stupid」というのがあります。要するに、いろいろなものの根本は経済だという、政治の根本も 経済だということですね。にもかかわらず、このセッションでは、なぜか経済の議論があまり 活発化せず、すこし残念に思うのですが…。どなたかがご指摘のように、これまでのこの会議 ではあまり経済についての議論をやってこなかったわけですが、日韓関係、アジアの今の状況 を考える上でも、経済の動向がどうなっていくかというのが非常に政治的な争点にもなりうる と思って議題に入れたところ、なかなかレスポンスがなかったということがわかった、という ことでしょうか。いいことなのか、悪いことなのかはともかくとして、これはこれで日韓関係 に関心を持つ関係者の中の雰囲気を示すエピソードということになるのではないかと思います。
いずれにしましても、ご登壇いただいた発表者の先生方にはあらためてお礼申し上げます(拍
手)。それでは、本日の会議はここまでといたします。みなさまお疲れ様でした。
セッション4:「これからの両国政治関係」
セッション4司会者:それでは、会議2日目のスタートとなる第4セッションを始めたいと思 います。進行表によると、まず発表を聞いて、そのあと10時15分から30分までいったんコー ヒーブレイクを入れることになっておりますが、1人あたりの発表時間は15分から20分程度 を見込んでおりますので、休憩に入るタイミングは様子を見ながら適宜調整することとさせて いただきます。さて、このセッションでは両国の国内の状況とそれが韓日関係に及ぼす影響に ついて議論することになっております。キックオフを務められる双方の発表者には両国の国内 政治と外交に通暁された専門家をお迎えしていますので、白熱したセッションになるものと期 待しております。それではさっそく発表に進みたいと思います。昨日の最後のセッションは日 本側からでしたので、本セッションでは韓国側、次に日本側の順でお願いいたします。
「韓日政治関係の未来」
韓国側発表者:ありがとうございます。私は日本での勤務も経験し、日本について普段から関 心を持って見ておりますが、お話をいただいて今回の発表の準備をしながら、自分の至らない 部分が実際にはいかに多いか、実感させられました。したがいまして、韓日関係の未来という 重大なテーマを前にして若干萎縮しております。特に過去を振り返る、現状を分析する、未来 を語るというのはそれでなくとも容易なことではありませんので…。ただ、能力の及ぶ範囲で 務めさせていただきたいと思う次第です。
さて、まずは韓国の政治状況を概括するところから始めたいと思います。来年、韓国では第 20代国会のための総選挙が予定されており、約半年後に控えております。現在は与野党とも総 選挙を前に、相手側陣営との戦いの前段階として、自陣営内部での争いを行っているという状 態です。公選権をめぐる、つまりだれが公認候補になるかをめぐる綱引きですね。与党セヌリ 党の場合はこの間苛烈な主流派・非主流派の争いが続いてきましたが、検定制の歴史教科書を 国定化するというイシューが持ち上がる中で、朴槿惠大統領と保守勢力の次期アイコンとされ る金武星(キム・ムソン)代表の間に一時的な共闘関係が出来上がっているといわれますが、
国会で来年度予算案が処理される12月初旬から中旬以降は、親朴系の核心人物の1人である 崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副総理らを中心に、これまで劣勢に置かれていた主流派が、
総選挙を前に反撃に出るのではないかと予想されます。また、他方の野党陣営は、第一党の新 政治民主連合が先の大統領選挙での惨敗以降、大規模国政選挙でことごとく敗北しており分裂 に歯止めがかけられない状態です。今回の総選挙でも党内派閥の調整に手間取っており、見通 しは暗いと言わざるを得ません。湖南地方(全羅道)を基盤とする新党の結成が推進中ともい われていますが、さらなる分裂につながるため野党陣営にとっては喜ばしからざるニュースと いうことになるでしょう。このような動きがさらに続いていけば獲得議席が割れることになり ますし、特に新党がこれまで野党の政治的基盤であった全羅道で一定の勢力を確保し、得票比 率によって配分される比例代表を相当数獲得するとか、あるいは地域区(小選挙区)でも新政 治民主連合の議席を奪うことになれば、結局はセヌリ党が労せずして過半数を確保することに なると考えられます。最近取材した新政治民主連合の中堅議員は100議席も―つまり定数300
の1/3―厳しいのではないかという見通しを示していましたが、韓国の憲法規定上、この100議
席というのは憲法改正を阻止することのできる最低ラインですので、ある党が圧勝して他党は この100議席も維持できないということになると、その後の政治を予測することはきわめて難 しくなってしまうのですが、そのような状況になる可能性も出てきたということです。
さて、このように与党・野党陣営それぞれの内部で主導権争いが続いているのは、目の前の 国会議員選挙もさることながら、その後、2017年12月に行われる大統領選挙を見据えて、各陣営・
各会派が党内でヘゲモニーを確保しようとしているためでもあります。韓国では政党が大統領 選挙の候補者を選出する際には党内で予備選挙が行われますが、党員と国会議員の投票が50%
