2019年度・線形代数学・同演義II 2019年10月31日
§5 線形写像の表現行列
今回の内容は教科書pp. 115–117に相当します.
K をRまたはCとする.K[x]n とは,これまでと同様,K の元を係数とするn次以下の x の多項式すべてからなる線形空間を表すものとする.
5.1 V =R[x]3,W = R[x]2とする.V の基底としてΣ= [1,x,x2,x3]を,Wの基底として Ξ=[1,x,x2]を考える.
(1) 線形変換Φ: V →V をΨ(f(x))= f(x+a)により定義する.基底Σに関するΦ の表現行列を求めよ.
(2) 線形写像Ψ:V →W をΨ(f(x))= f′(x)により定義する.基底Σ,Ξに関するΨ の表現行列を求めよ.
â (1)のΦのように,定義域と終域が一致しているような線形写像を線形変換という.線形変換 について表現行列を考えるときは,特別な理由がないかぎり,定義域と終域で同じ基底を用いる.
5.2 [(1)はほぼ教科書の例題4.2.]
V =R[x]3とする.線形変換Φ:V →V を
Φ(f(x))= x f′(x) −2f(x+1)
により定義する.
(1) V の基底Σ =[1,x,x2,x3]に関するΦの表現行列を求めよ.
(2) x f′(x)= 2f(x+1)をみたすようなV =R[x]3のすべての元を決定せよ.
(3) ImageΦの基底の一例をあげよ.
次の問題では,Mn(K) = {K の元を成分とするn次正方行列} と書くことにする.Mn(K) は線形空間である(ただし,線形空間の定義における加法およびスカラー倍として,行列に関 する通常の加法とスカラー倍を採用する).Mn(K)の零ベクトル0は零行列Oである.
5.3 [(1),(2)は,教科書の第4章章末問題・問題2 (1)をb=1として簡単にしたもの.]
K をRまたはCとする.2次正方行列 A=
(a 1 c d )
∈ M2(K)
を考える.
(1) V = M2(K)として,写像Φ: V → V をΦ(X) = [A,X]により定義する.Φが線 形変換であることを示せ.ただし,一般に2つの正方行列 A,Bに対し,[A,B]と は AB−B Aのことである.
(2) V の基底Σ =[E1,E2,E3,E4]を考える.ただし E1 =
(1 0 0 0 )
, E2=
(0 1 0 0 )
, E3=
(0 0 1 0 )
, E4 =
(0 0 0 1 )
.
基底Σに関するΦの表現行列Sを求めよ.
(3) [A,X]=Oとなるような X ∈ M2(K)全体の集合を具体的に記述せよ.
5.4 [教科書の第4章章末問題・問題2 (2)を見通しよく解いてみたい.]
前問の記号をそのまま用いる.さらにΞをK2の標準的な基底とする.すなわち Ξ=[e1,e2], ただし e1 =
(1 0 )
, e2=
(0 1 )
.
(1) 写像Ψ: V → K2を
Ψ(Y)= ( trY
tr(AY) )
によって定義する.これは線形写像である.基底 Σ,Ξに関するΨ の表現行列T を求めよ.
(2) Ψ◦Φ: V → K2が零写像(定義域のすべてのベクトルを0に移す写像)である ことを確かめよ.
(3) (2)から直ちにImageΦ ⊂KerΨであることがわかるが,実は
ImageΦ=KerΨ (∗)
が成立する.(∗)を証明せよ.また(∗)を言い換えて,B ∈ M2(K)に対し,[A,X]= B となるような X ∈ M2(K)が存在するための必要十分条件を述べよ.