exercise 65. 1. 等長写像は単射である.
2. f: X →Y が全射等長写像ならば, f の逆写像も等長写像である.
3. X とY が距離空間として等長である⇔ 等長写像f: X → Y とg: Y → X が存 在して, g◦f = 1X, f ◦g= 1Y が成り立つ.
exercise 66. 写像f: X → Y が距離を保てば, X と f(X) は距離空間として等長で ある.
Definition 2.2.5. Xを距離空間, x∈X, ε >0とする. 1. X の部分集合
Uε(x) ={y∈X d(x, y)< ε}
をxを中心とする半径εの開球(open ball) , 開円盤(open disc) あるいはε近傍 という.
2. X の部分集合
Bε(x) ={y ∈X d(x, y)≤ε}
を点xを中心とする半径εの閉球(closed ball)または閉円盤(closed disc)という. 3. X の部分集合
Sε(x) ={y∈X d(x, y) =ε} をxを中心とする半径εの球面(sphere) という.
問題集 . 78(1)(2), 79(1)(2), 81(1), 86, 91(1)(2)
Example 2.2.6 (n次元ユークリッド空間, n-dimensional Euclidian space). Rのn 個の直積
Rn ={(x1, x2, . . . , xn)|xi ∈R}
の2点x = (x1, . . . , xn), y= (y1, . . . , yn)に対しxとyの距離d(x, y)を
d(x, y) = vu ut∑n
i=1
(xi−yi)2 で定めるとdはRn 上の距離関数である.
Proof. D1明らかにd(x, y)≥0であり, x=yならばd(x, y) = 0である. d(x, y) = 0とすると,
0≤(xi−yi)2 ≤
∑n i=1
(xi−yi)2 = 0
であるからxi−yi = 0. よってx=y.
D2 明らか.
D3Rnの3点x= (x1, . . . , xn),y = (y1, . . . , yn),z = (z1, . . . , zn)に対しai =xi−yi, bi =yi−ziとおく. xi−zi =xi−yi+yi−zi =ai+bi であるから
d(x, y) = vu ut∑n
i=1
a2i, d(y, z) = vu ut∑n
i=1
b2i, d(x, z) = vu ut∑n
i=1
(ai+bi)2 となる.
(d(x, y) +d(y, z))2−d(x, z)2 =
∑n i=1
a2i +
∑n i=1
b2i + 2 vu ut∑n
i=1
a2i vu ut∑n
i=1
b2i −
∑n i=1
(ai+bi)2
= 2
vu ut∑n
i=1
a2i vu ut∑n
i=1
b2i −
∑n i=1
aibi
≥0.
ここで最後の不等号は次に示すSchwartzの不等式をもちいた. d(x, y), d(y, z)はとも に非負であるからd(x, y) +d(y, z)≥d(x, z)となる.
Lemma 2.2.7 (Schwarzの不等式). ai, bi (i = 1, . . . , n)を実数とすると次の不等式が 成立する. ( n
∑
i=1
aibi
)2
≤ ( n
∑
i=1
a2i ) ( n
∑
i=1
b2i )
Remark . Rn における(標準的, ユークリッド)内積⟨a, b⟩とノルム∥a∥
⟨a, b⟩=
∑n i=1
aibi
∥a∥=√
⟨a, a⟩
を使うとSchwarzの不等式は
|⟨a, b⟩| ≤ ∥a∥∥b∥ と同値である.
Proof. ∑
b2i = 0ならば全てのi について bi = 0であるので両辺ともに 0となり成立 する.
∑b2i ̸= 0とする. 任意の実数tに対して
0≤
∑n i=1
(ai+tbi)2 =
∑n i=1
a2i + 2t
∑n i=1
aibi+t2(
∑n i=1
b2i)
であり, ∑
b2i >0であるから, 判別式を考えると ( n
∑
i=1
aibi
)2
− ( n
∑
i=1
a2i ) ( n
∑
i=1
b2i )
≤0 となる.
この距離をユークリッドの距離といい, Rn にこの距離を与えて得られる距離空間をn 次元ユークリッド空間 という.
n= 1のとき
d(x, y) =√
(x−y)2 =|x−y| Uε(x) = (x−ε, x+ε) Sε(x) ={x−ε, x+ε} n= 2のとき
Uε((x0, y0)) ={
(x, y) (x−x0)2+ (y−y0)2 < ε2}
. . .. .. .. .. .. .. .. .. .. .....
