第2章 ゲート制御アルカリ金属イオンインターカレーション
WTe 2 結晶薄膜へのカリウムイオンインターカレーションの試み
この方法で作製したデバイスについて,カリウムイオン電解質を用いた電解質ゲーティ ングを行い,その電気伝導特性の変化を観察した.結果を次に示す.
◼ 試料抵抗の見積もり
まず,2端子測定により試料の電気抵抗の見積もりを行った.試料に-5 mV ~ 5 mVの範 囲で1 mVごとに電圧を印加し,その電流を読み取った.これをV-Iグラフで示し,その 傾きから電気抵抗値を見積もった(図 2-27).
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図 2-27:2端子測定によるV-I特性から試料抵抗の見積もり
写真で示した試料は~89 Ωだったが,別の同様の試料についても同じ測定をしたところ 10 Ω ~ 100 Ω程度のものがあり,金属に近いような抵抗値を持つことがわかった.
◼ Bias = 1 mVかけながらGate電圧を変化させたときの振る舞いを時間経過で観察
上記で作製したデバイスにBias = 1 mVをかけながらGate電圧を印加していき,その
時のDrain電流,Leak電流の振る舞いをそれぞれ時間経過プログラムで観察した.その様
子を図 2-28に示す.
図 2-28:Gate電圧を変化させたときのDrain電流(ID),Leak電流の時間変化
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はじめに,ピンクの枠で示した部分に注目する.まず,VG < 2 VではGate電圧を上げ
るほどDrain電流が減少する振る舞いが見られていたが,VG = 2 VでDrain電流が急上昇
する振る舞いが見られた.
次に,黄色の枠で示した部分に注目する.VG = 2.5 VでDrain電流が減少し,その後は Gate電圧を下げるほどDrain電流が上昇していくという振る舞い.
最後に全体を見ると,測定開始時のVG = 0 VのDrain電流より,測定終了時のVG = 0
VのDrain電流が約3倍に大きくなっていることがわかる.
カリウムイオン電解質を用いた電解質ゲーティングの測定前後の2端子測定による電気 抵抗値見積もりの結果の比較を図 2-29に示す.
図 2-29:カリウムイオン電解質を用いたゲーティング前後の抵抗見積もり値の比較
結果を見ると,測定後の試料は電気抵抗が3分の1程度に減少していることがわかる.こ こから考えられるのはVG = 2 VでのDrain電流の急上昇は不可逆的なものであり,それ がカリウムイオンインターカレーションかはわからないが,この不可逆的な電流増加によ って抵抗が減少したと考えられる.
次に別の同様のデバイスの測定結果の一部を図 2-30に示す.
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図 2-30:Drain電流のGate電圧依存性を時間経過観察したグラフ
この試料についてはGate電圧を上げるほどDrain電流は減少していき,特にVG = 2.5 V で電流が著しく減少する.その後VG = 14 Vまで印加したが,結果として,正のGate電 圧印加によってDrain電流が増加することは起きなかった.またVG = 0 Vに戻しても,
測定開始時のDrain電流値までは戻らず,一部のDrain電流の減少は不可逆的に起きた.
結局,この試料においては正のGate電圧印加は抵抗を増やす方向に働いたと考えられ る.
◼ 追加実験:測定後の試料の膜厚測定
カリウムイオン電解質を用いた電解質ゲーティングをした試料について,WITec社製光 学顕微鏡のAFM測定モードによって膜厚測定を行った(付録5.4.4参照).図 2-31は その際に撮影したWTe2結晶薄膜である.
図 2-31:膜厚測定の際に撮影したWTe2結晶薄膜の顕微鏡写真
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端面に影などが目立ち,結晶薄膜が厚いことがわかる.膜厚も場所によってバラつきがあ り,480 ~ 540 µmほどという結果だった.