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小林 正宏

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高騰の影響が実体経済にも出始めており、

サブプライム問題は新しい局面に入ったと 見る方が妥当であろう。それが顕著に現れ たのが、7月に突然降って沸いた「米住宅 公社経営危機」報道であった。米住宅公社 とは、ファニーメイ・フレディマックとい う、上場企業でありながら連邦政府との特 殊 な 関 係 か ら 「 政 府 支 援 企 業

( Government  Sponsored  Enterprise:

GSE)」と呼ばれる組織で、サブプライム問 題で低迷するアメリカの住宅市場を支える 最後の砦と期待されていた。

2. 2007年のサブプライム問題

2007年のサブプライム問題は、テクニカ ルな要因に基づくものであった。すなわち、

サブプライムローンの多くが証券化され、

その価格が暴落する中で、「誰がいくら持 っているかわからない」という疑心暗鬼が

広がり、金融市場が混乱したものである。

サブプライムローン利用者の多くは変動 金利、とくに2年固定を利用した。これは、

プライムの利用者の7〜8割が全期間固定を 選択するのと全く逆の行動である。結果論 としては、これらのローンの当初固定期間 が終了した時点での市場金利が上昇し、返 済額の急増で延滞する債務者が続出するペ イメントショックという現象が起こった。2 年固定でも、住宅価格が上昇している間は 金融機関が借換に応じてくれたので、そこ で新しい当初固定金利で借りるか、2年間 正常に償還すればプライムに昇格できるの で、プライムの固定に借り換えるかして、

ペイメントショックから逃れることが可能 であった。しかし、1997年から2006年まで の10年間で2倍に高騰した住宅バブルが弾 け、金融機関の審査が厳格化して借換に応 じなくなった。このことで、ペイメントシ ョックが顕在化して、延滞が急増し、しか も住宅価格の下落が損失の拡大に追い討ち

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 変動金利 

2年固定 

(資料)ローンパフォーマンス社 

図2 サブプライム利用者の金利タイプ     変動金利、とくに2年固定が多い 

24.1%

8.7%

5.4%

1.1%

0% 5% 10% 15% 20% 25%

図3 2008年第1四半期の延滞率 

  サブプライムの変動タイプの延滞が突出 

プライム(固定) 

プライム(変動) 

サブプライム(固定) 

サブプライム(変動) 

(資料)MBA

ARES REPORT

をかけた。

これらのサブプライムローンは民間の投 資銀行が証券化し、ファニーメイ等のMBS とは異なり、住宅ローンのデフォルトリス クが投資家に移転する仕組みとなってい た。原債権のデフォルトの急増と、それに 伴う格付けの見直し(引下げ)により、サ ブプライム関連商品の投げ売りが始まり、

「売りが売りを呼ぶ」展開の中、それらを 保有する金融機関の損失が膨らんだ。この ため、インターバンク(銀行間)市場で

「他の金融機関に貸して大丈夫か」という カウンターパーティー(相手方)リスクが 強く意識されるようになり、短期金融市場 での金利が政策誘導目標を大きく上回る状 況が続いた。このため、市場性資金に多く 依存していたイギリスのノーザンロックで 昨年9月に預金取り付け騒ぎが起こった。

また、シティ等 の 大手金融機関の 中 に は 、 傘 下 に SIV(Structured I n v e s t m e n t Vehicle)という組 織を抱え、オフバ ランスでの収益拡 大を 画策し て い た が 、 証券化市場の 混乱の 中で S I V が 資 金 繰 り に 窮 し 、 スポンサー銀行の 支援を仰いだ結果、連結するようなケース も出てきた。そうなると、想定外の資金調 達が必要となり、短期金融市場からの流動 性により一層依存するようになった。サブ プライム関連商品の損失で自己資本を毀損 する一方でバランスシートの意図せざる拡 大が起こり、自己資本基準を達成するため に「貸し渋り」「貸し剥がし」が起こるの ではないかという懸念が広がった。銀行の 信用創造機能が低下することにより、バブ ル崩壊後の日本のような信用収縮が起こる のではないかという懸念である。

