【研究成果】
1 背景
グローバル化や IT 革命などの影響を受けて急激 な変容が進んでいる現代社会において、従来の法理 論や法的規制の不十分さが夙に指摘されている。本 研究は、この問題の原因・背景について、公法学の 立場から、理論的・実践的な分析・解明を行い、実 践的な対応を模索することを目的とするものである。
本研究では、この問題に対して、憲法学、行政法 学、国際法学などさまざまな法領域から検討してい る点に特色がある。また、ドイツ、フランスなどの 大陸法およびアメリカ、カナダなどの英米法との比 較法的考察を通じて検討している。これらの研究の 成果は、以下の研究業績欄が示すとおりである。現 代社会において問題となっているさまざまなテーマ について、問題状況を把握したうえで、その背景・
原因を分析している。
2 研究内容
本研究では、様々な現代的な問題について検討し ている。具体的には以下のとおりである。
公法学における重要な論点である人権と国家権力 との関係につき、現代的文脈に即した分析をしてい る(後掲「研究業績」および等)。人権の制約 原理である公共の福祉についての分析や、単なる
「規制者」ではない国家の側面についての研究であ る。
近年の憲法学における重要な課題の一つである少 数者の権利に関連し、先住民の権利および、ヘイト・
スピーチ、ヘイト・クライムについての分析も行っ た(後掲「研究業績」、、、、等)。
近年の技術発展が表現の自由理論に与える影響に ついて、様々な議論がなされている。技術発展によっ て、「放送」の定義が変化しつつあることに着目し、
放送規制の現代的課題について研究した。また、「ゲー ム」という比較的新しいメディアと表現の自由との 関係についての研究を行った(後掲「研究業績」、
)
人口減少と人口の東京への一極集中が指摘されて いる現代において、都市政策は重要な課題である。
都市政策における法の役割についての研究(後掲
「研究業績」)を行った。
法科大学院の開設などに象徴される司法制度改革 および18歳人口の現象、グローバル化などを背景に、
法学教育の意義や在り方を再検討する必要性が指摘 されている。そこで、法学教育に関する研究(後掲
「研究業績」、、)を行った。
グローバル化に置ける公法理論の再検討という本 研究の目的のためには、国際法の関連からの研究も 重要である(後掲「研究業績」~)。
いわゆる橋本行革以降の内閣機能強化の流れにつ いて様々な議論がなされている。関連して、内閣に 置かれる会議体についての研究を行った(後掲「研 究業績」等)。
3 所見
主として以上のような研究がある。これらの研究 は、近年の社会の急速な変動により、再考の必要を 迫られている公法理論および制度に関する諸問題に ついて、比較法的考察を通じて検討している。具体 的な問題点を明らかにして、その背景・原因につい て分析している。そして、日本の対応についても検
― ―39 研究チーム報告
【社会科学研究部】
グローバル化社会における公法理論の現代的変容
公法理論の現代的変容(課題番号:124003)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:武居一正 研究員:長谷川正国、山下恭弘、玉蟲由樹、折登美紀、守谷賢輔、
桧垣伸次(平成24年6月6日から)、古矢一郎(平成26年4月1日から)、 岡本信一(平成25年4月1日から平成26年3月31日まで)
らを総合的に分析し、グローバル化時代における我 が国独自の公法的対応の在り方について提言を行い たい。
【研究業績】
折登美紀「ドイツにおける法学教育(二・完): 近年の動向を中心に」福岡大学法学論叢59巻4 号(2015年)649660頁
折登美紀「都市の持続的発展に向けた法整備に ついて:都市政策にみる「抑制」と「集約」」 福岡大学法学論叢59巻4号(2015年)615648頁 折登美紀「ドイツにおける法学部教育の動向」
九州法学会会報2014(2014年)3336頁
折登美紀「ドイツにおける法学教育:近年の 動向を中心に」福岡大学法学論叢59巻3号(2014 年)397420頁
折登美紀「行政上の不作為義務履行確保にみる 強制金の運用」福岡大学法学論叢57巻4号(2013 年)471491頁
玉蟲由樹「人権と国家権力:「公共の福祉」の 多元的機能」法律時報86巻5号(2014年)2936頁 玉蟲由樹「「環境権」の権利構造」福岡大学法
学論叢58巻4号(2014年)641669頁
玉蟲由樹『人間の尊厳保障の法理―人間の尊 厳条項の規範的意義と動態』(尚学社,2013年)
長谷川正国「オスカー・シャクターの国際法思 考―「国際義務の理論に向けて」論文の理解に 向けて」福岡大学法学論叢58巻4号(2014年)
727796頁
長谷川正国「1993年パレスチナ暫定自治原則宣 言の締結交渉に関する実証的研究―「発展的周 旋」の観点より考察したオスロ合意の成立過程
―」福岡大学法学論叢58巻1号(2013年)117 153頁
長谷川正国「1993年パレスチナ暫定自治原則宣 言の締結交渉に関する実証的研究―「発展的周 旋」の観点より考察したオスロ合意の成立過程
―」福岡大学法学論叢57巻4号(2013年)593 531頁
―」福岡大学法学論叢57巻3号(2012年)253 292頁
