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第 4 章 早稲田大学総合活動型日本語教育の事例分析―シャネルグループ―

4.4 シャネルグループのグループワークの分析

4.4.1 グループ活動の方針と形式を見出す

よる文化的背景の衝突から

4月14日の第1回授業から4月28日の第3回授業の間に、シャネルグルー プのメンバーは、各自意見を出し合い、「個人と社会を結ぶ」について各自の キーワードを見出そうとしたが、各メンバーの体験に基づいた考えは衝突した ので、グループで共通したキーワードはできなかった。しかし、意見交換のう

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ちにグループの連帯感ができた。「雑誌」の形でグループ活動を行っていくと いう共通意見となった。この期間を「グループ活動の方針と形式を見出す」段 階とする。シャネルグループの特徴の一つは、人間関係のよいことであった。

CC1*は4 月14日の観察誌に「5人の個人経験はそれぞれ違うので、とても新 鮮に聞こえ、互いに興味を持っているように見えた」と記した。下記の(1) からわかったように、シャネルグループのメンバー5 人が、共通話題をグルー プで「共有」し、まず各自特有の「個人の文化」を「表現」し、「共有」した。

しかし、個人の文化に基づいた意見の「表現」は思ったほど容易ではなかった。

(1)グループメンバーの5人はまず「異文化体験」から話が弾んでい た。そして、「自分とその異文化の社会をつなぐものはなんだったか」と いう問題について話し合った。今の段階では、日本人学生 2 人はもちろ ん、留学生 3 人も自分の意思を伝える程度の日本語力はあるように見え た。(2)「個人と社会を結ぶ」とは当たり前のように話していたが、理解 しよう、説明しようとすると、自分のぼんやりした考えを引き出し、ま 「ことば」にして伝えるのが非常に難しかった(CC1*414日観察誌)

個人の文化を「表現」することが難しいうえに、クラスのテーマである「個 人と社会を結ぶ」という抽象的なことにについて、他のメンバーを説得してグ ループ統一した意見を見つけることができなかった。グループのディスカッシ ョンは一時沈黙に陥ったこともあった。

今回はグループ全体で5秒以上(5秒も含む)音声がないことにしている。

2回目のグループディスカッションには沈黙が全部で17回あった。最短 の沈黙が6秒で、最長の沈黙が22秒続いた(CC1*421日観察誌)

この段階の苦しい沈黙を経て、問題の解決に向けて5人のメンバーがグルー プ内のメーリングリスト37 で意見交換を続けた。そこで、4 月 21 日のメーリ ングリストを通じて、CC2というメンバーが教室を出て様々な人にインタビュ ーを行うという提案をし、グループ活動を新しい方向に導いた(CJ1*4 月 21 日観察誌)。このように、シャネルグループにおいては、違うメンバーがファ シリテーターになることが見られた。

(4月21日)その後グループ内MLで意見交換を図るうちに、「私たちは個 人と社会という言葉の定義ばかり考えているのではないか?」「曖昧な議 論を続けるより、グループ内での社会の位置づけを定め、そこから様々

37 その時点で、クラスのBBSはまだ書き込み不可能だった。

個人の文化 知識を言語 に転換

個人の意見 は共有でグ ループの意 見となった

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な人にインタビューを行い、個人と社会を結ぶものについての各自のス トーリーを聞いてみてはどうか」という指摘がメンバー内からなされた。

確かに、私たちは無意識のうちに答え(のようなもの)を追い求めていたの かもしれない。しかし「個人」と「社会」の概念に対する捉え方、「結び 方」に対する認識は人それぞれ異なるものである。ここまで思考の堂々 巡りを繰り返し、ようやくたどり着いた我々の課題は『「結び方」の答え を出すことではなく、グループの外への調査を通じてその多様な答えを 聞き出し、改めて考え直すこと』であった(CJ1*4月21日観察誌)

それで、「CC2さんのメールからメンバーの考え方が変わったようで、最初に

「社会と個人」の定義を決めずにインタビューによってその定義を見出してい こうという方向で話し合いが終始進みました」(シャネルグループBBS4月29日)。

シャネルグループはテーマの追い求めより、教室の外に出てインタビューを通 じて「多様な答えを聞き出し、改めて考え直す」という方針になった。4月29 日のグループディスカッションで「雑誌」にまとめることになった。

