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ol.35
2008 September -October 社 団 法 人 不 動 産 証 券 化 協 会不動産証券化を共に推進する情報誌
エイリスTHE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION
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2008 ・Se ptember-O cto ber ローマ屈指の格調高い都市空間 として私はナヴォーナ広場から東 へ、マダマ宮殿(現在はイタリア 国上院)、パンテオン(ロトンダ 広場を含む)を経てサンタマリ ア・ソプラ・ミネルヴァ教会にい たるブロックを挙げたい。その距 離およそ700メートル、逍遥 しょうよう す るにちょうどいい距離である。イ タリア旅行といえばファッション とグルメに関心が傾きがちだが、 イタリアの魅力はなんといっても 建築と都市、広場と彫刻であり、 その典型がナヴォーナ広場とパンテオンを含むこの街区なのである。したがってとき には飲食と買い物を忘れて都市空間の美しさを堪能 たんのう したいものである。たとえばミネ ルヴァ教会は古代ローマの神殿の上に中世のゴシック教会を増築したもので、ローマ 市内で唯一のゴシック建築なのである。そしてパンテオンは紀元前のギリシャ古典様 式の神殿でかつては古代の神々を祭っていたのだが、七世紀にキリスト教会に改宗し たために無傷のまま今日に伝えられた古代遺産。ロトンダ広場から正面の列柱をなが めると、わずかにピンク色をおびていて壮麗にして甘味。そのあとマダマ宮殿と公文 図書館のあいだを歩いてナヴォーナ広場にいたると、空間がいっきょにひろがる。古 代の競技場のトラックをそのまま広場にしたもので、長方形の一辺が240メートルに およぶ。広場の西側にはバロック様式のサンタニエーゼ・イン・アゴーネ教会が見え る。このようにしてわれわれは、わずかな逍遥で古代ギリシャの古典様式、中世のゴ シック様式、近世のバロック様式の名建築を堪能することができる。そしてまた、例 外的な広さを誇るナヴォーナ広場を遊歩すれば、十七世紀のイタリアを代表する巨匠 ベルニーニの巨大な彫刻群を見ることができる。題して「大河の泉」、ナイル河、ガン ジス河、ドナウ河、プラタ河。それらはルネサンス時代から大航海時代にかけてのイ タリアの活力を象徴しているといえるだろう。建築と彫刻についての「眼の至福」を 存分に味わったあとはカフェでイタリアン・エスプレッソを一服しよう。 (井尻 千男:拓殖大学教授) ナヴォーナ広場 (イタリア・ローマ) 提供●アマナイメージズARESマスターのための
不動産証券化ジャーナル
とじこみARESマスターのための
不動産証券化ジャーナル
内外の機関投資家の方々が不動産投資市場についてプログラムに求めるものはいったい何だ ろうか。世界経済の動向? マネーの動き? 日本の金融改革? グローバル不動産投資の行方? こうして「ARES不動産投資国際フォーラム2008」では、総勢約40名の内外の講演者、パ ネリストによる1日半のプログラムが組まれることになった。これまた初の試みとなった、 ARESメンバーガイドの作成や会社案内などの配布、さらに内外の機関投資家の参加について も会員各社の強力な支援を頂いた。各方面の皆様のご協力を得て、協会初の国際フォーラムは 無事開催することが出来ました。心より感謝申し上げます。有難うございました。 (深津) 会報「ARES」第35号 平成20年9月30日発行 編集発行 社団法人不動産証券化協会 〒107-0052 東京都港区赤坂 1-9-20 第16興和ビル北館1階 TEL:03-3505-8001 FAX:03-3505-8007 URL:http://www.ares.or.jp 編 集 後 記 株式会社TPパブリッシングでは、社団法人不動産証券化協会とのライセンス契約のもと、2002 年より不動産証券化ビジネスへの総合案内書「不動産証券化ハンドブック」英語版を発行してきま した。不動産業界にとどまらず金融機関、法律事務所など広く好評を博し、日本の不動産証券化ビ ジネスの英語ガイドブックの決定版としての地位を確立しています。2008-2009年版では大幅改 定を行い、2007年9月に施行された金融商品取引法を解説する新章を追加したほか、ケーススタ ディ、フローチャートなどを多数掲載し、充実の内容となっています。 編集・発行:株式会社TPパブリッシング 版型:A4版 発行日:平成20年9月 定価 42,000円(税込み)*送料別 会員特別価格:32,000円(税込み)*送料別 *ご注文用紙に「ARES会員」とご明記ください。 不動産証券化ハンドブックは… ✓日本の不動産証券化市場を的確に分析! ✓不動産関連の最新の法令・規則にも対応! ✓不動産証券化スキームを簡潔に説明! ✓不動産市場マニュアルの決定版! ✓海外顧客への対応もこれ一冊でOK! ✓英語表記の辞書としても活用可能! お問い合わせ先 株式会社TPパブリッシング 〒190-0022 東京都立川市錦町2-1-10 第一池田ビル2階 Tel:042-528-8283 Fax:042-529-3350 E-mail:[email protected] ※当協会では販売いたしておりません。Real-Estate Securitization
Handbook 2008-2009
「不動産証券化ハンドブック2008-2009」
英語版 発行
●J-REIT View ∼転換期を迎えたJ-REIT市場∼………20 澤田 考士(調査部 上席研究員) ●J-REIT(上場不動産投資法人)に関する最近の税務の動向………31 加藤 久子氏、桑原 幸江氏(新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人 代表社員) REPORT ●新たな段階に入ったサブプライム危機 ………43 小林 正宏氏(住宅金融支援機構 主任研究員) ●J-REITの新規上場と市場の流動性 ………52 辰巳 憲一氏(学習院大学 経済学部教授) ●第8回「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」集計結果………58 大坪 嘉章(調査部 主任研究員) ●サブプライムローンの被害と実態 ………66 三澤 剛史氏(全米リアルター協会 日本担当、前アジア/太平洋地区統括責任者) ●不動産デリバティブ仮想市場アンケート結果報告………71 石川 尋夫(企画部 兼 教育推進部 主任調査役) INFORMATION ………84 表紙文 井尻 千男●いじり・かずお 拓殖大学教授/日本文化研究所所長/元日本経済新聞編集局文化部編集委員 1938年山梨県生まれ。立教大学卒業後、日本経済新聞社入社。編集委員として文化論を中心に広く社会評論を手 がける。97年 4 月より拓殖大学教授。『消費文化の幻想』『劇的なる精神 福田恆存』『言葉を玩んで国を喪う』 『自画像としての都市』『保守を忘れた自民政治』など著書多数。
ARES SPECIAL
ARES
不動産投資国際フォーラム
平成20年9月11日(木) 9時30分∼20時30分 平成20年9月12日(金) 9時30分∼13時00分 東京ミッドタウン・ホール&カンファレンス/ザ・リッツ・カールトン東京 社団法人不動産証券化協会REESA(Real Estate Equity Securitization Alliance)
金融庁、国土交通省、東京証券取引所グループ、NYSE Euronext、 企業年金連合会 日 時 会 場 主 催 共 催 後 援 国境を越えたクロスボーダーな不動産投資が急速に進展するなか、日本の不動産投資 市場においては、国際競争における優位性を確立し、グローバルな投資が流入するため の市場環境の整備が重要な課題となっています。 そうしたなか、日本の不動産投資市場は、証券化の進展によりその規模を順調に拡大 しており、投資対象もオフィスから集合住宅、ホテル、リテール、倉庫、工場などへと 多様化が進んできています。また、金融商品取引法の施行や、J-REITの開示データをも とに当協会が作成する不動産投資インデックス「ARES J-REIT Property Database」の 公表などによって、市場の公正性や透明性は一層高まっています。 すでにアセット・クラスとして不動産投資を展開する海外の年金基金はもちろんのこ と、オルタナティブ投資として不動産投資に着手しつつある日本の年金基金にとっても、 日本の不動産投資市場には魅力的で多様性に富んだ投資機会が広がっているといえます。 日本市場の成長性や可能性をご参加の皆様にご理解いただくとともに、日本やアジア で不動産投資を展開するために有用な情報をご提供するため、初の国際フォーラムを開 催しました。国内外の機関投資家をはじめ、協会会員、報道、友好団体等から約1,200名 に参加いただきました。