桧垣伸次「合衆国最高裁と表現の自由―アメ リカの「特殊性」 ―」ジュリスコンサルタス 23号(2015年)4356頁
桧垣伸次「ヘイト・クライム規制と思想の自由」
福岡大学法学論叢59巻2号(2014年)297328 頁
桧垣伸次「助成の条件と表現の自由―Agency for International Development v. Alliance for Open Society International, Inc., 133 S. Ct. 2321(2013)を 素材に―」福岡大学法学論叢59巻1号(2014 年)3574頁
桧垣伸次『スタート憲法〈第二版〉』(分担執筆、
吉田仁美編)(成文堂,2014年)(第6章,トピッ ク2)
桧 垣 伸 次「反 人 種 主 義 の ジ レ ン マ― ERIK BLEICH, THE FREEDOM TO BE RACIST ?:
HOW THE UNITED STATES AND EUROPE STRUGGLE TO PRESERVE FREEDOM AND COMBAT RACISM」アメリカ法20131(2013年)
8490頁
桧垣伸次「放送の自由と番組編集準則」吉田仁 美編『人権保障の現在』(ナカニシヤ出版,2013 年)135149頁
桧垣伸次「ヘイト・スピーチ規制論と表現の自 由の原理論」同志社法学64巻7号(2013年)997 1031頁
桧垣伸次「暴力的なビデオゲームの規制と言論 の自由―Brown v. Entertainment Merchants Association, 131 S. Ct. 2729 (2011) ―」比較 法学46巻1号(2012年)204213頁
桧 垣 伸 次「言 論 の 自 由 を 問 い 直 す―IVAN HARE & JAMES WEINSTEIN(eds.), EXTREME SPEECH AND DEMOCRACY, Oxford University Press, pp. lvii+647」アメリカ法20112(2012年)
453458頁
古矢一郎「内閣に置かれる会議体について―そ の一括廃止の観点から―」福岡大学法学論叢59
― ―40
巻3号(2014年)493525頁
守谷賢輔『憲法実感!ゼミナール』(分担執筆、
孝忠延夫・大久保卓治編)(法律文化社、2014 年)(第5章,第7章,第11章)
守谷賢輔「先住民の「土地権(aboriginal title)」 および条約上の権利をめぐる近年のカナダ憲法 判例の一つの動向:先住民と協議し便宜を図る 義務について」関西大学法学論集62巻4・5号
(2013年)16251686頁
― ―41
標記の研究課題について3つのテーマで研究を行 い、以下の成果を得た。
1.囚人のジレンマにおける協力の選択と情報 構造の役割についての実験的研究
個人合理的な行動が社会的に望ましい結果を生み 出さないジレンマ的状況は囚人のジレンマと呼ばれ る。本研究の目的は、囚人のジレンマの情報構造を 無情報型から非協力探知型に変更することによって 人々の協力可能性がどのように発現するかを実験的 に探ることにある。
実験の目的は被験者の選択する戦略を結果(被説 明変数)、ゲームの情報構造を処置(説明変数)と して、平均処置効果を推定することにある。
実験で用いた利得行列は表1に示される。0<G< 400ならば表1は囚人のジレンマの利得行列となり、
0<G 200 ならば非協力探知型において協力均衡が
存在する。実験結果より、実験で試したほとんどの G(非協力の誘因)において、囚人のジレンマの情 報構造を無情報型から非協力探知型に変更すること で協力の可能性が高まることが有意に示された(表 2参照)。また、G=100においては、非協力探知型 情報構造の囚人のジレンマでは協力的戦略の選択比 率は44.3%であり、その他の情報構造の2倍以上に 高まっていることがうかがえる(無情報型/通常の 囚人のジレンマ:21.7%、完全情報型13.3%、表3参 照)。
今回の実験では非協力の誘因Gに注目し、これを 変化させて実験を行った。別の観点として、相手が 協力でなく非協力を採ったときの利得の減少分に注 目してそれを変化させて実験を行うことも興味深い
問題であろう。同様にして、より一般的な利得行列 で実験を行うことも必要になってこよう。
― ―42
社会経済問題解決のための実験研究
社会的ジレンマの実験研究(課題番号:124005)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:渡邉淳一 研究員:阿比留正弘、鍵原理人、近郷 匠、米田 清、西原 宏(平成26年10月31日まで)、 西田圭吾(平成25年11月1日~平成26年3月31日)、
西村道也(平成25年11月1日~平成26年3月31日)
表1 囚人のジレンマ (単位:円)
非協力的行動 協力的行動
100,500+G 500,500
協 力 的 行 動
100+G,100+G 500+G,100
非協力的行動
(注)G:非協力の誘因、0<G<400。
表3 協力的戦略の選択比率(G=100) 比率差
(vs PI) 比率差
(vs NI) 協力的戦略の
選択比率 情報構造
(被験者数)
0.084
(0.089)
0.217 ―
(0.086)
NI (23名)
0.310*
(0.075)
