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理学療法科学 33(6): ,2018 原著 ハンドヘルドダイナモメーターを用いた下肢筋力測定方法の工夫 Development of a Method to Measure the Lower-limb Muscle Strength Using a Hand-held Dynamom

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(1)

ハンドヘルドダイナモメーターを用いた 下肢筋力測定方法の工夫

Development of a Method to Measure the Lower-limb Muscle Strength Using a Hand-held Dynamometer

角田 莉奈

1)

  佐藤 和強

1)

Rina TSUNODA, RPT1), Wakyo SATO, MD1)

1) Department of Rehabilitation Medicine, Tokyo Metropolitan Tama Medical Center: 2-8-29 Musashidai, Fuchu-shi, Tokyo 183-8524, Japan TEL +81 42-323-5111 E-mail: rinatsunoda1030@gmail.com

Rigakuryoho Kagaku 33(6): 985–990, 2018. Submitted Jun. 28, 2018. Accepted Aug. 14, 2018.

ABSTRACT: [Purpose] To develop a simple method to measure the lower-limb muscle strength, verify its intra- and inter-rater reliability, and analyze the correlation between values representing the hip abductor strength, obtained using this and conventional methods. [Participants and Methods] The hip abductor strengths of 13 healthy participants when sitting on the edge of the bed and when adopting a supine position were measured by 2 raters using a hand-held dynamometer, and correlation coefficients were calculated. The participants’ right hip flexor/abductor, knee extensor, and ankle dorsiflexor strengths when sitting on the edge of the bed were also measured, and intra- and inter-rater reliability coefficients were calculated. [Results] There was a correlation between the hip abductor strengths when sitting on the edge of the bed and when adopting a supine position. The values representing intra- and inter-rater reliability for each measurement item were sufficiently high. [Conclusion] Allowing different raters to similarly obtain reliable measurement values, the developed method to measure the lower-limb muscle strength may be clinically useful.

Key words: hand-held dynamometer, inter-rater reliability, method to measure the lower-limb muscle strength 要旨:〔目的〕簡易的に測定可能な下肢筋力測定法を考案し,その方法における検者内信頼性と検者間信頼性の検証 および,股関節外転筋力測定値の従来法と本法の相関を検証することとした.〔対象と方法〕2名の測定者がHHDを 用いて健常者13名の股関節外転筋力を端座位と背臥位で測定し,相関係数を算出した.また,右股関節屈曲・外転,

膝関節伸展,足関節背屈筋力を端座位で測定し,検者内信頼性と検者間信頼性を算出した.〔結果〕端座位と背臥位 での股関節外転筋力の間には相関が認められた.各測定項目における検者内信頼性および検者間信頼性の値は高値を 示した.〔結語〕考案した下肢筋力測定法は異なる測定者でも高い信頼性のある測定値が得られ,臨床的に有用な測 定法であると考えられる.

キーワード:ハンドヘルドダイナモメーター,検者間信頼性,下肢筋力測定法

1) 東京都立多摩総合医療センター リハビリテーション科:東京都府中市武蔵台2-8-29(〒183-8524)TEL 042-323-5111

受付日 2018年6月28日  受理日 2018年8月14日

(2)

I.はじめに

理学療法士が臨床の場で筋力を徒手で評価する方法と して

manual muscle testing

(以下,

MMT

)が日常的に 用いられている.牧野1)は,

MMT

Grade 4

以上では 検者による影響を受け,訓練に伴う筋力の変化をつかみ にくいと述べている.

一方,筋力を客観的な数値で評価する機器として,ハ ンドヘルドダイナモメーター(

Hand-held Dynamometer

: 以下,

HHD

)が多く用いられている.

Bohannon

2)は膝関 節伸展筋力を

MMT

HHD

で測定し,

MMT

Grade 3

4

5

HHD

の計測値の間には有意な相関があり,

HHD

での筋力測定値は

MMT

Grade

評価よりも詳細な数 値として評価が可能であると報告している.