9:30∼10:15 オープニングセレモニー ◆主催者挨拶 岩沙 弘道 社団法人不動産証券化協会 理事長 ◆来賓挨拶 茂木 敏充 金融担当大臣 谷垣 禎一 国土交通大臣 REESAセッション REESAメンバーによるREESA活動紹介 ◆モデレーター スティーヴン・ウェクスラー 全米リート協会(NAREIT)プレジデント 兼 CEO ピーター・ミッチェル アジア上場不動産協会(APREA) チーフ・エグゼクティブ・オフィサー ピーター・コスメタトス 英国不動産連盟(BPF)ファイナンス・ 投資担当ディレクター フィリップ・チャールズ ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA) チーフ・エグゼクティブ・オフィサー ピーター・バーワー 豪州不動産投資協会(PCA)チーフ・エグゼクティブ マイケル・ブルックス カナダ不動産投資協会(REALpac) チーフ・エグゼクティブ・オフィサー 巻島 一郎 社団法人不動産証券化協会(ARES)専務理事 10:15∼12:30 基調講演 「金融資本市場の競争力強化プランについて」 佐藤 隆文 金融庁 長官 「わが国金融・資本市場の改革について」 斉藤 惇 株式会社東京証券取引所グループ 取締役 兼 代表執行役社長
1日目:9月11日
(木)
会場:東京ミッドタウン・ホール
ARES SPECIAL 「世界の金融・資本市場の動向」 デビッソン・ハードマン ウォーバーグ・ピンカス マネージング・ディレクター 「米国年金基金による不動産投資の歴史と米国年金不動産投資協会(PREA)の役割」 メアリー・ラドギン 米国年金不動産投資協会(PREA)前理事長・現理事 ハイトマン グローバル・インベストメント・ リサーチ部門ディレクター 13:30∼15:30【東京ミッドタウン・ホール Hall A】 年金セッション スピーチ 「年金ポートフォリオにおける不動産グローバル投資の効用」 ノリ・ジェラルド・リーツ パートナーズ・グループ パートナー 不動産投資部門チーフ・ストラテジスト パネルディスカッション 「日本の年金が不動産投資に乗り出すには」 ◆モデレーター 山口 登 野村證券株式会社 フィデューシャリー・サービス研究センター シニア・エグゼクティブ・アドバイザー ◆パネリスト ノリ・ジェラルド・リーツ パートナーズ・グループ パートナー 不動産投資部門チーフ・ストラテジスト
濱口 大輔 企業年金連合会 年金運用部長 メアリー・ラドギン 米国年金不動産投資協会(PREA)前理事長・現理事 ハイトマン グローバル・インベストメント・ リサーチ部門ディレクター 榎本 英二 野村不動産株式会社 執行役員 資産運用カンパニー副カンパニー長 兼 運用企画部長 デイビッド・エドワーズ ラサール インベストメント マネージメント アジア太平洋地域 投資戦略統括 13:30∼15:30【東京ミッドタウン・カンファレンス Room7】 アジア・パシフィック・マーケット・セッション パネルディスカッション ◆モデレーター 川口 有一郎 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授 ◆パネリスト ピエトロ・ドーラン ドーラン・キャピタル・パートナーズ 会長 兼 プリンシパル・パートナー
ARES SPECIAL ティム・チャーチ JPモルガン マネージング・ディレクター 豪州投資銀行部門 不動産担当ヘッド サムソン・チャン スタンレー・アンド・パートナーズ・インベストメント・ マネジメント デピュティ・マネージング・ディレクター ミハイル・スリペンチュック メトローポルグループ 代表取締役社長 15:45∼18:00 グローバル投資セッション パネルディスカッション 「グローバル不動産投資の今後」 ◆モデレーター 冨川 秀二 三井不動産株式会社 不動産ソリューションサービス本部 法人ソリューション部長 ◆パネリスト 檀野 博 三菱地所株式会社 代表取締役 専務執行役員 マーク・バートン アブダビ投資評議会(ADIC) 不動産部CIO
9:30∼11:00 基調講演 「我が国不動産投資市場の現状について」 小澤 敬市 国土交通省 建設流通政策審議官 「証券取引所のグローバル化とその意義」 キャサリン・キニー NYSEユーロネクスト グローバル・リスティング・ヘッド グループ・エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント 「日本郵政の不動産投資戦略」 齋藤 隆司 日本郵政株式会社 CRE部門 不動産企画部 次長 カート・ローロフス Jr. RREEF マネージング・ディレクター アジア太平洋地域CEO サイモン・ジョーンズ マッコーリー・バンク・リミテッド エグゼクティブ・ディレクター リアルエステート・キャピタル 共同部門長
2日目: 9月12日(金)
会場:東京ミッドタウン・ホール
11:00∼13:00 スポットライトセッション:REITs ◆コーディネーター 関 雄太 野村資本市場研究所 ニューヨーク事務所長 主任研究員 イントロダクション・スピーチ フィリップ・チャールズ ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA) チーフ・エグゼクティブ・オフィサー リポート:「各国REITs市場の現状と見通し」 ■US REITs ジョン・ルツィウス グリーン・ストリート・アドバイザーズ マネージング・ディレクター(国際担当) ■J-REITs 澤田 考士 社団法人不動産証券化協会 調査部 上席研究員 ■豪州REITs アンソニー・デ・フランチェスコ コロニアル・ファーストステート・グローバル・ア セット・マネジメント リサーチ部門ヘッド ■欧州REITs リオネル・ボットボル UBSインベストメント・バンク マネージング・ディレクター 欧州不動産投資銀行チーム コ・ヘッド ARES SPECIAL
13:00 クロージング ◆実行委員長挨拶 渋谷 正雄 住友信託銀行株式会社 顧問 フォーラム1日目18時30分より、ザ・リッツ・カールトン東京「グランドボールルーム」に於い てパーティーを開催しました。 ヴァイオリニストの川井郁子さん に演奏していただきました。 9月11日(木)18:30∼【会場:ザ・リッツ・カールトン東京 グランドボールルーム】 パーティー
ARES SPECIAL わが国の不動産投資市場は、2000年の SPC法と投資信託法の改正に始まる不動産 証券化制度の整備とともに急速な発展を遂 げてきました。 2001年9月、2銘柄、運用資産額3,200億円 でスタートしたJ-REIT市場は、現在では42 銘柄、運用資産額8兆2千億円となり、7年 間で25倍に拡大しました。主として機関投 資家向けの商品であるプライベート・ファ ンドも約12兆円の規模に発展し、両者を合 わせると20兆円を超える新たな市場が創出 されました。 この市場創出によって、新たな資金循環が 生まれ、不動産市場が活発化し、都市再生 と地域活性化が促されました。現在では不 動産証券化の果たす役割は日本経済の持続 的な成長に不可欠なものとなっています。 世界の金融・資本市場は昨年の夏以降大 きな変化に直面し、わが国にもその波が押 し寄せてきております。 しかし私は、現在のような時にこそ、不 動産投資のグローバル化の流れを一層促進 し、国内外の直接投資を増大させることに より、投資資金を効率的に循環させ各国の 不動産投資市場と大都市の発展を図ること が重要であると考えます。 わが国については、賃貸不動産マーケッ トは、オフィス、商業施設、住宅、ともに ファンダメンタルズは依然堅調であり、機 関投資家の皆様が魅力的なイールドスプレ ッドを享受できる状態にあります。これを 反映して、内外の年金基金やソブリン・ウ ェルス・ファンドなどの、長期・コア投資 を志向する資金が最近、わが国の実物不動 産への投資を拡大するという望ましい動き が起きております。 不動産投資は、安定したインカムリター ンをもたらすとともに、株式や債券と価格 変動が連動しにくいことからポートフォリ オの分散効果を向上させ、また最近リスク が高まっているインフレへの対応も可能に するという特長があります。したがって、 機関投資家は今後、不動産投資をさらに重 視し、成長性の高いアジア市場を中心にグ ローバルレベルで分散投資を積極化させる 傾向が高まっていくと考えられます。 私どもは、このような機関投資家からの 期待に応えるために、市場を公正で透明性 の高いものとする努力を続けることはもち ろん、投資家ニーズに応える制度変革の努 力も続けることが重要であると考えます。
