図表1 アメリカの住宅ローンのフォークロージャー率
サブプライムローン 住宅ローン全体
0 2 4 6 8 10
Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1
2007 2006
2005 2004
2003
percent
Source: Mortgage Bankers Association
として、また投資目的として自己の資産を 増やす目的などで広く利用されている。
その中でもやはり地域差があり、首都の ワシントン特別区(Washington, DC)、ハ ワイ州、インディアナ州、オハイオ州、ミ シガン州、ジョージア州などである。
これらの州では他の州と比較しても自宅以 外の利用目的としてサブプライムローンを 利用し購入していた。
サブプライムローン問題を見て行く上 で、その問題が発生するまでの期間(寿命)
を見ると、2007年は平均28ヶ月である。
自宅用として利用されたサブプライムロ ーンは、2004年かそれ以前が全体の20.4%
に留まっており、残りの70.5%は2005年以 降に起こっている。自宅用として利用され たローンでは2006年が最高で34.3%となっ ている。
州ごとのサブプライムローンの期間を見 てみると、州やその地域で不動産価格が急 上昇したところや、不動産取引が活発だっ た場所では不動産ブームへと繋がり、その
よ う な 地域で は サ ブ プライムローンが利 用されていた。
例え ば 、 西部の ア リ ゾ ナ 州で は 地元の 需要よ り も 他か ら の 投資が 多か っ た た め に 、 不動産価格を 引 き 上げ て い た 。 平均 的な こ の 手の ロ ー ン 期間は21ヶ月であり、
2006年の上半期に多く起こっている。
同じ西部のネバダ州やカリフォルニア 州、そして東部の避暑地を有するフロリダ 州でも同様なことが起こっていて、平均的 なローン期間は23〜24ヶ月であった。
一方、この住宅ブームの影響で自宅以外 の目的での購入や価格の高騰などにそれほ ど関係のない場所では、ミシシッピー州が そのトップで38ヶ月、アーカンソー州、ル イジアナ州、サウスカロライナ州、ウエス トバージニア州が36ヶ月となっている。
ノー/ロー・ドックローンの流行
サブプライムローン問題を発展させたも う一つの大きな要因は日本では存在しない タイプのローン、ノー/ロー・ドックロー ン(No/Low-Documentation Loans)と呼 ばれる審査書類を簡素化したローンの流行 であった。
アメリカでは日本のローンと違い、「人」
に対してのローンではなく、「物」つまり物 件に対してのローンである。そのため、住 宅ローンでは物件の査定、ローン申請者の ARES REPORT
図表2 サブプライムローン・フォークロージャー率
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1
2007 2006
2005 2004
2003
3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 1年もの変動金利レート
フォークロージャー率:変動金利サブプライムローン フォークロージャー率:全体の住宅ローン
% 利率
Source: Freddie Mac, Mortgage Bankers Association
年収とクレジットヒストリー(日本で報道 されている「信用度」という言葉で、正確 には債務返済力や支払い能力の高低を現し ている指標)で決められている。
上記のローンでは、現地調査や物件の査 定、年収確認の書類の提出、クレジットレ ポートの提出など融資に必要な書類の不備 や調査無しでローンを出していた経緯が 多々あった。2007年では実に全体のサブプ ライムローンの29.8%がこの手のローンで あった。
これだけでも今のサブプライムローン問 題の発生が容易に想像できるであろう。
この種のローンはやはり物件価格の上昇 の激しかった地域や投資用などで購入され た物件の多い場所に集まっている。
一番率が大きかったのはカリフォルニア 州で、実にサブプライムローンの44.6%、
ニューヨーク州が40.6%で続き、ニュージ ャージー州、ハワイ州、ロードアイランド 州が、それぞれ40.2%、38.2%、36.9%とな っている。