HHD

を用いた筋力測定は先行研究でも多く行われて いる.加藤3)

HHD

の固定用ベルトを使用して健常者 の膝関節伸展筋力を,松村ら4)

HHD

を柱またはベッ ド脚に固定し健常者の足関節背屈筋力を測定している.

また,

HHD

を徒手で固定した筋力測定の信頼性を検討 した研究として,加藤ら5)は健常者の股関節屈曲筋力を,

山崎ら6)は健常者の背臥位での股関節外転筋力を測定 している.このように

HHD

を用いて下肢筋力の測定が 多く行われ,信頼性が検討されているが,同一肢位で複 数の下肢筋力を徒手による固定で測定し,検者内信頼性 と検者間信頼性を同時に検討した研究は少ない.

また,臨床の場で患者に筋力測定を行うことを考える と,股関節屈曲・膝関節伸展・足関節背屈の筋力測定は 端座位で行われている3-5)が,股関節外転筋力の測定は 主に背臥位で行われており6-8),下肢筋力を複数項目測 定する際,測定項目によって座位から臥位へ,臥位から 座位へと姿勢変換を行うことは,体動時に痛みを伴う患 者にとっては負担となる.さらに,測定日の間隔が短く,

高頻度で測定する場合のことを考えると,測定項目を変 えるごとにベルト固定をやり直すために時間を費やすこ とは,当院のような急性期医療機関にとっては難しいと 考える.患者への負担が少なく測定も簡単な方法があれ ば,下肢筋力の回復を客観的な数値で確認でき,患者の モチベーションの維持・向上につながることが予想さ れる.

よって今回我々は

HHD

を徒手で固定して股関節屈曲,

股関節外転,膝関節伸展,足関節背屈の

4

種類の下肢筋 力を全て端座位で測定する方法を考案した.本研究の目 的は考案した測定法の検者内信頼性と検者

2

名の検者間 信頼性,そして端座位での股関節外転の測定の有用性に ついて検討することである.

II.対象と方法

1

.対象

被検者は健常者の女性

9

名,男性

4

名の計

13

名(年 齢

46.2

±

9.0

歳,身長

161.3

±

5.2 cm

,体重

52.3

±

6.6 kg

:平均 ±標準偏差)とした.被検者にはヘルシンキ 宣言に則って十分な説明を行ったうえで同意を得た.検 者は性別,年齢,体格,理学療法士としての経験年数の 異なる

A

(男性,

47

歳,

179.0 cm

75.0 kg

,臨床経験 年 数

22

年 目 ),

B

( 女 性,

23

歳,

163.0 cm

56.0 kg

, 臨床経験年数

2

年目)の

2

名とした.

2

.方法

検者

A

B

は各々が異なる日に

13

名の筋力測定を実 施した.測定肢は右下肢とした.筋力測定には

HHD

(徒 手筋力測定器m

-Tas MF-01

,アニマ社製)を使用した.

測定項目は端座位での股関節屈曲(以下,股屈曲),

股関節外転(以下,股開排),膝関節伸展(以下,膝伸 展),足関節背屈(以下,足背屈)の筋力値とした.さ らに,股開排の測定方法の信頼性を検討するために,先 行研究での測定法7,8)に則った背臥位での股関節外転

(以下,股外転)の筋力値も測定した.

HHD

のセンサーパッドを,以下に述べる各項目にお ける固定位置に徒手で固定し測定を行った.端座位で 行った測定については,骨盤前後傾中間位,体幹前後傾 中間位から崩れないような肢位で各測定項目の運動を行 うよう指示し,検者は代償動作の出現に注意し測定し た.全ての被検者に対し,股外転,股屈曲,膝伸展,足 背屈,股開排の順で測定を実施した.被検者には各測定 項目で

5

秒間最大筋力を発揮させ,測定回数は

2

回とし,

最大値を代表値として採用した.以下に各測定項目にお ける測定肢位,センサーパッド固定位置,

make test

break test

のどちらで測定したかの詳細について述べる.