主催者あいさつ
社団法人不動産証券化協会 理事長岩沙 弘道
来賓あいさつ
本日は不動産証券化協会の主催により「ARES不動産 投資国際フォーラム」が盛大に開催をされますことを心 よりお喜びを申し上げます。また、不動産証券化協会の 皆様には日頃から市場の健全な発展にご尽力いただき 深く敬意を表するものであります。 証券化というものは、日本でもかなり長い歴史を持っ ているようであります。例えば、江戸時代の酒田におい ては、米を証券化した米穀証券が家臣に対する禄とし て支払われていた歴史もあるようです。グローバルな観 点から申し上げると、1970年代の後半以降アメリカにお いて、モーゲージなどの非流動的な金融資産を証券化 して流動化させる資産担保証券、ABSが金融イノベー ションの一つとして発達をしてきた訳であります。さらに 1990年代に入ると、欧州や我が国でも証券化促進の機 運が高まり、今やABSだけでも全世界で1,000兆円を超 える残高と言われる訳であります。 こうした中、我が国で不動産の証券化が本格的に始 まったのは比較的新しい流れでありますが、平成13年に はJ-REITが東証に上場され、我が国の不動産証券化市 場は大きく成長し、平成19年度の不動産証券化の実績 は8兆円を超えていると聞いております。足元では昨年 来のサブプライムローン問題に端を発したグローバルな 市場の混乱の影響もあり、我が国の不動産証券化市場 も厳しい状況に置かれていると承知しておりますが、こ れまで育んできたノウハウや人材などを生かして、厳し い状況を乗り越えて、さらなる発展を遂げていかれるこ とを心から期待を申し上げる次第であります。 金融庁では現在、不動産証券化市場をはじめ、我が 国の金融資本市場のさらなる発展を目指して、さまざま な制度整備に取り組んでいるところであります。昨年末 には市場強化プランを策定し、J-REITの商品改善や、 広範な分野にわたる具体的な施策を精力的に推進をし ているところであります。証券化商品を巡っては、サブ プライムローン問題に関連してさまざまな問題が指摘さ れ、国際的な場で必要な対策が提言をされております が、我が国には各国に先駆けて、証券化商品のトレーサ ビリティの確保、さらには価格評価の適正化など必要な 対策に積極的に取り組んでいるところであります。 我が国経済が持続的な成長を図っていくためには、 1,500兆円に上る世界有数の個人金融資産を有効に活 用し、中小企業等に必要な資金が的確に、円滑に供給 されることが必要であります。さらに金融サービス業が 高い付加価値を生み出す産業に成長することも期待さ れている訳であります。このためには我が国の金融資本 市場を、ロンドンやニューヨークと並ぶ効率的で厚みの ある優れた市場にしていくことが最重要の課題でありま す。市場関係者の皆様のさらなるご尽力により、我が国 の不動産証券化市場のさらなる成長、ひいては我が国 の金融資本市場の競争力の強化、魅力の向上が実現さ れていくことを強く期待をいたすものであります。 最後になりましたが、不動産証券化協会の皆様の今 後のさらなる発展と、本日ご出席の皆様のご健勝を心か らお祈りを申し上げまして、お祝いのご挨拶とさせてい ただきます。 金融担当大臣茂木 敏充氏
ARES SPECIAL
来賓あいさつ
本日、「ARES不動産投資国際フォーラ ム」が開催されるに当たり、一言御挨拶を 申し上げます。 はじめに、本日お集まりの皆様には、平 素より国土交通行政の推進に多大な御協力 を賜り、また、我が国の不動産証券化の進 展に一貫して御尽力いただいておりますこ とに、感謝と敬意を表するものであります。 不動産の証券化は、投資単位の小口化を 通じ て 豊富な 資金を 不動産市場に 呼び 込 み、市場の活性化を促すと同時に、調達さ れた豊富な資金を利用して既存物件のバリ ューアップや低未利用地の再開発等不動産 の有効利用を図り、都市再生や地域経済の 活性化に寄与するものであります。 我が国の不動産証券化の市場規模は、平 成19年度末時点で約42兆円まで拡大してま いりましたが、例えばJリート市場の規模を 自国GDPに占める割合で比較しますと、未 だ米国の半分に届いておらず、今後も更な る成長が期待されます。 現在、サブプライムローン問題に端を発 した世界的な信用収縮等により、我が国不 動産投資市場も不安定な状況を余儀なくさ れておりますが、これには、高い物件稼働 率等の我が国の良好なファンダメンタルズ が十分反映されず、過小評価されている面 がございます。 このため、国土交通省といたしましても、 国内外の投資家に対して適確な情報発信を 推進するなど、国内外からの安定的な不動 産投資を喚起し、我が国不動産投資市場の 更なる発展を図るための取組を推進してま いる所存であります。また、現在、円滑な 資金調達が不動産業等の経営力の強化にと って特に重要となっており、国土交通省か らも金融庁をはじめとする関係省庁に、特 別のご配慮をお願いしているところであり ます。皆様におかれましても、こうした国 土交通省の取組に対し、一層の御理解と御 尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し 上げます。 本日は、国外からの参加者も多数お集ま り頂いているところですが、本フォーラム を通じて、我が国不動産投資市場の活性化 への取組を国内外の多くの方々に御理解い ただき、これが市場の活性化、ひいては日 本経済の活力の増進に繋がることを期待し ます。 終わりに、本日お集まりの皆様の今後の ますますの御活躍と御健勝を心より祈念い たしまして、私の御挨拶といたします。 国土交通大臣谷垣 禎一氏
ARES 巻島 一郎 本日ここに、REESAメンバー団体の代 表が一同に会しました。 不動産のクロスボーダー投資の活発化に より、会計基準の共通化、租税条約の共通 化、不動産評価基準の共通化など、国境を またいだ不動産投資の障壁を低くする共通 化、投資家に対する不動産投資の啓蒙活動、 これらのREESA活動がますます重要にな っています。 このセッションは、REESAの活動内容を 皆様に広く知っていただくことが目的です。 モデレーターは私の尊敬する友人であ り、NAREITのプレジデント・CEOである スティーヴン・ウェクスラーさんにお願い します。 最初に、REESAを代表して本日お集まり REESA(Real Estate Equity Securitization Alliance)は、当協会をはじめとする 不動産エクイティサイドの証券化団体の国際的組織です。世界7つの国・地域の団体によ り構成され連携し活動しています。 REESAセッションでは、各団体からREESAの取り組みについてお話しいただきました。
REESAセッション
NAREIT スティーヴン・ ウェクスラー氏ARES SPECIAL いただいた皆様に心よりお礼申し上げます。 不動産の証券化市場はこの10年間に急速 に発展してきましたが、我々は謙虚になる 必要があると思います。今週、ファニーメ イ、フレディマックが実質国有化されると いう出来事が起こりました。改めて、リー ダーシップと規律の重要性を認識していま す。思慮深い行動、監視・監督がいかに重 要かは不動産証券化においても例外ではあ りません。 REESAは不動産の証券化業界の共通の 利益を念頭において、政策面、実務面の両 面にフォーカスしグローバルな改革を推進 しています。そして不動産証券化商品には グローバルに共通した5つの重要な特徴が あると考えます。 第一に高いパフォーマンス。不動産証券 化商品のパフォーマンスは相対的にも、絶 対的にも良好です。これまで長きにわたり 世界各地域で見られてきたことです。 第二に透明性です。特に現在は、世界の 金融市場で過度なレバレッジ、流動性の欠 如、不充分な透明性という状況が市場全体 を混乱させています。 第三に分散メリットの追求です。物件の 分散化に加え、国ですら分散化できるチャ ンスがあります。 第四に流動性です。証券化により不動産 を流動化することができます。東京のオフ ィスビルからキャッシュフローを得たいと 考えている投資家は、東京、ニューヨーク、 パリのどこにいてもそれを実現することが でき、関心がなくなれば、すぐに手を引く ことが可能です。