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ありがとうございます。同じく学部生で政治経済を勉強している者です。ジャー ナリストの方々が伝えてくれた報道をいかに受け取るかということに関してなのですけど、一

ドキュメント内 議事録 - 日本国際問題研究所 (ページ 139-145)

般人の視点からすると、まず政治とか経済について接する最初の地点がこのジャーナリズム、

つまり報道になると思います。ただ、先ほどのご発言にあったように自分で疑って、関心を持っ てどんどん調べていくのがベストなのでしょうが、特に関心のない分野のことなどについては、

ほとんどの人は自分で掘り下げてみることはあまりしないのではないかと思うのです。そうな ると、ある特定の解釈がそのまますっかり自分の見方になってしまうという危険というか、解 釈によって見方が左右される可能性もあると思うのですけれども、今後日韓関係という面から 見て日韓関係をよくしていくためにはどのような報道を目指されているのか、あとは、一般人 にとってどのようにその報道を読み取っていくべきなのかということについてもおうかがいし たいです。

韓国側司会者:韓日関係とメディアの役割というのはまさに今回われわれが議論をしてきたテー マですし、あるいはこれまで5年間行ってきた会議の根本的な問題意識もそこにあったといっ

ていいと思います。それだけに簡単な答えというものもないと思いますが…では、そちらの日 本側の方、お願いできますか?

日本側参加者:ありがとうございます。たいへん難しい質問ですよね。たしかに昨日と今日と 話をしていても、こうすれば良くなるよねというアイディアはなかなかありませんでした。と いうことで会場の総意ではなくて私の考えになってしまいますが、メディアが日韓関係を良く するということは無理かもしれません。ただ気を付けるべきことはいろいろあって、そこに気 を配ることで問題を無意味にあおったり、火に油を注ぐようなことは最低限避けられるだろう と考えています。たとえばレッテル貼りですね。会議の中でも同じようなことを言いましたけ れども、レッテル貼りはやめたほうがいい。相手に対して、この団体は反日団体である、とか、

この政治家は右翼だ、極右だとかレッテルを貼ってしまうと、その瞬間に思考が停止してしまっ て、その団体や政治家が何をしたか、言ったかは関係なくなってしまう。また、そもそも極右 でないのに極右というレッテル貼りをするのはこれはもう論外でしょう。たとえ嫌な奴でもた まにいいことを言うことがあるわけですが、でも嫌な奴だというレッテルを最初に貼ってしまっ ては、その嫌な奴がたとえいいことを言ったとしても全然目に入ってこない。だからこれはす べきでないと思います。

それから、先ほど出てきた「報道を疑う」ということについて一言だけ言うと、SNSなんか で気になるのは、これこれこういうことがあって、そこにはこんな理由があった、という文章 に続いて、でもこれについてマスコミは一切触れようとしないんだよね、なんて書かれている のをよく目にする点です。でも実際には昨日の新聞にばっちり載っている、なんていうことが ざらにあって、結構有名な人のツイッターでもその手の書き方が多いので閉口してしまいます。

すみません、うちの新聞が何月何日付でトップ掲載してますよ、インターネットで少し検索し てくれればわかるはずですよね、と直接指摘したこともあるくらいです。そのときは先方でた いへん恐縮して謝ってくれましたが…。ですから、この種の書き方、マスコミはこの件につい て語ろうとしない、なんていうのに出くわしたときは検索すると出てくることもかなり多いの で、できればそういうときには「疑ってかかる」ようにしてくれると記者としてはたいへんに 助かります。余談めいてしまいましたが、以上です。

韓国側司会者:ありがとうございます。当初のプログラム通りですと残り15分ほどですが、会 議が押してセッションが10分ほど遅れて始まりましたので、25分ほど残っているという前提 でさらに進めたいと思います。次はそちらの学生さん、どうぞ。

日本人学生4:ありがとうございます。私は学部で政治学を学んでおります。日本と韓国双方 のジャーナリストのみなさまに率直なご意見をいただきたいと思うのですが、私は日本と韓国 の間にはお互いに真意が相手に伝わっていないという不満というかもどかしさがあるように感 じています。たとえば日本側は安倍談話の内容をこんなに丁寧に伝えているのになぜ韓国にう まく伝わらないのだろう、という不満があるでしょうし、韓国側でも同じようなことがあるの だろうと思います。つまりそれだけ伝え方が重要になってくるということで、しかもデリケー トな問題であればあるほどその責任が大きくなってくるのだろうということです。そしてメディ アはその最前線ということになるわけですが、現場のジャーナリストの方々はこの点にどう対 処していらっしゃるのでしょうか。特に歴史問題のように、実際にその出来事を体験している 人が情報の送り手側にも受け手側にもほぼいない状況で、しかもデリケートな話題を扱うとき にどのような伝え方の工夫をしているのかというのを、日韓の双方のジャーナリストの方々に うかがいたいと思います。

