Definition 2.6.1. Xを位相空間とする.
1. U ⊂X を部分集合, x∈X とする. このとき U がxの近傍(neighbourhood) である⇔
def x ∈O ⊂ U となるような(X の)開集 合Oが存在する.
特に, 点xを含む開集合はx の近傍である. xを含む開集合を xの開近傍(open neighbourhood) という.
xの近傍でかつ閉集合であるものをxの閉近傍(closed neighbourhood) という. 2. 集合
U(x) ={
U ⊂X U はxの近傍} をxの近傍系(system of neighbourhoods)という. 3. A, U ⊂Xを部分集合とする. このとき
U がAの近傍(neighbourhood)である⇔
def A⊂O⊂U となるような(Xの)開集 合Oが存在する.
Remark . 近傍の定義は位相にもとづいている. 距離の定める位相を考えるとき, 距離関
数は異なっていても位相が一致すればU(x)は一致する.
Example 2.6.2. 距離空間において, ε近傍Uε(x) (ただしε >0) はxを含む開集合な ので, xの近傍である.
開集合は近傍を用いて特徴づけられる.
Theorem 2.6.3. O⊂X を部分集合とする. このとき次は同値である. 1. Oは開集合である.
2. 任意のx∈Oに対しO∈ U(x).
3. 任意のx∈Oに対し, あるU ∈ U(x)が存在し,U ⊂Oとなる. Proof. 1⇒2 ⇒3はあきらか.
3⇒1を示す. x ∈Oとすると, 仮定よりUx ⊂Oとなるxの近傍Ux が存在する. 近傍 の定義からx∈ Ox ⊂ Ux となる開集合 Ox が存在する. あきらかにOx ⊂ Oである. 各 x∈Oに対しこのような開集合Oxをとると,
O= ∪
x∈O
{x} ⊂ ∪
x∈O
Ox ⊂O
であるから, O=∪Oxとなり, 開集合の和集合なので, Oは開集合.
exercise 92. 距離空間においては, U ∈ U(x)⇔ ∃ε >0s.t. Uε(x)⊂U.
Definition 2.6.4. X を位相空間, x ∈Xとし, U(x)をxの近傍系とする. このとき U∗(x)がxの基本近傍系(fundamental system of neighbourhood) である
⇔def
{
(i) U∗(x)⊂ U(x)
(ii) 任意のU ∈ U(x)に対し,あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂U となる.
Remark . 基本近傍系はxに対し一意的に定まるわけではない.
Example 2.6.5. Xを距離空間, x∈X とする.
U∗(x) ={Uε(x) ε >0} は基本近傍系である(exercise 92参照).
U∗∗(x) = {
U1
n(x) n∈N} は可算基本近傍系である.
Proof. U∗∗(x)⊂ U(x)はあきらか.
任意のU ∈ U(x) に対し, exercise 92からあるε > 0 が存在してUε(x) ⊂ U となる. 1/n < εとなるn∈NをとればU1
n(x)⊂Uε(x)⊂U. U∗∗∗(x) =
{ B1
n(x) n∈N} は可算基本閉近傍系である.
exercise 93. 上のU∗∗∗(x)が基本近傍系であることを示せ.
exercise 94. U∗(x)を x の基本近傍系, U∗∗(x) をU∗(x) の部分集合とする. 任意の U ∈ U∗(x)に対し, あるV ∈ U∗∗(x)が存在してV ⊂U となるとする. このとき, U∗∗(x) はxの基本近傍系である.
Definition 2.6.6. 位相空間X が第一可算公理(first axiom of countability) をみたす
def⇔
任意のx ∈Xが高々可算個の近傍からなる基本近傍系をもつ. Proposition 2.6.7. 距離空間は第一可算公理をみたす.
