第 4 章 早稲田大学総合活動型日本語教育の事例分析―シャネルグループ―
4.4 シャネルグループのグループワークの分析
4.4.2 雑誌構成および評価方法の確定
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セルフ・ナレッジの文化が言語化され、社会化されることが見られた。
図4-2 シャネルグループの協働「自分のテーマを見出す」段階
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それ以外にも誰もが知っている有名な方々やまだ社会という自体に興味 を持っていない女子高校生などにもインタビューを行ってみたいという 意見がありました。
(中略)別にグループとしてのインタビューも行う予定なのでますます 楽しみですね。(シャネルグループ5月18日BBS)。
インタビュー済みのメンバーはメーリングリストや BBS でその感想を「共 有」した。そして同時に、インタビューの録音を書き起こし、後ほど雑誌の記 事作成にすることになった。インタビューから「想定外の答え」を得たので、
それをまずメーリングリストと BBS を通じて「共有」した。CJ1*は、インタ ビューにびっくりしたと記されていた(シャネルグループ5月10日BBS)。
そして、実際インタビューのようなものを行ってみての感想ですが・・
まずは「想定外の答えが多い」ということ!いや、びっくりしました。
我々の話し合いではまったく出てこなかった意見がたくさん出てきまし たが・・(シャネルグループ5月10日BBS)。
シャネルグループのディスカッションが活動の進行に伴って、効率が良くな った。グループの「活動の流れ」を確認し、自分のグループ活動の「評価方法」
およびそれに基づく雑誌の構成を決めた。シャネルグループの「活動の流れ」
について、グループディスカッションの確認した結果は、以下の通りであった。
「個人と社会を結ぶ」というテーマの下、我々のグループは「各自興味 を持った個人へのインタビュー」「グループ全体での個人インタビュー」
という二つの活動を行う。(中略)そこで私たちはその社会との関わりを 各個人のライフストーリーから考えてみたい、という理由からである。 そ のインタビューを各自がまとめ、持ち寄り、最終的には一つの「雑誌」
として皆さんと共有する(シャネルグループ5月22日BBS)。
シャネルグループでは、意見の統合は穏やかな雰囲気のもとで行われた。意 見の統合はクラスの「創造的な活動」になる。それは、各メンバーのインタビ ューから気づいた暗黙的文化的知識から、他人と共有できる「明示的言語的知 識」に転換されるからである。CC1*は6月9日の観察誌に授業の録音の一部を 引き起こし、次のような分析を記されていた。
CK1:友達も会社で仕事しないと社会に属していないよって。仕事しなく ても属してるじゃないか。
CJ1*:どこに属してるか。
インタビュー か ら 新 た な 文化知識を 獲得
議 論 に よ る 意見の構築
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CC1*:何らかの集団に属してるじゃないか。
CJ1*:だけど、それってなに?といったら、無職のグループってそうい うのあるのと聞いたら、ないよと言われて。
CC1*:パチンコすれば、同じパチンコする友達がいれば、集団になるし、
パチンコで遊んでて人の利益になるかなって。
CJ1*:そうそうそう。良く分からないけどさ、結局そういう利益が回る ことが、個人と社会を結ぶようなことだから。
CC2:でも、ニートは社会と結んでいないと思っていないですけど。
(沈黙)
CC1*:わかった。社会に属していないというよりは、違う社会に属して いるということです。会社で働いていない人は社会に属していないより は会社という社会に属していないということですよ。とは、ママさんは 昼の社会に属していないけど、夜の社会に属してる。
CJ2:まあ、社会の定義をいろいろ見つけるならば、社会には属する形に なりますね。
CJ1*:と思うよ。
CC1*:見方によれば、たぶん属してる、属していないとどちらでも言え る。
CJ1*:そうでしょう。だから。たぶん属してるよ、どこかには。言って しまえば。だけど、別に実体というか、ないね。
CJ2:本人がそこに属してる意識があるかどうか、まず問題があると思い ますけど。だから、どこかしらに属してるといってもたぶん他人からだ とするし、どっちかと社会というくくりじゃなくて、そういう枞組みを 決めるのは何というか、分類してる感じかな、今聞いて思ったんですけ ど。だから、昼と夜の仕事、分類しちゃってる感じがあって。
CJ1*:そうそうそうそう。
CC1*:分類というか、違う集団で違う社会のように見えるんだけど。
CJ1*:それはCC1*さんが見てる訳でしょう、結局だから。
CC1*:あのう、私は見てるよりは本人が意識してるかどうかの問題です ね。属していないと意識していても、たぶん属してる?だってニートさ んのお友達はCJ1*さんの友達ですし、属していないと思いますか、やっ ぱり属してるでしょう、どこかに。
(中略)6月9日のシャネルグループのディスカッションでは、何らか の知見ができたといえないが、みんなの考えは確かに尐しずつ変化して きた。メンバーたちは他人に突っ込まれたり刺激されたりすると、「ひら めき」というものが出てくると思われる。それで、ふっと考えが深まっ
