側と続けていって、最後に両発表者にマイクを回したいと思います。
日本側参加者:ありがとうございます。時間がないなか恐縮なのですが、先ほど日本側の方から、
日本では韓国報道にむらがある、朴槿恵政権統一政策についての報道が少ないというご指摘が ありましたので、在外勤務の際の経験などもふまえつつフォローさせていただきたいと思いま す。
朴槿惠政権の基本方針としては、ご存知の通り韓半島信頼プロセスというのがありますが、
この構想についてはご指摘のように日本メディアではあまりカバーされていないところがある と思います。ただ、理由なくそうなっているのではなくて、書かれない理由もいくつかあると 思うのですね。まずやっぱり第一にあるのが、よく分からないということだと思います。もち ろん、よく分からなくても大事であるとか意味があるのであれば、一生懸命勉強して書くので しょうが、どうもうまく機能しているようにも見えないし、よく分からないしということで、
そのままにしてしまっているのだと思います。
ただ、このようなとらえ方というか困惑ぶりは日本メディアに限った話ではなくて、最近米 国メディアで働いているベテラン記者がソウルに来たとき、韓国メディアの知り合いも交えて 会食する機会があったのですが、韓国メディアの方はこの政策をトラストポリティークと表現 するのですね。で、米国メディアの方がトラストポリティークというのは結局どういうものな のか、と聞いたところ、その韓国メディア関係者が答えていわく、そのこころは「アイ・ドント・
トラスト・ユー」なのだ、そういう意味なのだということだったのですね。個人的にはなかな か言いえて妙だなと思った記憶がありますが…。
それはともかく、この信頼外交というのを北朝鮮に対してだけでなくて日本にも事実上同じ ようにやっている、というのはたいへん問題なのではないかと思います。日本に対してもアイ・
ドント・トラスト・ユーというところから入っている、そんなふうに見えてしまうわけです。ただ、
これだけ言われれば安倍総理もおそらく自分が韓国からあまり信用されていないということは 理解している、分かっていると思うのですが、他方で朴槿惠大統領の方も、日本からあまり信 用されていないということについて、大統領ご本人というか韓国側には無自覚なところがある ように思えて、これもまた問題なのだろうと思っています。
あとはもう一つ、先ほど別の方からご指摘があったばかりですが、韓国側がおっしゃられた 日本はアジアで孤立しているという見方についてです。これは韓国でよく聞く考え方なのです が、私自身、べつに安倍政権の政策をすべて支持しているわけではまったくなくて、むしろ同 意できないと思う部分も非常に多かったりするのですが、それでも日本がアジアで孤立してい るのだ、と言われてしまうと、はたしてそうかなという疑問を感じます。たしかに中国との、
あるいは韓国との関係がよろしくないというのは確実なのですけれども、それをもってアジア で孤立していると断言されてしまうと、ちょっと違和感を覚えるわけで、そういう感覚が拭い きれないというふうに思う次第です。以上です。
韓国側参加者:ありがとうございます。いくつか発言内容を考えていたのですが、その前に、ちょ うど議論の種になっていることもありますので、両国間で飛び交う断定的なものの見方につい て、一言触れておきたいと思います。たとえば日本がアジアで孤立しているという見方である とか、韓国の中国傾斜論などがそれにあたるわけですが、私はそれらは実はいずれも一般的な 見方ではなくて、ものごとを一言で切り捨てるというのか、断定的に表現するためのワーディ ング・レトリックではないかと思います。したがって、私は日本の米国傾斜論という見方は誤 りだと思いますし、日本はアジアでのけ者にされているというのも、おそらく韓国や中国との 関係がぎくしゃくしていること、つまり韓中日というアジアの主要国の間に葛藤があるという ことから生じたイメージが拡大した結果として出てきたものなのだろうと思うのですが、日本 のアジアにおける役割、これまでの寄与、外交的な努力といったものを考えれば明確に誤った 表現だと思っています。発表者もこの後触れるでしょうから、横取りする形になってしまって たいへん恐縮なのですが、まずこの点を申し上げておきたいと思います。
また、ここまでに中国傾斜論というタームがたびたび出てまいりましたが、私は今回の会議 を期に、少なくともここにいらっしゃる方たちには、二度と中国傾倒論というワードに引きず られないようにしていただきたいと強く願っています。それからもう一つ、米国と中国の間で
韓国が等距離外交とか均衡外交をやっている、というのも用語として誤っていると思います。