0.226**
(0.112)
0.443
(0.046)
OD(115名)
-0.084 ―
(0.089)
0.133
(0.044)
PI (60名)
(注)カッコ内は標準偏差。*は1%水準で、**は5%水準で有意 を意味する。NIは無情報、ODは非協力探知型、PIは完全 情報を表す。
表2 協力的戦略の選択比率 OD 比率差 Gの値と被験者数 NI
(NI, OD)
0.328*
(0.101)
0.638
(0.063)
0.310
(0.071)
G=30
(42名、58名)
0.232*
(0.070)
0.558
(0.045)
0.326
(0.050)
G=50
(89名、120名)
0.226**
(0.112)
0.443
(0.046)
0.217
(0.086)
G=100
(23名、115名)
0.000
(0.093)
0.194
(0.066)
0.194
(0.066)
G=150
(36名、36名)
0.148**
(0.071)
0.226
(0.057)
0.078
(0.038)
G=200
(51名、53名)
(注)カッコ内は標準偏差。*は1%水準で、**は5%水準で有意 を意味する。NIは無情報、ODは非協力探知型を表す。
2.2部マッチング問題に関する実験の予備的 研究
2部マッチング問題といわれる、個人間や組織間 の社会的に最適な組み合わせを定める問題に関して、
実験研究の予備的研究となりうる理論的な考察を終 えた。
このような問題において、希望をもとに割り当て を定める手続きには、参加者が結果を受け入れられ るように工夫が求められる。そしてその工夫は割り 当てを定める手続きがもつ性質(公理)として数学 的に定式化することができる。また、このような問 題は、それぞれの参加者にとっての結果は自身の行 動だけでなく、他者の行動にも影響される。そのた め、各参加者が自身の本当の好みと乖離した、戦略 的な行動をとった結果を考える必要がある。そして その結果として、手続きがもたらす最終的な割り当 てが、参加者の本当の好みに基づくと、社会的に望 ましくないものになる可能性もある。すなわち、社 会的ジレンマに相当する結果が生じる危険性がある。
こういったポイントを踏まえ、まずは理論的に両 立が不可能な性質の組み合わせを明確にした。特に、
この分野で重要ではあるが、未だ研究蓄積が十分で はない非介入性といわれる性質を中心的に考察した。
非介入性は、戦略的行動をとった結果、自身の結果 が変わらないならば、他者の結果も変えられないこ とを要求する。割り当てを定める手続きがこの性質 を欠いてしまうと、参加者は不安を感じ、社会的ジ レンマに近い状況が起きやすくなることが予想され る。理論分析の結果、非介入性は個人合理性とパ レート最適性の組、および2人満場一致の尊重とは 両立が可能なものの、弱安定性や再帰的満場一致の 尊重とは両立が不可能なことが示された。
3.最小二乗法の拡張に関する研究
xを決定変数、yを希望する帰結、fを因果関係 とすると意思決定の問題は(x)f =yをxについて解 くことに帰着する。しかし、一般には解がないので
(xf )とyの近さを測って、できるだけ希望に近い帰 結をもたらす決定を求める。これを逆問題による意 思決定と呼ぶ。この問題を解く際には通常重み付き 最小二乗法を用いる。ところがこの方法では帰結に 関して非対称の損失が表現できない。そこで、最小
二乗法を拡張して非対称な損失関数に対応できる方 法を開発した。
・論文:T. Kongo, On non-bossy matching rules in two-sided matching problems, International Journal of Economic Theory 2013, Vol.9, pp.303-311
・論文:Nishihara, Kagihara, and Watanabe, An experimental study of the effect of information structure on the possibility of cooperation in the prisoner's dilemma, CAES Working Paper Series, Center for Advanced Economic Study, Fukuoka University, 2015.
・論文:K. Yoneda and Antonio Carlos Moretti, Max- imization of an Asymmetric Utility Function by the Least Squares, Decision Making in Manufacturing and Services. 2014 Vol.8, No. 1-2
・論文:K. Yoneda and Antonio Carlos Moretti, Johan Hendrick Poker, Jr., Stretching the Least Squares to Embed Loss Functions Tables, Decision Making in Manufacturing and Services, Accepted for publi- cation, 2015-03-24.
