第四部 Exchange 2010 サイジング ケーススタディ
4.1 サイジング ケース スタディ
4.1.1 MBX サーバー ロール
前提として、システム要件からMBX サーバーの台数を算出します。
縮退運用時、1 MBX サーバー あたり 6,000 個のユーザー メールボックスをホス トするため、縮退運用時は以下のサーバー台数が必要です。
縮退運用時の MBX サーバー台数
= 24,000 個 ÷ 6000 個
= 4 台
2 サーバーの同時障害に備え、MBX サーバーは 6 台 (4 + 2) となります。
4.1.1.1 MBX サーバー ロールの CPU サイジング
1. CPU のサイジングに必要な要素の確認
要件 値 根拠
1 つ の ア ク テ ィ ブ DB コピー に対して作成す るパッシブ DB コピー 数
2 個 2 サーバー同時障害まで対応可能であ るため、1 つのアクティブ DB コピー に対するパッシブ DB コピー数は 2 個
1 サーバーでホストする パッシブ メールボック ス数 (縮退運用時)
6,000個 1 つのアクティブ DB コピーあたり 2 個のパッシブ DB コピーを配置するた め、通常運用時の 1 サーバーあたりの ユーザー メールボックス数は、4,000 個 (アクティブ DB コピー) + 8,000 個 (パッシブ DB コピー) で 12,000 個。
1 サーバーあたり 12,000 個のうち縮 退運用時にホストするアクティブ メー ルボックス数が 6,000 個のため縮退運 用 時 の パ ッ シ ブ メ ー ル ボ ッ ク ス 数 は 6,000 個。
2. CPU 要件の算出
① アクティブ メールボックスのホストに必要な CPU 要件
プロファイルから、アクティブ メールボックスあたりに必要な CPU 要 件は 2 メガサイクルです。
プロファイル
(平均メール送受信数)
CPU要件
(メガサイクル、アクティブ メールボックスあたり)
100 2
システム要件から、縮退運用時のアクティブ メールボックス数は 6,000 個であるため、必要な CPU 要件は以下のように算出します。
アクティブ メールボックスのホストに必要な CPU 要件
= 6,000 個 × 2 メガサイクル
= 12,000 メガサイクル
② パッシブ DB コピーへのレプリケーションに必要な CPU 要件の算出 必要な CPU 要件は以下のように算出します。
パッシブ DB コピーへのレプリケーションに必要な CPU 要件
=12,000 メガサイクル × 0.1 (10%) × 2 パッシブ DB コピー
= 2,400 メガサイクル
③ パッシブ メールボックスのホストに必要な CPU 要件の算出
プロファイルから、パッシブ メールボックスあたりに必要な CPU 要件 は 0.3 メガサイクルです。
プロファイル
(平均メール送受信数)
CPU 要件
(メ ガサイク ル、パ ッシ ブ メールボックスあたり)
100 0.3
必要なCPU要件は以下のように算出します。
パッシブ メールボックスのホストに必要な CPU 要件
= 6,000 個 × 0.3 メガサイクル
= 1,800 メガサイクル
④ MBX サーバー ロールの CPU 要件の算出
手順①~③の結果を合計し、MBX サーバー ロールの CPU 要件は以下 のように算出します。
MBXサーバーのCPU要件
= 12,000 + 2,400 + 1,800
= 16,200 メガサイクル 3. CPU の選定
縮退運用時に CPU 使用率が 80% を超えないようにするには、サーバーに搭 載する CPU は以下の式を満たす必要があります。
プロセッサ コア数 × クロック数 × CPU の数 × 0.8 [80%]
> 16,200 メガサイクル
4 プロセッサ コアの CPU を 2 つ利用すると決定した場合、搭載する CPU は以下の式を満たすものです。
クロック数 > 16,200 メガサイクル ÷ 4 プロセッサ コア ÷ 2 CPU
÷ 0.8 = 約 2,531 MHz
そのため、MBX サーバーには、2.6 GHz 以上の 4 プロセッサ コア CPU を 2 つ搭載します。
