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5 結果

5.2 インタビューの結果と定性分析

5.2.3 インタビュー内容の定性分析による仮説の検証

インタビューから得られた 6 つの新製品開発の事例において、いずれも情報発信をきっ かけに新製品コンセプトが創造されて事業化されていた。これらの事例について、6 つの 仮説に当てはまる内容を抽出し表 12 に整理した。情報発信を行う対象についても記載し た。この抽出内容から、次の検証ができる。

仮説 1 の新製品コンセプト創造が新製品開発の成功を促進する、について、6 つの事例 で新製品コンセプトを創造して新製品が開発されている点でいずれも当てはまり、仮説1 についてアンケート調査の定量分析結果に加えインタビュー事例の定性分析からも検証さ れた。

仮説 2 の情報発信することにより、新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創出が 促進される、について、6 つの事例で情報発信がきっかけで新たなニーズ情報を得て新製 品コンセプト創造に至った点でいずれも当てはまり、仮説 2 についてアンケート調査の定 量分析結果に加えインタビュー事例の定性分析からも検証された。

仮説 3 の情報発信には不特定多数への情報発信とソーシャル・ネットワークの特定の関 係者への情報発信があり、その効果に違いがある、について、特定の関係者へは社⾧が現

在の製品や強みなどに加えて、社⾧の思いや新たな取り組みについて、会合や面談などで 情報発信して、社⾧が反響にも対応しており、4 つの事例のうち 3 つの事例ではニーズ情 報に加えて顧客が得られた。残りの1事例(無線式防水型温湿度センサーの事例)ではニ ーズ情報に加えて共同研究先の技術や補助金といったシーズ、資源も得れられた。一方、

不特定多数へは社員がウェブサイトや展示会などで現製品の特⾧や強みにつて情報発信 し、反響にも社員が対応してニーズ情報を得ていた。6 つの事例ともニーズ情報が得られ た点では違いがなかった。以上より、ニーズ情報が得られる点では違いがないが、特定の 関係者への情報発信の場合には顧客やシーズ・資源も得られる場合もあるという点で違い が見られ、仮説 3 についてインタビュー事例の定性分析から検証された。

仮説 4 のソーシャル・ネットワークは情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち 新たな資源の創出を促進する、について、6 つの事例で情報発信をきっかけに得られたニ ーズ情報をもとにソーシャル・ネットワークを活用して追加のニーズ情報や適合する技術 シーズその他の資源の情報を得て新製品コンセプト創造につなげていた点で当てはまり、

仮説 4 についてアンケート調査の定量分析結果に加えインタビュー事例の定性分析からも 検証された。

仮説 5 の資源調達能力は情報発信を介して新製品コンセプト創造すなわち資源創出を促 進する、について、6 つの事例で情報発信をきっかけに得られたニーズに適合する様に、

資源を調達する力があり、新製品コンセプト創造につなげていた点で当てはまり、仮説 5 についてアンケート調査の定量分析結果に加えインタビュー事例の定性分析からも検証さ れた。

仮説 6 の知識結合能力は新製品コンセプト創造すなわち新たな資源の創出を促進する、に ついて、まず、2 社の知識結合能力を測る尺度に当てはまる事実を抽出し表 13 に整理した。

Carmeli and Azeroual(2009)が示した知識結合能力を測る尺度は次の 5 つである。(1)従 業員はアイデアを交換し結合して問題解決や機会創出することに熟達している。(2)従業員 は個人のアイデアを共有し新しいアイデア、製品、サービスをうまく提案する。(3)従業員 は専門技術を共有し新プロジェクトや発議を達成できる。(4)従業員はアイデアと知識を効 果的に蓄積してきた。(5)従業員はアイデアを交換し結合して問題の解決策を見つける。こ れらの尺度について、三郷金属工業ではレーザー・クリーニングの新製品コンセプト創造を 担当した従業員とその行動などに5つの尺度全てに当てはまる内容があった。チトセ工業 では、担当した従業員チームとその行動などに5つの尺度全てに当てはまる内容があった。

これらのことから、2 社ともに知識結合能力があると判断できる。

さらに、表 12 のH6 の欄に示すように 6 つの事例で情報発信をきっかけに得られたニー ズに適合する様に、保有技術、保有資源と追加知識や追加する資源を組み合わせて結合して 新製品コンセプトを創造していた点で当てはまり、6 つの新製品いずれも知識結合能力が新 製品コンセプト創造にプラスの役割を果たしており、これらより仮説 6 は支持された。

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表 12 インタビューにおいて仮説を支持する内容 事例 レーザー・