韓国政府の基本的な立場―政府の使う基本的なワーディングといってもいいでしょう―は、韓 米同盟の基本の上に韓中間の同伴者的協力も進めていくというものです。つまり土台はあくま で韓米同盟関係であって、それがあって初めて韓中関係も意味を持ちうるということです。均 衡外交・等距離外交という表現が当てはまらないことは明白でしょう。また政府自身がそのよ うな表現を使っていないのですから、ある意味で中国傾斜論というのはメディア経由で拡散し た、しかも意味において誤った用語ということになるわけで、韓国メディアの方々にもどうか 均衡外交という言葉は使わないでいただきたいと思います。
それから、次に日本の方々にも申し上げたいのですが、米国に行ってかの地での会議や意見 交換を行うと、必ずと言っていいほど日本の方から、韓国の立場も理解できる、という言葉を かけられるのですね。つまり経済的には中国に従属していて、なおかつ北韓問題を解決するた めには中国に協力を仰がなければならない、だからあなたがた(韓国)が中国の方に傾いてい くのもわかるよ、理解できるよと同情してくれるわけです。ただ、私としてはそういう言葉を かけられてもうれしくもなんともないのですね。なんとなればその二つの論拠自体が間違って いるからです。まず経済的な側面について言えば、それはあくまでマーケットの論理によって、
互いの必要に基づいてやっていることであって、統計上中国の位置付けが高いからといって、
利益のために戦略的観点から接近する必要はありませんし、そもそも韓国が中国から援助を受 けているわけでもありません。また、韓国のオピニオンリーダーたちは、北韓問題で中国が韓 国の話を聞いてくれない、韓国の期待通りに動いてくれないことをみなよく知っています。そ ういう期待はしていないということです。ですから、そういう間違った解釈に基づいて、対中 接近する韓国の立場もよく理解できるなどと言われてしまうと、なにか底意があるように聞こ えてしまうのですね。実際にはそうでないのに韓国の対中接近というものをむりやり既成事実 化しようとしているのではないか、というふうに。ですから、韓国としてはいずれも受け入れ がたい考え方だ、と申し上げたいと思います。
また、先ほど日本側から、なぜ中国に行って統一の話をするのかというご質問が出ましたの で統一についても触れておきたいのですが、具体的には統一の二つの側面を指摘したいと思い ます。まずは、これまで韓国政府はいろいろな統一構想を考え出してきましたが、その一方で 具体的に行動に移したことはなかった。統一をはるか先の出来事と考えるばかりで、具体的な 準備がまったくない状態で長いことやってきてしまったという点です。したがって、このまま ではいけない、いつのことになるかはわからないにしても何らかの準備が必要だという考え方 が優勢になってきたのですね。これが第一点です。そして、二番目に指摘すべきは、統一が韓 半島だけの問題ではない、国際的な事件であって、利害にかかわってくる当事者たちの協力が 必要になるということです。
ということで、国内的な準備と国際的な協力確保が必要になるわけですが、国内的には統一 準備委員会というものを作って、統一後の法制度であるとか、社会文化的な制度について、現在、
準備をしているところです。そして、これと並行して周辺国に対する説得、指示を取り付ける ための活動も進めています。韓中首脳会談で中国側にわれわれの考えを話し、そして支持を要 請したのはその一環ですし、韓米首脳会談でもまったく同じことをしたわけです。また韓日首 脳会談が行われることになれば、当然日本に対しても同じことを言って、日本が韓半島の統一 において建設的な役割を果たしてくれるようお願いをすることになるはずですし、さらには韓 露首脳会談が行われればそこでも同じことをするでしょう。
つまり統一構想の核心は説得であるということです。まず初めにあるのが、国民に対する説得。
統一の過程で発生するコストがあまりに巨額だということで、特に若い人たちのなかには統一 は必要ないというふうに否定的に考える人も多いので、それに対して説得をするということで す。また二番目に、北韓の住民に対しても説得をしなければなりません。統一というものがあ なたたち(北韓の住民)にも恩恵をもたらすということを伝えるということです。そして最後に、
より重要なこととして、周辺国、特に利害当事者となる国々に対して統一について説得すると いうこと。このように考えていけば、朴槿惠大統領が中国に行って習近平主席と平和と統一の 問題についての話をしたことも、統一へ向けた支持を形成するための行動であったということ が分かるはずですし、当然に米国や日本に対しても同じ話をする、それだけのことだというこ とがお分かりになると思います。このような韓国側の文脈というものをどうかよりよく理解し