同じように価格上昇や不動産売買の多か った州、フロリダ、ネバダやアリゾナでも それぞれ36.9%、34.7%、33.6%と高い比率 であった。
反対にその変動の少なかった地域では、
投資目的で購入されることが少なかったた めにアイオワ州が最低で15.5%と全国平均 のほぼ半分の数値となっている。同様にワ イオミング州が15.7%、ウエストバージニ ア州15.8%、カンザス州16.2%、インディア ナ州16.8%となっている。
このようにローン期限の浅いノー/ロ
ー・ドックローンがパッケージ化されて、
単独あるいは他の商品と一緒にRMBS,住宅 不動産担保証券(Residential Mortgage-Backed Securities)として売られていたの であった。
自宅用の物件とは違い、延滞率やフォー クロージャーも急増してあの金融機関の損 益計上(Write-Offs)に繋がって行ったの であった。
アイオー・ローン、IOローンの存在
上記のノー/ロー・ドックローンとは違 なるタイプのローンもサブプライムローン 問題の別の要因として挙げられる。
こ れ は ア イ オ ー ・ロ ー ン 、 I O ロ ー ン
(Interest-Only Loans)とも呼ばれていて、
いわゆる利息払いのみのローンのことであ る。
このローンが現れた背景には主に2つの 理由がある。住宅価格は上昇し続けるので ホームオーナーはエクイティー(純資産:
Equity)が増えるということである。
もう1つはそれによってホームオーナーは IOローンから通常のプライムローンなどに 借り換え、つまりリファイナンスするであ ろうということである。
アメリカでは日本のローンや不動産市場 の現状と違い、住宅ローンのリファイナン スは盛んで、ほとんどのローンでは繰り上 げ返済が可能なローンである。日本ではゼ ロ 金利な ど の 政策で 基本的に 金利が 低い が、アメリカでは70年代に平均で13%など と金利の高低差が大きく、近年では97年以 降に住宅ローンのリファイナンスブームは
ARES REPORT
始まっていたのである。
特に金利が1%でも違ってくると、毎月 の支払いでも随分と金額が変わることもあ り、近年の6%台の金利は過去40年以来最 低の数値なのである。
2007年のデータによると、サブプライム ローンで自宅として購入した物件の12.9%
がこの種のローンであった。
その中でも価格の上昇の著しかったアメ リカの西部ではその比率は高く、最も高か ったのはカリフォルニア州で、33.4%がIO サブプライムローンを使っていた。
トップ5を見てみると、続いてネバダ州 29.1%、コロラド州25.5%、ミネソタ州 20.9%、アリゾナ州20.3%となっている。
サブプライムローンによるフォークロー ジャーの比率を見てみても、その率が低い 地域ではIOローンの利用も少なくなってい る。
最も比率の低かったのはテキサス州の 1.7%で、オクラホマ州が2.1%となってお り、ルイジアナ州とミシシッピー州が2.3%
となっている。
IOローンのポピュラーな州では、住宅ロ ーンの残高が大きかったために価格の上昇 がストップして下落傾向に向かうと、エク イティーがゼロまたはマイナスとなってい った。物件価格の上昇を想定してのローン であったがために、それがローンの延滞、
やがてはフォークロージャーに繋がって行 ったのは驚きではない。
2007年の数字では、平均的なサブプライ ムローンで自宅として借り入れた金額は 180,872ドル(約1,971万円)であった。
地域によってはその金額はさらに大きく なりハワイではその平均が328,295ドル(約 3,578万円)、カリフォルニアは325,672ドル
(約3,549万円)、首都のワシントンDCが 267,403ドル(約2,914万円)、そしてニュー ヨークが266,939ドル(約2,909万円)であ った。
これらの州では2001年から2005年までの 間で住宅価格が最も高騰したところで、全 米平均が49.7%であったのに対し、カリフ ォ ル ニ ア と ワ シ ン ト ン D C で は そ れ ぞ れ 102.4%、112.1%と2倍以上に、ハワイでは 77.7%、ニューヨークでも68.9%の上昇を記 録している州である。