クリーニング・

サービス

コンクリート 養生用 無線式

防水型温湿度 センサー

ISO のコンサル ティングと教育 を行うサービス

医薬品、化粧品 製造の一部を請 け負うサービス

無線を使う電子 回路の試作開発 受託サービス

無線式防水型 温湿度センサー

Logbee) (商品名

事例分析 仮説検証結果 による

情報発信

の対象 不特定多数へ 不特定多数へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ 企業 三郷金属工業 チトセ工業 三郷金属工業 三郷金属工業 チトセ工業 チトセ工業 H1 新製品

コンセプト創 造は新製品開 発の成功を促 進する。

レーザーを用い て塗膜剥離や錆 び除去を行うサ ービスという新 製品コンセプト に基づいてデモ 機導入等を行い 新製品開発が行 われた点で当て はまる。

工事現場でのコ ンクリート養生 の温湿度管理の ニーズに適合し たアンテナ外付 けタイプと保護 カバーの新製品 コンセプトに基 づいて新製品開 発が行われた点 で当てはまる。

ISO のコンサル ティングと教育 を行う新サービ スのコンセプト を創造し、教育 プログラムを開 発して、相談元 を手始めに新サ ービスを開発し た点で当てはま る。

変種変量生産の 医薬品及び医薬 部外品の製造の 一部を請け負う 新サービスのコ ンセプトを創造 し、GMP 基準 の適合認定を取 得して新サービ スを開発した点 で当てはまる。

無線を使う電子 回路の受託開発 を行う新サービ スのコンセプト を創造し、サー ビスを始め人員 も補強した点で 当てはまる。

植物工場のスケ ジューリングシ ステム向けの無 線式防水型セン サーの自社ブラ ンド新製品のコ ンセプトを創造 し、プロジェク トに参画して開 発しできた点で 当てはまる。

いずれの事例 も当てはま り、仮説 1 は 事例からも検 証された。

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表 12 インタビューにおいて仮説を支持する内容(続き)

事例 レーザー・

クリーニング・

サービス

コンクリート 養生用 無線式

防水型温湿度 センサー

ISO のコンサル ティングと教育 を行うサービス

医薬品、化粧品 製造の一部を請 け負うサービス

無線を使う電子 回路の試作開発 受託サービス

無線式防水型 温湿度センサー

Logbee) (商品名

事例分析に 仮説検証 よる

結果 情報発信の

対象 不特定多数へ 不特定多数へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ 特定の関係者へ H2 情報発

信することに より、新製品 コンセプト創 造すなわち新 たな資源の創 出が促進され る。

レーザー溶接技 術等の保有技 術、強みについ ての情報発信に より塗膜剥離や 錆び除去という 保有するレーザ ー技術の思いも よらない異分野 の用途の新たな ニーズ情報を得 て新製品コンセ プトを創造した 点で当てはま る。

無線式防水型温 湿度センサーに ついての情報発 信により工事現 場でのコンクリ ート養生の温湿 度管理という、

保有するセンサ ーの思いもよら ない用途の新た なニーズ情報を 得て新製品コン セプト創造した 点で当てはま る。

車載向け ISO 品 質管理の強みの 情報発信によ り、商工会議所 の関係者から相 談を受け、ISO 規格取得の支 援、コンサルテ ィングの思いも よらない用途の 新たなニーズ情 報を得て新製品 コンセプト創造 した点で当ては まる。

車載向け ISO 品 質管理と変種変 量生産の強みの 情報発信によ り、協力会社の 会の関係者から 相談を受け、医 薬品及び医薬部 外品の製造とい う思いもよらな い用途の新たな ニーズ情報を得 て新製品コンセ プトを創造した 点で当てはま る。

電子回路技術と 製品開発ができ 営業経験もある D氏を事業開発 部⾧として採用 し、自社製品を 作りたいことを 情報発信してい たところ、取引 先の関係者から 無線を使う電子 回路の試作開発 という思いもよ らない用途の新 たなニーズ情報 を得て新製品コ ンセプトを創造 した点で当ては まる。

電子回路の試作開 発サービスをして いること、自社製 品を作りたいこと を情報発信してい たところ、取引先 の関係者から総務 省のプロジェクト に参画して三重大 学他と無線センサ ーを開発する機会 を紹介された。植 物工場向けスケジ ューリングシステ ムという思いもよ らない新たなニー ズ情報と、開発費 に充当できる補助 金と三重大学が持 つ技術シーズとい う資源も得て新製 品コンセプトを創 造した点で当ては まる。

いずれの事 例も当ては まり、仮説 2 は事例から も検証され た。