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§5 線形写像の表現行列―――授業で扱わなかった問題の解答例

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Academic year: 2024

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2019年度・線形代数学・同演義II 20191031

§5 線形写像の表現行列―――授業で扱わなかった問題の解答例

5.4 前問の記号をそのまま用いる.さらに ΞをK2の標準的な基底とする.すな わち

Ξ=[e1,e2], ただし e1 = (1

0 )

, e2= (0

1 )

.

(1) 写像Ψ:VK2

Ψ(Y)= ( trY

tr(AY) )

によって定義する.これは線形写像である.基底Σ,Ξに関するΨ の表現 行列T を求めよ.

(2) Ψ◦Φ: VK2が零写像(定義域のすべてのベクトルを 0に移す写像)

であることを確かめよ.

(3) (2)から直ちにImageΦ⊂ KerΨであることがわかるが,実は

ImageΦ=KerΨ (∗)

が成立する.(∗)を証明せよ.また (∗)を言い換えて,BM2(K)に対し,

[A,X] = B となるような XM2(K)が存在するための必要十分条件を述 べよ.

(1) まずEkk =1,2,3,4)に対しtr(AEk)を求めておくと

tr(AE1)=tr (a 0

c 0 )

=a, tr(AE2)= tr (0 a

0 c )

=c, tr(AE3)=tr

(1 0 d 0 )

= 1, tr(AE4)= tr (0 1

0 d )

= d. したがって

Ψ(E1)= (1

a )

=1e1+ae2, Ψ(E2)= (0

c )

= 0e1+ce2, Ψ(E3)=

(0 1 )

= 0e1+1e2, Ψ(E4)= (1

d )

= 1e1+de2.

ゆえに求める表現行列は

T =

(1 0 0 1

a c 1 d )

.

(2)

(2) 2つの方法がある.

第1の方法(表現行列を用いる).基底 Σ,Ξに関するΨ◦Φの表現行列は積T S ある.なぜなら,ψΣ:VK4,ψΞ: K2K2をそれぞれΣ,Ξの定める線形同型写像 とすれば(ψΞ は実際には恒等写像.ただしここでその事実は関係ない),

ΦSΣ◦Φ◦ψΣ−1, ΦTΞ◦Ψ◦ψΣ−1

で,

ΦT ◦ΦS =(ψΞ ◦Ψ◦ψΣ1) ◦ (ψΣ◦Φ◦ψΣ1)= ψΞ ◦ (Ψ◦Φ) ◦ψΣ1

だが,ここで左辺はΦT S に等しいからである(ΦT S = ΦT ◦ΦS とは(T S)x =T(Sx) いうことで,これが成立するように行列の積は定義されていた).そこでT Sを計算す ると

T S=

(1 0 0 1

a c 1 d ) ©­­­

«

0 −c 1 0

−1 ad 0 1

c 0 dac

0 c −1 0

ª®®®

¬

=

(0 0 0 0

0 0 0 0

)

であり,ΦT S: K4K2は零写像である.したがってΨ◦Φ:VK2も零写像.

第2の方法(直接計算する).まず,一般にtr(AB)=tr(B A)が成り立つことを思い出 す(ここでは ABは任意の正方行列).それを踏まえてΨ(Φ(X))の第1成分,第2 分をそれぞれ計算すれば,

tr([A,X])=tr(AXX A)= tr(AX) −tr(X A)=0,

tr(A[A,X])=tr(A(AXX A))= tr(A(AX)) −tr((AX)A)= 0.

(3) はじめに「(2) から直ちに ImageΦ ⊂ KerΨ であることがわかる」という記述に ついて説明しておく.任意に Y ∈ ImageΦ をとると,これはある XV を用いて Y = Φ(X)と表される.したがってΨ(Y) = Ψ(Φ(X)) = 0であり,Y ∈ KerΨ.ゆえに ImageΦ ⊂ KerΨである.

さて,ImageΦ は KerΨ の部分空間なので,dim ImageΦ = dim KerΨ がわかれば ImageΦ= KerΨを結論できる.

Φについて,前問の(3)で,KerΦがEAで張られることがわかっていた.EAは 線形独立だから,dim KerΦ= 2である.ところでdim KerΦ+dim ImageΦ=dimV = 4 だから,dim ImageΦ=2が従う.

Ψについて,本問の(1)で表現行列T を求めた.T の第1行と第 2行は線形独立だ からrankT = dim ImageΦT = 2 である.よってdim ImageΨ = 2 でもある.そして dim KerΨ+dim ImageΨ =dimV =4だから,dim KerΨ= 2であることがわかる.

以上でdim ImageΦ=dim KerΨが確かめられたので,ImageΦ=KerΨがわかった.

â 一般に,行列 Aの定める線形写像 ΦA: KnKm についてdim ImageΦA = rankAです.

Aを行基本変形により階段型にしたものをAとするとき,定理5.3の証明で説明したとおり,

dim ImageΦA=(Aの主成分の個数)=rankAだからです.

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