変動金利の落とし穴
さらにこのサブプライムローン問題を大 き く し た 要因は A R M 、 つ ま り 変動金利
(Adjustable Rate Mortgages)である。
過去5年を振り返ると、変動金利のサブ プライムローンが多く利用されるようにな ったのが2003年からで、そのピークは2006 年であった。2006年にはサブプライムロー
図表3 10ローンのサブプライムローン比率 percent
CA 33.4
NV 29.1
CO 25.5
MN 20.9
AZ 20.3
US 12.9
IA 2.6
MS 2.3
LA 2.3
OK 2.1
TX 1.7
Sources: First American Core Logic, Loan Performance, Bureau of the Census, Federal Reserve, Bank of New York
ンの実に91%がそれであった。そして、そ の61%が2年ものや3年ものの固定と変動金 利を組み合わせたハイブリッドローンであ った。
この5年間の時期を見てみると、1年もの の変動金利は2003年の3.9%から2007年の第 4四半期には5.6%に上昇している。特に 2/28と呼ばれる変動金利のローンは固定か ら変動に変わった時点で支払額が倍近くや それ以上に跳ね上がったために、それらの 多くが支払いに対処できずにフォークロー ジャーへと進んだのだ。
この2/28ローンとはサブプライムローン の典型的な商品で、最初の2年間は低い固 定金利だが、それを過ぎると残りの28年間 は変動金利になる代物である。多くの消費 者はその違いに気がつかないことや、モー ゲッジブローカーの説明責任不足で理解を していない人が多かった。
2003-2007年の間では、変動金利のサブプ ライムローンのフォークロージャー率は 7.3%から13.4%へと倍近くになっている。
一方、全体のローンに対するフォークロー ジャー率は1.4%から2.0%にと微増に止まっ ている。
貸付された住宅ローンの割合からする と、この変動金利のサブプライムローンは わずか6.1%であるが、フォークロージャー 全体の比率からすると実に40.5%と4割を超 えているのである。
2008年も第3四半期に入って来たが、年 内は消費者が変動金利のサブプライムロー ンから通常型のローンへの借り換えが引き 続き行われていくことであろう。ニューヨ
ーク連銀によると、住宅ローンの借り換え の総額は2008年の上半期だけで555億ドル
(約6兆495億円)にも上り、下半期にはそ れが800億ドル(約8兆7,200億円)、2009年 には720億ドル(約7兆8,480億円)と推定さ れている。
行政指導による変動金利の是正や連邦住 宅局(Federal Housing Administration)
保証のFHAローンの上限額の見直し、そし て2008年2月に法律化された経済活性化/救 済法(Economic Stimulus Bill of 2008)の 施行によって、消費者側のサブプライムロ ーン問題に関連する住宅ローンは一息つく であろう。
住宅価格はフォークロージャーに出され た金融機関所有の物件が市場に出ているこ ともあり下がってはいる。しかし、7月の既 存住宅の販売戸数は上昇傾向にあることか ら戸数が戻って来ていることは、今までサ イドラインで待っていたバイヤーがようや く動き出したことの証拠でもあり、年内の 動向を注目する必要がある。
国際不動産ビジネススペシャリスト。
1956年東京生まれ。80年に渡米。90年から不動産大 手のプルデンシャルで国際部門を担当。94年からは全 米リアルター協会(NAR)の国際部の委員長などを歴任 する傍ら、CIPSとして国際不動産ビジネスを海外で講義。
98年から日本及びアジア・太平洋地区の統括責任者も 兼務。2005年度より日米関係に専念するため日本担当 として日米を奔走。現在は日米のさらなる相互理解と連 携のために官公庁、住宅・不動産団体、外郭団体、大学 等との折衝も行う。日米で会社を経営する傍ら大手企業 や団体の顧問業務も営み、新聞・雑誌等への執筆業務、
セミナー、講演も営んでいる。ビバリーヒルズ在住。
[email protected] みさわ・たかし