・報告:囚人のジレンマにおける協力の選択に対 する非協力探知型情報構造の効果についての実 験的研究(日本応用経済学会春季大会/福岡大 学/平成24年6月,日本経済学会春季大会/北 海道大学/平成24年6月)
― ―43
【研究成果】
本研究の目的は非有界作用素環(O*-代数、partial O*-代数)の構造論と表現論についての研究をすす めることである。ヒルベルト空間上の準閉作用素の
つくる *-代数(O*-代数)は純粋に数学的な立場だ
けでなく量子物理への応用の面からも重要であり、
多くの数学者、物理数学者により研究されている。
我々は、非有界作用素環のクロス積とその構造の 研究をすすめ、von Neumann 代数の非有界な一般化 である generalized GW*-代数の分類定理へ応用につ いて研究を行った。また、O*-代数、GW*-代数で得 られた結果をpartial O*-代数、partial GW*-代数へ一 般化について研究をすすめた。
また、その研究の非可換微分幾何への応用のため、
非特異射影的なトーリック多様体の構造、対称横断 デザインの構成と分類について研究した。さらに、
その研究の量子物理への応用として、自己共役でな いハミルトニアンの研究をすすめた。
以下に主な研究成果についてその概要を述べる。
1.クロス積の研究
非有界作用素環に関するクロス積は“domain problem”
等により今まで定義すらできていなかった。井上は 海外共同研究者のFragoulopoulou(アテネ大)、Kuersten
(ライプチヒ大)と共に O*-クロス積、特に、von
Neumann代数の自然な非有界一般化であるGW*-代
数のクロス積(GW*-クロス積)を定義し、その基本 的性質を調べた。
平成24年度に我々は局所コンパクト群Gが可換で actionが spatial であるときO*-クロス積とGW*-ク ロス積の双対定理について研究をすすめた。その研 究のためには GW*-代数のテンソル積の研究をする 必要があり、井上はFragoulopoulou、M. Weight(ケー
プタウン大)とこの研究をすすめ、次の定理を得た。
[定理]Mを閉O*-代数、Gを局所コンパクト群、
αをGのM上へのactionとする。そのときGW*-ク ロス積 R(M,G,α)は、Mの弱 bicommutantと G 上の2乗可積分可能な関数のつくるHilbert空間上の 有界作用素全体によって定義される GW*-テンソル
積のあるfixed point代数となる。さらに、この結果
をもとに GW*-クロス積の双対定理に関して次の定 理を得た。
[定理]Mを閉O*-代数、Gを可換局所コンパクト 群、αをGのM上へのspatial action とする。そのと きGの双対群とαの双対actionによりGW*-クロス 積R(M,G,α)の GW*-クロス積が定義でき、あ る自然な条件のもとにそれはMのbicommutantとG 上の2乗可積分可能な関数のつくるHilbert空間上の 有界作用素全体によって定義されるGW*-テンソル 積と同型である。
2.非特異射影的なトーリック多様体
非特異射影的なトーリック多様体であって、その 第二チャーン指標が正または非負であるようなもの の構造の解明に取り組んだ。結果として、ある種の 端射的収縮写像が存在するときに、そのようなトー リック多様体の分類定理を得た。特に、トーリック・
2ファノ多様体が持ちうる端射線のタイプについて、
かなり制限をかけることが出来たと言える。
3.対称横断デザインの構成と分類
対称横断デザインの構成と分類について研究した。
特に、存在・非存在の知られていない小さな次数を もつ対称横断デザインの構成について議論を進めた。
次数が素数冪でないものの存在は知られていないの で、その存在の可能性についても考察した。
― ―44
非有界作用素環のクロス積の研究
非有界作用素環(課題番号:125002)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:井上 淳 研究員:黒瀬秀樹、秋山獻之、佐藤 拓(平成26年4月3日から)、高倉真由美
構成については、まずその点クラス、ブロックク ラス上に半正則に作用する自己同型群をもつ STDλ
[k;u]について、群環の条件を用いてその必要十分
条件を求め、クラス正則や GL 正則の STDλ[k ; u] を一般化した結果を得て、いくつかの知られていな かった STDλ[k ; u]を構成し、この結果を熊本組合 せ論研究集会で発表した。また,存在・非存在が知 られていない最小の位数12の射影平面との関連につ いても議論を進めている。
4.自己共役でないハミルトニアンの研究 最近、量子力学で自己共役でないハミルトニアン の研究が行われている。ここでは、作用素の固有ベ クトルがリース・ベースを構成するときに、消滅作 用素、生成作用素の一般化である作用素の研究をす すめた。
【研究業績】
1.論文 井上 淳
[1] Induced and reduced unbounded operator algebras.
(with F. Bagarello and C. Trapani)Ann. Mat. Pura Appl., 191(2012), 285-292.
[2] Weak commutation relations of unbounded operators: Nonlinear extensions.(with F. Bagarello and C. Trapani)J. Math. Phys., 53(2012), 13pp.
[3] Tensor products of unbounded operator algebras.
(with M. Fragoulopoulou and M. Weigt)Rockey Mount. J. Math., 44(2014), 895-912.
[4] Tensor products of generalized GB*-algebras.
(with M. Fragoulopoulou and M. Weigt)J. Math.
Anal. Appl., 420(2014), 1787-1802.
[5] Non-selfadjoint resolutions of the identity and associated operators,(with C. Trapani)Complex analysis and operator theory, 8(2014), 1531-1546.
[6] Non-selfadjoint hamiltonians defined by Riesz bases.(with F. Bagarello and C. Trapani)J. Math.
Physics, 55(2014), 12pp.