だいぶグループとしての方向性も見えてきた気がします。各自がインタ ビューを行い、その結果を何か(雑誌?)にまとめる、ということで、とり あえずはそのインタビューで何を聞くべきか、ですね(シャネルグルー プ4月29日BBS)

実習生のCJ1*は、自然とファシリテーションを取った。グループワークの最

初の段階で、実習生CJ1*の「各自に話題を振り、議論の方向性を指し示し、話 しやすい雰囲気作りを心がけていた」という为体的なファシリテーションによ って、シャネルグループは最初から穏やかな仲間関係ができた。

参加者の中にはまだ緊張感のようなものもあり、私は自然と、各自に話 題を振り、議論の方向性を指し示し、話しやすい雰囲気作りを心がけて いた。この活動におけるファシリテーターの役割を無意識のうちに担お うと思っていたのである(CJ1*4月14日観察誌)

この段階において、教師はクラスを見守るだけで、ほとんど干渉はしなかっ た。ところが、4月28日の授業に、悶々グループとシャネルグループは活動と してインタビューしようということについて話し合っているところを、教師は

「なぜその人にインタビューをするか」と問いかけた。教師のこの介入がグル ープメンバーの考えるヒントとなったこととグループ活動の動機づけについ て、大きな役割を果たした。

ここで、その前に細川先生からご指摘を頂いた「何故その人にインタビ

ファシ リテ ー タ ー の やり方

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ューを行うか、行いたいのか」という点について。私が「社会人」「フリ ーター」といった人にインタビューを行いたいと考えた理由は、もちろ ん「自分の周囲にイチバン多いから」という理由もあるのですが、何よ りその2つの立場が「社会」という点において対極的なものだと感じた からです。

(中略)また、フィッシュボール中に細川先生からの「なぜその人に聞 くか?なぜ聞きたいのか?」との言葉は、これからの活動の動機付けと してかなり大きな役割を果たしてくれるはずです(シャネルグループ4月 29日BBS)

グループ活動の動機づけについて、シャネルグループディスカッションの結果、

4月28日クラスのフィッシュボールの時報告した。すなわち、「個人と社会を結 ぶ」人をグループで定義して、この定義に基づいてインタビューをすることに なった。シャネルグループのフィッシュボールについて、ゲシュタルトのGJ1*

は以下の通りにまとめた。

議論の初めのころは、個人と社会を結んでいる人として「社会的に成功 している人にインタビューする」という話になっていたと思います。で も途中から「必ずしも社会的に地位の高い人ではなくてもいい、自分が 魅力的に思う人や人生を楽しんでいる人を選んでインタビューしよう」

という気づきがあったのはとてもいいと思いました。いろいろな人にイ ンタビューすることで、多角的に「個人と社会を結ぶ」ことについて知 ることができそうです(シャネルグループ5月8日BBS)

この段階の活動を図4-2で表すことができる(次頁図4-2を参照)。ファシリ テーターは、試行錯誤しながら、話しやすい雰囲気作りを心掛けていた。その 結果、シャネルグループは最初から穏やかな仲間関係ができた。そして、ディ スカッションの成り行きで、別のメンバーがファシリテーションをとったこと もあった。シャネルグループにおいて、ファシリテーションはダイナミックに 捉えられていた。そして、教師の「見守り」と適切な介入によって、大事なポ イントが突っ込まれ、考えるきっかけとなった。メンバーは個人の経験に基づ いた個人レベルの文化を表現し、グループで共有した。ところで、経験を共有 だけでは楽しいが、個人経験からいかに抽象化するかは難しかったことに気づ いた。そこで、グループ活動動機について、メンバーたちが「対話」した。ま ず、「個人と社会を結ぶ」人を定義し、そして、グループやクラスを出て、さ まざまな人にインタビューすることになった。その「対話」からグループの共 通した見識をまとめ、表現するということになった。この段階は、メンバーの

議 論 に よ る 意見の構築

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セルフ・ナレッジの文化が言語化され、社会化されることが見られた。

4-2 シャネルグループの協働「自分のテーマを見出す」段階