股外転では被検者に治療台の上で背臥位を取らせ,右 股関節内外転中間位とした.検者は被検者の大腿遠位外 側部にてセンサーパッドの下縁が大腿骨外側上顆へ当た るように設定し,治療台の支柱に

HHD

の固定用ベルト で作った輪の中へ右下肢を通し股関節外転方向に動かな いように固定した.測定は被検者に治療台の端を把持さ せ,固定した位置から骨盤帯の傾斜が起こらないよう股 関節外転方向に右下肢を随意収縮させ

make test

で実施 した(図

1

).

股屈曲では被検者に治療台の上に端座位を取らせ,治 療台の縁を把持させた.検者は被検者の大腿遠位前面に てセンサーパッドの下縁が膝蓋骨上縁へ当たるように設 定し,徒手で固定した.測定は右股関節最大屈曲位にて,

運動方向と反対方向に徒手抵抗を加え,

break test

で実 施した(図

2

).

膝伸展では股屈曲と同様に被検者に端座位を取らせ,

(3)

右膝関節最大伸展位にて,運動方向と反対方向に徒手抵 抗を加え,

break test

で測定を実施した.検者はセンサー パッドの下縁が足関節前面へ当たるように徒手で固定し,

膝折れ時の予防として徒手固定する手と対側の手掌を被 検者の膝関節後面に置いた(図

3

).

足背屈では股屈曲と同様に被検者に端座位を取らせ,

踵部を接地したまま背屈させた.検者はセンサーパッド が被検者の中足骨部に当たるように設定し,徒手で固定 した.測定は右足関節最大背屈位にて、運動方向と反対 方向に徒手抵抗を加え,

break test

で測定を実施した

(図

4

).

股開排では股屈曲と同様に被検者に端座位を取らせ,

固定用ベルトで輪を作り,両下肢を通させ両股関節内外 転中間位にて,それ以上外転方向へ股関節が動かないよ

うにベルトの長さを調節し,大腿遠位外側部にてセン サーパッドの下縁が大腿骨外側上顆へ当たるように設定 した.検者は被検者に右股関節のみを外転するよう指示 し,対側の下肢が動かないよう両手で固定した.また,

検者は左下肢および右下肢の代償運動が起こらないよう に注意して観察した.測定は被検者に固定した位置から 股関節外転方向に随意収縮させ

make test

で実施した

(図

5

).

測定後,今回考案した股開排での股関節外転筋力測定 法の信頼性を検討するために,

Pearson

の相関検定を用 いて股外転グループ(検者

A

の股外転

+

検者

B

の股外 転)と股開排グループ(検者

A

の股開排

+

検者

B

の股 開排)の相関係数を算出した.続いて,筋力測定を実施 した股外転,股屈曲,膝伸展,足背屈,股開排の

5

項目

3 膝伸展の測定肢位・徒手固定位置

モノクロ半段 被検者に治療台の上に端座位を取らせ,右膝関節最大伸展位とし た.センサーパッドの下縁が被検者の足関節前面へ当たるように 設定し徒手で固定した.

1 股外転の測定肢位・ベルト固定位置

モノクロ半段 被検者に治療台の上で背臥位を取らせ,右股関節内外転中間位と した.センサーパッドの下縁が被検者の大腿骨外側上顆へ当たる ようにベルト固定位置を設定した.

2 股屈曲の測定肢位・徒手固定位置

モノクロ半段 被検者に治療台の上に端座位を取らせ,右股関節最大屈曲位とし た.センサーパッドの下縁が被検者の膝蓋骨上縁へ当たるように 設定し徒手で固定した.

図1 股外転の測定肢位・ベルト固定位置

   被検者に治療台の上で背臥位を取らせ,右股関節内外 転中間位とした.センサーパッドの下縁が被検者の大腿 骨外側上顆へ当たるようにベルト固定位置を設定した.

