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会話
図9全ての発話文における対話相手の年齢に応じた発話文末のスピーチレベルの使用割合
べ一スの性別ごとに、全ての発話文における対話相手の年齢に応じた発話文末のス ピーチレベルの使用を見ると、敬体(P)は、有意差は見られなかったが、日本語・韓 国語ともに同年齢の対話相手との会話において使用割合が高くなっている。ただし、
この傾向は日本語により顕著である。敬体(P)の使用割合が同年齢との会話において 高いことは、他の条件が一定の場合、年上の人に対してより丁寧度の高い言語形式を 使うという敬語使用やBrown and Levinsonのポライトネス理論(1987)の原則に反して いることである。一方、常体(N)は、日本語の男女べ一スと韓国語の女性べ一スは対 話相手の年齢に反比例関係を見せている。特に、分散分析の結果、韓国語の女性べ一 スの常体(N)の使用においては、年上と同年齢の間、また、年上と年下の間に有意差 が見られたが(年上と同年齢:F値=13.450、p<0.001、年上と年下:F値=13.450、 p<0.0
01)、日本語では同じ傾向があったものの、有意差は出なかった。ただ、宇佐美の一 連の研究(Usami1999;宇佐美2001a;2001b;2001c等)において、日本語では常体(N)の使 用率が目下に有意に高く、目上が目下に常体を使うことで上下関係をマークすること を指摘しており、今回の日本語と、韓国語の女性の場合は、年齢から生じる上下関係 が主に常体(N)という言語形式に表れていることが検証されたと言えよう。丁寧度を 示すマーカーのない発話(NM)は、日本語・韓国語ともに、年上か年下かに関わらず、
年齢の差がある対話者との会話において使用割合が高い。その傾向は、韓国語に比べ、
日本語において、よりはっきりと見られる。丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)
が、年齢に差がある対話相手に対して多く使われているのは、丁寧度を示すマーカー のない発話(NM)は、年齢の上下関係がはっきりしている対話相手に対して、敬体(P)
や常体(N)を明示せず、その上下関係をあいまいにすることで、相手のネガティブ・
フェイスを脅かすことを避けると同時に、ポジティブ・フェイスを満たし、より円滑 なコミュニケーションのためのポライトネス・ストラテジーとして機能していると考
えられる。このような敬体(P)、常体(N)、丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)
の機能は、文レベルでは捉えることのできないものであり、文レベルを超えた、談話 レベルから見ることによって初めて明らかになることと言える。
以下に、日本人同士と韓国人同士の会話中から、女性べ一スと年上の女性との会話 の例の一部を挙げ、年下に当たるベースが年上の対話相手に対し、常体(N)を使う場 面を示す。
日本人同士の会話例(女性べ一スと年上の女性との会話)
発話
カ番
発話
カ終
ケ
話者 発話内容
発話
カ末
48 * OFO4被服関係の事を、ちゃ、やってましてね、(はい)ちょっと自然科学的っ トゆ一か、被服科学っていうか(あ)そういったことをちょっと、してるもん ナすから〈笑いながら〉。
P
49 * BF12 あ、そうですか。 P
50−1 / BF12 ってゆ一と、こう作るほうでは〈なく〉{〈},, /
51 * OFO4〈なく〉{〉}。
NM
50−2 * BF12 って、(ええ)あの、科学的な方からっていうことなんで〈すか?〉{く}。 P
52 * OFO4〈ええ、ええ、〉{〉}ええ。
NM
53 * BF12 あ一。
NM
54 * BF12 どんなふうなことなんですか?。 P
55 * BF12ってゆって、わたしが伺ってわかる〈のかしら〉{〈}。 N
56 * OFO4〈や一、〉{〉}そんなことないですけどね。 P
57 * OFO4あの一ほら、こう、洋服って綿とか(ええ)ナイロンとかポリエステルとかあ 閧ワすでしょ。
P
58 * BF12 はい。
NM
59 * OFO4で、そういった素材のことの、物理的性能っていうのかしら。 N
60 * OFO4こう、汗を吸う力、吸湿性(ええ)とか、吸水性とか(ふ一ん、はい)そんな ォ能を調べたり、あとは、そうですねえ、快適に衣服を着るためにこう iええ)温度湿度を計って、(ええ)人工気候室で温度湿度を測って、(は
「)それで、人から出た温度と湿度、こう汗かいたりしたのが、(はい)衣 桙 通してどう放散するか、とかいうのやったりしてるんです。
P
61 * BF12 は一ん、〈そうですか〉{〈}。 P
会話例の太字になっている部分が、年下に当たるベースが年上の対話者に対し、常 体(N)を使う場合である。以上の日本人同士の会話例を見ると、べ一スは常体(N)を 使う時、その前と後の発話文のスピーチレベルは、敬体(P)を使っており、常体(N)
が一時的に使われていることが窺える。また、発話文番号55の発話文末のスピーチレ ベルは常体(N)ではあるものの、発話文中に年上の対話相手に対する待遇態度を表す
「伺う」という謙譲語と「かしら」という発話内容をやや和らげる語彙を使っている。
これは、年上の対話相手に対するポライトな気持ちは他の語彙などの使用によって伝 えながら、発話文末は常体(N)を使うことで、対話相手との心理的距離を縮めようと する一種のポジティブポライトネス・ストラテジーとしての機能をしていると言えよう。
韓国人同士の会話例(女性べ一スと年上の女性との会話)
発話文
ヤ号
発話文
I了 話者 発話内容
発話
カ末
138 * KBFO1 モ司ユオ芒早尋菩菩顧亡安召{≧…,
iところが、それは副作用はないようで…。)
NM
139 * KOFO1 忍舛早斗菩{≧叡≡ガ司。ト司,叫。1.