これは全ての不動産セク ターに共通しています。 第五に配当です。 REITであれ、その他の上場の有価証券 であれ、パフォーマンス、分散化、透明性、 流動性、そして配当というメリットが提供 されているわけです。長期的な投資先とし てすばらしい商品だとはっきり言えます。 REESAはこのメッセージを伝える努力を しているところです。 では、続いてREESAの同僚メンバーに それぞれ話していただきましょう。 私からはOECDモデル租税条約をご紹介 します。 今年7月、REESAが取り組んだOECDへ の働きかけは、租税条約のモデルの改定と して実を結びました。さまざまな国で税制 は異なりますが、REITはアセットクラス として認識されるべきで、すべての国の税 制で適切に認識されるべきだ。そして分配 金に対する税率は15%以下にすべきだと要 望しました。国によってはREITに対して 差別的な税率を課していたので、これは歴 史的な出来事といえます。 そしてこのことは、3つの理由から非常 に大きな意義があるといえます。 まずREITが租税条約の中で独立したア セットクラスとして認識されるようになっ た。つまり確実性・信頼性・正当性が高ま り、魅力的なアセットクラスになったとい PCA ピーター・ バーワー氏
えます。 2つ目は、各国政府に対して税率をさら に低くする要望が可能となったことです。 OECDの決断により、オーストラリア政府 は「REITの分配金にかかる税率を7.5%に する」としました。各国政府による税率を 下げる競争が始まったわけです。 3つ目の理由は、各国が協調して行動を 起こ す こ と の 重要さ が 確認さ れ た こ と 。 R E E S A は 最良の 議論を 展開し 、 初め て OECDを説得することができたのです。 もちろん自国の政府に対して不動産の税 率を改正してもらうことも大変ですが、グ ローバルにおいては100倍も大変です。課 題はまだありますが、最良のスタートを切 ることができました。 IASB(国際会計基準審議会)は会計基 準の共通化を長年にわたり目指していま す。REESAでは2年以上前からIFRS(国際 会計基準)に、グローバルな投資家がバラ ンス・シートとインカム・ステイトメント を比較しやすくするように標準化を推進し てきました。IASB、FASB(米国財務会計 基準審議会)、米国証券取引委員会にも働 きかけています。 また財務諸表の表示、リース会計等様々 な課題に取り組んでいます。なかでも重要 視しているのは、IAS40です。国際会計基 準は投資不動産に対して、取得原価アプロ ーチと公正価値モデルの2つの選択肢を与 えますが、北米ではIFRSの公正価値測定へ のシフトは2011年から2013年の間に実現す ると見られています。 REESAは、グローバルな投資家が同じ 基準で各国の財務諸表を比較できるよう努 力を続けていきます。 サステイナビリティの実現も重要です。 特に不動産セクターにとっては、パフォー マンス、環境、コミュニティにどう貢献し 得るかという点が非常に重要です。 例えば気候変動に関して、各国政府は国 内企業の果たすべき責任を規定し始めてお り、不動産セクターがCO2の削減について どのように貢献するかを注視しています。 新たに建築される建物をより持続可能なも のとし、既存ビルにはよりエネルギー効率 を良くするという義務が課せられるわけで す。 各国政府は強制的に効率化を実現させて いくでしょう。税軽減を使ったインセンテ ィブを与えるか、あるいは増税による制裁 を行うのです。 REESAは各国政府の政策にも影響力を 行使しなければなりません。最終的には 我々に返ってくる問題ですから。 BPF ピーター・ コスメタトス氏 REALpac マイケル・ ブルックス氏
情報発信も非常に重要なポイントです。 世界の投資コミュニティに情報提供するこ とは、我々が常に取り組んできた重要な活 動です。 REESAではこのほど情報発信のレベル を高める事業方針が決まりました。これま で各団体が個別に行ってきた情報発信に統 一性をもたせるため、グローバルベースで リサーチ委員会をつくり、共同で作業し、 結果を発信することにしたのです。 その一例を申し上げましょう。APREA が発信するアジアの不動産情報はREESA メンバーが共有をします。これはグローバ ルな不動産コミュニティにとっても利益に 適うことです。 そして今後リサーチ委員会が注目するの は、ボラティリティとマーケットサイクル の2点です。 市場では不動産関連のインデックスが有 効に活用されています。 REITの代表的インデックスであるFTSE EPRA/NAREITインデックスは、不動産 に投資する投資家のうち4人に3人が使って います。投資額にして約2,500億ドルに対し て活用されていることになります。FTSE への投資により、約300社、22ヶ国、9つの 専門セクターがカバーされます。 全世界のREIT市場の時価総額は約7,000 億ド ル で す 。 内訳は 北米2 ヶ 国、 1 2 0 社、 3,000億の時価総額。アジア・太平洋は5ヶ 国、75社、2,600億の時価総額。ヨーロッパ は15ヶ国、100社、1,300億の時価総額とな ります。ですからFTSEに投資することで、 グローバルに分散化されたポートフォリオ が実現するわけです。 2008年末には、新興国のインデックスと なる「FTSEエマージング・インデックス」 も立ち上げます。次回は新しいインデック スについてもご報告をできることを願って います。 スティーヴン・ウェクスラー氏 皆さんありがとう。岩沙理事長やお二人 の大臣からもお話があった通り、不動産証 券化市場を発展させることは、多くの関係 者のコミュニティの創造につながります。 不動産は地域社会の重要な支えでありコミ ュニティの要です。ユーザーのコミュニテ ィ、株主のコミュニティ、ステークホルダ ーのコミュニティにとっても要となるもの なのです。REESAはサービスを提供するう えで常にこれを念頭におかなければなりま せん。REITに対する理解も深めてもらう 努力をしなければいけないと考えておりま す。皆様にもご協力をいただければ幸いで す。ありがとうございました。 ARES SPECIAL APREA ピーター・ ミッチェル氏 EPRA フィリップ・ チャールズ氏
【REESA代表者会議】 ●日時:2008年9月10日(水)10時∼17時 ●会場:ザ・リッツ・カールトン東京 ●議題 1. OECDモデル租税条約 2. 国際会計基準のコンバージェンスの影響 3. GRI(企業のCSRレポートのガイドライン)の不動産セクターガイドラインについて 4. 国際評価基準委員会(IVSC)への対応について 5. 各団体の活動報告 6. 新規事項の検討(次回REESA会議の日程、委員会設置等) ●参加者(敬称略) スティーヴン・ウェクスラー 全米リート協会(NAREIT)プレジデント 兼 CEO ボニー・ゴットリエブ 全米リート協会(NAREIT)ヴァイスプレジデント ピーター・ミッチェル アジア上場不動産協会(APREA) CEO ピーター・コスメタトス 英国不動産連盟(BPF)ファイナンス・投資担当ディレクター フィリップ・チャールズ ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA) CEO フレーザー・ヒュー ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA)リサーチディレクター ピーター・バーワー 豪州不動産投資協会(PCA)チーフ・エグゼクティブ マイケル・ブルックス カナダ不動産投資協会(REALpac)CEO 巻島 一郎 不動産証券化協会 専務理事 市井 達夫 不動産証券化協会 事務局長 溝越 祐輔 不動産証券化協会 企画部部長代理
REESA(Real Estate Equity Securitization Alliance)は7ヶ国の業界団体により 構成される国際組織です。REITの啓蒙・普及、投資環境の整備、政策課題に協調して取り 組んでいます。
2006年11月に米国サンフランシスコで誕生したREESAは、その後、ニューヨーク、 アテネ、ソウルと回を重ね、このほど5回目の会議を東京で開催しました。
