第 5 章 日本医大(2次救急医療機関)での傷害予測のための事例調査
5.2 事故調査の方法
日本医科大学千葉北総病院へ搬送された交通事故患者を対象とし,当調査への協力の承諾 を得ることができた方の事故について,受傷原因となった交通事故および傷害状況について 調査を行う.わが国初の大学相互の医学部・工学部共同でおこなう事故調査として調査体制 および調査方法などの確立を目標の一つとする.
5.2.2 調査地域
調査拠点となる日本医科大学千葉北総病院は,千葉市の北方約 25km に位置する千葉県印 旛郡印旛村に位置している.千葉県の交通事故は事故発生27,586件,死者213人(2008年)
と死者数の県別比較ではワースト順位 5 位と多く,その中でも日本医科大学千葉北総病院は 東京に隣接し人口が比較的多い千葉県北部地域にあり,交通量の多い道路としては東関東自 動車道路や国道16号なども比較的近い位置にある.
特に,日本医科大学千葉北総病院では3次救急救命センターとしてヘリコプターによる患 者搬送を行っており,ヘリコプターによる患者搬送範囲は半径約 50km の地域に及んでいる
(図5-1参照).
55
図 5-1平成16年度ドクターヘリ発生地区別出動件数(平成16年4月~平成16年9月)
調査対象となる日本医科大学千葉北総病院に運ばれる交通事故の患者のうち重傷に分類さ
れるAIS3以上(Abbreviated Injury Scale)の患者数は995人,そのうち交通事故による患
者数は2005~2008の4年間で558人,年間平均で重傷交通事故患者は140人/年となって いる.交通事故による月別の重傷患者数は図5-2に,AIS別の割合は図5-3に示すとおりとな っている.
56 0
10 20 30 40 50 60 70 80
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
交通事故による重症患者数(人)
図 5-2日本医科大学千葉北総病院に運ばれる月別,重傷交通事故患者数(2005~2008年)
295人 109人 135人 19人
0% 20% 40% 60% 80% 100%
MAIS3 MAIS4 MAIS5 MAIS6
図 5-3日本医科大学千葉北総病院に運ばれる重傷交通事故患者のAIS別構成率
(2006~2008年)
5.2.3 調査体制および調査方法
調査は,原則的に調査員が1 ヵ月のうち5 日間を日本医科大学千葉北総病院に待機し,前 月の調査期間以降に搬送された交通事故患者を対象として調査を行った.なお,特別大きな 事故あるいは事故車両が他地域へ搬送されるなどの場合には待機に関わらず調査を行う体制 とする.
調査は原則として交通事故に関する車両破損,交通環境,救急活動,傷害の情報を収集す ることを目標としている(図5-4).
57
・傷害情報
・患者情報 病院
・車両情報
・事故現場情報
・患者インタビュー 調査チーム
・活動情報
・患者情報 救急隊
事故実態調査
図 5-4 調査・収集する事故情報
交通事故の救急活動,傷害に関する情報はそれぞれの機関の協力を得て収集し,事故車両,
交通環境に関する情報収集,当事者への調査承諾の確認および当事者へのインタビュは調査 員が担当する(図5-5).
傷害調査に関しては,原則的に外傷の部位,大きさ(程度),状態などの情報を1次情報と して収集するが,諸データを分析しさらに深い分析が必要になった場合には必要に応じた詳 細傷害情報,例えばX線写真による骨折状況,CT等による脳挫傷,脳出血の状況,手術時の 情報などを2次傷害情報として収集できる体制としている.
事故調査チーム 調査員 (経験者1名)
(工学部学生3名)
調査支援員(工学系2名)
(医学系2名)
・医師
・患者 病院 交通事故 患者搬送
・車両調査
・事故現場調査
調査員出動
傷害情報等収集
図 5-5 事故情報収集の流れ
調査員は原則4名とし,経験者1 名,工学部学生3名から構成した.その他に,調査デー タをその都度吟味し追加調査の必要,各データの解釈,車両データ,傷害データおよびイン タビューデータ等各データの整合性などの検討,判断のために工学系2 名,医学系 2 名の調 査支援員を用意している.
5.2.4 調査票
調査に使用した調査票の構成は,①事故概要,②環境詳細,③車両詳細,④車両変形「車 室内」詳細,⑤乗員傷害箇所詳細,⑥乗員接触位置詳細,⑦自転車・歩行者事故詳細,⑧救 急活動詳細から成っている.
58