i本当に副作用がないのでやんないといけないよ。)
N
140 * KBFO1 モ司,皇吾{≧♀1叶苦{≧フ『鴇毒叫且.
iでも、最近はいいものがたくさんあるじゃないですか。)
P
141 * KBFO1 モd1,ユ喝刈るレ蓉竺唱司〈臭旦唱刃〉司早升甘フ同≡刀
「。‖.
iところが、そんなに気をつかうともっと〈笑いながら〉肌が荒れるようだ
諱B)
N
142 * KBFO1 スト叶司叫司司午望,判L}王刊司司午旭一,〈薪紮{紮叫且一
r{<}.
iむしろほっとけば、あのわたしもほっとけば一、〈大丈夫ですよ一〉
q}。)
P
143 * KOFO1 〈已 vl1,♀11→⊥斗皇,〉{〉}01零刃1.
i〈でも、あまりにもたくさんできちゃうから、〉{〉にんなに。)
P
144 * KBFO1 叫司η同忍忍司斗升誓旦ス『λ〕ユ司忍オ叫月〈Oj1 9?〉{<}.
iまだ新陳代謝がいいのでそうふうになるんじゃない〈ですか?〉{〈}。)
P
145 * KOFO1 〈ユ司〉{〉}司叫皇?.〈暑。囲臭音〉
i〈そうなん〉{〉}ですか?〈二人で笑い〉。)
P
会話例の太字になっている部分が、年下に当たるべ一スが年上の対話者に対し、常 体(N)を使う場合である。以上の韓国人同士の会話例を見ると、韓国語においても、
日本語と同じく、べ一スは常体(N)を使う時、その前と後の発話文のスピーチレベル は、敬体(P)を使っており、常体(N)が一時的に使われていることが窺える。また、
発話文番号141の発話文末のスピーチレベルは常体(N)ではあるものの、〈笑い〉を伴 っており、会話の雰囲気を和やかにしていると考えられる。これも、対話相手との心 的距離を縮めようとする一種のポジティブポライトネス・ストラテジーとしての機能 をしていると言えよう。
(3)対話相手の性別による「全ての発話文の発話文末のスピーチレベル」の比較 次に、 「全ての発話文における発話文末のスピーチレベル」の「敬体(P)」、 「常 体(N)」、 「丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)」が対話相手の性別に応じてど のような分布を示しているかをべ一スの性別という要因と合わせて調べてみる。
以下では、べ一スの性別ごとに、全ての発話文における対話相手の性別に応じた 発話文末のスピ・…一・チレベルの「敬体(P)」、 「常体(N)」、 「丁寧度を示すマーカー のない発話(NM)」の使用割合と使用頻度を表22と図10に示す。
表22全ての発話文における対話相手の性別に応じた発話文末のスピーチレベルの使用割合と 使用頻度
会話
ュ話文末
JBF
JBM KBF KBM
F
M
FM
FM
FM
P 63.4 i503)
65.7 i514)
44.0 i367)
44.9 i311)
52.5 i489)
49.9 i471)
57.6 i574)
56.3 i500)
N
7.2i57)
4.6 i36)
9.6 i80)
6.9 i48)
13.8 i129)
11.6 i109)
9.5
i95)
8.3 i74)
NM
29.4i233)
29.7 i232)
46.4 i387)
48.2 i334)
33.7 i314)
38.5 i363)
32.9 i328)
35.4 i314)
合計%
i頻度)
100 i793)
100 i782)
100 i834)
100 i693)
100 i932)
100 i943)
100 i997)
100 i888)
7.2
[「「29.4 29.7
4.6
[[46.4 482 同[33・7 38.5L」L」138
9.5 同[32.9 35.4
116 8.3 9.6 69
3. 5.
4. 4. 2 9. 7 6.
図10全ての発話文における対話相手の性別に応じた発話文末のスピーチレベルの使用割合
べ一スの性別ごとに、全ての発話文における対話相手の性別に応じた発話文末の スピーチレベル敬体(P)の使用を見ると、べ一スの性別を問わず、日本語の方は男性 の対話相手に対して、韓国語の方は女性の対話相手に対して、その使用割合がやや高 くなっている。常体(N)は、日本語・韓国語ともに、女性の対話相手に対して、その 使用割合がやや高くなっている。一方、丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)の使 用を見ると、日本語・韓国語ともに、男性の対話相手に対してやや高くなっている。
日本語・韓国語ともに、敬体(P)、常体(N)、丁寧度を示すマーカーのない発話(N M)の全ての項目に関して有意差は見られなかったが、以上の結果から、日本語の方 は、発話文末のスピーチレベルの選択において、男性の対話相手に対し、より丁寧な 言語形式を使っていることが窺える。一方、韓国語の方は女性の対話相手に比べ、男 性の対話相手に対し、言語形式の丁寧度を示すマーか一のある敬体(P)と常体(N)の 使用割合が相対的に低く、丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)の使用割合が相対 的に高いことから、男性の対話相手に対し、よりあいまいな言語形式を使うというこ
とが窺える。
4.3.2.1.2実質的発話文の発話文末のスピーチレベル
ここでは、全ての発話文からあいつち的発話文を除いた「実質的発話文の発話文末 のスピーチレベル」の分析結果を示す。本研究における「実質的発話文(SB)」は、前 にも述べたように、スピーチレベルの判定の基準となる「丁寧度を示すマーカー」が 付けられる発話文である。本研究の目的は、対話相手に応じた話し手のスピーチレベ ルの選択を検討することにあり、スピーチレベルの選択が可能な発話文は全て「実質 的発話文(SB)」として捉え、分析の対象とする。 「実質的発話文の発話文末のスピ