このような信用収縮はレバレッジの解消 の一環であり、時価評価により損失が拡大 する中でいかに流動性を確保するかが問題 となる。それが極限に達したのがベアース ターンズの破綻劇である。ベアースターン ズは資金調達の多くを証券担保取引(レポ)

図4 格付別サブプライムABSの価格下落 

0 20 40 60 80 100 120

06/8 06/11 07/2 07/5 07/8 07/11 08/2 08/5 AAA

AA A BBB

BBB-世界同時株安  証券化商品  大量格下げ 

(年/月) 

(資料)Markit

2007年2月の世界同時株安では影響  のなかった高格付けABSが下落 

に依存していた。今年3月に入り、民間の MBS価格が一層下落する中、資金の貸し手 はより高い担保掛目を要求するようにな り、一部のファンドでデフォルトが発生し た。その延長線上で浮かび上がったのがベ アースターンズの資金繰り懸念で、我先に と資金が一気に引き上げられる中、実質的 にわずか2日間で85年の伝統のある証券会 社がその歴史の幕を閉じた。

3. 2008年4月以降の サブプライム問題

ベアースターンズのような大手金融機関 が破綻して、既存の契約を巻き戻すような ことになれば、取引相手の金融機関に累々 と損失が発生して連鎖的金融危機が発生し かねない。そのようなシステミックリスク を未然に防止するため、FRBはベアースタ ーンズをJPモルガンチェース銀行に吸収合 併させた。その際に、ベアースターンズの

抱える不良債権300億ドルを本体から切り 離し、そのためのファンディングとして FRBの実働部隊であるニューヨーク連邦準 備銀行が公定歩合で290億ドルを融資した。

公定歩合による窓口貸出は市場で資金を調 達できない銀行に対して「最後の貸し手

(Lender of Last Resort)」として融資する もので、従来は預金金融機関のみ対象とな っていた。それを証券会社に拡充したのは 大恐慌以来の異例の措置であり、金融不安 を阻止するというFRBの断固たる意思を確 認したことで、市場には安心感が広がった。

シティ、メリルリンチ等の大手金融機関が 依然巨額の 赤字決算を 公表し て い る が 、

「サブプライム関連損失」は峠を越したと 見られている。

しかし、サブプライム問題は金融機関の 損失という初期的症状からすでに感染が拡 大している。サブプライム関連商品への信 頼感喪失により民間の証券化市場から資金 が流出し、その資金の一部が原油、穀物、

50 100 150

2007 2008

(資料)ブルームバーグ 

図5 原油価格の推移(ドル/バレル) 

65 70 75 80 85

2007 2008

図6 ドルの対主要国通貨実効レート 

(資料)FRB

ARES REPORT

貴金属等の商品市場に流入した。また、景 気刺激のためのFRBによる金融緩和と、米 国経済失速懸念から、米ドルが下落したが、

このことがドル表示での商品価格の相対的 割安感を強め、商品価格の高騰に拍車をか けた。

F R B は 昨年9 月か ら 7 回の 利下げ で F F

(フェデラルファンド)金利を5.25%から 2.00%まで3.25%引き下げており、足下の 物価上昇率を勘案すると、実質マイナス金 利となっている。一方で資源価格高騰でイ ンフレ懸念が強まる中、予防的な利上げが 必要という意見もあり、さらなる利下げに よる景気刺激はほとんど不可能な状態にあ る。本稿執筆時点でのアメリカ経済は、イ ンフレと景気後退が同時に進行するスタグ フレーションの入り口に差しかかっている。

「サブプライム問題」は、すでにマクロ経済 の環境の問題へとステージが進化している のである。そのことは、大手銀行の決算に おいて、サブプライム関連「投資」ではな

く、本業である融資部門の貸倒引当金の増 加に顕著に現れている。同じ「損失」でも、

内容が変化してきているのである。

4.米住宅公社問題

このような消費低迷・雇用環境悪化とい ったマクロ経済動向の影響を受けたのがフ ァニーメイ・フレディマックである。

両社は、中低所得者層への持家取得を支 援するため特別法により設置された機関 で、サブプライム問題で民間の証券化市場 が壊滅的な打撃を受ける中、アメリカの住 宅市場を支え続けてきた。両社は基本的に プライムを対象としており、大半は固定金 利のため、両社のポートフォリオにおいて 延滞率はさほど上昇していない。しかし、