Example 2.6.8. 2次元ユークリッド空間R2 において,
{(x−ε, x+ε)×(y−ε, y+ε) ε >0}
は点(x, y)の基本近傍系である. 実際, (x−ε, x+ε)×(y−ε, y+ε) はExample 2.2.10 で与えた距離に関する点(x, y)のε近傍であり, この距離の定める位相とユークリッド距 離の定める位相は一致する(Example 2.3.6).
同様にn次元ユークリッド空間Rnにおいて { n
∏
i=1
(xi−ε, xi+ε) ε >0 }
は点(x1, . . . , xn)の基本近傍系である.
Thm. 2.6.3 でみたように開集合は近傍を用いて特徴づけられるが, 基本近傍系を用い
て特徴付けることもできる.
Proposition 2.6.9. U∗(x)をxの基本近傍系とする.
Oが開集合である ⇔ 任意のx ∈ O に対し, あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂ O と なる.
Proof. Thm. 2.6.3より, Oが開集合であることと次の1は同値である. よって次の1と 2)が同値であることを示せばよい.
1. 任意のx∈Oに対し, あるU ∈ U(x)が存在して, U ⊂Oとなる. 2. 任意のx∈Oに対し, あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂Oとなる.
1 ⇒ 2 ) x∈ Oとすると, 仮定(1)より, U ⊂O となるU ∈ U(x)が存在する. 基本近傍 系の定義よりV ⊂U となるV ∈ U∗(x)が存在する. あきらかにV ⊂O.
2 ⇒ 1 ) U∗(x)⊂ U(x)ゆえあきらか. 詳しく書けば,
x∈ Oとすると, 仮定(2)よりV ⊂OとなるV ∈ U∗(x)が存在する. 基本近傍系の定 義よりV はxの近傍なのでV ∈ U(x).
Remark . この証明のように, xの近傍系に関する条件を基本近傍系に関する条件におき
かえることが出来る場合がしばしばある. (基本近傍系とはそのように定義されている.) 上の議論はそのような場合の証明の典型である.
近傍系を指定することで位相を定めることができる.
Theorem 2.6.10. X を位相空間, U(x)をx∈Xの近傍系とする. 次が成り立つ. U1 U ∈ U(x)⇒x∈U.
U2 U1, U2 ∈ U(x)⇒U1∩U2 ∈ U(x).
U3 U1 ∈ U(x), U1 ⊂U2 ⇒U2 ∈ U(x).
U4 任意のU ∈ U(x)に対し, あるV ∈ U(x)が存在して, V ⊂U かつ, 任意のy ∈V についてU ∈ U(y)となる.
Remark . U4は気分としては, 近所は, 近所の近所. Proof. U1 あきらか.
U2 Ui ∈ U(x)とすると, 定義よりx ∈ Oi ⊂Ui となる開集合Oiが存在する. このと きx∈O1∩O2 ⊂U1∩U2 であり, O1∩O2は開集合であるからU1∩U2 ∈ U(x).
U3 U1 ∈ U(x)とすると, ある開集合Oが存在してx∈O⊂U1となる. U1 ⊂U2 であ れば, x∈O ⊂U2であるからU2 ∈ U(x).
U4 U ∈ U(x)とすると, x ∈ O ⊂ U となる開集合O がある. V := O とすれば, V はxを含む開集合なのでV ∈ U(x)であり, V ⊂U. また任意のy ∈V について, y ∈V ⊂U かつ, V は開集合ゆえ, U ∈ U(y).
Theorem 2.6.11. X を集合とする. 各点 x ∈ X に対し, ∅ ̸= U(x) ⊂ P(X)が与えら れ, 定理2.6.10のU1〜U4が成り立つとする. このとき, 部分集合O⊂Xに対し,
Oが開集合である⇔
def
任意のx ∈Oに対しO ∈ U(x)
と定めると, 開集合全体はX に位相を定め, U(x)はこの位相に関するx ∈X の近傍系で ある.
また, 位相空間の近傍系からこのようにして定めた位相はもとの位相と一致する. 問題集 . 147