4.1.1.2 MBX サーバー ロールのメモリ サイジング
1. DBキャッシュ総量の算出
プロファイルを考慮し、アクティブ メールボックスあたりの DB キャッシュ は 6 MB と決定します。
プロファイル (メール送受信数)
DB キャッシュ (MB)
(アクティブ メールボックス
あたり)
100 6
システム要件からアクティブ メールボックス数 (縮退運用時) は 6,000 個の ため、必要な DB キャッシュ総量は以下のように算出します。
DB キャッシュ総量
= 6,000 個× 6 MB
= 約 35.1 GB
2. DB キャッシュ総量に基づくサーバーの物理メモリ容量の算出
DB キャッシュが 35.1 GB 必要なため、必要な物理メモリ容量は 48 GB で す。
サーバーの物理メモリ (RAM)
DB キャッシュ総量
(MBX サーバー ロールのみ)
48 GB 39.2 GB
3. DB 数から導かれるメモリの最小容量の算出
1 サーバーあたりのアクティブ DB コピー数を求めます。
ディスクサイジングの詳細に関しては、「3.1 MBX サーバー ロールのサイジ ング」を参照してください。
① ユーザー メールボックスあたりのデータ容量を算出します。
ユーザー メールボックスあたりのデータ容量は、以下のように算出します。
空白領域
= 100 通 × 75 KB
= 約 7.3 MB ごみ箱領域
= (100 通 × 75 KB × 14日) + (2 GB × 1.2%) + (2 GB × 5.8%)
= 約246 MB
ユーザー メールボックスあたりのデータ容量
= 2 GB + 7.3 MB + 246 MB = 約2.25 GB
② DB あたりのユーザー メールボックス数の算出
DB あたりのユーザー メールボックス数は、以下のように算出します。
DB あたりのユーザー メールボックス数
= 530 GB ÷ 2.25 GB
= 約235個
③ 1 サーバーあたりのDB 数の算出
24,000 個のユーザー メールボックスを 6 台のサーバーでホストするため、
1 サーバーあたりのアクティブ メールボックス数は以下のように算出しま す。
1 サーバーあたりのアクティブ メールボックス数
= 24,000 ÷ 6 台 = 4,000 個
よって、1 サーバーあたりのアクティブ DB コピー数は、②で算出した DB あたりのユーザー メールボックス数と、上記で算出した 1 サーバーあたり のアクティブ メールボックス数から、以下のように算出します。
1 サーバーあたりのアクティブ DB コピー数
= 4000 個 ÷ 235 個
= 約 17 個
1 アクティブ DB コピーあたり 2 パッシブ DB コピーであるため、1 サーバーあたりの DB 数は、以下のように算出します。
1 サーバーあたりの DB 数
= 17 個 (アクティブ DB コピー) + 17 × 2 個 (パッシブ DB コ ピー)
= 51 個
1 台のサーバーあたり 51 DB をホストするので最小限必要な物理メモリ容 量は 12 GB です。
DB 数 メモリの最小容量 51 ~ 60 12 GB
4. メモリサイズの決定
DB キャッシュ総量に基づくサーバーの物理メモリ容量 (48 GB) と DB 数 から導かれるメモリの最小容量 (12 GB) を比較した結果、48 GB がサーバー のメモリ容量となります。
4.1.1.3 MBX サーバー ロールのディスク容量のサイジング
1. DB 容量の算出
① ユーザー メールボックスあたりのデータ容量の算出
ユーザー メールボックスあたりのデータ容量は、以下のように算出します。
空白領域
= 100 通 × 75 KB
= 約 7.3 MB ごみ箱領域
= (100 通 × 75 KB × 14日) + (2 GB × 1.2%) + (2 GB × 5.8%)
= 約246 MB
ユーザー メールボックスあたりのデータ容量
= 2 GB + 7.3 MB + 246 MB = 約2.25 GB
② DB あたりのユーザー メールボックス数の算出
DB あたりのユーザー メールボックス数は、以下のように算出します。
DB あたりのユーザー メールボックス数
= 530 GB ÷ 2.25 GB
