えはご発表者でも場内の専門家の方でも結構です。
まずは中国経済に対する評価、見方についてです。先ほどの議論もあるので対中傾斜論とい う言葉は使わないようにいたしますが、中国の将来に対する予測というよりは、韓国側で中国 経済の現状をどう分析しているのか、ということです。
たとえば、つい先日中国が7−9月期の、つまり第三四半期の成長率を6.9%と発表しまし た。それはいいのですが、この7−9期の統計が出たのが10月16日だったのですね。日本で は7−9月期の数字というのはふつう11月の上旬に出るもので、だいたい1か月半ほどのタイ ムラグがあるのですが、中国ではなぜか1週間か2週間で数値が確定して統計が発表されてし まう。今回は16日ですからあるいは配慮した方なのかもしれませんが、実はその前の4−6月 期の数値はなんと7月6日に発表されていました。これはまったく人間業ではないような迅速 さで、しかも計ったように目標値に近い7%という数字が出てきたわけです。また今回も6.9%
ということで、外部の人間からするとまるでお芝居を見ているような気分にさせられるのです けれども、日本ではこれに対して非常に疑問が起こっています。ということで、この点につい て韓国のメディアがどう見ているのか。タイミングの問題もそうですし、今回の数値それ自体 についても、欧米の新聞ではだいぶ異なった見方をしていて、本当は3.5%だとか、4%である とか、たいへんに厳しい見方をしているわけですが、つまり中国の経済統計の発表の仕方だとか、
中国から出される数値についてどういう感じで見ておられるのか、大いに興味があります。
また、実態として中国で何が起きているのかというのはだれにも正確なところは分からない わけですが―そもそも元になる統計も今申し上げたような状況ですから―韓国は中国経済の現 状をどう判断しているのか、これについてもお聞きしたいと思います。中国当局の主張するよ うな中国経済の姿を前提として進出しているのか、あるいは実感として、成長が持続するとい うことを感じているから進出しているのか。もっともビジネスマンがそもそもそういう実感な しに入っていくというのも考えにくいですが…。ともかく韓国の経済界やメディアが中国の経 済というものをどう見ているのか、ご存じの方がいらっしゃいましたらぜひお聞かせいただき たいと思います。
さて、この間にようやくといいますか、いくつか札が立てられたようですので、一通りご発 言いただいて、その後いったん発表者にマイクを戻すことにしましょう。できればいまのご質 問への回答も含めていただけると幸いです。それでは順番にどうぞ。
韓国側参加者:ただいまのご質問は、中国経済に対する韓国メディアの見方はどうなのかとい うものでしたので、関係者として現場の雰囲気をご参考までに申し上げたいと思います。この ニュースはどこの新聞も国際部で取り扱ったようですが、第三四半期の成長率6.9%という数値 が発表されたとき、この統計はおかしい、こんなに早く、しかも中国にとって都合のいい数値 が出てくるのはおかしいという意見が編集会議で出たのは事実です。ただ、印象として感じた だけのことを記事にするわけにはいきませんので、いったんその通りの内容を論評抜きで報じ
るようにすることになったのですが、直後のタイミングでイギリスのFinancial Timesがこの問 題に素早く対応し、あの巨大な中国がこんなに素早く統計を取れるはずがないという調査報道 を載せていましたので、当初の方針を修正してこのFinancial Timesの見方も伝える、そのよう な内容で記事を確定したと記憶しています。その後で他紙を見てもほぼ同じ取り上げ方でした ので、おそらく韓国メディアの直後の反応はそのようなものだったのではないでしょうか。
それから中国経済に対する見方ですが、一つのカゴに卵をすべて入れてはいけない、籠を落 としたら全部の卵が割れてしまうから、という喩えの通り、過度の中国投資に対する懸念とい うのはよく取りざたされております。もちろん、いま現在の中国に対する韓国の投資は対外直 接投資全体の24%にも上るそうで非常に高い状況です。最近ではベトナムやカンボジアに生産 拠点を移す動きも始まっているそうですが、依然として高いのは事実です。これを指して懸念 する、心配する声が上がっている、というのが現在の韓国メディアの論調であり、また当事者 の雰囲気・感触なのではないかと思っております。
さて、ここからはコメントと質問ですが、日本側のご発表は最初からメディアにとって厳し いもので、特に20世紀的な思考で記事を書いているのではないか、といったご指摘は耳の痛い かぎりです。個人的にも、超国境時代であるはずの現代において、民族主義や国家主義、国境 に対する執着、嫌韓と不買運動等々、このような現象が韓日間でたびたび問題になっているこ とを残念に思い、また自分がそこに知らず知らず加担してしまっているのではないかと思い、
わが身を振り返って考えなければならないなと考えた次第です。
ただ、他方で現実の動きとして―つまりメディアが描き出す世界ではなくて現実のほうで―
特に韓国や日本、中国、米国が経済分野でも陣営争いをしているという側面も影響しているの ではないでしょうか。たとえば今年の大きなイシューの一つにAIIB(アジアインフラ投資銀 行)がありましたけれども、ご承知の通り韓国は悩みぬいた結果加入を決断し、一方で日本は
―陣営としての判断があったのかどうかは私にはわかりませんが―結果的に米国の側に立って、
AIIB参加には留保の態度をとりました。またTPPの場合、韓国は韓中FTAに集中しているう ちに機会を伸ばしてしまったところがありますが、政府関係者に取材をしたところ、朴槿惠政 権になってから通商問題の主管部署を外交通商部から切り離して産業通商資源部に移す中で意 見対立があったというのですね。大統領府と産業通商資源部が戦略会議を行って方針を決定す るのですが、同盟国のことを考えてTPPに最初から加わるべきだという大統領府と、中国との 関係を重視する産業通商資源部で意見が割れたのだという話を聞いています。これなども、あ る意味で陣営争いの論理でもって経済政策が動いた、という例といえるのではないでしょうか。
ということで、これに関連して最後に日本側ご発表者に質問なのですが、日本が最後までAIIB に非常に懐疑的だったことの背景に、このような20世紀型のというか、陣営争いの観点が存在 していたのかどうか、うかがいたいと思います。
日本側参加者:ありがとうございます。ここまでTPPについていくつかご質問、ご意見が出た かと思います。非常に単純な質問で恐縮ですが、私もTPPの大筋合意のあと、非常に興味深く、
また不可思議に感じていたことがあったので、ここまでのご質問に便乗する形で、韓国側の方 にちょっとおうかがいしたいと思います。日米を中心とした交渉が妥結して大筋合意に至るま で、TPPに関する韓国側の関心というのは非常に低かったというか、冷淡だったという感じが するのですけれども、申し上げたような紆余曲折のあとにTPPが大筋合意すると、その直後と いうかほとんど即座に韓国側の反応が変わったので、関心を引かれました。もとより経済連携 協定というのは政治的な意味合いが非常に深いもので、その上でさらにお互いがWin-Winにな るために、どうやって協力をしていくかということを詰めていって、ようやく合意に至る、と いうものだと理解しているのですが、そうなるとなおさら韓国の反応というものが引っかかる わけですね。たしか副総理が韓国も加入すべく努力する、というコメントを出していたと思う のですが、TPP大筋合意からそこに至るまでの背景や理由というものをちょっとおうかがいで きればと思います。
韓国側参加者:ただいまのご質問には私からお答えすることにします。TPPに対する態度が突 然変わったというのは少し違っていて、一昨年ですか、交渉入りの時点で韓国も参加の意思を 伝えたのですが、米国側から妥結後の加入も可能であるという反応があったと聞いています。