第 3 章 経年設備の健全度可視化
3.3 AHPによる一次変電所健全度評価手法
3.3.1 一次変電所健全度評価手法の定式化
一次変電所の健全度評価手法の定式化にあたっては、多属性評価手法とその応用に関す る調査結果を踏まえるとともに、適用例の豊富なAHP(Analytic Hierarchy Process)手 法を適用することとした。
(1)変電所の健全度評価項目
老朽化が進んだ一次変電所の健全度を評価する項目として、ハードウエアとしての健全 度を表すもの、ならびに環境面の規制に対応するものとして、下記の7項目を選定した。
<見えない劣化度合いを表すもの>
① 主変圧器(154/66 kV)の経年
・ 老朽度を直接表す指標
・ 明治・大正時代に運転開始した変電所の変圧器はその後全てがリプレースされて いることを考慮し、変電所経年ではなく、主変圧器の経年とする。
② 主変圧器の稼働率
・ 設備へのストレスの度合いを表す指標
・ 夏季ピーク時の負荷/認可出力
<見えている劣化度合いを表すもの>
③ 旧形機器(空気遮断器など)数
・ 既に製造中止になっており、予備部品も無く、技術者の多くがリタイアしている などの事情から計画的な取替え方針が出ている機器の台数
④ 不具合兆候機器(漏油や要注意レベルでの可燃性ガス発生変圧器)数
・ 不具合兆候があるが経過観察しながら運転継続しているものの台数
⑤ 同形対策機器数
・ 製造当時の知見では分からなかった設計や製造上の不備などにより、トラブル が発生した機器で、緊急性は無いが適切な保全方策、外部診断を実施しながら、
計画的な取替えや改修を予定している台数。
<環境関連の規制に対応するもの>
⑥ 騒音規制満足度(dBmax/dB規制値)
・ 敷地境界上の最大騒音値/騒音規制値
⑦ PCB混入絶縁油保有量
・ 微量であるが、PCBが混入している変圧器絶縁油総量
第3章 経年設備の健全度可視化
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(2)評価項目の点数化
それぞれの評価項目の単位 [ 経年(年)、稼働率(%)、機器数(台)、騒音規制満足 度(%)、PCB混入絶縁油量(kℓ)]は、そのままでは統合化することはできないた め、以下の点数化による正規化を行うこととした。
○ 各項目を1.0~0の間で点数づけする。
○ 各評価項目の初年度実データについて、74箇所の変電所のうちで最大となる値を見 つけ、これをその後5年間のデータ正規化に当たっての分母にする。
これにより、連続的な時系列データとすることができる。
○ ただし、騒音規制値満足度については、今回の試算においては、データが入手でき なかったため、以下によるものとした。
屋外変電所 第1種規制 1.00 点 2 0.75 3 0.50 4 0.25 非屋外変電所 0.00
なお、経年については年々増えることから、後年度には1.0を上回る値が出てくるが、
経年以外の項目については将来の不具合発見などによる増分を考慮しない計画段階では、
対象機器の取替えなどにより、数値が年々減少していくことになる。
また、今回のアルゴリズムの特徴として、これらの健全度の将来予測(時間推移を把 握)をするという機能も追加した。
(3) AHPによる重みづけを用いた統合化
複数の評価者にAHPの一対比較(注)をしてもらい、その幾何平均をとった。そして、
この重みづけにより、7項目の評点結果を足し合わせた。
変電所毎の総合健全度指標の呼び名は「健全度:S(Soundness)」とし、S(t)は、式(3.1) により7つの正規化した評点Ei(t)をAHPによって求めた重みw(i)で合計する。
∑
=⋅
=
71
) ( ) ( )
(
i
i
t w i E
t
S
(3.1) このSは、最大で1.0、最小で0となり、「小さいほど良い」ことになる。Sが1.0というのは、全ての評価項目が1.0、つまり、その変電所が最も健全度が悪い ということを意味する。 もちろん、その絶対値に意味はなく、変電所間、あるいはエリ ア間の相対的な比較をするためのPU化された数字であることに留意する必要がある。
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30 (注) AHPによる一対比較
表3-13に示す一対比較を行うことで、次元の異なる要素間の重みづけを行うことがで きる。
表3-13 一対比較値の意味
一対比較値 意 味
1 両方の項目が同じくらい重要 3 前の項目が後の項目より若干重要 5 前の項目が後の項目より重要 7 前の項目が後の項目よりかなり重要 9 前の項目が後の項目より絶対的に重要 2, 4, 6, 8 補間的に用いる
上記の数値
の逆数 後の項目から前の項目を見た場合に用いる
(4) 変電所群の健全度統合化
個別変電所の健全度に加えて、支店別、エリア別(都区内、周辺、外辺)あるいは全系 の健全度に統合することにより、様々な階層の意思決定者へ、現状および将来予測の定量 データを提供し、マクロ的なモニタリング(可視化)を可能とする。
その方法としては、個別変電所の健全度を単純に平均する方法(A 案:式(3.2))、ある いは変電所の認可出力MVAiで重みづけ平均する方法(B案:式(3.3))が考えられる。
ここで、Nは変電所の数とする。
<A案>
N t S t
S
N
i i A
∑
==
1) ( )
(
(3.2)<B案>
∑
∑
=
=
⋅
=
Ni
i i N
i i B
MVA MVA t
S t
S
1 1
) ( )
(
(3.3)第3章 経年設備の健全度可視化
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