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(1)省エネ法制定と改正の経緯および関連告示 わが国の省エネルギーへの取り組みについて は、1970年代のオイルショックを契機として、

1979年に「エネルギーの使用の合理化に関す る法律」(昭和54年6月22日通称「省エネ法」)が 制定されました。

その後、湾岸戦争の勃発や京都議定書締結・批 准などが要因となり、「省エネ法」は、平成14 年(2002年 )、平 成17年(2005年 )、平 成20年 (2008年)など、長年の改正を経て強化されてき ました(表 5)。「省エネ法」においては、図 1 に示すように、省エネのための措置を、「工場等」

「輸送」「建築物」「機械器具」「電気事業者」の5 つの分野に分けて、国民に努力を促しています。

この法律の制定に伴い、「建築物」の分野とし ては、建築物に対する省エネルギーの判断基準

(通称「省エネ基準」)が、住宅および非住宅(ビ ル等)それぞれを対象とした告示として示されて きました(表 6)。

この「省エネ法」に基づいた「省エネ基準」は、

住宅及び非住宅(ビル等)の性能評価をおこなう

<性能基準>と、住宅の仕様評価をおこなう<

仕様基準>、住宅事業主の判断の基準となる<

トップランナー制度>の3つの基準から成り立っ ています。

<性能基準>は平成25年4月1日施行の告示「エ ネルギー使用の合理化に関する建築主及び特定 建築物の所有者の判断の基準」から住宅(戸建・

集合)および非住宅(事務所ビル等)の区分をと りやめ、大幅な改定がおこなわれました。また、

<仕様基準>は、「住宅に係るエネルギー使用 の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指 針(平成25年10月1日施行)の附則として示され ています(表 7)。

表 6 建築物分野の省エネ基準関連告示

住宅

(戸建、集合)

<性能基準>

経済産業省・国土交通省 告示第3号

(平成18年3月27日) 住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関 する建築主等及び特定建築物の所有者の 経済産業省・国土交通省判断基準

告示第1号一部改正

(平成21年1月30日)

<仕様基準>

国土交通省 告示第378号

(平成18年3月27日) 住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関 する設計、施工及び維持保全の指針 国土交通省

告示第118号一部改正

(平成21年1月30日)

<トップランナー制度>

(一戸建て建売住宅を、

年間150戸以上販売の 住宅事業主対象。

集合住宅は除く)

経済産業省・国土交通省 告示第2号

(平成21年1月30日)

住宅事業建築主の新築する特定住宅の外 壁、壁等を通しての熱の損失の防止及び住 宅に設ける空気調和設備等に係るエネル ギーの効率的利用のために特定住宅に必要 とされる性能の向上に関する住宅事業建築 主の判断基準

非住宅(事務所ビル等)

通商産業省・建設省 告示第1号

(平成11年3月30日) 建築物に係るエネルギーの使用の合理化に 関する建築主等及び特定建築物の所有者の 経済産業省・国土交通省判断基準

告示第3号

(平成21年1月30日)

表 7 建築物分野の省エネ基準関連告示(平成25年以降)

住宅

(戸建、集合)

非住宅

(事務所ビル 等)

<性能基準>

経済産業省・国土交通省 告示第1号

(建築物:平成25年4月1日)

(住宅:平成25年10月1日) エネルギーの使用の合理化に 関する建築主等及び特定建築 物の所有者の判断基準 経済産業省・国土交通省 告示第1号

経済産業省・国土交通省 告示第7号 一部改正(平成26年4月1日)

住宅

(戸建、集合) <仕様基準> 国土交通省 告示第907号

(平成25年10月1日)

住宅に係るエネルギーの使用 の合理化に関する設計、施工及 び維持保全の指針の附則 表 5 省エネ法制定および改正の主な経緯(建築物に関する措置)

制定、改正年度 「建築物分野」に関する主な内容

昭和54年(1979年)6月 省エネ法制定

建築物の省エネ措置を総合的に進めることを義務づけ、事業者等 が努力すべき事項の判断基準(省エネ基準)を公表。建築物におけ る様々な省エネ対策の実施がなされる事となった。

平成14年(2002年)6月 改正 一定規模(2000m2)以上の非住宅建築物(事務所ビル等)の新築、

増改築の際に省エネ措置の届出が義務付け。

平成17年(2005年)8月 改正

一定規模(2000m2)以上の非住宅建築物(事務所ビル等)につい て、大規模修繕等を行う場合にも省エネ措置の届出を義務付け。

また、一定規模(2000m2)以上の住宅についても、非住宅建築物 と同様に届出等を義務付け。加えて、省エネ措置の維持保全状況 の定期報告が義務付け。

平成20年(2008年)5月 改正

省エネ措置の届出義務の対象を、300m2〜2000m2未満の中小規 模建築物(住宅・非住宅)まで拡大。2000m2以上の建築物では、

省エネ措置が不十分な場合には従来の指示・公表に加えて罰則・

命令を導入。また、戸建住宅を建築・販売する建築事業主に対し て、住宅の省エネ性向上を促す施策を新たに導入。

省エネ法の体系 図 1

省エネ法

工場等に係る措置

建築物に係る措置

電気事業者に係る措置 輸送に係る措置

機械器具等に係る措置

3-6-2

光・熱・省エネルギー

3 - 6

(2)省エネ法と届出の概要(建築物関連)

