慢性期脳卒中への試み 下肢編
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運動療法と治療的電気刺激の併用効果
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佐藤病院 リハビリテーション科
理学療法士 土岐哲也
H26.5.26(月)
はじめに
• 臨床において、運動療法と併用に物理療法を用い
ることが多くある。
• その中でも電気療法は中枢神経疾患の方に多く用
いられている。
• 急性期・回復期脳卒中患者に対して電気との併用
効果は報告されているが、慢性期脳卒中患者への
下肢への報告は少ない。
先行研究(電気刺激の効果)
歩行中の前脛骨筋への経皮的電気刺激は30分後に
生じるヒラメ筋の活動量増加を抑制する効果があるこ
とが示唆された。 (上原:2010)
足関節筋群への電気刺激に伴う各筋の収縮により足
圧中心が前後方向に変位する可能性が示唆された。
(大戸:2013)
先行研究(電気刺激と運動療法)
ペダリング運動と治療的電気刺激の併用は,回復期
脳卒中片麻痺患者の歩行能力を向上させる可能性
が示された。 (松永:2013)
慢性期脳卒中患者に電気刺激とストレッチングの併
用はストレッチング単独よりも即時的な信証抑制効
果が高い可能性が示された。 (中村:2010)
慢性期脳卒中患者に、即時効果として足関節可動域
と電気刺激の併用により、歩行速度、足関節可動域、
足関節背屈速度が有意に改善したがFRTに有意な
差は認められなかった。 (田中:2012)
先行研究(電気刺激と運動療法)②
神経・筋電気刺激療法と促通反復療法を併用することに
より,運動前野と感覚野間の神経ネットワークの再構築
が促され,脳損傷後1ヵ月以上経過している症例におい
ても運動機能の改善が得られる可能性が示唆された。
(南濱:2011)
電気刺激と頭部挙上運動の併用は、舌骨上方移動距離
を延長させる傾向があったが,嚥下機能については頭部
神経電気刺激による皮質脊髄路の興奮性変化を安静状
態と比較して,より早期に検出でき,20分間の刺激にお
いても皮質脊髄路の興奮性が増大することが示された。
(齋藤:2013)
目的
• 川平法と電気刺激の併用や他の運動療法との併用
が上肢に与える影響など、上肢に関しての報告はさ
れているが下肢への電気刺激と運動療法の併用は
即時的な効果のみで長期間の報告は少ない。
• 本研究の目的として、電気刺激療法と運動療法の
併用により、下肢機能に与える影響を簡単に明らか
にすることである。
• また治療効果の検証を行うこと。
方法
• 評価としてFRT・10m歩行を行い、運動療法を1カ月
施行。その後、再評価し、次の1カ月運動療法と電
気刺激を併用する。
• 電気刺激はトリオ300(伊東超短波)を使用し、モー
ドとしてはTENS(治療的電気刺激)を使用する。
• 100Hz、50μ sにて施行。
• 20分間施行。
対象
• 脳卒中発症から6か月以上の中枢神経疾患2名。
• リハビリテーションは週2回で介入。
• 症例1:BRS-T手指Ⅲ上肢Ⅲ下肢Ⅲ
(測定期間2月~4月まで)
• 症例2:BRS-T手指Ⅱ上肢Ⅱ下肢Ⅱ
(測定期間3月~5月まで)
症例1紹介
• 65歳 男性
<診断名>
脳出血(左視床)、高血圧、運動性失語、右不全麻痺
<現病歴>
• 2011年12月04日朝09時40分頃発症
• 横浜市立大学附属市民総合医療センターへ救急搬送
• 2012年01月06日当院転院
• 2012年01月09日よりリハビリ介入
• 2012年01月11日回復期病棟転棟
• 2012年04月26日自宅退院
• 2012年05月から訪問リハビリ開始となった。
• 2013年09月から通所リハビリが開始となった
画像所見(CT)
前交連レベル モンロー孔レベル ハの字レベル
症例1(姿勢と歩行)
前額面 矢状面 前額面 歩行
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ 5㎝
初期評価
時間
: 26.7 sec
歩数
: 27steps
速度
: 22.4 m/min
cadence : 60.6 steps/min
運動療法の内容
• 全身調整
• 立ち上がり
• 両膝立ち
• 足関節背・底屈
• 立位
• 歩行
運動療法のみ施行後1カ月(姿勢)
前額面 2月12日 矢状面
3月12日
前額面 矢状面
運動療法のみ施行後1カ月(歩行)
前額面 歩行 2月12日
前額面 歩行 3月12日
評価(1か月後運動療法のみ)
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ11㎝
時間
: 23.7 sec
歩数
: 26steps
速度
: 25.3 m/min
cadence : 65.8 steps/min
結果(グラフ)
0
10
20
30
2月12日 3月12日 2月12日 3月12日
FRT
10m歩行
㎝/秒
電気刺激(貼り付け部位)
• 前脛骨筋と腓骨筋筋(モーターポイント)
姿勢(運動療法+電気刺激併用)
前額面 4月14日 矢状面 前額面 3月12日 矢状面
歩行(運動療法+電気刺激併用)
前額面 歩行 4月14日 前額面 歩行 3月12日
評価
(2か月後運動療法と電気刺激併用)
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ18㎝