[7] Crossed products of Algebras of Unbounded Operators.(with K.-D. Kuersten and M. Fragoulo- poulou)Banach J. Math. Anal., 9(2015), 316-358.
佐藤 拓
[1] トーリック・ファノ多様体の第二チャーン指 標,福岡大学微分幾何研究会報告集,vol.21,
p.19,2015.
2.学会発表 秋山獻之
[1] 点クラス上およびブロッククラス上に半正則 に作用する自己同型群をもつ STDλ[k ; u],熊本 組合せ論研究集会―代数的デザイン論とその周 辺―2015年1月9日,熊本大学.
佐藤 拓
[1] トーリック・ファノ多様体の第二チャーン指 標,福岡大学微分幾何研究会,2014年10月31日
―11月3日,福岡大学セミナーハウス.
― ―45
【研究成果】
本研究の目的は、屋外において自律行動が可能な 移動ロボットの小型・高性能化を達成するための基 盤技術の研究・開発であり、次の三項目から成る。
1.電力変換装置の高効率化と電力管理技術の最適 化
2.電磁波を用いた物体認識技術の確立 3.屋外移動ロボットの自律行動戦略の確立 以下、各項目の研究成果について述べる。
1.電力変換装置の高効率化と電力管理技術の 最適化
バッテリーを動力源とする移動ロボットは、モー タ、電子回路、センサー等様々な部品で構成されて おり、各部の駆動電圧も異なる。このため各電圧に 対応した複数の電力変換装置が必要である。また、
モーターのオン・オフ動作や省電力化のために行わ れる電子回路の高速オン・オフ動作は、急峻で大き な負荷変動を伴うため、この環境に適した小型・軽 量・高効率で高速応答可能な電源が求められる。本 研究では、まず、電源モジュールに同期整流方式降 圧型コンバータを採用することで整流損失を低減さ せ電源装置を小型化した。次に、電源モジュールを 並列接続した電源システムを構築し電流分担制御を 行うことでシステム全体の電力容量を確保すると共 に変換効率向上と高速電流応答を図った。さらに、
負荷の稼働状況に応じて稼働モジュール台数を適切 に制御する最適切替制御を用いた電力管理を提案し、
軽負荷から重負荷まであらゆる動作において変換効 率を従来より向上させることが可能であることを理 論および実験で示した。
2.電磁波を用いた物体認識技術の確立 物体の認識については、回折トモグラフィー技術 を中心に研究を進めた。物体に電波を照射して散乱 された波を測定し、そのデータから物体の幾何的特 性(位置・形状・サイズ)と材質を識別するという
「逆散乱」問題を解く。
逆散乱問題は非線形問題であり、 直接解くのは 難しい。一方、電波の伝搬・散乱をシミュレーショ ンする技術は非常に高いレベルまで確立されてい る。同じ入射波において、任意に散乱体の幾何的特
性 と材質の電気特性 を仮想してその散乱波
をシミュレーションし、次式のように測 定した散乱波 との差を算出することができる。
仮想した散乱体の特性 と が真の物体のと一致 した場合、上記の差が最小値になる。そのため元の 逆散乱問題を、「 を最小にする を求める」最 適化問題に帰着することができる。本研究では前回 同研究チームで開発した最適化法を用いて上記最適 化を効率的に行った。
また、移動ロボットの場合、識別の対象となる物 体を電波暗室に持ち込んで散乱波を測定することは できないため、 を求めるためのシミュレー ションを行う領域の特定が難しい。開放的な領域の 中で如何にターゲットを絞って識別するかがもう一 つのカギである。本研究では、測定した散乱波の データを時間分割して利用し、散乱体を段階的に識 別する「逐次推定法」を開発し、この問題を解決し た。数値例で手法の有効性が確認された。
3.屋外移動ロボットの自律行動戦略の確立 ロボットのためのセンサシステムの開発と、ロボッ
― ―46
屋外移動ロボットの高性能化に関する研究
メカトロニクス研究チーム(課題番号:125007)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:小浜輝彦 研究員:孟 志奇、松岡 毅
トのための地図システムの開発とを並行して行った。
まず、屋外用移動ロボットを開発した。幅60[cm]、 長さ75[cm]、高さ85[cm]である。差動輪型駆動を 行い、数センチメートルの段差を乗り越えることが できる。このロボットに、GPS装置、3
軸角度セン サ、ビデオカメラ、および3次元赤外線測域装置を 搭載した。3
次元赤外線測域装置は独自に開発した もので、平面をスキャンできる2次元赤外線測域装 置を傾けた状態で回転させ、周囲の3次元的な物体 配置を得ることができる装置である。併せて、ロ ボットの自律行動のためにこれらのセンサデータを 有効に活用できる地図システムの開発を行った。ロ ボットが行動する環境は3次元環境であるから、環 境地図にも3次元情報を持たせることが望ましいが、
3次元地図の構築にはコストがかかり、現実的では ない。従って、環境地図は2次元で構築することに なるが、階段のように、垂直方向に対して障害物が 存在したりしなかったりする地点が出てくる。また、
歩道のように障害物の存在がはっきりしなかったり、
