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伊藤 隆敏氏

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89年のあたりと非常によく似た現象がアメリカの多くの都市で起きていたということです。

2 番目の点は、80 年代の日本とは状況が違いますが、証券化のためにローンを組成したこ とです。つまり、ローンを組成した後に証券化するかどうかを考えるのではなくて、最初か ら証券化することを前提にローンを組んでいったということです。これがどういう意味を持 っているかというと、日本のように、商業銀行が住宅ローンを組んで、それを持ち続ける。

つまり、借りた人が銀行に金利を払って、銀行がその金利を収入として計上するということ ではなく、住宅ローンを組成した後に、その住宅ローンを証券化して、毎月これだけの家賃 収入がありますという商品としてそれを他の人に売り払ってしまうということが「証券化す る」ということであるわけです。一度証券化をして自分の手を離れれば、銀行にとっては家 賃収入があるか否かということはそれほど大きな問題ではない。これは契約によりますが、

完全に証券化して売ってしまった場合には、家賃収入が途絶えるかどうかということは銀行 の問題ではなく、投資家の問題であるということになるわけです。したがって、バブルの最 後の局面では、実際に証券化して売り払ってしまうのだから、多少所得の低い人でも、ある いは信用の低い人でも住宅ローンを借りてもらって、証券化してローンを売り払ってしまえ ばいいではないかというような判断が働いていたのではないかと思われるようなローンが組 成されていたということになります。

したがって、銀行がローンを持ち続ける場合と証券化して売る場合では、銀行の行動に差 が出るのではないかということが、今、改めて問題にされています。この問題が、もし、

「証券化するのであれば審査基準が甘くてもいい」という考えのもとに起きていたのだとす ると、これはいわゆるモラルハザードという現象になってきて、住宅ローンを払い続けられ るという確率をきちんと計算して、リスクに見合った金利をとっているということではなく なっていたという点で、問題があったのではないかということなのです。

しかも、借り手の所得が低いわけですから、当然住宅ローンを払うことが苦しい人たちに 貸しているわけです。ただ、すぐにローンを払えなくなるということでは、それはさすがに 証券化していてもまずいわけで、2 年間は確実にローンの支払いを続けることができるよう にローンを組む。これは日本でもゆとりローンとかステップアップローンとかいう名前で実 際に存在していた。日本の場合には、通常は少しずつ給料が上がっていくと考えられるから、

3 年後には経済状態が楽になる。したがって、最初はローンの金利を低めに設定しておいて、

2 年経ったところで少し金利を高くするというようなローンを組んでいたということがあっ たわけです。これと同じようなことがアメリカで行われていて、2 年間は非常に低い金利で 住宅ローン金利が適用されて、それが3 年目に跳ね上がる。そういったローンの仕組みにし ておく。そうすると、最初の2 年間は住宅ローンの支払いが滞りなく行われていて、その後、

3 年目に金利がぽんと上がったところで払えなくなるというような状況だった。銀行はその

ことを知っていながら、そういったローンを組成して証券化していたのではないかというこ とが、今、非常に大きな問題になっています。つまり、ローンを組成してそれを証券化する のではなく、最初から証券化することを前提にローンを組むということがどのような意味を 持っているのかということが、今、非常に問われているわけです。

さらにそれが問題となるのは、銀行がローンを持ち続けている状況で、ローンが払えなく なる、滞納するといったような状況が起きた場合には、銀行と借り手が相対で、「どうして 払えないのですか」という形で、住宅ローンの借り手と協議をするということが起きるわけ です。その協議をしたうえで、支払い期間を多少長くして、金利を低くするというようなこ とをすれば支払いを続けられるということであれば、銀行はそういった協議に応じる可能性 が高い。いわゆるリスケ、リスケジュールが可能ですが、これが証券化された場合には、そ ういった交渉を誰が行うのかということが必ずしも明らかではない。最初にローンを組成し た銀行は、悪い言葉で言えばその仕事から足を洗っているわけですから、銀行はその協議の 場に立ってくれない。サービサーという、返済期間中のローンを集めて投資家に分配してい る機関があり、本来はサービサーがそういったリスケの交渉をするはずですが、それが実際 にはきちんとした役割を果たしていないということも問題になっています。住宅ローンの支 払いが停止すると、すぐに住宅を差し押さえてしまい、「払うか、差し押さえか」というよ うな二分法になってしまっていったということが、この証券化の問題であったと、今、言わ れているわけです。

この証券化のもう一つの問題は、単に証券にして、どこの物件の住宅ローン収入があると いうわけではなく、幾つかの証券化された商品を束ねた上で、さらにそれを信用力によって 分けて再証券化をしていたことです。

〔図1〕

日本銀行、金融システムレポート、 2008年3月、 5頁 

す。ボストンの物件、ニューヨークの物件、ロサンゼルスの物件、テキサスの物件、色々な 町の物件が含まれているわけですから、まさか全国で地価が下がることはないだろうと考え れば、色々な町の住宅ローンを集めれば、リスクは分散されているはずだ。さらに、いい借 り手もいれば、悪い借り手もいるかもしれないが、色々な債権を集めているわけですから、

全てが払われなくなるようなことはないだろうと考えます。したがって、ある部分は必ず払 われるだろうから、最初の何分の1 かの部分は必ず支払われるようなものを組成する。

つまり、100 本の金融商品、住宅ローン債権のうち、最初の50 %が支払われたものはこの 人に差し上げますというような証券を作る。100 本の証券をさらに輪切りにして、今度は上 から下まで並べかえをして、また新しい証券を作って、シニア(一番最初に支払いを受ける 人たち)、メザニン(2 番目に支払いを受ける人たち)、それからエクイティ(一番最後に残 った部分を支払われる人たち)というような形で、支払いに優劣をつけた証券を作り出す。

そうすると、一番支払いの順序が高いところ、シニアの格付けは非常に高くなります。まさ か100 本全部の住宅ローンの支払いが滞ることはないだろう。最初の50 %は絶対支払います というような部分はAAA の格付けがつくわけです。次のところはAA、A と格付けが下が っていくという証券化したものをさらに証券化するということをしていた。そうすると、図 1 の一番右に銀行、保険、年金、ヘッジファンドと書いてありますが、それを買った投資家 は、本当にその内容を理解して買っていたのか。最初の100 本というのはどこにある100 本 なのか。そのうち優劣がついた最初の50 %というのはどのような意味を持つのか。リスクは 本当に分散されているのかというようなことを投資家はほとんどわかっていなく、単にこれ は「シニアの部分です、AAA です」と言われると、それをそのまま信じて投資をしていた らしいのです。それが急に支払い停止になり、びっくりするということになったのです。

では、最初の50 %は絶対支払われるだろう、AAA と言ったのは誰かというと、それは格 付会社なわけです。それでは、格付会社も本当にそれを理解していたのかということが問題 となり、本当に理解していたかもしれないし、間違った理解をしていたのかもしれない。こ こでももしかすると「モラルハザード」が働いていたかもしれないと言われています。この モラルハザードとは何かというと、格付会社が「AAA」という格付けをすると、よくいい 格付けをしてくれましたといって、その格付会社に手数料が支払われる。いい格付けを出し て手数料が支払われるという構造になっていれば当然いい格付けをするということが考えら れるわけで、格付会社が本当に客観的に確率を計算して、きちんとAAA、AA、Aといった 格付けをしていたのかということも、格付会社が大きく批判されている原因になっています。

次に、この図1 にあるように、中央の下のほうにSIV というものがあります。片仮名でコ ンデュイットと書いてありますが、このSIV、コンデュイットとは何かというと、銀行、投

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