以上反映されますから、総選挙で多くの議員を当選させた会派が有利になるというわけです。
ともあれ、現在の汝矣島(韓国国会の所在地)はこの総選挙へ向けた選挙区画定や議員定数
をめぐる議論に埋没しているといっていい状況にあります。そして、このような状況が本セッ ションのテーマである韓日関係にどのような影響を及ぼすかというと、それは膠着状態にある 韓日関係に対して働きかける、改善のために支援をする余力・余裕が韓国の政界にはない、と いう状況になっているということです。もちろん韓日関係は韓国が一方的に動かすものではあ りませんから、日本側からの働きかけというのも考慮しなければならないのですが、少なくと も韓国側の文脈に目を向けた場合、そのような状況にあるということを申し上げておきたいと 思います。
ちなみに、ここで韓日関係に視点を転じてみますと、まず短期的展望として、11月初めに3 年ぶりとなる韓日首脳会談が開かれる見込みになっております。ただ、会談を機に一気に状況 が好転するかというと、そうとは言い切れないのが率直なところで、そこで取り上げられるイ シュー―たとえば、先ほど日本の国会議員が靖国神社に集団参拝したというニュース速報をス マートフォンで見ましたけれども―によっては会談自体の成果についてもそうそう楽観はでき ないのではないかと思っております。朴槿惠大統領自身、先日の訪米の場で日本との首脳会談 を行う意思表示をしておりますから、ある意味では米国へのメッセージという側面があり、し たがって会談自体は儀礼的なもの、一種のセレモニーに終始する可能性も否定できないと考え ます。
ということで、仮に内外の状況がここまで申し上げた前提に沿って推移した場合、少なくと も来年の総選挙が終わるまで、韓日関係は―首脳会談の実施にもかかわらず―現在の停滞状況 が続いていく可能性もあると思います。また、その場合は政治的な契機―たとえば4月13日の 総選挙の約1か月前には3.1節がありますが―にトーンの強い対日メッセージが出されるとい うのもありうる話だと思います。朴槿惠政権は発足から4年間、対日関係において何ら成果を 上げられずに来ていますので、日本と関連した記念日である3.1節に強い調子で日本に注文を 付ける、というのは流れとしては十分に考えられるためです。また、そのようなメッセージが3.1 節のような特定のタイミング以外のところで発せられる可能性も、排除すべきではないでしょ う。そして、総選挙を間近に控えた時期に行われるそのような行動は、実際の意図が那辺にあ るかとは無関係に、国内政治に直接・間接的な作用を及ぼすことになります。特にメッセージ のトーンが強硬であればあるほど、保守陣営の選挙運動にとってプラスになることでしょう。
もちろん、このような見通しはあくまで私個人の考えとして申し上げているのであって、特 別な根拠があっての発言ではありませんけれども、過去を振り返ってみれば文民政府(金泳三 政権)以降、歴代政権は―進歩政権よりは保守政権において特に―このような行動パターンを 示してきた経緯がありますので、このような見立てもできるのではないかと考える次第です。
たとえば金泳三政権の時には独島問題をめぐって「曲がった性根(ポルジャンモリ)を叩き直 す」といった発言がなされ、対日強硬策が取られましたし、李明博政権では任期の末期になっ て突如独島を訪問するということがありました。むろん、独島については、韓国側の文脈―韓 国政府や国民の感覚―からすると独島は自分たちが占めていて、当為性も確たるものでなおか つ名分もある、よって自明の言動であるということになるのでしょうが、意図はともかくとして、
そのような言動が現実に韓日関係を悪化させる要因になったことは否定しがたいところです。
そして、その延長線上に朴槿惠政府は継続的に従軍慰安婦問題と「正しい歴史認識」の問題 を日本側に提起・要求しておりますし、その副作用が指摘される中でもこれらの問題を物差し(条 件)にする姿勢を崩していません。また朴槿惠大統領の言動の特徴の一つでもある原則論とい うものを考慮すれば、これらを直ちに撤回するというのは考えにくいというのが私の印象です。
ということで、短期的観点から見た韓日関係は、残念ながら11月の首脳会談にもかかわらず現 在の膠着状態から脱せないまま推移する可能性が高いというのが私の観測です。
では中期的な観点ではどうでしょうか。具体的には朴槿惠政権末期までというタイムライン を念頭に置くことにしますが、ただいま申し上げたように、転換を図るような画期となる出来事、
イベントがない限り、両国の現体制が任期満了を迎える2018年まで状況が動かない恐れもある と考えます。特に任期終盤になるほど指導者のキャラクターが色濃く表れるというジンクスが 再現されるならば、その可能性はより高くなるでしょう。さらに、それに加えて外交の動向も 韓日関係に影響を及ぼすことになります。昨日は中国傾斜論であるとか、米国に傾く/中国に 傾くという二元論的な傾斜論について議論が白熱し、傾斜論という言葉は使うべきではないと いうご意見も出ましたが、少なくとも東北アジア三カ国の相互関係を見た時、韓国が中国との