時間の経過によって容易に変化したりする場所もあ る。従って、障害物の存在について、単に存在する かしないかではなく、存在する可能性の高低を含め て地図を構築する必要があった。ロボットの自律行 動戦略は以下の通りである。ロボットはまず、GPS 情報から自身のおおよその位置を得る。次に3軸角 度センサと3次元赤外線測域装置からのデータと環 境地図のマッチングによって自身の正確な位置を得 る。さらに、カメラからの情報も加えて地図に載っ ていない未知障害物と目印を発見、地図を上書きし て、この地図をもとに適切な走行経路を決定する。
このアルゴリズムをロボットに搭載し、実際に大学 構内で自律走行させて動作を検証し、有効性を確認 した。
【研究業績】
1.T. Kohama, Yuki Sogawa, Satoshi Tsuji, “Optimized On-off Control to Improve Efficiency of Paralleled Converter System”, Proceedings of IEEE 36th International Telecommunications Energy Confer- ence, PO-30(CD-ROM 7pages)(2014.10)
2. Teruhiko Kohama, Yuki Sogawa, Satoshi Tsuji,
“Design of Optimized On-off Control to Improve
Efficiency of Paralleled Converter System”, Proceedings of the 2014 International Power Elec- tronics Conference, pp.2781-2786(2014.5)
3.Teruhiko Kohama, Masahiro Momono, Satoshi Tsuji,
“Estimation of Optimized Switching Points for On- off Module Control in Paralleled Converter System”, Proceedings of the 10th IEEE International Con- ference on Power Electronics and Drive Systems
(PEDS2013), pp.690-694(2013.4)
4.小浜輝彦,出島秀樹,“台数切替制御による並 列電源システムの効率改善”,福岡大学工学集 報,No.89,pp.3135(2012.9)
5.Teruhiko Kohama, Kengo Itou, Hideki Dejima,
“Improvement of Power Conversion Efficiency in Paralleled Converter System by Optimized On-Off Control”, Proceedings of The International Con- ference on Electrical Engineering 2012, pp.1114-1118
(2012.7)
6.古河佑亮,孟 志奇,“層状媒質のマイクロ波 トモグラフィーにおける逐次推定法”,電気関 係学会九州支部連合大会(2012.9)
7.Z. Meng,“Successive Estimation Method for Microwave Tomography”, Progress In Electromag- netics Research Symposium 2013(CD-ROM)
(2013.8)
8.白倉 駿,孟 志奇,“2次元マイクロ波トモ グラフィーにおける逐次推定法”,電気関係学 会九州支部連合大会(2013.9)
9.寺岡章人,松岡 毅,家永貴史,有田大作,荒 屋 亮,木室義彦,“地図コンテンツ業界の方 法論によるロボット用環境情報の構築と利用の 分離”,日本ロボット学会誌,30巻3号,pp.92 99(2012.4)
10.伊東克朗,松岡 毅,“屋外用移動ロボットの ための3次元赤外線測域装置と環境地図”,第 32回計測自動制御学会九州支部学術講演会予稿
集,pp.111112(2013.11)
11.松岡 毅,“屋外用移動ロボットのための地図 システム”,第33回計測自動制御学会九州支部 学術講演会予稿集,pp.6162(2014.12)
― ―47
1.はじめに
近年、Si半導体集積回路の製造プロセスの微細化 が進み、電子デバイスの大きさが数十nmと微小に なってきた。一方で、製造プロセスの微細化に伴う 物理的な制約や、複雑化した電子デバイス構造のた めに、今後もさらに半導体製造プロセスの微細化を 継続して推し進めることが非常に困難な状況になり つつある。そこで、これまでのシリコンテクノロ ジーに変わる、全く別の新しい原理で動作する電子 デバイスの研究が盛んに行われる様になってきた。
その様な研究の一つに、特異な電気伝導特性を有す る有機分子を電子デバイスとして利用する分子エレ クトロニクスがある。
本研究では、Si半導体集積回路と分子エレクトロ ニクスを融合したハイブリッド電子デバイスの実現 に向けた基礎研究として、Si(001)表面上に有機半 導体分子を吸着させて、その吸着構造を走査トンネ ル顕微鏡(STM)と第一原理計算による STM 像シ ミュレーションにより調べた。
2.多環芳香族炭化水素
これまでに、図1に示したCoronene 分子(C24H12)[1,2]、 Dibenzo-coronene(DBC)分子(C32H16)[3,4]、Pentacene 分子(C22H14)[5]の3つの多環芳香族炭化水素の有機 半導体を用いた実験を行った。この内DBC分子は、