図2 股屈曲の測定肢位・徒手固定位置

   被検者に治療台の上で端座位を取らせ,右股関節最大 屈曲位とした.センサーパッドの下縁が被検者の膝蓋骨 上縁へ当たるように設定し徒手で固定した.

図3 膝伸展の測定肢位・徒手固定位置

   被検者に治療台の上で端座位を取らせ,右膝関節最大 伸展位とした.センサーパッドの下縁が被検者の足関節 前面へ当たるように設定し徒手で固定した.

4 足背屈の測定肢位・徒手固定位置

モノクロ半段 被検者に端座位を取らせ,踵部を接地したまま右足関節最大背屈 位とした.センサーパッドが被検者の中足骨部に当たるように設 定し徒手で固定した.

図4 足背屈の測定肢位・徒手固定位置

   被検者に端座位を取らせ,踵部を接地したまま右足関 節最大背屈位とした.センサーパッドが被検者の中足骨 部に当たるように設定し徒手で固定した.

(4)

において検者内の級内相関係数(

Intraclass Correlation Coefficients

:以下,

ICC

ICC

1,1

)を,各検者の

2

回 の測定値を使用して算出した.さらに,検者

A

の代表 値を

A

群,検者

B

の代表値を

B

群とし,筋力測定を実 施した

5

項目において

A

群,

B

群間の検者間の

ICC

2,1

) を算出した.統計処理には

IBM SPSS Statistics 23

を使 用し,有意水準は

5

%とした.

III

.結 果

各測定項目における代表値を表

1

に示す.臥位で測定 した股外転筋力と端座位で測定した股開排筋力の相関係

r

0.64

であり,高い関連性が認められた.また,

各測定項目における筋力測定値の検者内信頼性

ICC

1,1

)と,検者間信頼性

ICC

2,1

)を表

2

3

に示す.

ICC

1,1

)は検者

A

では

0.87

以上,検者

B

では

0.85

以上,

ICC

2,1

)は

0.76

以上となり,全ての項目で検 者内,検者間ともに高い信頼性が得られた.

IV

.考 察

股外転筋力,股開排筋力について考察する.股外転筋 力は,骨盤を安定させる重要な筋の一つである.股外転 筋力を測定するには側臥位や背臥位となる必要があり,

端座位では行えない.今回の股開排運動は,股関節屈曲 位での外転,および外旋運動ではあるが,外転の要素が 含まれていることから,関連性について検討した.その 結果,背臥位での股外転と端座位での股開排の間には高 い関連性が示された.

先行研究では,松木ら9)は股外転運動において中殿 筋中部および後部線維,大腿筋膜張筋,大殿筋上部線維 の筋電積分値には肢位による変化がなかったこと,世古 ら10)は座位での股外転運動による中殿筋と大腿筋膜張 筋の筋活動量は低値を示したが,全体の股外転筋力値と しては有意差がなかったことを報告している.

これらのことから,我々が今回考案した股開排の測定 は,大腿筋膜張筋や大殿筋が活動していることは念頭に 置く必要があるが,中殿筋を含む股関節外転,外旋,伸 展筋力の複合的な筋力を客観的に測定できる一つの指標 となりうると考える.

続いて,今回考案した測定法の検者内信頼性と検者間 図5 股開排の測定肢位・ベルト固定位置

   被検者に端座位を取らせ,両股関節内外転中間位とした.

センサーパッドの下縁が被検者の大腿骨外側上顆へ当た るようにベルト固定位置を設定した.

5 股開排の測定肢位・ベルト固定位置

モノクロ半段 被検者に端座位を取らせ,両股関節内外転中間位とした.セン サーパッドの下縁が被検者の大腿骨外側上顆へ当たるようにベル ト固定位置を設定した.