ARES SPECIAL また同日夜、綱町三井倶楽部において、当協会の正・副理事長、運営委員長、国際委員 長等に出席いただき、歓迎ディナーを開きました。 (前列左から) 木村 惠司 不動産証券化協会 副理事長 フィリップ・チャールズ ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA) CEO 高橋 温 不動産証券化協会 副理事長 スティーヴン・ウェクスラー 全米リート協会(NAREIT)プレジデント 兼 CEO 岩沙 弘道 不動産証券化協会 理事長 ピーター・バーワー 豪州不動産投資協会(PCA)チーフ・エグゼクティブ 古賀 信行 不動産証券化協会 副理事長 フレーザー・ヒュー ヨーロッパ上場不動産投資協会(EPRA)リサーチディレクター 廣本 裕一 不動産証券化協会 国際委員長 (後列左から) 市井 達夫 不動産証券化協会 事務局長 巻島 一郎 不動産証券化協会 専務理事 植木 正威 不動産証券化協会 副理事長 ピーター・コスメタトス 英国不動産連盟(BPF)ファイナンス・投資担当ディレクター マイケル・ブルックス カナダ不動産投資協会(REALpac)CEO ボニー・ゴットリエブ 全米リート協会(NAREIT)ヴァイスプレジデント 檀野 博 不動産証券化協会 運営委員長 ピーター・ミッチェル アジア上場不動産協会(APREA) CEO
1. はじめに 2001年9月10日にJ-REITの初の上場銘柄 が登場してから、既に7年が経過した。当 初、不動産市況低迷への懸念や新たな商品 であるがゆえの不安感から市場拡大が低迷 した時期もあったが、幸いなことに、少な くとも2007年初旬までは、継続的な価格上 昇や市場拡大が実現した。J-REITの投資家 税制の改正、安定的な分配金の実現、不動 産市況の回復などがその要因である。 だが、2007年以降、米国のサブプライム ローン問題などが影響し、新規上場の減少 や価格の低迷など、市場の拡大やパフォー マンスに大きな変化が見られた。また、金 融商品としてのJ-REITの商品特性も大きく 変質した。J-REIT市場は、明らかな転換期 を迎えており、新たなステージに向かおう としているように思える。 本レポートでは、これらの変化を検証す るとともに、今後の将来展望を考察する。 2. 初の本格的な価格下落と利回りの 上昇 図表1は、東証REIT指数の推移を示して いる。 東証REIT指数は、公表が始まった2003 年3月末以来、数年間にわたって上昇し続 けてきたが、2007年5月末をピークとして 初の大幅な下落を記録した。2008年3月17 日までに、2007年5月末の水準から、東証 REIT指数配当無しは約50.8%下落、同配当 込み指数は約49.4%下落した後、若干の回 復基調にあったが、直近では再び低迷し、 2008年9月には年初来安値を更新すること となった。また、利回りについて言えば、 図表2の通り、J-REITの大幅な価格下落に 伴ってJ-REIT配当利回りが大きく上昇し、 加えて、J-REITの投資法人債の利回りや借 り入れ金利は、銘柄毎に差異はあるものの、 概して上昇傾向にある。 一方、このように、J-REITの価格や利回 りの推移に極めて劇的な変化が見られる
J-REIT View
∼転換期を迎えたJ-REIT市場∼
社団法人不動産証券化協会 調査部 上席研究員澤田 考士
中、 J - R E I T の 保有 不動産のパフォーマ ンスは概ね堅調であ り 、 図表3 に 示す と おり、J-REITの分配 金に大幅な下落傾向 は見られない。 更に言えば、近年 では一部の銘柄にお いて、売却益による 分配金の大幅な上昇 も実現している状況 である。 従って、J-REIT価 格の下落は、キャッ シュフローの減少期 待によって生じてい るというよりは、む し ろ 、 投 資 家 の J -REITのリスクに対 する評価が金融市場 の環境変化などを原 因として高まったこ とによるものと想定 される。投資家の評 価の 変化が 、 図表2 に示すような配当利 回りや国債利回りに 対するスプレッドの 上昇となって表れて いるともいえよう。 もっとも、リスク に対する投資家の変 化は、J-REITのみに ついて生じたわけで はなく、米国のサブ ARES SPECIAL 図表2 J-REIT平均配当利回り、10年国債利回り、スプレッドの推移 0.00% 1.00% 2.00% 3.00% 4.00% 5.00% 6.00% 7.00% 2001年9 月 2002年1 月 2002年5 月 2002年9 月 2003年1 月 2003年5 月 2003年9 月 2004年1 月 2004年5 月 2004年9 月 2005年1 月 2005年5 月 2005年9 月 2006年1 月 2006年5 月 2006年9 月 2007年1 月 2007年5 月 2007年9 月 2008年1 月 2008年5 月 J-REIT平均配当利回り 10年国債利回り スプレッド 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 2001年下期 2002年上期 2002年下期 2003年上期 2003年下期 2004年上期 2004年下期 2005年上期 2005年下期 2006年上期 2006年下期 2007年上期 2007年下期 2008年上期 8951日本ビルファンド投資法人 8952ジャパンリアルエステイト投資法人 8953日本リテールファンド投資法人 8954オリックス不動産投資法人 8955日本プライムリアルティ投資法人 8956プレミア投資法人 図表3 上場J-REIT先行6社 1口当たり分配金の推移 図表1 東証REIT指数の推移 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2003年3 月 2003年6 月 2003年8 月 2003年11 月 2004年1 月 2004年4 月 2004年6 月 2004年8 月 2004年11 月 2005年1 月 2005年4 月 2005年6 月 2005年9 月 2005年11 月 2006年2 月 2006年4 月 2006年6 月 2006年9 月 2006年11 月 2007年2 月 2007年4 月 2007年7 月 2007年9 月 2007年11 月 2008年2 月 2008年4 月 2008年7 月 東証REIT指数(配当無し) 東証REIT指数(配当込み)
プライムローン問題に端を発して金融市場 全般に生じたものである。図表4において はJ-REIT時価総額の東証1部株式時価総額 に対する割合が示されているが、この割合 に劇的な減少傾向が見られるわけではな く、安定的に推移している。J-REIT時価総 額は、J-REITの投資口価格の下落とともに 大きく減少したが、その減少は、株式時価 総額の減少と同程度であったということで ある。また、図表5においてはJ-REIT時価 総額の東証1部不動産業株式時価総額に対 るが、この割合は、上 昇傾向にあった時期も ある。サブプライムロ ーン問題後におけるJ-R E I T 時価総額の 減少 は 、 東証1 部不動産業 株式時価総額の減少と 比較して低水準であっ たともいえる。 価 格 の 下 落 は 、 J -REITのみならず日本 の証券市場全般に生じ た 現象で あ り 、 更に 、 J-REIT価格の下落は、 株式等の他の金融商品 の価格下落と比較して 大きくはないのである。 3. 市場で実現した J-REITの商品特性 J-REITの利回りのト レンドがこのように変 化する中、J-REITの商 品特性もまた、大きく変化した。中でも、 以下に示す(1)J-REITリターンのボラテ ィリティ(変動性)の上昇、(2)J-REITリ ターンとTOPIXリターンの相関の上昇、が 特徴的な変化である。 (1)J-REITリターンのボラティリティの 上昇 図表6は、J-REIT及び日本の株式の日次 リターンの標準偏差(60営業日ローリング データ)を示している。 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 2001年9 月 2002年2 月 2002年7 月 2002年11 月 2003年4 月 2003年9 月 2004年2 月 2004年7 月 2004年12 月 2005年5 月 2005年10 月 2006年3 月 2006年7 月 2006年12 月 2007年5 月 2007年10 月 2008年3 月 2008年8 月 (億円) 0.00% 0.20% 0.40% 0.60% 0.80% 1.00% 1.20% 1.40% JREIT時価総額 東証1部株式時価総額に対するJREIT時価総額の割合 図表5 JREIT時価総額の推移と東証1部不動産業時価総額との比較 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 2001年9 月 2002年1 月 2002年6 月 2002年10 月 2003年3 月 2003年7 月 2003年11 月 2004年4 月 2004年8 月 2004年12 月 2005年5 月 2005年9 月 2006年2 月 2006年6 月 2006年10 月 2007年3 月 2007年7 月 2007年11 月 2008年4 月 2008年8 月 (億円) 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% JREIT時価総額 東証1部不動産業時価総額に対するJREIT時価総額の割合