= 約 235 個
③ 実際の DB 容量の算出
手順①、②より、実際に必要な DB 容量は以下となります。
実際の DB 容量
= 235 個 × 2.25 GB
= 約 530 GB
④ コンテンツ インデックス領域の算出
DB 容量の約 10% がコンテンツ インデックスとして作成されるため、コン テンツ インデックス領域は以下のように算出します。
コンテンツ インデックス領域
= 530 GB × 10%
= 53 GB
⑤ オーバーヘッドの考慮
バッファ領域として、20% を考慮します。
⑥ 合計 DB容量の算出
手順③~⑤より、DB あたりに必要となるデータ容量は以下のように算出し ます。
合計 DB容量
= (530 GB + 53 GB) × (1 + 0.2[20%])
= 約700 GB
2. DB あたりのトランザクション ログ容量の算出
① DB あたりの 1 日分のトランザクション ログ生成数の算出
プロファイルから、1 日にあたりのトランザクション ログ生成数は 20 で す。
プロファイル
(平均メール送受信数、
平均メールサイズ: 75KB)
1 日あたりのトランザクショ ン ロ グ 生 成 数(ユ ー ザ ー メールボックスあたり)
100 20
DB あたりの 1 日分のトランザクション ログ生成数は以下のように算出 します。
DB あたりの 1 日分のトランザクション ログ生成数
= 235 個 × 20
= 4,700 個
② バックアップと復元の考慮
システム要件より、バックアップは行わず循環ログを有効にするため、トラ ンザクション ログ容量として、1 日に必要なトランザクション ログ容量の 3 倍を割り当てます。
③ ユーザー メールボックスの移動に必要なトランザクション ログ容量の算出 システム要件より、1 週間に全体の 1% のユーザー メールボックスを移動 します。すべての DB へ均等にユーザー メールボックスを移動するとして、
1 DB あたりのユーザー メールボックスの移動に必要なトランザクション
ログ容量は、以下のように算出します。
ユーザー メールボックスの移動に必要なトランザクション ログ容量
= 移動するユーザー メールボックスの数
× ユーザー メールボックスあたりのデータ容量 (空白領域、ごみ箱 領域を含む)
÷ 全アクティブ DB コピー数
= (24,000個 × 0.01 [1%]) × 2.25 GB ÷ (17 個 × 6 台)
= 約 5.3 GB
④ オーバーヘッドの考慮
バッファ領域を 20% とします。
⑤ DB あたりのトランザクション ログ容量の算出
トランザクション ログ容量は以下の通り算出します。
DB あたりのトランザクション ログ容量
= (5.3 GB + 4,700 個 × 1 MB × 1 日 × 3) × (1 + 20%)
= 約 23 GB
3. 必要な LUN 領域の算出
システム要件より DB とトランザクション ログを同じ LUN に配置します。
DBあたりの LUN 容量
= (700 GB + 23 GB) ÷ (1 - 0.2 (空き領域 20%) )
= 約 904 GB
4.1.1.4 MBX サーバーのディスク性能サイジング
1. DB 領域に必要な IOPS
プロファイルと DB キャッシュサイズから、DAG 構成におけるユーザー メールボックスあたりの IOPS は 0.1 です。
プロファイル
(平均メール送受信数)
DB キ ャ ッ シ ュ (MB)
IOPS
(DAG 構成時)
100 6 0.1
DB あたりのユーザー メールボックス数は 235 個であるため、必要な IOPS は以下となります。
DB 領域に必要な IOPS 値
= 235 個 × 0.1 × ( 1 + 0.2 (オーバーヘッド 20%) )
= 28.2 IOPS
2. トランザクション ログ領域に必要な IOPS
DAG 構成におけるトランザクション ログの IOPS は、DB と比較して 50%
分が必要となるため、以下となります。
トランザクション ログ領域に必要な IOPS 値
= 28.2 IOPS × 0.5 × ( 1 + 0.2 (オーバーヘッド 20%) )
= 16.9 IOPS