韓国側司会者:これは先ほどのご発表の内容に合致する質問であると思いますので、先にご発 表者に答えていただくことにしましょう。

日本側発表者:ありがとうございます。ちょっとその前に、先ほどの学生さんが「一般の人」

という言い方をしていましたけれども、実はこの会場にいる者すべてが「一般の人」です。ジャー ナリストとして、なんの何某という肩書を持っているとどこか違う存在のように思われるかも

しれませんが、でもみんな普通の人なんです。みんなが家庭を持って普通に暮らしている。親 がそろそろ介護の歳になるとか子供の弁当を作ったりとかやっているわけです。だから普通の 能力を持った、普通の人がやっているのがジャーナリズムだというふうに思っていただいたほ うが嬉しいですね。

日本人学生3:すいません。政治に興味がある人とかはいろんな情報を調べたがると思うので すけれども、あんまり関心のない人はそういうことはしないということで、深く掘り下げるよ うな関心を持っていない人のことを言ったつもりだったのですが、語弊があったようで失礼し ました。

日本側発表者:ありがとうございます。ではただいま出た歴史問題の話についてです。非常に 難しくて、これをまさに5年間いろんな角度から議論をして学んできたというのがこの会議の 実情だと思うのですが、先ほどの方のように私の経験に引き付けてお話したいと思います。

日本の敗戦から70年が過ぎたわけですけれども、ご存命の方、証言者がまだいらっしゃる一 方でどんどん高齢化が進んでいます。また証言を裏付ける資料の多くは終戦時のどさくさにま ぎれて、大本営の命令を受けた陸軍が廃棄してしまったという状況なので、文書で証言を裏付 けられるものというのは極めて少ないわけです。ということで歴史的事実を再構成することに、

ものすごい困難がともなうのですね。ですから、まず権力者はこんなことを二度としてはいけ ないと思います。歴史を隠ぺいするために証拠を消してしまうというのはありえない話です。

これが一つ大きな歴史の教訓だと思います。

そして、それをどう伝えていくかという話なのですけれども、まだ証言者が生きていらっしゃ るので、そういった方の肉声というのはきちんと聞いて、それを伝えていく必要がある。ただ 時として、そういう肉声のなかにはおっしゃっていることが少々大げさだったり、記憶の混濁 というものもある。意図的に嘘をつくというのは極めて稀なケースであるけれども、どうして も時とともに記憶があいまいになることはあります。だからそういったものをいろんな資料を 使って裏付けていくことが必要になります。先ほど別の方がおっしゃっていましたけれども、

さっき単に話を聞くだけではなくて、ちゃんとこっちも勉強して行って、この証言は正しいと か矛盾しているとか、判断できるようにならなければいけない。そういう目利きのようなとこ ろもジャーナリストには必要です。また証言者の表情を見て観察するとか、そういうテクニッ クも求められますね。私の場合は、核や被爆者の問題を扱ってきて、まだまだやり残したこと もたくさんあると思っていますから、そんなふうにしながら証言者の声をしっかり伝えて行く ということを地道に続けたいと考えています。

また、証言を扱う場合だけではなくて、たとえば政治家の発する言葉というのはいろんな思 惑が付いたりします。安倍総理の言葉に周りの人間がスピン(情報操作)をかけたりして、い ろんな政治的思惑をもった解釈が付いてきたりするのです。そういうことをする人をスピン・

ドクターというのですが、やはり好意的な記事を記者に書かせたいから、特に為政者の周りに はそういうことをする人がたくさんいるのですね。ここでも目利きの能力が必要になってきま す。あの政治家のあの発言について、この人が言うような解釈で本当に正しいのか、というふ うに絶えず疑いの目を持ちながら事実を検証していくということです。

韓国側司会者:ありがとうございます。韓日のジャーナリストからお話をうかがいたいという ことでしたので、司会者の立場ですが私からも付け加えたいと思います。

記者が記事を書く時、そこには二つの側面があります。一つは、はたしてどのようなことが 起きたのかを伝えること、つまりファクトを伝えることです。そしてそこで重要になる価値判 断は、「これを書くべきかどうか」という判断、そしてそれをどのように書くのかという判断です。

そしてもう一つが、アジェンダセッティングをすることです。でははたしてどのような方向に 向かうのが正しいのか、これについて説明をしなければならないということです。これらにつ いてジャーナリストが、個人として、また媒体の性格に応じてそれぞれ悩みながら記事を書く わけです。そして、その過程で、たとえば韓日関係に関連する内容であれば、両国間に起きて いる様々な問題が友好的な方向に向かうように刺激的な書き方を使わないようにすることもあ りますし、またいたずらに刺激を与えて韓日関係を逆に悪化させてしまうようなことも起こり

ドキュメント内 議事録 - 日本国際問題研究所 (ページ 139-145)

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