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第 6 章 救命救急型ドライブレコーダによる実事故解析

6.2 自動車救命システム J-ACN と救急救命型ドライブレコーダ

現在,交通事故が発生した場合の通報過程は,事故当事者あるいは目撃者から110番あるい は119番へ携帯電話等を用いて緊急通報を行い,救急指令センターへ事故現場や傷害者の有無 等を連絡している.次に消防署の救急車は,救急指令センターより報告を受けた現場に急行し,

救急隊員は受傷状況,意識レベル,バイタルサイン(脈拍,呼吸,体温,血圧)を現場で検査 している.その後,救急隊は基本的には治療を実施可能かつ直近の病院へ急患の打診と患者の 受入れ要請をおこなう.患者の受け入れ先が決定した後,救急車は病院へ緊急走行し,病院に 到着した段階で,救急の医師は受傷状況,バイタルサイン,受傷転機,個人の医療情報を再度 検査している.

図 6-1に示すJ-ACN自動車救命システムは,事故当事者からの通報や救急隊員による受入

れ病院探索のような時間的要素の低減と共に救急隊員や医師へ積極的に事故情報を提示し,医 師が最適な治療をできるようにすることで救命率を上昇させることを目指している.

図 6-1 J-ACN自動車救命システム

82 6.2.2 救急救命型ドライブレコーダ

図 6-2 に救急救命型ドライブレコーダを示し,その仕様を表 6-1 に示す.救急救命型ドラ

イブレコーダは,ドライブレコーダ本体,モーションセンサ,車内用カメラ,車外用カメラ,

通信装置,GPS,手動トリガスイッチで構成されている.

モーションセンサは最大2Gまで検出可能な2軸加速度計,50Gまで検出可能な3軸加速度 計が搭載されており,これらの加速度計により事故発生時に車両に加わる加速度と車体の挙動 を表すロール,ヨー,ピッチを検出し事故イベントを記録する.血液型,身長,体重などの個 別の医療情報はCFカードに入力しており,映像データはCFカードで記録へ記録される.

車内カメラは事故時の乗員の衝突挙動を記録し,例えばステアリングと胸部衝突のような被 加害部位の対応を可視化情報として入手できるようにすることで,その後の治療に役立てよう とすうものである.車外カメラはフロントウインドウに前方を記録するように取り付けられ,

事故時の前方映像を記録する.内外のカメラと加速度などの計測データは,事故によるトリガ ーが作動した場合,衝突前10秒から衝突後5秒を記録する.

通信装置は PHS の回線を用いて事故情報をセンターへ送信するためのものであり,他に GPSアンテナにより車両の位置情報を取得している.また,手動トリガーが装備されており,

歩行者事故などトリガーの検知しにくい事故においてドライバ自身が事故を通報するために 装備している.

図 6-2 救急救命型ドライブレコーダ

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表 6-1 救急救命型ドライブレコーダの仕様

項目 内容 備考

センサ部 加速度(3軸+2軸) ±500m/s2,

±20m/s2

入力信号

角速度(3軸) ±300deg/s2

本体

アナログ入力8チャンネル(0~5V) 接点入力8チャンネル

車速センサ入力

(電気式パルス入力自動調整型)

GPS

NTSC信号2チャンネル 通信

ポート

ダイアグノシスポート USBポート メンテナンス用

外部通信 RS232C変換 通信ユニット用

電源出力

オプションユニット +5V 1A 外部通信機器用 +5V 1A

センサ用 +5V 0.1A

A/インターフェース用 +5V 0.1A

カメラ用 +12V 0.15A

GPSアンテナ電源 +3.3V 0.1A

出力信号 外部通知用 オープンドレイン出力2チャンネル ユニットカスケード用 オープンドレイン出力2チャンネル 記憶媒体 CFカード CFA規格TypeⅠ電源電圧3.3V FAT

記憶容量 最大2.2GB

表示 LED 8LED動作,記録,GPS,故障,通報

84 6.2.3 自動通報機能

自動通報機能は事故を起こした際に事故情報と乗員情報を PHS 回線を用いてセンターへ通 報する機能である.事故が起こるとまずセンターコンソール画面へ第一報として事故位置,日 時,車両情報,速度,加速度,個人医療情報が表示される.続いて,メール第一報として発生 日時,発生場所,予測傷害グレードが通報される.その後,メールによる第二報として,車内 外カメラによる映像(静止画)が送信される(図 6-3).

図 6-3 救急救命型ドライブレコーダからセンターへ自動通報される情報

センター第一報

メール第一報

メール第二報

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6.2.4 乗員を対象とした加速度による傷害予測アルゴリズム

本装置には独自のアルゴリズムによって算出された救急度の識別結果を視覚情報として救 急隊員へ知らせる手段の一つとして,トリアージランプと称するインジケータをメインユニッ トのベゼルに装備した(図 6-4).これは自動車乗員の負傷による救急度を識別する上で基準 とした合成加速度の最大値から,段階的に判断結果を点灯した色により表示される.インジケ

ータはGRADE1からGRADE3 までの4段階で識別し,GRADE1を非衝突の急減速として,

GRADE0は無傷事故,GRADE1は軽傷,GRADE2は中等傷,GRADE3は重篤とし,救急医

療機関の1~3次機関への搬送に対応している.

事故の有無とその救急性を判断する指標として,合成加速度の最大値を用いた.この合成値

を各GRADEへ対応させるためにACSCOTが策定した高エネルギ事故の定義から,重度傷害

が発生する可能性がある速度変化量を用いた.これは 20 mph(約32km/h)が定義として挙 げられており,加速度値としてはおよそ 28G に相当する.一方,エアバック展開の目安とな るバリア換算速度として約25~30km/h,加速度では約25Gであり,国土交通省が実施してい る自動車アセスメントの結果から乗員に重度の傷害は発生しにくい.よって,エアバッグの展 開加速度より低い20G以上を中等傷であるGRADE2とした.

重傷判定となるGRADE3では,合成加速度値を40Gと設定した.この値はNHTSAが報告 した資料において,胸部加速度が30GでMAIS3以上の発生確率が1%,50Gを超えるとMAIS3 以上となる確率が6%以上となることからアンダートリアージを避けるために40Gとした.

図 6-4 トリアージランプ

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