ちょうどCoronene分子とPentacene分子を組み合わ せた様な分子構造をしている。超高真空中にて基板 の Si(001)試料を1250℃でフラッシュして 2×1 清 浄表面を作製した後に室温に保持し、それぞれの分 子を石英のルツボから基板表面に蒸着した。その後、
超高真空中のままで STM 法によって化学吸着構造 をその場観察した。
図2にSi(001)-2×1表面に化学吸着したCoronene 分子の STM 像と第一原理計算から導かれた化学吸 着構造を示す。Coronene分子の化学吸着構造は、欠 陥の関与した吸着構造を除けば、この一種類しかな
い。Coronene 分子は図2’ に黒色で示された4つ
炭素原子が C=C二重結合のπ結合を切って、下地 のSi原子とSiC結合を形成する環化付加反応によっ てSi表面に化学吸着している。その結果、黒色の炭 素原子が sp2 混成軌道から sp3 混成軌道に変化して 分子形状が平面から歪み、分子の芳香族性は弱く なっていると考えられる。
― ―48
Si 表面上の有機半導体分子の吸着構造に関する研究
ナノエレクトロニクス研究チーム(課題番号:125008)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:鈴木孝将 研究員:友景 肇、柳生数馬
図2 Si表面に化学吸着したCoronene 分子のSTM像と化学 吸着構造。サンプルバイアス(Vs)=-1.6[V]、トンネル電 流(I)=0.07[nA]。
図1 Coronene 分子、 Dibenzo-coronene(DBC)分子、
Pentacene 分子の構造式
図3にSi(001)-2×1表面に化学吸着したDBC分 子のSTM像と化学吸着構造を示す。DBC分子は図 3に示した Type 1、Type 2、Type 3 の3つの異なる 化学吸着構造をとる。Type 1 と Type 2 では黒色で示 された6つの炭素原子が、Type 3 では4つの炭素原 子が、下地のSi原子と結合して化学吸着している。
DBC分子もCoronene分子と同様に、分子形状は平面
から歪んで、芳香族性は弱くなっていると考えられる。
図4にSi(001)-2×1表面に化学吸着したPentacene 分子のSTM像と化学吸着構造を示す。Pentacene分 子は主として図4に示した A-1、In-Between(IB)、 B-1、B-2 の4つの異なる化学吸着構造をとる。A-1、
IB、B-1では黒色で示された8つの炭素原子が、B- 1では6つの炭素原子が、下地のSi原子と結合して 化学吸着している。Pentacene分子とDBC分子では 長手方向の分子の長さが同じにも関わらず、Pentacene 分子の方がSiC結合の数が多い。従って、Pentacene 分子の方が DBC 分子よりも分子形状が大きく平面 から歪んで、分子の芳香族性もより弱くなっている と考えられる。
3.PTCDA 分子
前節で述べた多環芳香族炭化水素のこれまでの実 験結果を受けて、図5に示した有機半導体である 3,4,9,10-perylenetetracarboxylic dianhydride(PTCDA) 分子を用いた実験を次に行った[11]。PTCDA 分子で は、図5に黒で示した様に、酸素原子が4隅にある ために、多環芳香族炭化水素の環化付加反応は異 なった化学吸着反応が起こることが期待される。
― ―49
図3 3つの異なる化学吸着構造でSi表面に吸着したDBC分 子のSTM像と化学吸着構造。Vs=-1.6[V]、I=0.07[nA]。
図4 4つの異なる化学吸着構造でSi表面に吸着した Pentacene 分子のSTM像と化学吸着構造。Vs=-1.6[V]、I=0.07[nA]。
図5 PTCDA 分子の構造式。
る化学吸着構造をとる。全ての吸着構造で4つの酸 素原子がSiと結合していたが、A2 構造では1つ、
その他の構造では4つの炭素原子が下地のSi原子と 結合していた。よって、PTCDA 分子の吸着では、
環化付加反応によるSiC結合よりも、SiO結合の方 が吸着構造に大きな影響を及ぼすことが分かった。
4.まとめ
多環芳香族のCoronene分子、DBC分子、Pentacene 分子とPTCDA 分子の4つの有機半導体分子をSi(001) 2×1清浄表面に吸着させ、その化学吸着構造をSTM 法と第一原理計算による STM 像シミュレーション により調べた。その結果、これらの分子は複数の化 学吸着構造を持つことが分かった。また、Si表面上 の分子吸着では、環化付加反応による SiC 結合より も、SiO 結合の方が吸着構造に大きな影響を及ぼす ことが分かった。
[2] T. Suzuki, J. Levy and J. T. Yates Jr., Nano Lett.
6(2006)138.
[3] T. Suzuki, D. C. Sorescu, K. D. Jordan, J. T. Yates, Jr., J. Chem. Phys. 124(2006)224708.
[4] T. Suzuki, e-J. Surf. Sci. Nanotech. 4(2006)588.
[5] T. Suzuki, D. C. Sorescu and J. T. Yates, Jr., Surf.
Sci.600,(2006), 5092.
[6] S. Nogata, K. Yagyu, T. Suzuki, H. Tomokage, Proceedings of the 15h Joint Symposium on elec- tronic materials(Fukuoka 2012)p.159.