標準偏差は、リターンのボラティリティ を示している。そして図表6をみると、J-REITリターンのボラティリティはデータ 上、2007年1月半ば以降TOPIXのボラティ リティを上回ったことを読みとることがで きる。この2007年1月半ばの数値は、それ 以前の60営業日(約3ヶ月)のデータで作 成された数値であることから、2006年の後 半以降にJ-REITリターンのボラティリティ が大幅に上昇したといえる。その後、J-REITリターンのボラティリティは更に大 きく上昇し、2007年8月上旬には、東証マ ザーズ指数のリターンのボラティリティを 陵駕する水準にまで上昇した。 J-REITリターンのボラティリティのこの ような大幅な上昇は、金融商品としてのJ-REITのリスクの上昇を示す。2006年後半 以降、J-REITの資産内容、資本構成、商品 の仕組みなどから想定される本来の特性と は異なる高リスクな特性が示されたといえ よう。だが、そもそもJ-REITの保有資産は キャッシュフローの比較的安定した不動産 であり、かつ、J-REITの負債比率が概して 低めであることを踏まえれば、J-REITは株 式よりもリスクの低 いミドルリスクの商 品性を示すようにも 思える。実際、当初 は一貫して、株式よ りも低いボラティリ ティを示していた。 一方リターンの平 均値をみると、図表 7 に 示す と お り 、 J -REITの日次リター ンの平均値(60営業 日 ロ ー リ ン グ デ ー タ)は、2006年後半 に 大 幅 に 上 昇 し 、 2007年以降大幅な下 落に転じている。こ れは、J-REITの価格 が、2006年後半以降 に 大 き く 上 昇 し た 後、大幅な下落に転 じ た 事実を 反映し 、 リ ス ク の 高 ま る J -REITの商品性を示 ARES SPECIAL 図表6 J-REIT及び日本の株式の日次リターン標準偏差(60営業日ローリング)の推移 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030 0.035 0.040 0.045 0.050 2003.6.232003.9.232003.12.232004.3.232004.6.232004.9.232004.12.232005.3.232005.6.232005.9.232005.12.232006.3.232006.6.232006.9.232006.12.232007.3.232007.6.232007.9.232007.12.232008.3.232008.6.23 TOPIX配当込み株価指数 TOPIX配当込み不動産業株価指数 東証REIT指数(配当込み) 東証マザーズ(配当込み) 図表7 J-REIT及び日本の株式のリターン平均値(60営業日ローリングデータ)の推移 -0.015 -0.010 -0.005 0.000 0.005 0.010 0.015 2003.12.232004.3.232004.6.232004.9.232004.12.232005.3.232005.6.232005.9.232005.12.232006.3.232006.6.232006.9.232006.12.232007.3.232007.6.232007.9.232007.12.232008.3.232008.6.23 TOPIX配当込み株価指数 TOPIX配当込み不動産業株価指数 東証REIT指数(配当込み) 東証マザーズ(配当込み)
幸いなことに、2007年後半以降、J-REIT のボラティリティが、株式リターンのボラ ティリティの水準を下回る水準にまで低下 した。これはおそらく、金融市場の混乱が 若干沈静化したためだと推察される。結果 として、本来は株式よりもリスクが低いは ずのJ-REITの商品性は取り戻されたように も思える。 しかしながら、J-REITのボラティリティ の水準自体、依然として従来よりも高水準 であり、本来想定されるリスクよりも依然 として高いリスク水準になっている可能性 もある。 (2)J-REITリターンとTOPIXリターンの 相関の上昇 J-REITの商品性のもう一つの主要な変化 は、TOPIXリターンとの相関の上昇であ る。図表8は、東証REIT指数の日次リター ンとTOPIX日次リターンの相関係数(60営 業日ローリングデータ)の推移を示してい る。図表8から、2007年以降、相関係数が 大きく上昇したと判断することができる。 特に、2007年6月以降相関係数が急騰し、 たのが特徴的である。リターンの相関係数 がここまで上昇すると、J-REITと日本株式 への分散投資によってリスク低減効果を享 受することが困難となる。その後、相関係 数は若干低下したものの、依然として高い 水準にあり、同様の状態が継続している。 ただし、リターンの相関係数がこのよう に大幅に上昇したのは、米国のサブプライ ムローン問題に端を発した市場の混乱によ って、日本において、株式市場とJ-REIT市 場が同一の方向に変動したからに他ならな い。J-REITの保有資産や仕組みを踏まえれ ば、今後、市場の混乱が収まってゆけば、 この相関係数が大きく低下し、J-REITと日 本株式への分散投資によるリスク低減効果 を享受できる環境が到来することは十分に 想定される。 4. グローバル化する不動産投資市場 (1)不動産投資市場のグローバル化の現状 これまで述べてきた市場環境の変化の背 景には、不動産投資市場のグローバル化が ある。グローバルな不動産投資が活発化す る背景には、不動産 証券化の普及によっ て、不動産のグロー バル投資に関する障 壁が取り払われた事 情がある。不動産証 券化が普及する以前 には、海外不動産へ の投資は容易ではな かった。なぜなら、 海外の実物不動産へ 図表8 日次リターンの相関係数(日本のREIT VS 日本の株式 60営業日ベース) -1.00 -0.80 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 2003.12.232004.3.232004.6.232004.9.232004.12.232005.3.232005.6.232005.9.232005.12.232006.3.232006.6.232006.9.232006.12.232007.3.232007.6.232007.9.232007.12.232008.3.232008.6.23
の投資を行う上では、投資対象国の法制や 市場動向を踏まえた上で、実際に投資対象 とする実物不動産の建物や土壌の状況、権 利関係等について審査できなければならな いからである。その点、不動産証券化が普 及した現状においては、不動産証券化商品 について、開示情報を踏まえて、他の金融 商品と同様に投資判断を行えるようになっ たのである。このような環境下、国際分散 投資によるリスク低減効果を狙って、海外 不動産への投資は活発化した。 例えば、図表9に示す、J-REITの「投資 部門別売買実績」(東京証券取引所データ を元に作成)を見ると、外国人投資家によ るJ-REITの売買を活発化させていたことを 読み取ることができる。 外 国 人 投 資 家 は 、 2 0 0 6 年 後 半 以 降 J -R E I T を 大幅に 買い 入れ 続け 、 そ の 後、 2007年6月に急に大幅な売り越しに転じた。 外国人投資家が、J-REITを大幅に買い入れ ている時期にはJ-REIT価格は急激に上昇 し、外国人投資家が大幅な売り越しに転じ た時期に、J-REIT価格は大きく下落したこ とから、外国人投資 家のJ-REITのこのよ うな売買動向が、J-REIT価格に影響を 与えた可能性は極め て高いものと推察さ れる。これに加え、 日本の不動産を投資 対 象 と す る 海 外 R E I T も 登場し た 。 