「経済的観点から考えた韓日関係」
韓国側発表者:ありがとうございます。午前のセッションからさまざまなご発表・ご意見に触 れて個人的にも勉強しております。今回の会議に経済セッションが盛り込まれていることをう
れしく思っておりまして、とかく政治的関係が先立つ韓日関係において実際には多様な局面が あること、そして経済からの視角というものを提示できるよう頑張って務めたいと思います。
さて、私は2012年、韓日関係の悪化が問題になり始めたとき、これが韓日経済関係にどんな 影響を及ぼすことになるだろうか、と真っ先に考えました。ただ、政治分野についての知識が 足りないこともあって政治的関係が経済に影響を及ぼすルートや、そのメカニズムといったも のがわからなかったので、何か手がかりを得られないかと思い悩んだ結果、日本の日経ビジネ スオンラインの関係記事を読み漁ったものでした。この媒体にはご存知の通り鈴置高史さんと いう朝鮮半島情勢に造詣の深い編集委員がいて、この方の書く朝鮮半島情勢に関する記事は常 に人気ランキング上位を占めているそうですが、そのような記事を読みながら自分なりに事態 の行く末を考えようとしたのですね。その結果、政治と経済の関係・影響についてはそれなり の感触を得ることができたのですが、他方で一般的に具体的なデータを用いた解説・説明とい うものは周りを見回してもあまりなされていないようですので、今回はデータを重視しながら、
両国間の経済関係にどんな影響があらわれているのか、見ていくことにしたいと思います。
まずは貿易のデータです。日本側のご発表にも直接貿易の話が少し出てきましたが、韓国と 日本の貿易額は、2011年に最高値を記録した後減少に転じています。そこにどんな要因があっ たのか、そこを知ることがまず重要です。なぜならば、この時期にかつての韓日経済関係が根 本的に変化したためです。たとえば2011年以降、それまでの円高が円安に転じ、円は4割から 5割も切り下げられました。ですから、韓国が日本からの部品・素材に頼っていたのであれば、
円安を受けて日本からの輸入が増えるのが当たり前なわけですね。しかし実際には日本からの 輸入は減り続けました。その間に韓国が進めてきた部品の国産化、装置の国産化、あるいは輸 入先の多角化の影響があらわれていたためです。また、先ほどの画面の右側のグラフをご覧く ださい。これは先ほどから傾斜論という話が出ている中国との貿易を示したものですが、輸出 では2000年から、輸入では2007年から相手国として中国が日本を抜いています。もちろん経 済関係はマーケット・市場の原理に基づくものですから傾斜論ということばを―先のセッショ ンでもいろいろ意見が出たように―軽々に使いたくはありませんが、大きなシェアの変化が起 きたことは確かといえます。
そのようなことをふまえつつ、この対日貿易の減少について考えてみるならば、まず日本側 の状況、長期の景気低迷というものも大きかったと思います。また円安によって韓国からの輸 出条件が悪化―特に鉄鋼・化学などの産業財―したことも作用しました。そして、最近サムス ンが、会社名のかわりにGalaxyというブランドを前面に出してマーケティングを展開したとこ ろスマートフォンのマーケットシェアが増えたというニュースを見ましたが、嫌韓や政治の影 響というものも遺憾ながらあったと思います。スマートフォンだけでなくラーメンとか化粧品 とかマッコリなど、いずれもそれまでの人気商品だったものの対日輸出がかなり減少したこと からも、韓国の対日輸出に嫌韓論というものがある程度影響を及ぼしていることが分かるので はないかと思います。それから、日本側からもご指摘のあったリーマンショック後の海外生産 の増加とそれにともなう貿易の縮小の影響も考えられるでしょう。これらが対日輸出の減少に 作用したということです。
次に対日輸入が減少した原因にも目を向けてみますと、先ほども触れましたが、韓国で設備 投資が振るわなかった、あるいは輸入が全体的に減ったという側面もあるものの、本質的には 韓国がこれまで部品素材の国産化や輸入先の多角化を進めてきたことが一番大きな要因です。
今では韓国では対日貿易赤字がそれほど大きな話題にならなくなっていますが、これはそのよ うな動きの結果、実際に対日貿易赤字が4割も減少しているためです。また、たとえばサムス ンは今ではベトナムで大規模にスマートフォンの生産をしていて、そこで使われる部品や素材 を日本以外から調達する割合も増加しています。ということで、韓日の経済関係は最近、特に 2012年以降構造的に変わってきていて、なおかつそれは景気変動ではなくて構造的な変化に起 因するものだと私は見ています。ここに挙げたような複数の要因が複雑に絡み合っているとい うことですね。そして、韓日の経済関係も、かつては考えられなかったような新しい段階に入っ ているということができます。