エネルギーの使用の合理化に関する法律第75 状及び第75条の2に基づき、一定規模以上の建 築物の新築、増築、改築、修繕等を行う場合に、

省エネルギー措置の所管行政庁への届出が義 務化されています(表 8)。この法律では床面積 の合計が2000m2以上の建築物を「第一種特定 建築物」、床面積の合計が300m2以上2000m2 未満の建築物を「第二種特定建築物」と区分し て規定しています。

また、届出を行った場合には、その後3年ごとに 維持保全の状況を所官行政庁に報告する必要が あります(第二種特定建築物は住宅である場合 は報告を要しない)。報告後は所官行政庁が内 容を確認し、判断基準に照らして著しく不十分 である場合には勧告を受けます。

なお、300m2未満の建築物については現時点では 努力義務ですが、経済産業省・国土交通省・環境 省が共同で設置した「低炭素社会に向けた住まい と住まい方推進会議」の中間報告では省エネ施策 を一層進めるべく、300m2未満の建築物を含め、

すべての新築住宅、及び非住宅建築物について順 次適合義務化がおこなわれる予定です。(図 2)

対象 義務

建築物 住宅

第1種特定建築物

(2,000m2以上)

第2種特定建築物

(300〜2,000m2

第1種特定建築物

(2,000m2以上)

第2種特定建築物

(300〜2,000m2

住宅事業建築主

(150戸/年以上)

①新築・増改築時の 省エネ措置の届出義務

届出義務 届出義務 届出義務 届出義務

指示・公表・

-命令・罰則 勧告 指示・公表・

命令・罰則 勧告

②大規模な設備改修時の 省エネ措置の届出義務

届出義務

-届出義務

-

-指示・公表・

命令・罰則 指示・公表・

命令・罰則

③省エネルギー措置の 届出後の3年毎の維持 保全状況の定期報告義務

届出義務 届出義務 届出義務

-

-勧告 勧告 勧告

④住宅事業建築主の 特定住宅における 省エネ性能の向上

- - -

-努力義務 勧告・公表・

命令

・エネルギーの効率的利用のための措置の届出義務違反⇒50万円以下の罰金

・維持保全状況の定期報告義務違反⇒50万円以下の罰金

・ 300m2未満の住宅・建築物(住宅事業建築主(150戸/年以上)が新築する特定住宅を除く)については、努力義務のみ。

引用元:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構 建築物の省エネルギー基準講習会 補助資料 平成26年5月

省エネルギー基準の見直しの方向性

● 住宅と建築物の省エネ基準について、国際的にも使われている一次エネルギー消費量を指標とし て、同一の考え方により、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価できる基準に一本化。

● その際、室用途や床面積に応じて省エネルギー性能を評価できる計算方法とする。また、太陽光発電 の設置による自家消費については積極的に評価する。

<建築物の基準特有の課題>

・ 外皮の断熱性及び個別設備の性能を別々に評 価する基準となっており、建物全体で省エネ効 果の高い取組を適切に評価できない。

• 基準が「事務所」、「ホテル」など建物用途ごとに 設定されているため、複合建築物の省エネ性能 を適切に評価できない。

<住宅の基準特有の課題>

• 外皮の断熱性のみを評価する基準となってお り、省エネ効果の大きい暖冷房、給湯、照明設備 等による取組を評価できない。

• 一次エネルギー消費量による評価を行う住宅 トップランナー基準でも、120m2のモデル住宅 における省エネ性能しか評価できない。

・義務化の水準は義務化導入時点での省エネ基準達成率等を勘案して設定。

・伝統的な木造住宅にも配慮した適切な評価とするように、有識者等の意見も踏まえ検討を進める。

2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2030

大規模 届出義務

(2,000m2以上) 適合義務(※)

(2,000m2以上)

適合義務(※)

(300 〜 2,000m2

中規模

届出義務

(300〜2,000m2

小規模

(300m努力義務2未満) 適合義務(※)

(300m2未満)

告示改正

省エネルギー 基準改正

【非住宅】

2013年度 4月施行

【住宅】2013年度 10月施行

住宅 建築物の 最低限の 省エネ性能確保

省エネ施策の適合義務化工程表 引用元:「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」の中間報告資料 図 2

表 8 省エネ法(建築物)の対象規模・届出対象・義務違反の概要 【省エネ法第72条(要約)】

住宅・建築物の建築、修繕等をしようとする者及び所有者は、国が定める基本方針に留意して、

住宅・建築物に係るエネルギーの使用の合理化に努めなければならない。

省エネ法における義務の対象及びエネルギーの効率的利用のための措置が著しく不十分な場合の担保措置について

(3) 省エネ基準(建築物関連)の課題と見直 しの方向性

建築物の省エネ法は、平成25年以前の基準は 以下のような課題があげられ、見直しの方向性 がまとめられてきました(図 3)。

引用元:国土交通省住宅局 「省エネルギー基準の改正等について」平成26年2月より抜粋 改正前の省エネ基準の課題と見直しの方向性

図 3

光・熱・省エネルギー

3 - 6