......
......
......
...........
...............................................................
//
OO
x2+y2=1 max{|x|,|y|}=1
|x|+|y|=1
図2.1 U1((0,0)), Ex2.2.10,2.2.11参照
exercise 67. 1次元ユークリッド空間R からそれ自身への等長写像はどのようなもの か?(まず0,1の像を調べてみよ.)
Example 2.2.8. x, y ∈Q (あるいは Z) に対し, d(x, y)∈ Rをd(x, y) = |x−y|と定 めると, dはQ (あるいは Z) 上の距離関数であり, この距離によりQ (あるいはZ) は(1 次元ユークリッド空間Rの部分)距離空間である.
Example 2.2.9.
R∞ :=
{
(x1, x2, . . .)
xi ∈R,
∑∞ i=1
x2i <∞ }
とする. すなわちR∞ の元は実数列{xi}であって級数∑
x2i が収束するもの. x= (x1, x2, . . .), y= (y1, y2, . . .)∈R∞ に対し
d(x, y) = vu ut∑∞
i=1
(xi−yi)2 = vu ut lim
n→∞
∑n i=1
(xi−yi)2 で定まる関数はR∞ 上の距離関数である.
(R∞ をl2 と書くことも多い. またR∞ という記号は別の意味で使われることもあるの で注意.)
Proof. まずd(x, y)がwell-definedすなわち級数∑
(xi−yi)2 が収束することを示そう. sn = ∑n
i=1(xi−yi)2とおく. {sn}は単調増加である. n次元ユークリッド空間Rnの 3点(x1, . . . , xn),(0, . . . ,0),(y1, . . . , yn) に対する三角不等式から
0≤sn= (√
sn)2 ≤
vu ut∑n
i=1
x2i + vu ut∑n
i=1
y2i
2
≤
vu ut∑∞
i=1
x2i + vu ut∑∞
i=1
yi2
2
であるから{sn}は有界である. よって収束する.
これがD1, D2をみたすことはあきらかである. 三角不等式をみたすことは上と同様に
n次元ユークリッド空間における三角不等式を考えてその極限をとることで示すことが出 来る.
exercise 68. 上の三角不等式を示せ. Example 2.2.10. Rnにおいて
d(x, y) = max
1≤i≤n|xi−yi|
を考えるとRn上の距離関数である. (この距離はチェビシェフ距離(Chebyshev distance) とよばれることがある.)
Proof. D1, D2は明らか.
任意の1≤i≤nについて|xi−yi| ≤d(x, y)が成り立つ. よって d(x, y) +d(y, z)≥ |xi−yi|+|yi−zi| ≥ |xi−zi|.
したがって
d(x, y) +d(y, z)≥max
i |xi−zi|=d(x, z).
n= 2のときUε((0,0)) ={(x1, x2)|max|xi|< ε}. Example 2.2.11. Rnにおいて
d(x, y) =
∑n i=1
|xi−yi|
は距離関数である. (この距離はマンハッタン距離(Manhattan distance) とよばれること がある.)
Proof. D1, D2は明らか.
d(x, y) +d(y, z) =
∑n i=1
|xi−yi|+
∑n i=1
|yi−zi|
=
∑n i=1
(|xi−yi|+|yi−zi|)
≥
∑n i=1
|xi−zi|=d(x, z).
n= 2のときUε((0,0)) ={(x1, x2)||x1|+|x2|< ε}
exercise 69. R∞ において2.2.10, 2.2.11に相当することを考察せよ.
Example 2.2.12(離散距離空間, discrete metric space). Xを集合とする. 関数d: X× X →Rを
d(x, y) = {
1, x̸=y 0, x=y で定めるとdはX 上の距離関数になる. (問題集81(1)参照.)
(X, d)を離散距離空間(discrete metric space) という. Uε(x) =
{{x}, ε≤1 X, ε >1 Sε(x) =
{∅, ε̸= 1 X− {x}, ε= 1
Example 2.2.13 (p進距離, p-adic metric). pを素数とする. l∈Zに対し vp(l) =
{
max{n∈Z n≥0, pn|l}, l ̸= 0
∞, l = 0
とおく. l ̸= 0のときvp(l)はpn|l, pn+1 ̸ |l となるようなn∈Zである. すなわちlを素 因数分解したときのpの重複度.
dp: Z×Z→Rを
dp(l, m) =p−vp(l−m)
で定める. ただしp−∞ = 0と約束する. dp はZ上の距離関数である. この距離をp進距 離という.