さて、経済関係というと貿易のほかにもう一つ、投資という要素も重要になってきます。そ こで投資についても見てみたいのですが、こちらのグラフからは、2012年にピークに達した 後減少していっていることが分かります。これについてはいわゆる嫌韓によるもの、経済構造
の変化にともなうもの、韓国への関心低下を示すものというふうにいろいろな説明がなされま すが、それらが本当に作用しているかどうかはよくわかりません。ただ、投資金額が突出した 2012年を除外して長期的なトレンドを見てみると、実はそれほど減少しているわけではない のですね。特に円安は対外投資にとっては悪条件なのですが、先ほど申し上げたような大幅な 円安にもかかわらずこのようなトレンドになっているわけです。したがって投資は一面堅調で あるともいえるわけですが、ただ私は、これは投資にともなう時間差、タイムラグの所産では ないかと考えています。企業内の意思決定に2〜3年かかるのは十分ありうることですから、
2011年から2012年にかけての時期の状況判断が現在の投資行動に反映されているというわけ です。そのような次第で、大きな減少トレンドこそ見られないものの、私は今後日本企業の対 韓投資が増加していくことは期待できないと思っています。
以上をふまえて最近の韓日経済関係について総括的に三点申し上げるならば、まず指摘すべ きはパラダイムが変化したという点です。またそれにともなって、政府なり政策当局なり、企 業なりのそれぞれのレベルで違った行動様式が求められるようになっている、とも言えるでしょ う。
また、そこからはこのパラダイム変化にどう対応すべきかという問題が出てくるわけですが、
それ以前の話として、いまだに―パラダイムが変化しているにもかかわらず―相手との競争意 識ばかりが先立って協力しようという意識が低い状態にあるということを指摘しなければなり ません。これが二点目です。たとえば日本経済がアベノミクスによってよくなれば韓国経済に とってもいろいろな利点があるはずなのですが、韓国では―円安によって悪影響を被ったから という側面はあるにせよ―アベノミクスを脅威ととらえたり高く評価しない、そのような傾向 がありました。また、日本の方でも、たとえば私が個人的に「嫌韓経済論者」と呼ぶ立場の人 たちは、中国経済が鈍化すれば韓国経済はただちに崩壊するのだというふうに極端な主張をし ていますが、それ以外にも、4、5年前には経済誌がのきなみ「サムスンに学べ」といった特集 を組んでいたものが、最近ではのきなみ韓国経済崩壊論に傾くといった具合で、大企業や国家 が数年の間にそのように極端に変化するはずもないのにこのような風潮が見られるというのは、
やはり嫌韓の影響が少なからずあるのではないかと思います。一事が万事このような具合で、
FTAを締結するとか、東南アジアにインフラを輸出する際には経産省の報告書でも必ず韓国の ことが言及されています。韓国の貿易のFTAカバー率は何%であって、日本はTPPに加入する ことでこれを何%上回ることができる、といったふうに。つまり自国の経済の客観的な条件と 将来的な発展の可能性を考えるよりも相手との目先の競争を重要視するというわけで、常に韓 国は日本を、日本は韓国を意識しているのですね。こういう視角が真の市場論理に基づいて経 済成長を目指す、またそのために協力関係を築く上で影響を及ぼしていることは否定しがたい と思います。
そして、これと関連して、これまでの経済構造が変化したのならばそれにどう対応すべきか、
これを本格的に考えるべきなのにそれをしない、あるいはそうしようとしない。これが三点目 です。
ということで、現状と問題点が見えてきたところで、次に私なりのアジェンダセッティング を試みてみたいと思います。まずは高齢化への対応戦略です。先ほどのご発表でも高齢化の問 題が取り上げられ、韓国では日本なみにはやい速度で高齢化が進行しているというご指摘があ りました。まったくもって事実です。ただ、この高齢化の問題を韓国から見ていて一つ疑問に 思うのは、ふつう人口変動というのは突如生じるものではなく、長期的な推移は2、30年前か ら予測できるものなのに、なぜ日本は高齢化に備えることができなかったのだろうかという点 です。医療負担の大幅な増加であるとか、介護人材の不足であるとか、技術もあり資金力もあ る日本がこういう問題に十分な備えられなかったということを不思議に思うわけです。最近で は介護労働力を海外から受け入れるという議論をしているそうですが…。ですから、日本が高 齢化問題の先進国としてその経験を活かし、東アジアに寄与するのだ、というようなスローガ ンをよく耳にする一方で、実態としての対応策については経産省の報告書などを見ても具体論 がたいへん乏しいのですね。官民協力の形で海外、たとえばインドネシアやロシアに病院を建 設するとか、そういった事例がみられる程度です。ということで、この点でも先ほどの「視野 を広げて考えてみること」が必要だと考えるわけです。高齢化と関連した様々な制度、政策、
そして産業のありかた、あるいはNGO同士の協力など、日本以上のペースで高齢化が進んで