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4)以上によりモデルの妥当性と信頼度を確認したのち、パス係数(Path Coefficients)が正 の値であり、P値が 0.05 以下で有意であることを検証基準とする。

5)また、潜在変数の決定係数 R2はモデルの予測力(predictive power)の尺度として参考 にする。ただし、調査の評価基準とモデルの複雑性とにより、その指標は異なるため、注意 が必要である。例えば、消費者行動の調査において、0.20 は高い値と考えられているが、マ ーケティングの学術的研究においては、0.75 では予測力が堅固、0.50 では予測力が中程度、

0.25 では予測力が低いという評価がされている。本研究では後者を参考指標とする。

4.4 インタビュー調査に基づくケース・スタディの方法

電子回路の試作開発サービス、無線式防水型温湿度センサー(商品名 Logbee)、コンクリー ト養生向け無線式防水型温湿度センサー等関連のシリーズ製品を新製品として事業化して いる。当社は 2010 年ころから、大口取引先の海外シフトを懸念し新製品開発の取組を行っ てきた。

表 4 アンケート調査対象に選定した 2 社の会社概要

項目 三郷金属工業 チトセ工業

事業内容 製品タイプ

レーザー等を用いた精密溶接加工を 特徴とする受注型製造業

金属プレス加工、無酸化炉中ろう付 け加工を得意とする受注型製造業 従業員数

(2017 年)

56 名 45 名

資本金 2600 万円 1000 万円

創業年 1946 年 1964 年

事業化した 新製品

レーザー・クリーニング・サービス、

ISO のコンサルティング・教育サービ ス、医薬品、化粧品製造の一部を請け 負うサービス

無線電子回路の試作開発サービス、

無線式防水型温湿度センサー(商品 名 Logbee)、無線式防水型温湿度セン サーのシリーズ製品

4.4.2 インタビュー方法の選定

インタビューは、質問方法によって、構造化インタビュー、半構造化インタビュー、非構 造化インタビューに分類される。構造化インタビューでは同じ一連の質問を同じ順番で同 じ言葉を使って異なる人にインタビューする。半構造化インタビューは、インタビューガイ ドに従って質問をするが、インタビュー対象者の反応に応じて、柔軟に質問を変えることが 可能で、重要ポイントを会話から引き出し、深い内容を聞くことができるインタビューであ る。非構造化インタビューは、特に質問を設定せず、会話の中で感じた疑問や関心に応じて 聞いていくインタビューで、新たな発見が得られる場合もある(矢島・椎野・山岡, 2011)。

本研究では、アンケート調査の定量分析と合わせて仮説を検証するとともに、そのメカニ ズムを探索し、因子間の関係を深く理解するとともに考慮すべき新たな点がないかを調査 するため、半構造化インタビューを用いることとした。

4.4.3 インタビュー調査のプロトコルと検証の基準

三郷金属工業株式会社の児島貴仁代表取締役社⾧には 2018 年 4 月 25 日(水)15:00~

17:00 に、チトセ工業株式会社の中西啓文代表取締役には 2018 年 4 月 24 日(火)9:30

~11:00 に、それぞれの会社で半構造化インタビューを行った。

インタビューの準備として、ウェブページと過去の新聞記事などから会社の概要、沿革、

特⾧やトピックスなどの情報を収集した。

インタビューの質問項目、内容を表 5 に示す。①資源・強み技術についてウェブページ掲 載内容から読み取れる内容について確認し、②ソーシャル・ネットワークの構築活用状況、

③情報発信について、相手がソーシャル・ネットワークの特定の関係者か不特定多数か、内 容は製品、サービス、技術の特⾧か、新たな取り組みや社⾧の思い等か、方法はプレゼンテ ーション、面談、展示会、ウェブサイト等か、どんな反響、成果が得られたか、④新製品・

新サービスについて、新製品・新サービスの内容、それぞれができた経緯および情報発信の 内容との関係、⑤知識結合能力については Carmeli and Azeroual(2009)の知識結合能力を 測る尺度に当てはまる内容、⑥社⾧のマネジメントについては新製品コンセプト創造、新製 品開発を担当する社員への対応を含めて社⾧のマネジメントの特⾧はどんな点かを質問し た。

検証基準は、仮説 1、2、4、5 については、できた新製品ごとに仮説内容に当てはまる内 容があるかどうかを調べ、事例が当てはまる場合に検証できたと判断することとした。

仮説 3 とメカニズムについては表 5 に示した①~⑥の内容から発見された事項を整理し て考察した。

仮説 6 の検証基準は知識結合能力を測る尺度に当てはまる事実が認められることとその 事実が新製品コンセプトの創造に寄与していることとした。知識結合能力を測る尺度

(Carmeli and Azeroual, 2009)は下記の 5 つである。

(1)従業員はアイデアを交換し結合して問題解決や機会創出することに熟達している。

(2)従業員は個人のアイデアを共有し新しいアイデア、製品、サービスをうまく提案す る。

(3)従業員は専門技術を共有し新プロジェクトや発議を達成できる。

(4)従業員はアイデアと知識を効果的に蓄積してきた。

(5)従業員はアイデアを交換し結合して問題の解決策を見つける。

表 5 半構造化インタビューの質問

質問項目 質問内容

①資源・強み技術 ウェブページ掲載内容から読み取れる強み技術等の資源に ついて確認

②ソーシャル・ネットワーク ソーシャル・ネットワークの構築活用状況

③情報発信 相手 ソーシャル・ネットワークの特定の関係者か不特定多数か 内容 製品、サービス、技術の特⾧か、新たな取り組みや社⾧の思

い等か

方法 プレゼンテーション、面談、展示会、ウェブサイト等のいず れか

効果 どんな反響、成果が得られたか

④新製品・

新サービス 内容 新製品・新サービスの内容

経緯 それができた経緯、情報発信内容との関係

⑤知識結合能力 Carmeli and Azeroual(2009)の知識結合能力を測る尺度の 内容

⑥社⾧のマネジメント 新製品コンセプト創造、新製品開発を担当する社員への対 応を含めて社⾧のマネジメントの特⾧