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 厚生労働省が5年ごとに行っている労働者の意識調査によると、職場でストレスを感じている者の割 合は60%を越えていると報告している(厚生労働省,2005)。しかし、ストレスの影響を常に自覚できると は限らない者もいるため、ストレスの影響下にいる者はもっと多いように思わる。また、その数は年々増 加しているといわれている。

 そこで厚生労働省(2006)の対策として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針について」

(MH指針)が出された。この指針は、「セルフケァ』rラインによるケア」「事業所内産業保険スタッフ等に よるケア」「事業場外資源によるケア」の4つのケァが打ち出され、この中でやりやすいところから少しず つ取り組むように推奨されたものである。これは、すべての労働者に対する病気になる前のストレス対策、

すなわちストレス・コーピングを重視し、自ら主体的かつ能動的にストレスを軽減したり、ストレスと上手 に付き合いながら生活できるようになることを求められている。つまり、WHO(1994)が勧めるライフスキ ル教育など、職場におけるストレスマネジメント教育の必要性を重視し始めたように思われる。

 特別養護老人ホームは、身体的・精神的に著しい障害を持ち常時介護を必要とする高齢者が入居し ている施設であり、このような老人の介護及び家族との関わりは非常にストレスフルな仕事である。その ため仕事の過剰負担や高齢者の家族や職場での人間関係の軋礫などさまざまなストレッサーにさらさ れバーンアウトも少なくない。国としても公的機関の委託事業や研究機関等で介護職のバーンアウトの 広域調査研究がなされており、ようやく対策に乗り出したところである。

 本研究においての総合考察として、多くの先行研究の広域調査の結果を検証すると、バーンアウトの 徴候は年齢が「29歳以下」、勤務形態は「常勤(正規職員)」、職種として「相談員(介護福祉士の資格を 持つもの)」という基本属性を持つ者が、「脱人格化」「情緒的消耗感」が高く、「個人的達成感」が低くな っており、これらの属性の職員がバーンァウトの危険率が高いと報告されている。これらの広域調査(堀 田,2006、宇良,1998、音山,1997)の結果と本研究1の特養Aでの結果を比較すると、広域調査では 性別に有意差は無かったが、特養Aにおいては男性が女性より「情緒的消耗感」が高い結果となり、男 性職員のバーンアウトの危険性を示している。これは、特養Aにおいて職種として相談員の男性の率が 高く、職種の属性の影響を強く受けている可能性があると考えられる。また、性別以外の属性によるバ ーンアウトの危険性は広域調査の結果とほぽ同等の結果となった。さらに、先行研究の仕事におけるコ ントロール感が高い職員ほど仕事に対する魅力を強く感じバーンアウトの危険率が低いという報告(宇 良,1998)のとおり、仕事のコントロール感と働き甲斐を感じる管理職においてバーンアウトの危険率が 低いという結果となった。つまり、特養Aにおいて、全国広域調査の結果とほぽ同等の結果となり広域調

査の先行研究が示すr雇用管理のあり方(堀田,2006)」r仕事のコントロール感を増やす(宇良,1998)」

「利用者中心的介護の導入(音山,1997)」r職種間のコミュニケーションの有用性」等、有意義な示唆を 適応していくことが、今後特養Aにおいて職員のバーンアウトを防止する環境づくりへと繋がると考えら れる。さらに、質の高い介護サービスのためには、介護職のストレスやそれに伴うバーンアウトを防ぐ環 境を整えるだけでなく、仕事に対して達成感や喜びを感じられることも重要であるとの考えから、職務満 足度の状況をあわせて検討する必要があるとも考えられる。また、個人のストレスマネジメント力向上の ための教育プログラムを施設全体で導入する必要性もあると考えられる。

 そこで、本研究目的にも示したように、ラザルスらのストレスモデルからくる「認知」と「行動」に加えて、

日常生活の中でいかに習慣付けていくかという観点からもストレスマネジメント教育のプログラムを組ん だ。つまり、リラクセイション技法によるセッションを行えば、当然心拍数が低下し、副交感神経が活性化 し、アドレナリンの分泌量が減少するという一連の生理学的反応は起こるが、しかしそれは一時的な現 象に過ぎず、それが習慣化し日常生活に定着化させストレス管理が出来るようになることとは別の問題 と考える。そのためにも、セルフケアを重視する有効な技法と、短時間で教育できるストレスマネジメント 教育のプログラムが必要となってくると考えられる。そういう観点から行った介入であり、セッション中の 教示も自宅での実施を促すように意図的に行った。

 本研究結果の、毎セッション前後のネガティブ気分低下と生理学的指標による脈拍数の低下は、新里

(1992)による「筋肉の実際の収縮・弛緩とその感覚を受け取るという作業によって、刺激が末端部から 脊椎を経て脳幹などの自律神経に至り、リラックスできるようになると心臓、血管等の内部筋肉もリラック スし感情も静まる効果がある」と指摘している効果によるものと考えられる。さらには、身体を基礎とした リラクセイション技法のアプローチでは、非言語的な行動による身体への気付きを通じて自己のストレス 状況を自覚・認識していくことがセルフケアの原点であり、それにより自己認識が深まり、対人関係にお いても変化が生じるなど波及効果を期待されると思われる。

 本研究∬より、リラクセイション技法を用いたストレスマネジメント教育プログラムの介入においては、

各質問紙の結果より、仮説として、「ストレス反応による自覚症状が改善され、ストレス解消法の傷つけ 発散が低下したことにより、バーンアウトの危険率が減少し、精神健康度が高くなった」と考えられ、身体 からアプローチすることの意義を示唆する結果となった。また、波及効果として、同僚、家族からのサポ ートも受けやすくなり、対人関係において良好な効果が現われたことも特筆したい。

 さらに技法の差異については、教示方法の違いはあるものの、質問紙結果に如実に現われた。漸進 性筋弛緩法は約70年あまり前にストレス緩和や神経症の治療法としてジェイコブソンにより開発された 訓練法で、身体的側面から心身のリラックスを求めるものであり、不随意の緊張を意識的に抜こうとする

ものである。これは慢性的な肩、背中、首、腰などの凝りや痛みの原因となるとともに雑念やイライラな どの心理的緊張の原因に関わっているもので、この不随意の緊張を弛めることは、心身の健康に大きな 意味を持つものである(藤原,2004)。本研究においても、この技法はイライラ感やぽやけ感、不快感を 緩和し、精神健康度を高めた結果より、すぐれたリラクセイション技法としてストレスマネジメント教育プロ グラムに利用できると思われる。次に、大野(2003)が開発したSART技法の導入において、不安感の減 少が各質問紙ともに見られた。この結果から、SARTは大野(2005)が述べるように「被験者自身が自ら 自分の身体を操作する事によってリラクセイション状態を作り出す作業で、動作法で強調されている主体 感そのものを中核にすえている」ことより、自らのコントロール感を持ち自身の身体に向き合う姿勢を持 ち続けるリラクセイション技法である。よって、主体感の回復が不安感の減少となったと考えられる。

 以上の結果より、本研究においてセルフで行うリラクセイションによるストレスマネジメント教育の重要 性と必要性が実証でき、今後この簡便な教育プログラムが利用されることを期待したい。

 今後の課題として、質問紙の継続フォローアップを行い、リラクセイションによるストレスマネジメントが セルフケアとして機能しているかどうか追跡調査を行い、セルフケア効果の検討をさらに継続して行う必 要があると思われる。

       文 献

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