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いくつかの作品のためのエスキースの制作

第3章 エスキースを生かした作品の制作

第2節  いくつかの作品のためのエスキースの制作

 エスキースを行う際にいくつかの目的が挙げられる。例えば、イメージの追求や構図の 追求、客観的視点を持っこと、などである。そこで、実際に本制作画面を前にしてエスキ ースを描き、その効果を検証してみたい。

第1項 36・5c m×26c mの鉛筆画(ミクストメディア)

のためのエスキースの制作

 本制作の大きさ(26×36.5cm)は大体F4号のキャンヴァスより少し大きいくらい のサイズである。このサイズの作品のエスキースであると、6c m×9c m程度の大きさ のエスキースを描いてみてもさほど違和感はない。鉛筆でエスキースを描くと細部が描き にくい。シャープペンシルで描くと、6c m×9c mサイズの画面でもシャープな表現が 可能となり、鉛筆よりも効果的である。シャープペンシルの芯はBを使うこととした。陰 影が強くついてイメージが明確になる。小さな画面のため他の濃さの芯は使わず、線描の 粗密で濃淡の幅を出した。画面が小さなため密度も出やすく、比較的すばやくイメージを 形にすることが出来る。

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図3

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図4

 また、あまりに小さいので一つの画面という感じがしない。そのため、比較的気楽に、

短時間で多くのイメージを描くことができる。一つの画面を長くて5分くらいで描く事が

出来る。そして、画面が小さいので画面全体に目が届き大きな構図や陰影の変化を捉える ことが出来る。このエスキースの一枚を拡大してみる。画面のバランスにさほど違和感は 感じない。このサイズの画面においてはシャープペンシルでも太い線描に属し大まかな陰 影や形を探りやすい。エスキースの画面に対してどの太さの画材を選ぶかも考慮に入れる べき事柄であると思われる。大まかな構成や陰影の流れを掴みたい場合には心持ちその画 面に対して太めの画材を使うと良いと思われる。

図5

 大きな作品であっても6x9c mのサイズでエスキースを描くことによって効果的に構 成やイメージを探ることが出来そうである。反面、大きな作品であるほど拡大したとき密 度が極めて薄くなり、小さなエスキースとの印象のギャップが大きくなる。そのため、こ のサイズのエスキースを大きな作品のために使うのはごく初期の段階に限定されるだろう。

 しかし、本制作との間にサイズのギャップがあるので、本制作を気にせず、比較的自由 な発想でエスキースを行うことができる。このサイズでエスキースを何枚か描き、もう一 段階大きなエスキースで気に入ったものを絞り込む、という方法をとれば効果的であるか もしれない。

 上に挙げたエスキースは画面のサイズが小さいエスキースの例である。エスキースに使 う画面の大きさによって描画材の細さや太さを工夫する必要があることがわかった。

第2項F30号、S30号の油彩のためのエスキースの制作

 F30号、S30号の油彩画の制作を取り上げてみる。この2点の油彩は長い間描いてい たものであるが、なかなか完成に至らなかった。4ヶ月ほど描いたが、完成せず、とうと

う画面を潰すこととなった。制作にいきづまった時は、少し距離をおいてスケッチブック などの他画面にエスキースを描くと効果的である。

図6 S30号

    (潰す前の状態)

図7 S30号

 S30号の画面を潰した時、画面の中央部分を潰した。その結果画面中央部に大きな形が 出来上がった。その形をもう少し大きくすることとした。その結果、画面中央に大きな箱 のようなものが出てきた。箱のようなものを具体的に描き進めると単調な形に見えてきた。

そこで、真ん中に大きな形を置いた構図でエスキースを描いてどのように見えるのか、試 してみることにする。

図8

 F30号のためのエスキース

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 このエスキースはF100号の比率で描いた。一枚目のエスキースは鉛筆で描いた。真ん 中に大きな塊を配置するという以外これといって決まったことがなかったため、描きなお しが出来、様々なイメージを追求出来る鉛筆を使った。このように考えると鉛筆はイメー ジ、構図などを探るのには適している画材である。そこで、真ん中にあったものを建物に した。さほど悪くない印象であったが横の構図にしてみてはどうかと思いたち、横の構図 で一枚エスキースを描いてみた。縦の構図に比べてしっくりこないので、縦の構図に絞る こととする。