表1 筋力測定値

被験者 股外転(kgf) 股開排(kgf) 股屈曲(kgf) 膝伸展(kgf) 足背屈(kgf)

検者 検者 検者 検者 検者

A B A B A B A B A B

a 14.4 10.2 15.0 14.2 10.2 11.1 18.8 19.4 21.9 24.2

b 28.9 26.7 31.0 33.0 23.5 19.2 29.8 23.1 32.1 29.8

c 13.2 15.9 23.3 26.5 17.3 15.7 23.8 14.4 21.5 23.8

d 16.7 12.7 21.0 23.3 14.4 11.3 23.1 21.5 22.5 26.7

e 15.2 16.1 19.8 25.8 14.2 16.7 14.0 14.2 20.6 17.5

f 23.6 23.8 27.9 32.5 20.2 19.6 22.9 22.1 26.5 25.6

g 16.7 15.7 15.4 19.4 16.7 12.3 28.1 23.1 27.5 26.5

h 16.9 15.9 23.6 29.0 17.7 20.2 26.0 19.6 27.7 24.2

i 14.0 16.1 18.1 19.8 14.6 19.7 18.4 18.1 26.0 21.7

j 25.8 28.9 26.9 28.1 27.9 25.4 40.2 31.9 32.5 30.4

k 19.6 18.6 17.3 19.4 20.8 23.6 26.3 23.6 25.4 26.5

l 22.9 22.3 26.2 28.3 21.7 27.9 25.6 26.0 31.9 32.5

m 34.6 31.2 24.8 28.3 24.2 25.8 34.1 35.8 40.8 38.5

20.2 ± 6.3 19.5 ± 6.2 22.3 ± 4.8 25.2 ± 5.4 18.7 ± 4.7 19.1 ± 5.4 25.5 ± 6.6 22.5 ± 5.9 27.5 ± 5.5 26.8 ± 5.0 平均値±標準偏差.

(5)

信頼性について考察する.

ICC

1,1

)と

ICC

2,1

)は

0.76

-

0.94

であった.

HHD

を用いた筋力測定の検者内,

検者間信頼性について報告している先行研究3-6)では,

概ね

ICC

0.78

-

0.94

であり,本研究結果もその範囲内 と言え,先行研究と同等の信頼性が得られた.よって,

今回考案した下肢筋力測定法は同一検者による繰り返し の測定においても,異なる検者による測定においても,

被検者の下肢筋力を高い精度で反映することが可能な下 肢筋力測定法として使用可能であると考えられる.

理 学 療 法 士 が 日 々 行 う

MMT

に よ る 筋 力 測 定 は,

Grade 3

以下であれば比較的明確な判断基準がある11). しかし,はじめにの項目でも述べているが,

Grade 3+

以上の段階づけには主観を伴うことが多く,特に

Grade 4

以上は段階づけの幅が広い12)という問題点がある.

そこで今回の測定法を用いることで,検者が僅かに感じ ていた筋力の差を数値として表現できるようになり,よ り詳細で客観的な筋力評価が可能となり,前述した問題 点を解決することができると考える.また,高齢者にお いて円背等で背臥位や側臥位をとることが困難な対象者 や,股関節屈曲拘縮がある対象者等に対しても,本法で の股開排での測定を活用すれば,股外転筋力,および股 伸展筋力を含む股関節周囲筋の筋力測定ができ,被検者 にとっても検者にとってもメリットは大きいと考える.

さらに今回の測定法は,支柱等にベルトで固定すること も行わないため,総合的に考えると簡便性に優れ,臨床 の場面で適応しやすい方法であると推察される.

今後は,理学療法士が臨床で経験することの多い下肢 骨折や関節疾患に対する術後早期の患者を対象に臨床応

用することを考えている.この方法を利用することで,

それぞれの筋力をより簡便に測定し,その経時的推移を 観察することによって訓練効果の確認,患者への評価,

訓練プログラムの立案,修正などに役立つと考えてい る.その際は,実際の臨床場面において患者に本法を使 用して健常者と同様の結果が得られるのか否かの検討が 必要である.