中には、日本の物件 のみを対象とする海 外REIT銘柄も複数 存在しており、海外資金による日本の不動 産の投資は拡大している。 一方、日本の投資家による、ファンド・ オブ・ファンズを通じた海外REITへの投資 も活発化している。また、2008年5月には、 東京証券取引所の規則が改正され、J-REIT による海外不動産投資が解禁された。将来 的には、J-REITが海外不動産を直接取得す ることも想定される。 不動産市場において、グローバル化が進 展し、クロスボーダー取引が活発化してい るのである。 (2)市場のグローバル化による市場環境 の変化 このように不動産投資市場のグローバル 化が進展するにつれ、ある国の市場環境の 変化やショックが別の国に伝播しやすくな る環境が到来しつつある。2007年の米国サ ブプライムローン問題が、世界各国に波及 しているのは特にわかりやすい例であると いえる。2007年にJ-REIT価格は、大きく下 落したが、他国のREIT価格もやはり下落 ARES SPECIAL 図表9 J-REIT投資部門別売買状況(東京証券取引所) -100,000,000 -50,000,000 0 50,000,000 100,000,000 150,000,000 2003年4 月 2003年7 月 2003年10 月 2004年1 月 2004年4 月 2004年7 月 2004年10 月 2005年1 月 2005年4 月 2005年7 月 2005年10 月 2006年1 月 2006年4 月 2006年7 月 2006年10 月 2007年1 月 2007年4 月 2007年7 月 2007年10 月 2008年1 月 2008年4 月 2008年7 月 生保・損保 銀行 投資信託 事業法人 国内個人 外国法人・個人 千円 東京証券取引所提供データを元に、ARES作成
REIT市場に波及した結果であることはほ ぼ明白であると言えよう。また、2006年後 半におけるJ-REIT価格の大幅な上昇は、海 外において不動産の利回りが不動産価格の 上昇に伴って低下し、日本の不動産投資市 場の相対的な魅力が高まったことも一つの 要因であろう。これは海外の市場環境の変 化が、日本の不動産投資市場に影響を与え た事例だといえる。 このように考えると、不動産投資市場の グローバル化が進展するにつれ、各国の市 場はある程度の連動性を持つのではないか と推察される。この点について、図表10に 示す世界のREIT指数の日次リターンの平 均値(60営業日ローリングデータ)をみる と、やはり、ある程度連動しているように 見えなくもない。 しかしながら、各国REIT指数のリター ンの平均値に一定連動性が見られるのに対 し、J-REITリターンと米国リターンの相関 係数、J-REITリターンと欧州リターンの相 関係数は、図表11、図表12に示すとおり相 対的に0に近い水準で推移している。おそ 相(Phase)の相違から、結果としてリタ ーンの低い相関が実現しているものと想定 される。これは、既に見た、J-REITリター ンとTOPIXリターンの相関係数が極めて高 いのと対照的である。日本国内で、J-REIT とTOPIXへの分散投資によるリスク低減効 果が見込めないのに対し、REITへの国際分 散投資によるリスク低減効果が期待される といえる。 この点を踏まえると、国際分散投資への ニーズ拡大は当然の流れとも言え、不動産 投資市場のグローバル化はより一層進展す ることが期待される。 5. 市場メカニズムの 円滑な機能への期待 不動産の金融商品化や市場のグローバル 化により、J-REIT等の不動産証券化商品の パフォーマンスは、単に組み込まれた不動 産のパフォーマンスに影響されるばかりで なく、他の金融資産の動向や他国の経済情 勢等、様々な要因によって変動するように なりつつある。そして、 上場J-REITは、高流動 性を求める資金の投資 対象となることが想定 されることから、その 傾向が特に強い。それ ゆえ、他国で生じた何 らかのショックが日本 の 市 場 に 伝 播 し 、 J -REIT価格が過度に変動 する現象は当然に想定 される。2006年後半以 図表10 日本・アメリカ・欧州のREIT指数 日次リターン平均値(60営業日ベース)の推移 -0.008 -0.006 -0.004 -0.002 0 0.002 0.004 0.006 2003.12.192004.3.192004.6.192004.9.192004.12.192005.3.192005.6.192005.9.192005.12.192006.3.192006.6.192006.9.192006.12.192007.3.192007.6.192007.9.192007.12.192008.3.192008.6.19
来の、海外投資家の買い入れによるJ-REIT 価格の上昇とその後の米国サブプライムロ ーン問題のショックによるJ-REIT価格の急 落は、その一つの例と言えなくもない。 このように、J-REITのパフォーマンスが 様々な要因で変動する可能性があり、時と して他国のショックや他の事情からJ-REIT 価格が大きく変動し得るとすれば、結果と して示されるJ-REITの特性は、原資産であ る不動産の特性とは異なるといえる。この ような点に着目した場合、J-REITを小口で 流動性を保った形で不動産の商品特性を享 受できる商品として認識することが困難で あるように感じられるかもしれない。 確かに、J-REITが現 に高いボラティリティ を示したのは事実であ り、その特性は不動産 の特性とは異なるとい える。そして、頻度が 必ずしも多いとは言え ないが、今後も同様の ケースが想定されなく もない。しかしながら、 もし仮に他国のショッ ク等、何らかの要因で J-REIT価格が過度に変 動したとしても、それ が 短期間に 調整さ れ 、 適正な価格付けが早期 に 実 現 す る の で あ れ ば、J-REITは基本的に は不動産に類似した特 性を有する商品だとい え よ う 。 そ し て 、 J -R E I T が 中長期的に こ のような特性をもつといえるためには、市 場メカニズムの円滑な機能が鍵となる。 図表13は、2007年6月末を100として基準 化した世界の主要REIT価格インデックス の推移を示している。 まず、米国REIT指数の動きを見ると、 ある程度下落した後に、価格が若干反発す る現象が何度か生じているのが特徴的であ る。結果として、米国REITの価格は、J-REITや欧州REITの価格と比較して、あま り下落していない。REITの歴史が最も長 い米国では、REIT価格の変動の範囲を、 過去のデータに基づいて予測しやすい環境 にあるものと推察され、それゆえ、ある程 ARES SPECIAL 図表11 日次リターンの相関係数(日本REIT VS 米国REIT 60営業日ベース) -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 2003.12.192004.3.192004.6.192004.9.192004.12.192005.3.192005.6.192005.9.192005.12.192006.3.192006.6.192006.9.192006.12.192007.3.192007.6.192007.9.192007.12.192008.3.192008.6.19 図表12 日次リターン相関係数の推移(日本REIT VS 欧州REIT 60営業日ベース) -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 2003.12.192004.3.192004.6.192004.9.192004.12.192005.3.192005.6.192005.9.192005.12.192006.3.192006.6.192006.9.192006.12.192007.3.192007.6.192007.9.192007.12.192008.3.192008.6.19