 縦の構図をもう少し追求してみようと、もう少し小さな画面でエスキースを描くことに した。小さな画面でのエスキースにはボールペンを使用してみた。

図9

F30号のためのエスキース  ボールペン

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図10

F30号のためのエスキース

  鉛筆 HB〜3B使用

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 ボールペンは鉛筆に比べて描き直しが困難な画材であり、一度描いた線は消えない。しかし、そ の線を面白いと捉えることもできる。ボールペンで描いた場合、この意識して引いたわけではない 線などがその特徴となる。

 小さなエスキースにおいては箱の真ん中に蝶を描いた。大きく画面を潰す前、画面の中 に蝶を2匹配していた。その蝶に対するこだわりを捨て切れなかった。蝶を描かないとな ると新たなテーマを探す必要がある。蝶を真ん中に描くと、今度は建物がじゃまになって きた。そのことを考慮にいれて新たにもう少し大きな画面に鉛筆を使ってエスキースを描 くこととした。このエスキースにおいては真ん中の建物を分割し、モチーフを2,3個に 増やした。この方が蝶と背景のバランスがとれている。このエスキースが使えるように思 ったためS30号の画面にも応用することにする。そこで、先ほど描いたエスキースと同じ くらいのサイズでS30号用のエスキースを描いてみるこ・ととする。このエスキースにおい ても最初描いた建物のエスキースの印象が反映されており、画面に2つの建物を配するこ

とにした。真ん中に蝶を配するのは一つ前のエスキースに合わせた。このエスキースもあ る程度使えそうである。しかし、まだ煮詰める必要を感じたのでもう一枚、同じサイズ、

同じ構図でもう一度エスキースを描いてみる。描くモチーフは決まっているので、大きな 形や構図の変更をするつもりはない。

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図11 S30号のためのエスキース

エスキース

    鉛筆 NO、1

図12 S30号のための 鉛筆 NO,2

 ただし、どこを弱くしてどこを強くするのか、といった事や、どのようにして密度をあ げていくのかといった、デッサン的な要素を探る事を目的としてエスキースを描く。油絵

の大きな画面であると部分的に描きがちであるが、サイズが小さく比較的描いたり消した りすることが簡易にできる鉛筆デッサンであると、画面全体の動きなどを探ることが出来 る。又、油絵で疑間に思ったりしたがなかなか思い切って手が進まないときなど色をモノ

トーンに置き換えてエスキースしてみるとどう進めていけばよいのか参考になる。前のエ スキースにおいて、蝶以外の形態が全て直線的であり、画面が少し固い印象を持ったので 一番手前にある形態を丸い形に変えた。そのかわり、蝶の後ろにある建物の陰のような形 態をもう少し明確にすることとした。手前の手すりのようなものは一番最初に描いたエス キース(建物を中心にしたエスキース)を参考にした。

 ここまでエスキースを描いてみて、ある程度イメージが固まってきた。最終的に出来上

がった2枚のエスキースはS30号のほうが15c m×15c m、F30号の方が16c m

×12c mであった。これ以上エスキースを煮詰めるのであればもう一つサイズの大きい エスキースか原寸大のエスキースを描くと効果的であろう。このような小さなサイズのエ スキースを描いてみても、本制作画面と対峙すると、画面が拡大されるのでイメージが違 ってくる恐れがある。しかしこれ以上は実際本制作画面上に描いて検証したほうが良いと 判断し、本制作に戻ることとする。

 上に挙げたエスキースは本制作の制作途中で描いた。この場合は制作が上手く進まない ために行ったエスキースである。本制作画面に取り掛かっていると既に浮かび上がったイ メージにどうしてもこ.だわってしまうため、なかなか思い切った仕事ができないものであ る。そのため制作の初期の段階やエスキースの段階で構想を練り込む必要がある。それで も制作が上手くいかない場合は途中で他の画面にエスキースを行うとそれまでの制作を客 観的に見ることが出来、効果的である。また、全く違った展開を行うための精神の切りか

えにも役立っ。

第3項 2005年制作 S100号、F130号の油彩画の

ためのエスキースの制作

 SlOO号のエスキースから見ていく。S100号の画面は大きいので自然S30号の

制作のためのエスキースよりサイズが大きくなる。画面の中に人物を一人入れようと思っ ていた。そのつもりでエスキースを描いた。ここ何年か人物を入れて制作しているが、な かなか難しい。筆者の場合それほどリアルな人物の描写をしない。昨年度に制作した作品 では人物を真ん中に描いたが、どうもうまくいかなかった。

 人物を真ん中に描くとどういう訳か画面に動きが乏しくなる。そこで、ある程度動きを 意識して人物を配置することにする。一度斜めに人物を入れたら比較的上手くいった時が あったのでそのイメージが頭にこびりついている。そこで、人物をひっくり返して背中か