●
防犯性能の考え方建物などへの侵入を目的とした故意の攻撃に対 して、ガラスの破損はさけられません。したがっ て、ガラスが破損しても手を入れてクレセントな どを開錠できるような開口や、人間の出入りが 可能な開口が生じない耐貫通性の高いガラスが 必要となります。
板ガラスの貫通性能は、強靭な中間膜を持つ 合わせガラスが最も優れており、その中でも 防犯性能をもつガラスの例としては、ガラス の総厚が6ミリ以上で中間膜の厚さが30mil
(0.76mm)以上の合わせガラス、またはそのよ うな合わせガラスを用いた複層ガラスなどがあ ります。防犯用途にはこれらのガラスを使用し なければなりません。
中間膜厚が15mil(0.38mm)の合わせガラス、
網入板ガラス、強化ガラスは侵入を目的とした 攻撃に対しては防犯用途としての耐貫通性が十 分ではありませんのでご注意ください。
●
防犯性能基準近年、ガラス破りによる住宅への侵入犯罪が急 増しました。このような背景から、侵入犯罪を 防止するため、ドア、窓、シャッター等の建物 部品の防犯性能を高めて、これらを普及させて いくことを目的して「防犯性能の高い建物部品 の開発・普及に関する官民合同会議(以下、官 民合同会議)」が2002年に設置されました。官 民合同会議では建物部品別に防犯性能の試験 に関する細則を作成し、2004年には一定の防 犯性能があると認定されたものについて「防犯 性能の高い建物部品目録」を公表しています。
表 2
一方、板硝子協会では(財)都市防犯研究セン ター協力のもと実験等を行って、犯罪手口に即 した防犯ガラスの評価基準を「ガラスの防犯性 能に関する板硝子協会基準」として2002年に公 表しています。
官民合同会議の基準は、ガラスやサッシ、ドア、
錠前などの建物部品で、防犯性能が高い部品を 商品ごとに認定する制度です。
これに対し、板硝子協会の基準はガラスそのも のに適用されるもので、使用者が性能に応じて 選択できるように、防犯性能に応じてガラス商 品をグレード分けしています。
官民合同会議の基準を満足しているすべての防 犯ガラスが板硝子協会の基準も満足していま す。代表的な合わせガラスに関して官民合同会 議の基準と板硝子協会基準、ISO16936-1の適 合をまとめると表 3となります。
表 1 JISによる耐衝撃性能基準
JISR3206強化ガラス JISR3205合わせガラス
試験方法
図 1に示す装置を用い、加撃体(45kg鉛粒入ショットバッグ)を種類に応じた落下高さから 振子式に落下させて中心点付近を加撃し、ガラスを破壊する。
(Ⅰ類:破砕試験のみ)
Ⅲ類:破砕試験に加えて、落下高さは落下 高さ30、75、120cmの3ステップの ショットバッグ試験を行います。
(Ⅰ類:落球試験による衝撃はく離のみ)
以下では落球衝撃はく離試験に加えて、落 下高さは
Ⅱ−1類:落下高さ 120cm
Ⅱ−2類:落下高さ 75cm
Ⅲ類 :落下高さ 30〜230cmの間の 10ステップ
(ガラス厚計16ミリ以下に適用)のショット バッグ試験を行います。
判定方法
(1)ガラスが破壊した場合、供試体4枚に 対して、破壊より5分以内に最も大きい 10個の破片を選び、その質量の合計が 供試体65cm2に相当する質量以下であ ること。
(2)落下高さ120cmでガラスが破壊しな いこと。
(1)ガラスが破壊した場合、供試体4枚に 対して、破壊部分に直径75mmの球が 自由に通過する開口を生じてはならな い。
(ただし、Ⅲ類にあっては、構成するガ ラス2枚とも破壊した場合の直径で判 定する)
(2)ガラスが破壊しないこと。
ショットバッグ試験のフレーム・加撃体 図 1
試験枠 単位 mm
木製締め枠
供試体寸法-19
固定壁
供試体の中央線 木製締め枠 バッグを自由につり下げた とき最大13
ボルトで床に固定
補強フレーム どちらかの 方法で支える 供試体寸法-19
最小914 最小914
落下高さ
最小1524 鋼より線径約3
試験枠
強度・安全
4 - 4
また、2005年9月以降に出荷された弊社の防犯 ガラスには図 2と図 3が表示されています。C Pマークは官民合同会議の防犯建物部品に認定 されたことを示しており、防犯ガラスのシンボル マークは板硝子協会基準を満たしていることを 表しています。
弊社商品の詳しいグレード分けは商品編をご覧 ください。
CPマーク
図 2 防犯ガラスの
シンボルマーク 図 3
●
防犯ガラスを採用する場合の注意点 ガラスだけではなく窓として防犯性能を高める ためには、ガラスを納めるサッシも官民合同会 議の目録に記載されたサッシをご使用ください。リフォーム等でガラスのみを取替えるとき、サッ シが官民合同会議の目録に記載されていない場 合は、表 4に示した板硝子協会による付帯事 項を満足するようにしなければなりません。
●