時間
: 20.5sec
歩数
: 25steps
速度
: 29.26m/min
cadence : 73.17steps/min
結果(グラフ)
0
10
20
30
㎝/秒
FRT
10m歩行
3月12日 4月9日 3月12日 4月9日
症例2紹介
• 男性 65歳
• 診断名:脳出血(右被殻出血)
• 既往歴:狭心症・高血圧
• 現病歴:
平成25年3月11日、仕事中に脳出血を発症し公立昭和病院
脳神経外科へ搬送され、右片麻痺と意識障害を認めた。
同年4月22日にリハビリテーション目的で脳血管医療セン
ターへ転院。
同年8月9日にリハビリテーションの継続を希望し鶴巻温泉病
院へ転院。平成26年1月21日に退院となる。
同年1月24日から当院の訪問リハビリ、同年2月3日から当院
の通所リハビリが開始となった。
画像所見(CT)
症例2(姿勢と歩行)
前額面
前額面
矢状面
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ 4㎝
初期評価
時間
: 72.0 sec
歩数
: 40steps
速度
: 8.8 m/min
Cadence : 33.3 steps/min
運動療法の内容
• 全身調整
• 立ち上がり
• 足関節背・底屈
• 立位
• 歩行
運動療法のみ施行後1カ月(姿勢)
前額面
矢状面
前額面
矢状面
運動療法のみ施行後1カ月(歩行)
前額面 3月7日
前額面 4月7日
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ 10㎝
評価(運動療法のみ)
時間
: 50.65 sec
歩数
: 36steps
速度
: 12.0m/min
Cadence : 43.2 steps/min
2症例への考察
• 電気刺激により拮抗筋の抑制
• 歩行時の前後の重心移動増大
• 足関節可動域の拡大
• 相反抑制効果
• Ib抑制による痙性抑制効果
2症例への考察②
• 皮質脊髄路の興奮により随意運動の再構築
• 可塑的変化によりネットワークの再構築
• 筋骨格系からの体性感覚情報処理には,体性感覚
領野の他に,一次運動野を含んだ運動領野も関与
することが判明しており,運動実行と運動感覚フィー
ドバック情報処理が同じ領野で行われることが示唆
されている。
• 運動を的確に制御し,新しい運動を獲得するために
は,筋骨格系からの運動に関する求心性感覚情報
も重要であると考えられる.
本研究の問題点
• 運動療法のどの治療効果があったかわからない。
• 経験年数により技術の差がある。
• 今後はこれらを考慮して行っていく。
まとめ
• 治療的電気刺激により、皮質脊髄路の経路の強化
が起こった。
• 痙性抑制により下腿三頭筋の筋緊張が低下
• 高周波により感覚レベルが向上した。
• 足関節可動域、重心移動の向上によりFRTが増加
した。
• 歩行能力向上により歩行スピードが向上。
今後の展望
• 各運動療法との効果の検証
• 運動療法と電気刺激の併用効果を細かく分析する。
(筋電図、重心動揺計など・・・)
• 慢性期脳卒中の上肢機能への運動療法と電気刺
激の併用効果の検証。
• 変性疾患への応用。
整形疾患での併用
症例3紹介
• 女性 71歳
• 診断名:腰部脊柱管狭窄症術後(L1.L2・3PFL2/3.4PLIF
術中硬膜損傷
• 既往歴:骨粗鬆症、辷り症、L3圧迫骨折
• 合併症:右下肢骨折(術後)、左足骨折、糖尿病、
• 現病歴:
平成20年頃から腰痛あり、他院にてリハビリをしていた。
平成24年頃からブロック注射するも改善が認められず、平
成25年頃から疼痛が増悪し歩行困難が出現。改善が認め
られないため手術目的で入院となる。平成25年8月23日当
院へ転院。11月1日に退院。11月5日より外来リハビリ開
始。H26年1月より通所リハビリ開始となった。
姿勢
骨盤帯:右回旋,右後傾,
左前傾挙上
体幹 :左回旋,左ショートニング
肩甲帯:右外転・下方回旋
左挙上後退
前額面 前面 前額面 後面 矢状面
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ 17.5㎝
評価
時間
: 24.4 sec
歩数
: 36 steps
速度
: 24.6 m/min
cadence : 88.5 steps/min
• 頸部・肩甲帯・上部体幹リラクセーション
• 腹部・下肢筋力増強ex.(OKC・CKC)
• Kneeling,half kneeling
• 段差昇降
• 自転車エルゴメーター
• 立位バランスex.
• 階段
• 応用歩行
段差昇降以下は高周波との併用似て実施
運動療法
電気刺激(貼り付け部位)
• 中臀筋と内側広筋(モーターポイント)
歩行
矢状面 前額面
姿勢(運動療法+電気療法併用)
12月10日
12月10日 2月14日 2月14日
歩行(電気刺激と運動療法の併用)
12月10日 2月14日
歩行(運動療法と電気刺激の併用)
12月10日 2月14日
• 10m歩行
• FRT:前方リーチ 20㎝
評価
時間
: 18.4 sec
歩数
: 32 steps
速度
: 32.6 m/min
cadence : 104.3 steps/min
結果
FRT
10m歩行
㎝/秒
0
10
20
30
12月10日 2月14日 12月10日 2月14日
終わりに
ご清聴ありがとうございました。