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3.研究枠組みと仮説 3.1 研究枠組み 先行研究レビューより、図 8 に示すように、情報発信が新たなニーズの把握、機会の認 識に重要な役割をして、保有資源であるソーシャル・ネットワーク、資源調達能力、およ び、知識結合能力が新製品コンセプト創造、新製品開発の成功といった資源創出を促進す るのではないかという研究枠組みを設定した。展示会などでの不特定多数への情報発信の 場合と既存顧客等のソーシャル・ネットワークの特定の関係者への情報発信の場合の効果 の違いについて、および、上記要因がどのように関係して新製品コンセプト創造に影響す るのかのメカニズムについて、も研究する枠組みとした。 図 8 研究枠組みを示す図 3.2 仮説の導出 先行研究から、新製品開発を成功させるにはファジー・フロント・エンドにおいて、市 場、顧客とそのニーズを把握し、そのニーズに合致した製品の機能や提供価値と開発プロ セス、資源について明確にした新製品コンセプトを創造することが重要である(Stevens, 2014; Herstatt et al.,2004; Rothwell at el., 1974; Cooper, 1979)ことから仮説1を次のよう に設定した。 H1 新製品コンセプト創造は新製品開発の成功を促進する。 積極的に情報発信することで、新製品コンセプト創造に必要な、新たなニーズや新たな 用途の情報と外部の知識・アイデア(山内・米山・三井, 2017; 真鍋・米山, 2017)やシー ズの情報(児玉, 2017)、および新たな顧客(名取, 2013)が得られ、新たな機会(大谷・ 名取, 2016)につながることから仮説2を次のように設定した。 H2 情報発信することにより、新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創出が促 進される。

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限られたメンバーへの情報開示だけでなく、不特定多数への情報発信も有力な手段とな り、異なる効果が得られる(山内・米山・三井, 2017; 真鍋・米山, 2017)ことから仮説 3 を次のように設定した。 H3 情報発信には不特定多数への情報発信とソーシャル・ネットワークの特定の関係 者への情報発信があり、その効果に違いがある。 知識・専門を補完するメンバーおよびネットワーク、影響力・情報のある人物やステー クホルダーとの人脈といったソーシャル・ネットワーク(Wang, Ellinger and Wu, 2013; Caniëls et al., 2014; Stevens, 2014; 大谷・名取, 2016; 水野, 2018; 岸本, 2017)と開発に必 要な資金や人材、外部の技術やアドバイス、情報などの資源を調達できる能力(Stevens, 2014; Rothwell et al., 1974; Caniëls et al., 2014)、および、情報、アイデア、技術、知識を 共有し結合する知識結合能力(Carmeli and Azeroual, 2009; Ruiz-Jimenez,

Fuentes-Fuentes and Ruiz-Arroyo,2016; Enkel, Gassmann and Chesbrough, 2009; 岸本, 2017)が新 製品コンセプト創造の促進要因となる。このとき、資源創出は保有資源を新たな機会・ニ ーズに適合するように用役を変えたり組み合わせたり補完的資産を加えたりすることであ り、保有資源が前提にある。ソーシャル・ネットワーク、資源調達能力はその保有資源で ある。情報発信はニーズ把握、機会認識に重要な役割をしている。これらのことから、保 有資源であるソーシャル・ネットワーク、資源調達能力が前提となり、情報発信によるニ ーズ把握、機会認識を通して、知識結合能力が発揮され、新製品コンセプト創造および新 製品開発が促進されるのではないかということから、仮説 4、仮説 5、仮説 6 を次のよう に設定した。 H4 ソーシャル・ネットワークは情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち新 たな資源の創出を促進する。 H5 資源調達能力は情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創 出を促進する。 H6 知識結合能力は新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創出を促進する。 また、情報発信、資源調達、ソーシャル・ネットワーク、知識結合能力が新製品コンセ プト創造をどのようなメカニズムで促進するのかについて考察する。 仮説と要因の関係を図 9 に示した。要因間の矢印と添えた H1~H6 が各仮説の関係を示 している。

図 1  従業者規模別事業所数の変化  (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成) 050,000100,000150,000200,000250,000300,000350,000400,0004人~299人 300人~499人500人~999人1000人以上(所数)
図 2  従業者規模別従業者数の変化  (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成) 01,000,0002,000,0003,000,0004,000,0005,000,0006,000,0007,000,0008,000,0009,000,00010,000,000 4人~299人 300人~499人500人~999人1000人以上(人)
図 3  従業者規模別製造品出荷額の変化  (経済産業省工業統計調査(2002~2016)のデータを引用し筆者作成)  1.1.3  環境変化への対応  人口減少に伴う総需要の縮小、消費者ニーズの多様化、モノづくりのグローバル化進展、 大企業と中小企業・小規模事業者との間の相互依存関係の希薄化といった環境変化は、構造 的なものである。したがって、中小企業が持続的に企業体を維持し、発展するためには既存 事業の枠組みにとらわれず、変化する顧客のニーズをとらえた新たな製品やサービス、新た な事業を創造することが必
表 1.  資源創出のメカニズムと資源創出プロセスの整理( Bowman  and  Collier,  2006;  Zook (訳:  山本,  牧岡), 2008;  福嶋・権, 2009 より筆者作成)  出典  分類  説明  Bowman  and  Collier  (2006)  1)運(luck)  運(Luck)は、企業が将来の価値を知らずに偶然に獲得または創出した資源が、予期せずレントを生み出すようになることである。その資源の価値は、適切な補完的資産(complementary res
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