度のREIT価格が下落した段階で、割安と 判断する投資家が比較的早期にREITを買 い入れることで、価格の過度な下落は避け られやすいということではないだろうか。 即ち、米国のREIT市場では、市場メカニ ズムが比較的機能しやすい環境が整備され ているものと推察されるのである。 一方、J-REITの価格はあまり反発せずに 下落が継続し、結果として、価格の下落幅 は大きくなった。日本では、REIT市場の 歴史がまだ短いために過去のデータが多く 存在しない。J-REITはまだそれほど多様な 経済局面を 経験し て い な い こ と か ら 、 J -REITのパフォーマンスが中長期的にどの ような変動を示すのか予測することが困難 である点は否めない。従って、日本におい て、J-REITの価格がある程度下がったとし ても、多くの投資家が割安と判断して投資 が再び積極化するまでに時間を要したとし ても不思議ではない。そうであれば、仮に J-REITの価格水準が適正水準を下回ったと しても、それがすぐには是正されない事態 も懸念される。このような事態を如何にし REIT市場にとって重 要な課題であることは 言うまでもない。 6. 価格動向を左右 する投資家の期待 現在の J - R E I T 市場 は、米国サブプライム ローン問題に端を発す る シ ョ ッ ク が 伝播し 、 市 場 環 境 が 激 変 す る 中、市場において調整が生じている過程に ある。そのような状況下、J-REIT価格は低 迷しているのは事実だが、不動産賃貸市場 の堅調な推移を根拠に、現状からの脱却を 期待している市場参加者は少なくないはず である。もちろん、仮に価格が上昇し過ぎ た場合、市場メカニズムによる価格を沈静 化し、適正な価格付けを実現することが不 動産証券化市場に求められているのは事実 である。それゆえ、最近のJ-REIT価格の下 落が、価格の適正化の過程で生じているの であれば、必ずしも悲観すべきではないと いう見方もあろう。しかしながら、前述の 通り、J-REIT価格の水準が割安の水準にま で低下していながら、投資家がその旨の判 断をすることが難しい状況のために投資家 による買い入れが進んでいない可能性もあ る。このような現象が生じ、それが理由と なって不動産賃貸市場の堅調な推移にもか かわらず、J-REIT価格の低迷が継続してい るという見方もありえよう。 ただし、いずれにせよJ-REITは、その資 産の大半が実態のある不動産であり、かつ、 50.00 60.00 70.00 80.00 90.00 100.00 110.00 120.00 2007年6 月 2007年7 月 2007年8 月 2007年9 月 2007年10 月 2007年11 月 2007年12 月 2008年1 月 2008年2 月 2008年3 月 2008年4 月 2008年5 月 2008年6 月 2008年7 月
米国REIT配当込み指数 欧州REIT配当込み指数 日本REIT配当込み指数 Bloomberg提供データよりARES作成
負債比率は概して低水準であることから、 J-REIT価格が限りなくゼロに近い水準にま で下がる可能性は高くはないはずである。 すなわち、J-REIT価格の下落は、いずれ終 焉することが期待される。それゆえ、J-REIT価格が大きく下落するにつれ、価格 回復を期待して投資機会を狙う投資家が増 加し、買い入れのタイミングが図られてゆ くことになろう。 とはいえ、J-REIT価格は、さらにどの程 度下落するのか、そして、J-REIT価格はい つ回復基調になるのかを予測することは容 易ではない。これらはいずれも、J-REITへ のローンの出し手となり得る適格機関投資 家の期待、そして、J-REIT投資口へ投資す る投資家の期待に大きく左右される。投資 家が仮に過度に悲観的な期待をいだいてし まえば、J-REIT価格が適正水準を下回る状 況であっても、J-REIT価格が更に下落して しまいかねない。このような事態を避ける ためには、J-REIT価格が適正水準から過度 に乖離した場合、それが早期に適正水準へ と調整されるであろう、と多くの投資家が 信頼できるような市場環境の整備が重要で あろう。 もちろん、このような市場環境が実現す るためには、J-REITが今後様々な局面を経 験す る 中、 日本の 不動産の サ イ ク ル や J -REIT価格の変動性などがより一層理解さ れてゆく必要があるのは事実である。一方 で、そのように長い期間を経過する以前の プロセスにおいて、市場メカニズムが機能 しやすいような市場環境の整備に向けた活 動を実施することも重要であろう。例えば、 J-REITの豊富な開示情報が、投資家に分か り易い形で伝わるルートを確保できれば、 投資家がJ-REITへの投資判断を行いやすく なるだろう。また、J-REITの市場データを 利用しやすい環境を整備することで、多く の市場関係者によるJ-REITの分析が行わ れ、J-REITの商品性が理解されやすくなる である。 不動産証券化協会のウェブサイト(http:// www.ares.or.jp/)で提供している情報サー ビス、「J-REIT View」や「ARES J-REIT Property Database」は、まさにこのよう な活動の一環である。 当然ながら、市場メカニズムの円滑な機 能を阻害するような構造的要因が生じてい ないか、今後J-REIT市場が歴史を重ねる過 程で継続的な検証を行 い、必要に応じて問題 点を解消してゆくこと もまた、重要であろう。 7. 市場の将来展望 新規上場が延期され るケースや中止される ケースが増えており、 図 表 1 4 か ら わ か る 通 ARES SPECIAL 図表14 上場J-REIT銘柄数の推移 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 2001年9 月 2001年12 月 2002年3 月 2002年6 月 2002年9 月 2002年12 月 2003年3 月 2003年6 月 2003年9 月 2003年12 月 2004年3 月 2004年6 月 2004年9 月 2004年12 月 2005年3 月 2005年6 月 2005年9 月 2005年12 月 2006年3 月 2006年6 月 2006年9 月 2006年12 月 2007年3 月 2007年6 月 2007年9 月 2007年12 月 2008年3 月 2008年6 月 上場J-REIT銘柄数 (注)各月末時における上場銘柄数を示している
り、J-REITの新規上場は、大きく減少して いる。 加えて、物件の取得が予定通り行われず、 中止される事例も出ており、各J-REITが資 産拡大を行いにくい状況も生じている。こ れらの状況やJ-REIT時価総額の下落などを 踏まえれば、J-REIT市場の拡大は終焉した ように思えるかもしれない。しかしながら、 J-REIT市場の拡大余地は、まだ極めて大き い。 その最大の理由は、日本ではまだ収益不 動産のごく一部の不動産が証券化されてい るに過ぎない点である。現時点で証券化さ れず、企業等によって保有されている優良 不動産が、将来的にJ-REITによって取得さ れることが見込まれる。 また、GDPベースで見た場合、日本の経 済規模は米国の約3分の1に相当するのに対 し、日本のREIT時価総額は、米国の8分の 1を少し上回る規模に過ぎない。日本の経 済規模を踏まえれば、日本においてREIT 市場が更に拡大したとしても不思議ではな い状況にある。そして、拡大のペースは市 動す る こ と が 通常で あり、J-REIT市場に 十分な 拡大余地が あ る 以上、 現在の よ う に 市場の 拡大が 低迷 したとしても、市場 が 再び 拡大基調へ と 変化す る こ と は 十分 に 想定さ れ る の で あ る 。 現 に 米 国 で は 、 図表15に示すとおり、 資本市場の 低迷か ら REITの新規上場が落ち込んだ時期もある が、2004年には、市況の回復とともに再び 新規上場がブームになった。日本において も、同様のシナリオが想定されなくもない。 J-REIT市場が初めての本格的な価格下落 を経験したことで、市場に混乱が生じたこ とは否めない。それゆえ、短期的な市場動 向を予測しにくい状況であるのは事実であ る。しかしながら、中長期的には、日本に おいても他国と同様、不動産市場がサイク ルを伴って変動し、かつ、REIT等の不動 産証券化商品が、変動する不動産の価値を 踏まえた公正価値から過度に乖離しない範 囲で価格調整がなされてゆくという市場の 姿が想定される。現在の状況は、単に市場 トレンドの変化というだけでなく、このよ うな将来像に向けた大きな転換期として位 置付けられるのではないだろうか。 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 0 10 20 30 40 50 60 IPO資金調達額(百万ドル) IPO銘柄数 百万ドル 件 全米不動産投資信託協会(NAREIT)公表データよりARES作成
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