Proof. D1, D2は明らか. D3を示そう. まず
vp(l+m)≥min{vp(l), vp(m)}
であることに注意する. なぜならlがpnで, mがpk で割れればl+mはpmin{n,k}で割 れるから. p−xはxに関して単調減少であることに注意すれば
dp(k, l) +dp(l, m)≥max{dp(k, l), dp(l, m)} (どちらも非負だから)
= max{p−vp(k−l), p−vp(l−m)}
=p−min{vp(k−l),vp(l−m)}
≥p−vp(k−l+l−m)=dp(k, m).
exercise 70. 上のD1,D2を示せ.
exercise 71. 上の例でp= 2の場合を考える. n∈Nとする. 1. l = 0,1,2, . . . ,10に対しd2(l,0)を求めよ.
2. d2(2n,0)およびd2(2n−1,0)を求めよ. 3. S1(0)およびU1(0)を求めよ.
4. S1/2n(0)およびU1/2n(0)を求めよ.
Remark . この距離は, 三角不等式よりも強い不等式(超距離三角不等式) max{d(x, y), d(y, z)} ≥d(x, z)
をみたしている. このような距離を非アルキメデス的距離(non-Archimedean metric) と いう.
exercise 72. X を集合とする. 関数d: X×X →Rが非負(∀x, y∈X, d(x, y)≥0)で, 超距離三角不等式をみたせば, 三角不等式をみたすことを示せ.
Remark . この距離は Qに拡張できる. 写像vp: Q\{0} → Z を以下のように定義する. 任意の0でない有理数rはr = pns/t, (n, s, t∈ Z, s, tはpで割れない)と表せ, この n はrにより一意に定まる. vp(r) =n とする. またvp(0) =∞と定める (p進付値).
dp: Q×Q→Rを
dp(l, m) =p−vp(l−m)
で定める. ただしp−∞ = 0と約束する. dp はQ上の距離関数である. この距離をp進距 離という.
Proof.
vp(l+m)≥min{vp(l), vp(m)}
であることを示せば, あとはZのときと同様. l = pns/t, m=pku/v でs, t, u, v ∈ Z は pで割れないとする. n≤kとして一般性を失わない.
l+m=pns
t +pku v
=pn (s
t +pk−nu v
)
=pnvs+tpk−nu tv
であるがvs+tpk−nu∈Zなのでvs+tpk−nu =pewと書ける, ただしe, w∈Z, e ≥0, wはpで割れない. したがってl+m=pn+ew/tvとなり, tvはpで割れないことに注意 すればvp(l+m) =n+e ≥nであることがわかる.
Example 2.2.14 (ハ ミ ン グ 距 離, Hamming distance). X を 集 合 と す る. x= (x1, . . . , xn),y = (y1, . . . , yn)∈Xnに対し,
d(x, y) =♯{i xi̸=yi}
と定めるとdはXn上の距離関数になる. この距離をハミング距離(Hamming distance) という.
exercise 73. これが距離関数であることを示せ.
Example 2.2.15. (X1, d1), (X2, d2)を距離空間とする. (x1, x2), (x′1, x′2)∈ X1×X2 に対して
1. √
d1(x1, x′1)2+d2(x2, x′2)2 2. max{d1(x1, x′1), d2(x2, x′2)} 3. d1(x1, x′1) +d2(x2, x′2)
で定まる関数はいずれもX1×X2上の距離関数である.
Example 2.2.16. 上の例は有限個の距離空間の直積に拡張出来る. (Xi, di) (i = 1, . . . , n)を距離空間とすると(x1, . . . , xn), (x′1, . . . , x′n)∈X1× · · · ×Xnに対して
1. √∑n
i=1di(xi, x′i)2
2. max{d1(x1, x′1), . . . , dn(xn, x′n)} 3. ∑n
i=1di(xi, x′i)
で定まる関数はいずれもX1× · · · ×Xn上の距離関数である. exercise 74. 上の1,2,3が距離関数であることを示せ.
exercise 75. Xを離散距離空間とする. Ex. 2.2.16.3 で与えられるXn上の距離関数と ハミング距離(Ex. 2.2.14)との関係を調べよ.