住宅価格が下落を続ける中、デフォルト債 権1件あたりの回収額が減少することによ り、損失が拡大し、昨年第2四半期以降、4

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600

2006/1 7 2007/1 7 2008/1 エージェンシー 

民間 

(資料)SIFMA

図7 MBS発行額の推移(億ドル) 

    民間のMBS市場は事実上崩壊している 

ファニーメイ  フレディマック 

(資料)両社記者発表資料より 

図8 両社の四半期決算の推移(億ドル) 

     昨年第2四半期以降、4四半期連続の赤字 

-40  -30  -20  -10  0  10  20  30 

2007Q1  Q2  Q3  Q4  2008Q1  Q2 

四半期連続で赤字を計上している。

そうした中、両社の資本が将来の損失を 吸収するのに十分かという懸念が広がり、

さまざまな風評被害も重なり、両社の株価 が7月に急落した。両社の発行した債券・

MBSの残高は5.2兆ドルに達し、そのうち 1.5兆ドルは中央銀行を含む海外の投資家が 保有している。万一、両社が破綻するよう なことになれば、世界の金融市場に未曾有 の大混乱を生じかねなかった。両社の負債 には連邦政府保証はないが、政府との特殊 な関係から、投資家は「暗黙の政府保証」

があると信じてきた。両社の負債にデフォ ルトが発生すれば、アメリカ経済への信認 は崩壊し、ドルの暴落も誘発しかねない。

そこで、7月13日にポールソン財務長官と バーナンキFRB議長は緊急に声明を発表 し、両社への支援策を打ち出した。

それに呼応して、連邦議会もサブプライ ム債務者とGSEを救済する法律を極めて短 時間で法制化し、7月30日にブッシュ大統 領 が 署 名 し て 成 立 し た 。 こ の 法 律

(HR3221)では、ファニーメイとフレディ マックに対して、財務長官が有する22.5億 ドルの緊急融資枠を来年末まで無制限に拡 張し、かつ、必要であれば両社の株式を取 得する権限を財務長官に付与した。ポール ソン財務長官は、「バズーカ砲は必要だが、

使う予定はない」と何度も繰り返し発言し、

あくまで万一の備えと強調していた。

しかし、住宅市場の調整は長引いており、

いつ住宅価格が底を打つのか、見極めるの は非常に困難である。住宅価格が上昇に転 じない限り、両社の損失は膨らみ続ける。

そうした不安感が拭えない中、両社の株価 は下落を続け、特にフレディマックの増資 はほぼ絶望的な状況となっていた。一方で、

海外の投資家の中には両社の債券の購入を 控える動きも散見されるようになり、両社 が住宅市場を支え続けることが困難にな り、資金繰りが急速に悪化した場合に何ら かの金融パニックが生じてドル暴落という 懸念も浮上していた。このため、9月7日、

両社の優先株取得を柱とする財務省による 支援策が発表され、経営陣は更迭され、両 社は国の管理下に置かれることとなった。

公的資金投入で両社を実質的に国有化した ことにより当面の金融不安は後退したが、

住宅価格の下落という負の連鎖を止めない 限り、クレジットリスクをGSEのバランス シートから連邦政府に移転しただけで、問 題の根本的な解決にはならないという見方 もある。

新築の在庫は多少縮小してきているが、

差押が増える中で中古の在庫は一向に減る 気配がない。今のアメリカは、住宅価格は 下がらないという「神話」が崩壊して、一 種の自信喪失・ショック状態に陥ってい る。通常の景気循環であれば、ある程度価 格が下がったところでバーゲンハンターが 出てきて市況が持ち直すのだが、今回の住 宅市場の 混乱は 大恐慌以来と 言わ れ て お

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