違う社会に 属している
社 会 の 定 義次第だ
社 会 の 実 体がない
社 会 は 分 類している
違う集団で 違う社会に 見える
意識と関わ る
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たり、今まで気づいていなかったことに気づいたりして、その「相乗効 果」がパワーフル。それで、グループワークは教室内の創造活動を支え るものだと考えている(CC1*6月9日観察誌)。
この段階において、クラスでは、細川教授の提案で、グループワークの評価 方法はディスカッションのトピックになった。シャネルグループでは、「思考 過程」も評価の対象となるように、雑誌の中にアンケートのようなページを用 意したり、雑誌の冒頭部分に「はじめに」、最後に「編集後記」のようなコラ ムを設けたり、またBBSを活用し、考えをシェアしたりすると考えついた(シ ャネルグループ5月27日BBS)。
今日は評価方法について話し合いましたが、うちのグループは最終的に 雑誌の形で仕上がるので、いかにクラスのみなさんにこの雑誌をよく読 んでもらうかのはポイントになります。よって、記事の内容、雑誌のデ ザインなどいろいろアイディアを出し合いました。そして、クラスのみ なさんに雑誌を読んだ後の感想を聞くという評価方法を用いるつもりな ので、雑誌の中にアンケートのようなページを用意する考えも出ました。
(中略)この意見に対して、雑誌の冒頭部分に「はじめに」、最後に「編 集後記」のようなコラムを設けて、うちのグループの最初から最後まで の活動を紹介して、プロセスが可視化できるのではないかという対策を 立てましたが、細川先生のご意見によると、この授業活動の最後ではな く、進んでいる途中でもほかのグループに見せられるほうがいいそうで す。その解決案としては、コースナビーの活用が考えられますが、これ 以外の方法を思いついていなかったようです(シャネルグループ5月27日 BBS)。
それと同時に、「実践研究 11」クラスでは、実習生と教師は「思考過程の共 有」方法についてディスカッションの結果は、BBSを活用して「思考の可視化」
しようということになった(「実践研究 11」5 月 26 日授業録音による)。それ で、BBSで「思考の可視化」という呼びかけで、BBSでの「対話」は授業中の ディスカッション以外の意見交換の場になった。シャネルグループディスカッ ションの結果から見ると、BBS は大変重要な役割を果たしていた。CC1*は 5 月26日の観察誌に以下のようにまとめた。
ほかのグループと協働の架け橋になること。フィッシュボールや授業中 の公開発表以外の手段としてあげられる。(中略)他グループの活動を参 照しながら、自分のを調整したりして、また全体的には一つの共通目標 に向かって行動している。(中略)陰ながら「考える」クラスを動かして
議 論 に よ る 意見の構築
BBS は議論 の場となった
96 いると考えられる。
考えることを続けること。「考える」ことが大変な作業だと思う。意識的 に考えようとしない限りは、ぼんやりと過ごしてしまうことが多いから。
観察誌とコースナビは「考える」きっかけを提供してくれる存在だ。(中 略)
「気づき」を獲得すること。(中略)「振り返り」によって、大事なヒン トを見逃さないように気づきを得ることも多かったように思う。観察誌 やBBSはまさに振り返りの絶好のチャンスとなる。(CC1*5月26日観察 誌)。
CJ1*はファシリテーターとして良い議論を行うために必要な聞き方は「他者 の価値を認め、常に議論の中で対等であろうとする姿勢」であると为張した。
しかし、CJ1*はファシリテーターとして自分の役割を「議論を動かす役目」と
捉えるので、グループ議論を事実的にはコントロールしてしまい、メンバーの 自由な発言を奪ってしまったこともあった。
今までの私は、自分の役割を「議論を動かす役目」と捉え、問いかけを するにも話題を提供するにも全てその立場を通して行っていた。それこ そがメンバー内の自由な発言を奪ってしまう行為ではなかったのか、と 猛省している(CJ1*5月12日観察誌)。
ところで、シャネルグループは反発など激しい議論はないものの、穏やかな 雰囲気のもとでグループ活動が行われていた。グループメンバーはそれぞれ
「ファシリテーター役」、「まとめ役」、「話題提供役」、「提案役」、「潤滑油役」
を果たしているとCC1*が5月12日の観察誌にまとめた。しかも、メンバーの 役割は静止的なものではなく、動態的に変化している。
誰かを何か役に決めつけるのは为観的なものに過ぎず、また静止的な視 点にとどまっているのではないかと思われる恐れがあるが、コミュニテ ィはさまざまな役で成立され、だれも絶対不可欠な存在だと思う。(中略)
そして、違う役を果たしているコミュニティのメンバーは常に成長して いるから、その「役」ももちろん動態的に変化していると思う(CC1*.5 月12日観察誌)。
この段階の活動を図4-3で表すことができる(次頁図4-3を参照)。教師は「実 習生毎週観察誌を共有してから、それについてのディスカッションは新たな考 えるきっかけとなり、陰ながら『考える』クラスを動かしている」と CC1*の
ファシリテー ターの反省