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司会者:ありがとうございました。韓日関係の膠着状態は昨日・今日始まったの 話ではありませんが、ご発表ではそのような状況が今後も続く、未来も不確実で悲観的である

ドキュメント内 議事録 - 日本国際問題研究所 (ページ 75-78)

という見通しが示されました。11月に予定されている韓日首脳会談に対してはターニングポイ ントになるのではという期待感が多く示されておりますけれども、ご発表ではそれも望み薄と いうことで、この点が印象的だったと思います。さて、それでは続いて日本側からご発表をお 願いします。

「これからの両国政治関係」

日本側発表者:ありがとうございます。よく若い方に「日本人は世代を区分して、勝ち組と負 け組に分かれている」と言ったりするのですが、会場内の方々も、その伝でいえば年齢的に勝 ち組と負け組に分かれていると言えるのかもしれません。また私は、世代的に見た勝ち組、と いうことになるのではないかと思います。

もちろん勝ち組・負け組云々は冗談ですけれども、世代といいますか年齢が日本の国内状況

や政治を考える上で重要なキーワードとなっていることは厳然たる事実です。たとえば日本は、

1千兆円以上の借金を抱えているにもかかわらず、ギリシャのような危機に今のところ陥って いません。また日本は、人口が急激に減少する見通しでお年寄りが、やがて人口の4割を占め るようになる。それにともなって国家財政の3分の1が社会保障制度、特に医療費を中心にか かって、しかもこれを減らすことができないわけです。ですから、再び先ほどの表現にならえば、

多くの借金と高い医療費を作って、なおかつたくさんの年金をもらえる側が勝ち組です。そし てそれを賄ってくれるのが、私の子どもの世代になるということになるわけです。そして、こ ういう問題に直面している中で、課題がどんどん先送りされているのが日本の政治の現状だと 思います。

日本の政治は、この9月から安全保障の季節から経済の季節に変わりました。簡単に説明し ますが、このほど安倍総理が打ち出したのは、1億総活躍社会という言葉と、新しい3本の矢 という言葉です。新しい3本の矢というのは、希望を生み出す強い経済。それから二つ目は、

夢を紡ぐ子育て支援。三つ目が、安心につながる社会保障のことで、今申し上げたような深刻 な課題にそれぞれ対応する政策という位置づけです。そして、これが実現すれば日本はきっと バラ色になると主張するわけですが、具体的に言えば、GDPを600兆円にする。それから、希 望出生率という言葉を使っているのですが、子どもを作る数ですね、これを1.8にする。それ から、50年後も人口を1億人維持すると。それから、親の介護が必要になったときに仕事を辞 めなきゃいけない、こういう介護離職をゼロにすると。こういう目標を掲げています。

やる前に批判をしたりするのは、あまりいいことではないと思いますので、データだけ示し ますが、グラフの表の1(p.74)を見てください。日本のGDPは、1997年の523兆円をピーク にして、今日まで490兆円から510兆円の間を推移しています。それから、出生率に関して申 し上げれば、2005年の1.26が最低で、その後若干回復をしていますが、2014年が1.42です。

それから、表の3(p.75)、人口の見通しですが、既に日本の人口はピークアウトしています。

私は確実に生きていませんが、2100年頃には、明治時代初期の人口に戻るというか、減る。た だ人口構成はまったく異なっています。それから、これはグラフはありませんが、介護が必要 なお年寄りが、現在550万人ですが、2025年にはその数は700万人だそうです。これに対して 介護職員が新たに220万人必要だということなのですが、この介護職員をどうやって確保する か、見通しは立っていません。ですから、私なども介護のお世話にならないように頑張ろうと 覚悟しているところです。

さて、このような安保から経済への転換の最大の理由は、来年夏に参議院選挙があるからな のですが、安倍政権が発足して以降、季節は経済から安全保障、あるいはイデオロギー的な政策、

そしてまた経済というふうに、いろいろ振り子のように振れています。それは、参議院選挙や 統一地方選挙という大きな選挙があるたびに、安倍内閣は経済政策に目標を移し、それが終わ るとまた自分のやりたいことをやるというパターンを繰り返しているからで、今度もそういう パターンの一つです。そして、最近の選挙結果を振り返りますと、2010年の参院選、自民党が まだ野党時代の選挙ですが、自民党と公明党の議席は過半数には足りませんでしたが、49%ほ どの改選の議席で当選を得ています。2012年、政権に復帰をした年の総選挙は、与党で67.7%

の議席を取りました。2013年の参議院選挙では、改選数は参議院の半分ですが、改選議席の内

62%を取り、非改選と合わせて55%となりました。そして2014年の総選挙では、やはり68%

を獲得しました。つまり、最近の参議院選挙、総選挙では、立て続けに自民党と公明党が過半数、

あるいはそれ以上の議席を取っているということですが、来年の参議院選挙で仮に自民党と公 明党が、また過半数を獲得すれば、私は、これを第2期自民党の長期安定政権時代の確立といっ てもいいのではないかと思います。恐らく今のままだと、そういう新しい政治の季節の確立が 完成するのではないかと思っています。そのぐらい今の日本では野党が力を失っているという ことです。