官民合同会議のガラスに関する基準 1.本基準が対象としている侵入手口 本基準では、ガラス破りの侵入手口のなかで最 近多い3つの手口(打ち破り、こじ破り、焼き破 り)を対象としています。「ガラスの防犯性能に 関する板硝子協会基準」にはない焼き破りの手 口についても評価を行うように試験が追加され ています。2. 防犯性能の高い建物部品として認定され ているガラス
①
「ガラスの防犯性能の試験に関する細則」に 定める試験項目のうち打ち破りについて7回 以上、こじ破りおよび焼き破りについて5分 以上の抵抗性能を示したガラスであり、FL3+30ミル+FL3、またはFL2.5+60ミル+F L2.5の合わせガラスです。
②①の合わせガラスと中間膜の素材・厚さが同
等以上、かつガラスの合計の厚さがそれ以上 であるものも該当します。③
①と②の合わせガラスを少なくとも片側に 使った複層ガラスも該当します。3.ガラスの防犯性能の試験に関する細則
①〜③のいずれかに該当するものでなければ、
官民合同会議の認定試験を受験することができ ません。
①JISR3205に適合する合わせガラスで、かつ
30mil※以上の中間膜の厚みを有するもの。※milは1/1000インチで0.0254mm
②
①以外のガラスにおいては、後述の「ガラス の防犯性能に関する板硝子協会基準」に定め る打ち破り性能の基準P2A以上の性能を有す るもの。③
上記①または②を少なくとも一層に使用する 複層ガラスなどの機能ガラス。以下に各試験の概要を示すが、各試験で3体の 試験体の試験を行ってすべてのガラスが合格し なければなりません。
(1)打ち破り試験
バールによりクレセント付近および補助錠付近 の2ヶ所に計7回打撃を加えて、手首程度まで挿 入が可能な孔をあけて手首を差し込み、サッシ を開く方法により行い、サッシが開かなかった ものを合格とする。
(2)こじ破り試験
クレセント付近および補助錠付近に、ドライ バーを使用して手首程度まで挿入が可能な孔を あけて、手首を差し込み、クレセントおよび補助 錠を開錠する。クレセントおよび補助錠がとも に外れた状態になった後、外障子側の窓を開く までの時間が5分以上要したとき合格とする。
なお、試験体より1m離れた位置で音圧を測定 し、90dBを超える音が発生した場合は、攻撃 を20秒間休止しなければならない。
(3)焼き破り試験
携帯用バーナーを用いてクレセント付近および 補助錠付近を攻撃して、手首程度まで挿入が可 能な孔をあける。クレセントおよび補助錠を外 して外障子側の窓が開くまでの時間が5分以上 要したとき合格とする。
表 2 防犯性能の高い建物部品(ガラス)の目録例
商品名 構成・仕様
(ガラスの厚さ+中間膜+ガラスの厚さ)
カラーラミセーフ 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
スクールセーフィー 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
スクールセーフィークールベールタイプ 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
セキュレ 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
セキュレ 2.5ミリ+PVB60ミル+2.5ミリ
セキュレクールベール 2.5ミリ+PVB60ミル+2.5ミリ
セキュレクールベール 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
ラミシャット 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
ラミセーフセキュリティ 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
ラミセーフセキュリティ 2.5ミリ+PVB60ミル+2.5ミリ
ラミセーフセキュリティクールベールタイプ 2.5ミリ+PVB60ミル+2.5ミリ ラミセーフセキュリティクールベールタイプ 3ミリ+PVB30ミル+3ミリ
<凡例>
PVB:ポリビニルブチラール
表 3 合わせガラスと各種基準との適合性
合わせガラス構成 FL3+PVB30ミル+FL3 FL3+PVB60ミル+FL3 FL3+PVB90ミル+FL3
官民合同会議 防犯性能の高い建物部品に適合
板硝子協会基準 P2A/P2K適合 P4A/P3K適合 P5A/P3K適合
ISO16936-1 P2A適合 P4A適合 P5A適合
4-4-2
強度・安全
4 - 4
●
「ガラスの防犯性能に関する板硝子協会基準」1.本基準の目的
本基準は、ガラスの防犯性能のあり方を明示 し、一般生活者の防犯意識を高め、犯罪の防 止に貢献することにある。