[7] B. Geisler, P. Kratzer, T. Suzuki, T. Lutz, G.
Costantini, K. Kern, Phys. Rev. B 86(2012)115428.
[8] T. Suzuki, T. Lutz, B. Geisler, P. Kratzer, K. Kern, G. Costantini, Surf. Sci. 617(2013)106.
[9] K. Yagyu, T. Tajiri, A. Kohno, K. Takahashi, H.
Tochihara, H. Tomokage, T. Suzuki, Appl. Phys.
Lett.104(2014)053115.
[10] H. Tochihara, T. Shirasawa, T. Suzuki, T. Miya- machi, T. Kajiwara, K. Yagyu, S. Yoshizawa, T.
Takahashi, S. Tanaka, F. Komori, Appl. Phys. Lett.
104(2014)051601.
[11] T. Suzuki, Y. Yoshimoto, K. Yagyu, H. Tochihara, J. Chem. Phys. 142(2015)101904.
― ―50
図6 4つの異なる化学吸着構造でSi表面に吸着した PTCDA 分子のSTM像と化学吸着構造。Vs=-1.6[V]、I=0.1[nA]。
[はじめに]
遺伝子検査の医療への応用から遺伝子レベルで確 定診断された遺伝病の患者が増加するに伴い、遺伝 子解析のさらなる医療への応用が求められている。
母体血中胎児 DNA を利用した出生前診断法は、従 来の絨毛採取や羊水穿刺による胎児由来組織を基に した方法とは異なり、非侵襲的で安全でありかつよ り早期に胎児の遺伝的情報を得ることが可能である。
我が国においては、2013年4月より非侵襲的出生前 遺伝学的検査(NIPT)が、臨床研究として承認され、
全国の NIPT コンソーシアム参加施設において実施 が開始された。初年度にこの検査を受けた妊婦は 7,740人にのぼり、周産期胎児診断の方法として急速 に広まった状態である。福岡大学病院においても2013 年6月から遺伝カウンセリングを含めた NIPT 臨床 研究を開始している。現在までの実施状況を報告す る。また、母体血中胎児 DNA の遺伝子診断法の検 討および検出方法についての考察を述べる。
[福岡大学病院におけるNIPTを目的とした遺伝 医療の実施状況]
概要:当院におけるNIPTは遺伝医療室において、
遺伝カウンセリング実施体制の下、2013年6月より 開始された。遺伝専門医2名が NIPT 遺伝カウンセ リングに対応した。対象は妊娠1015週の単胎妊娠、
20歳以上で臨床研究への参加同意が得られ、かつ以 下の三つのいずれかを満たす妊婦である。1)高齢 出産(分娩予定日に35歳以上)2)染色体異常児
(トリソミー21、18、13)の妊娠・分娩の既往があ る。3)現行妊娠(超音波検査、母体血清マーカー)
でトリソミー21、18、13が疑われる。母体血漿中DNA の解析は Sequenom 社(2015年1月より GeneTech 社)にて実施した。
実施状況:2013年6月から2015年1月までの実施 症例は228例、2013年度は95例、2014年度は133例で あった。妊婦の平均年齢は38.1±2.52歳(29歳から45 歳)。妊娠週数13.7週3日。受診理由は高齢妊娠が223 例、胎児後頸部浮腫が3例、染色体異常2例(過去 の妊娠1例、保因者1例)であった。母体血漿DNA 解析の結果は、トリソミー21、18、13について全例 陰性であった。NIPT 遺伝カウンセリング実施後の アンケートの結果では、遺伝カウンセリングの内容 や時間については70%から90%の妊婦が満足してい た。また、次回の妊娠においても出生前検査として NIPTを選択すると答えた妊婦は95%であった。
[母体血胎児DNA の遺伝子診断法研究成果と考 察]
1.性別診断:妊娠母体血漿中にY染色体領域の遺 伝子を検出する場合を男児、検出しない場合を 女児とする。Y染色体領域の遺伝子としては、
シングルコピー遺伝子の SRYや DYS14 が利用 される。X染色体特異的遺伝子FMR1および母
体血胎児DNA のY染色体特異的SRYの検出系
を検討した。FMR1およびSRYに特異的なプラ イマーを作成し PCR条件を検討したところ、最 低検出感度はFMR1が1.5pg DNA、SRYが15pg
DNA であった。疑似母体血漿由来DNA として、
母体血漿5mL から回収される胎児由来 DNA を 約1.5ng(5%)とし男性DNA を女性 DNA の
― ―51 研究チーム報告
【生命科学研究部】
非侵襲的出生前遺伝子検査( Non-Invasive Prenatal genetic Testing : NIPT ) の実施状況と母体血胎児遺伝子診断方法の検討と考察
出生前母体血中胎児遺伝子診断(課題番号:126002)
研究期間:平成24年4月1日~平成27年3月31日
研究代表者:大久保久美子 研究員:吉里俊幸(平成24年4月1日~平成26年3月31日)、 小濱大嗣(平成26年4月1日~平成27年3月31日)