本研究の限界として,股屈曲,膝伸展,足背屈の測定 法について,本法ではいずれも端座位にてそれぞれの肢 位を抗重力位で保持した状態から測定を開始するため,

抗重力位で測定開始肢位の保持が可能な

MMT 3

以上の 筋力を有する対象者にしか使用できないという点があり,

今後は下肢筋力が

MMT 3

未満の患者にも使えるように 工夫する必要がある.また,測定する筋力の値が大きく なると徒手固定の限界がくることも考慮する必要があ る.先行研究でも,膝伸展筋力の最大徒手固定力は,男 性検者は

27.6

±

3.9 kg

,女性検者は

19.0

±

4.1 kg

で女 性の固定力のほうが低くなっており13),検者の徒手固 定力による測定誤差が生じる可能性があると考えられ る.また,本研究では股開排を複合的な筋力として測定 しており,股関節外転,外旋,伸展筋群の筋力がそれぞ れどの程度関与しているかは不明確であるため,今後は 表面筋電図などを併用した測定が望まれる.

利益相反 本研究には開示すべき利益相反はない.

引用文献

1) 牧野健一郎:ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力測定.

Clin Rehabil, 2007, 16: 1183-1185.

2) Bohannon RW: Measuring knee extensor muscle strength. Am J Phys Med Rehabil, 2001, 80: 13-18.

3) 加藤宗規:ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝

伸展筋力の測定:設定方法の違いが測定値に与える影響.

東京保健科学学会誌,2003, 6: 201-204.

4) 松村将司,竹井 仁,市川和奈・他:固定用ベルトを用い

たハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性筋力測定の 検者内・間の信頼性:膝関節屈曲・足関節背屈・底屈・外 がえし・内がえしに対して.日本保健科学学会誌,2012, 15: 41-47.

5) 加藤宗規,山崎裕司,中島活弥・他:ハンドヘルドダイナ

モメーターによる等尺性股屈曲,伸展筋力の測定―固定用 ベルトの使用が再現性に与える影響―.高知リハビリテーショ ン学院紀要,2004, 6: 7-13.

6) 山崎裕司,片岡千春,大倉三洋・他:ハンドヘルドダイナ

モメーターによる等尺性股関節外転筋力の測定―固定用ベ ルトの使用が再現性に与える影響―.高知リハビリテーショ ン学院紀要,2008, 10: 61-66.

7) 鳥添裕史,綾部仁士,森口晃一・他:人工股関節全置換術

後早期の股関節外転筋筋力の推移.理学療法学,2005, 32:

423-428.

8) 塚越 累,建内宏重,大畑光司・他:人工股関節全置換術

表2 検者2名の各測定項目における検者内信頼性 検者A

ICC(1,1)

検者B ICC(1,1)

股外転 0.89** 0.94**

股屈曲 0.94** 0.92**

膝伸展 0.87** 0.92**

足背屈 0.93** 0.85**

股開排 0.92** 0.88**

**:p<0.01.ICC:Intraclass correlation coefficients.

表3 各測定項目における検者間信頼性 ICC(2,1)

股外転 0.93**

股屈曲 0.80**

膝伸展 0.76**

足背屈 0.89**

股開排 0.83**

**:p<0.01.ICC:Intraclass correlation coefficients.

(6)

後における股関節・膝関節周囲筋の筋力推移の比較―膝 関節伸展筋力の回復は遅延する―.理学療法学,2009, 36:

41-48.

9) 松木儀浩,大西秀明,八木 了・他:股関節肢位の違いに

よる股関節外転筋群の筋電図学的解析.理学療法学,2004, 31: 9-14.

10) 世古俊明,杉浦美樹,高橋由依・他:座位における股関 節外転運動の筋力強化としての有用性.北海道理学療法,

2011, 28: 22-26.

11) Hislop HJ,Montgomery J:新・徒手筋力検査法,原著第8版.

津山直一・他(訳),協同医書出版社,東京,2008,pp7-8.

12) 細田多穂(監修):理学療法評価学テキスト.南江堂,東京,

2010,p77.

13) 山崎祐司,加藤宗規,梶原和久:膝伸展筋力評価における 徒手固定の限界.総合リハビリテーション,2007, 35: 1369- 1371.

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