2.本基準が対象としている侵入手口 本基準は、現在公開されているガラス破りの 侵入手口のなかで、最も割合の多い2つの手口
(打ち破り、こじ破り)を対象としている。侵 入手口の変化に応じて本基準は改訂されるも のである。
3.「防犯ガラス」の定義
本基準において、4.5.に示す性能ランクの、
P2A以上かつP2K以上の基準を満たすもの を、2.の対象手口に対して防犯性能が期待で きるガラスとする。さらに、官民合同会議に よって「防犯性能の高い建物部品目録」に掲 載されたガラスを「防犯ガラス」と呼称する。
4.防犯性能を示す性能基準
(「打ち破り」手口に関連付けられる防犯性能)
本試験方法は、ISO16936-1に準じている。
特に、破壊音をあまり気にせずにガラスを破 壊し、住民や警備員などが駆けつける前に数 分で目的を達成しようとする、いわゆる「打ち 破り」手口に関連付けられる。
(1)試験方法概略 鋼球落下試験
(詳細はISO16936-1の該当箇所の規定に 従う)
①使用鋼球 直径100mm、重さ約4.11kg
②
落下方法 中心付近の一辺130mmの正三角 形の各頂点に順に鋼球を落下させる。③供試体の大きさ 900×1100mm
④落下高さと落下回数
表 5⑤
上記高さ・回数で実施し、三供試体全てにお いて鋼球がつき抜けなかったとき、その分類 に合格したとみなされる。(2)「打ち破り」を対象にした防犯性能が認め られるガラスの仕様基準
板ガラスメーカー各社の実験結果、および中間 膜メーカーにヒアリングした結果から、4.の性 能基準に対して推奨されるガラス仕様を以下に まとめる。なお、これらは仕様の一例であって、
固定されたものではない。また実験値として示 したもので各ガラス仕様の性能を保証するもの ではない。
個々のガラスのランク付けは試験結果(性能基 準)によって行われる。表 6
5.防犯性能が認められるガラスの仕様基準
(「こじ破り」手口に関連付けられる防犯性 能)
「こじ破り」は、ドライバーなどで音を出さな いようにガラスを破壊し、まわりに気づかれ ないよう密かに侵入しようとする侵入手口で あり、日本独特の侵入方法である。
(1)「こじ破り」を対象にした防犯性能が認 められるガラスの仕様基準
本基準は、平成13年11月に実施された財団法 人都市防犯研究センターによる実験結果に基づ いている。
表 7に仕様基準の一例をまとめるが、これらは 実験値として示したもので各ガラス仕様の性能 を保証するものではない。
①P3Kに属するものは、ドライバーを使ったこ
じ破りに対し防犯性能が期待できるもの。②
P2Kに属するものは、補助錠との併用により、ドライバーを使ったこじ破りに対し防犯性能 が期待できるもの。
③
P1Kに属するものは、ドライバーを使ったこ じ破りに対し防犯性能が期待できるレベルに は届かないが、単板ガラスのフロートガラス、網入ガラス、強化ガラスとの比較においては 優位性が認められたもの。
④
単板ガラスのフロートガラス、網入ガラス、強 化ガラスについては、「こじ破り」に対する防 犯性能は期待できない。参考)試験方法概略 侵入再現試験
※詳細については財団法人都市防犯研究セン ター資料参照
①
試験体 H4.5尺×W6尺の引き違いサッシに ガラスをはめ込んだもの②使用道具 ドライバー
③
実験方法 ドライバーによるこじ破りを実施 し、クレセントを外して外障子を開けるまで の時間(所要時間)を計測する。<本基準を適用するにあたっての注意事項>
ここで規定した「防犯ガラス(防犯性能が期待で きるガラス)」は、実験の性質上から考えられる 再現性や、実際の犯行との相違などといった点 から、絶対的なものではなく、むしろ相対的な 位置付けを示すものとして捉えるべきである。
また、これらのガラスは何れも、「破れない」ガ ラスではなく「破りにくい」ガラスであることも 認識しておくべきである。したがって、開口部の 防犯設計にあたっては、ガラス単体だけでなく、
補助錠との併用や頑丈な窓構造への転換、セ キュリティシステムを導入する、などといった総 合的な検討を行うことが必要である。
表 4 付帯事項
施工状態 ガラスの種類
ガラスの仕様
サッシに装着する補助錠の必要個数
サッシのかかりしろ サブロック付きクレセントの場合 サブロック無しクレセントの場合
10mm以上 防犯ガラス 補助錠1個 補助錠を離れた場所に2個
図 4
10mm未満 防犯ガラス 補助錠を離れた場所に2個
図 4 対応不可
10mm未満 アタッチ付き
防犯ガラス 補助錠1個 補助錠を離れた場所に2個
図 4 注)防犯ガラスとは、官民合同会議の「防犯性能の高い建物部品目録」に登録されたガラスです。
防犯ガラス
シーリングの例 ガスケットの例
シーリング材
バックアップ材 セッティングブロック
防犯ガラス
ガスケット
10mm以上
10mm以上
クレセント 補助錠
引き違い窓に補助錠を2個取付けた例
施工例 図 4
強度・安全