よく安保法制が、安倍内閣の支持率を下げたとか、安倍内閣は苦しい状況に陥っているとい う論評を見るのですが、最近の朝日新聞の世論調査結果をレジュメに表にして載せてみました。

今年の7月から9月までを対象にしたもので、この間に、安保法制が衆議院で通過し、参議院 の議決で大混乱の中で成立したわけですが、一貫して安倍内閣の支持率は30%台後半。若干下 がっているとはいえ、大きな下がり方はしていません。不支持率も少し増えた程度です。しか し一方で、安保法案に反対という回答は、5割を一貫して超えています。つまり一貫して超え

ているにもかかわらず、安倍内閣の支持率は激減していないのです。一方で自民党の支持率と いうのは、これもほとんど変化はしていません。民主党の支持率も変化していません。つまり 安保法案は、世論調査の数字を見る限り、政治に対する、あるいは今の与党に対する評価に直 結していないのですね。なぜなのだろうと思うのですが、残念ながらこの点を解き明かしてく れる記事というものを私はあまり日本の新聞で読んでいません。安保法案に反対がこれだけい るという記事はよく見るのですが…。この分析は誰かにしてもらいたいなと思っているところ です。

それはともかく、この会議も五回目、今回で最後ということですので、日本と韓国の政治の 関係を、これまでも出てきた議論もふまえてサマリー的に申し上げますと、まず日本の自民党は、

タカ派とハト派の結合政党であるということです。したがって、決してタカ派の集団の政党で はないと。これは歴史的に見てもいえることで、たとえば発足時は、吉田ドクトリンと、それ から岸信介を中心とする戦後回帰派の結合した組織であったということが一つあります。それ が、1980年代、日本が高度経済成長時代、日本の対外姿勢、特に中国や韓国に対する姿勢は、

寛容の時代でした。教科書問題で、日本がすべて要求を受け入れて、ハト派のみならずタカ派 までが、解決のために奔走した時代があったほどです。1990年代に入ると、政権中枢をハト派 が占める時代がありました。この頃、歴史問題その他の問題に非常に積極的な姿勢で日本の政 権は臨みましたが、一部の閣僚の妄言といわれる発言が過剰に報道されて、その結果、1990年 代を生かした日韓関係の安定的な関係の確立が制度化されなかった。そして2000年代に入ると、

それまで日韓関係を中心的に担ってきた派閥、たとえば旧田中派が力を失い、あるいはハト派 の派閥である宏池会が力を失い、清和会時代が到来しました。これは現在の安倍内閣にまでつ ながっています。

このタカ派の時代、靖国神社の参拝問題などがメーンストリームの問題になりました。同時 に、大衆民主主義社会の到来とナショナリズム、それからテレポリティクス、それから世論調 査が政治的影響力を持つ時代になり、政治が外交をコントロールできなくなりました。そして、

今日においては、新たなファクターとして、昨日まで散々議論しました中国というファクター が出てきましたが、中国ファクターに対する日韓間の対応はまったく一致しておりません。こ の問題は、あとでぜひみなさんで議論していただきたいと思いますが、ともかくこれが、現在 に至るまでの過程だと思います。

そして、外交政策の決定過程、あるいは日韓関係を規定する要素がどう変化してきたかとい うと、もはや日韓関係は古典的外交の時代、すなわち一部のエリートや官僚、あるいは有力な 政治家がコントロールする時代ではもちろんなくなった。外交というものの透明性が要求され る時代になり、そうした外交のあり方は不可能になりました。一方で、首脳外交の比重が非常 に高くなりました。二国間関係を両国のトップの政治手法、政治スタイル、あるいは様々な要 因が規定する部分が多くなりました。しかし、もっと大きなのは外交の大衆化の時代だと思い ます。政治の力と世論の力が、私は逆転していると思います。これは中国においてもかなり当 てはまることだと思います。そこでは外交のコンテンツを外交当局者が合理的・論理的に規定 をしていくことができなくなるわけです。そして、ネット空間や世論調査の結果、それからマ スコミの影響力が逆に力を持っている。政治のほうはそれについていく、フォローアップして いくというかたちになっているのですが、これは日韓以外にも、欧米諸国などでも結構見られ ることだと思います。

特に、この世論調査というのは、結構私は危険な道具だと思っていまして、たとえば日本で は内閣改造が終わった2、3時間後からすでに電話世論調査というのが行われて、「内閣改造を 評価しますか」という質問をします。私はこれは世論調査ではなくて、反応調査だと思ってい ます。出てくるものは世論ではなくて、どちらかといえば、ポピュラーセンチメント。つまり 感情的・感傷的反応で、これが政治を規定し外交を規定するというのは、非常に危険なやり方 だと思っています。そして、逆に政治家が、そうした世論というものを利用するケースも生ま れてきている。現在の韓国や一時期の日本もそういう面があったと思います。為政者がナショ ナリズムに迎合する。合理的政策決定過程をそこで棄損してしまう。こういう可能性が高まっ ている時代だと思います。

このようにイデオロギーやナショナリズムが全面に出る。こういうのは、日韓関係固有の問 題以外に、構造的に両国が抱えている問題だと思っています。これをいかに克服するかという

ドキュメント内 議事録 - 日本国際問題研究所 (ページ 75-78)

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