Definition 2.2.17. (X, d)を距離空間, A ⊂ X をその空でない部分集合とする. この とき
δ(A) := sup{d(x, y)|x, y ∈A} をAの直径(diameter)という.
(空集合については必要ならδ(∅) =−∞と考える.)
δ(A)<+∞であるときAは有界(bounded) であるという. exercise 76. A ⊂Bならばδ(A)≤δ(B).
Example 2.2.18. ユークリッド空間の点x= (x1, . . . , xn)を中心とする半径r(>0)の 開球Ur(x)の直径は2rである.
Proof. 任意の2点y, z ∈Ur(x)について
0≤d(y, z)≤d(y, x) +d(x, z)< r+r = 2r.
したがって0≤δ(Ur(x))≤2rである. 任意の正の数ε≤2rに対しRn の2点
x± = (x1±(r− ε
4), x2, . . . , xn)
を考えると d(x±, x) = r−ε/4 だからx± ∈ Ur(x). d(x+, x−) = 2r−ε/2 > 2r −ε.
よってδ(Ur(x)) = 2r.
Remark . 一般の距離空間においてδ(Ur(x))≤2rであることが上の証明の前半よりわか るが, 等号は必ずしも成立するとはかぎらない.
exercise 77. 上で等号が成立しない, すなわちδ(Ur(x))<2rとなる例を挙げよ.
Lemma 2.2.19. (X, d)を距離空間, A ⊂ X をその空でない部分集合とする. このとき Aが有界 ⇔ 任意の点x∈X に対し, あるr >0が存在してA ⊂Ur(x)となる.
Proof. ⇒) δ(A) =s, x∈X とする. a∈A をひとつ固定する. r =s+d(x, a) + 1とす ると, 任意のa′ ∈Aに対し
d(x, a′)≤d(x, a) +d(a, a′)≤d(x, a) +s < r だからa′ ∈Ur(x). よってA⊂Ur(x).
⇐) A⊂Ur(x)ならばδ(A)≤δ(Ur(x))≤2r.
exercise 78. Aが有界 ⇔ ある点x∈X と, あるr >0が存在してA ⊂Ur(x)となる. exercise 79. (X, d)を距離空間, A⊂ Xをその空でない有限部分集合とする. このとき Aは有界であることを示せ.
Definition 2.2.20. (X, d)を距離空間, A, B ⊂ X をその空でない部分集合とする. こ のとき
d(A, B) := inf{d(a, b)|a ∈A, b ∈B} をAとBの距離 という.
特にA が1点x ∈ X からなる集合A ={x}であるときはd({x}, B)をd(x, B)と書 いて, ({x}とBの距離といわずに) xとBの距離 という.
d(x, B) = inf{d(x, b)|b∈B} である.
あきらかにA∩B̸=∅ならばd(A, B) = 0であるが,逆は一般には正しくない.
Example 2.2.21. 2次元ユークリッド空間R2 の部分集合A, Bを次のように定義する. A={(x,0)|x∈R}
B = {(
x, 1 x
)
|x >0 }
このとき任意の正の数xに対し
d(A, B)≤d (
(x,0), (
x, 1 x
))
= 1 x であるからd(A, B) = 0であるが, A∩B=∅.
exercise 80. 1. r ∈Rとする. 任意の正の数εに対しr ≤εであればr ≤0である ことを示せ.
2. 上の最後の部分, すなわち, 任意の正の数x に対し d(A, B) ≤ 1x となるならば, d(A, B) = 0であることを示せ.
exercise* 81. (X, d)を距離空間とし, Pf(X)でX の有限部分集合全体のなす集合を 表す:
Pf(X) ={
A ⊂X Aは有限集合} A, B ∈ Pf(X)に対し,
d(A, B) = max˜
a∈Ad(a, B) と定める. ただしd(a, B) = inf
b∈Bd(a, b) (= min
b∈Bd(a, b))である. 1. ˜d(A, B)≥0であり, ˜d(A, A) = 0.
2. ˜d(A, B) = 0⇔A ⊂B.
3. ˜d(A, B) = ˜d(B, A)は成り立つか? 4. ˜d(A, B) + ˜d(B, C)≥d(A, C˜ ).
5. dH(A, B) = max{d(A, B),˜ d(B, A)˜ } と定めると dH は Pf(X) 上の距離関数で ある.
dH はHausdorff距離とよばれる(ものの特別な場合である).