(2) 平尾 ・寺 島 ・朱 ・白瀬 ・安井:高 速切削時 における切削熱の挙動 に関する研究. 次 に(1‑R1)q1な. る熱 源 に よる被 削材 の 温度 上 昇か らせ ん 断面 の平 均. 温 度 を 求め,こ の2つ の 方 法 で 求 めた せ ん 断 面温 度 上 昇 が等 しい と い う条件 か らR1を 求 め る. 」.CJeagerの. 解 析 よ り単 位 時 間 、 単 位 面 積 当 た りの 発 熱 量 が. (5) よ って,切 (W),工. り屑 へ 流入 す る熱 量Qc(W),被. 削材 へ 流入 す る熱 量9w. 具 へ流 入 す る熱 量 ②(W)は 次 式 よ り得 られ る.. (1‑R1)g、 な る矩 形 熱 源 が せ ん 断 方 向 に 脇 な る速 度 で 移 動 す る場 合, (6) せ ん断 面 の 平均 温 度 θ5は次 の よ うに表 され る. そ れ ぞ れ をgで. (2). 割 る と,切. Rc(%),Rw(%),R∫(%)は,次. 屑,被. 削 材,工. 具 へ の切 削 熱 の 流入 割 合. の よ う に な る.. ただ しん黒 は温 度 肌 にお け る被 削材 の熱 伝 導 率,多 は切 削 の せ ん断 ひ ずみ で あ る.よ って,式(1),(2)を 等 しい とお いてRlを 求 め る こ とがで き る.. 3.. (B1す くい 面 の摩 擦 に よ る上 昇 温 度. 3.1. △θf. す くい面 で は 単 位 時 間,単 位 面積 当た りに発 生 す る熱 量 をg2と し, 品g2が 切 り屑 に 入 り,残 りの(1‑R2)g2は. 工 具 に入 る もの と して考 え. る.. 実. 験. 方. 法. 実験 の 原理. 図2の よ うに切 込み の 変 化 と逃 げ 面接 触 長 さ を制 限 させ るチ ップ を 用 い て 切 削す る.切 込 み を変 化 させ る こ とに よ り,せ ん 断 面,す くい 面 接 触 面 にお け る単位 時 間 、単位 面 積 あ た りの 発 熱 量 を,逃 げ 面接 触 長 さを 制限 させ るチ ップ を用 い る こ とに よ り逃 げ面 接 触 面 にお け る単 位 時 間 、単位 面積 あ た りの発 熱 量 を求 め る こ とが で き る.各 熱源 にお. 切屑 の工 具 に 接 す る 面 の摩 擦 に よ る平 均 上 昇 温度 △の は. け る発 熱 量 を求 め る こ とが で きれ ば,2章. で述 べ た切 削 理 論 よ り,切. 屑,工 具,被 削 材 へ の流 入 割 合 を導 く こ とがで き る. なお ここ で,切 込 み変 化 で使 用す るチ ップ は逃 げ 面の 加 工 が され て いな い チ ップ(以 降 ニ ュ ーチ ップ と呼ぶ)で あ り,逃 げ 面 を加 工 され ただ しβは切 り屑 と工 具 の接 触 長 さ,島,」陥 は 最 終 温度 にお け る切 り. たチ ップ に よ る実 験 は送 り速度 を一 定 とす る.. 屑 の熱 伝 導 率お よび 温度 伝 達 率 切 り屑 の 工具 に接 す る面 の平均 温 度 θ'はせ ん断 面 の平 均 温度 上昇 θs と摩 擦 に よ る平 均 温 度 上昇 △θfを加 えた もの で あ る か ら, (3) ま た 工具 側 か らみ たす くい面 の 平 均 温度 θご は熱 伝 導 論 よ り, (4) た だ し 島 は温 度 θ'にお け る工 具 の熱 伝 導 率,Aは. 面積 係 数 とい う.. そ して,式(3)と 式(4)を等 しい とお く とR2は 次 式 の とお りで あ る.. (a) Depth of cut Cn. (C1逃 げ 面 の摩 擦 に よる 上 昇温 度. θw. 逃 げ面 に お い て は,単 位 時 間,単 位 面積 当た りに 発 生す る熱 量 をq3 と し,R、g3が 工 具 に入 り,残 りの(1‑R3)gは. 被 削材 に入 る もの と して. 考 え る.被 削材 の工 具 に接 す る面 の 摩 擦 に よる 上 昇 温度 θwにつ いて は,原 理 的 に(B)に 述 べ た切 削温 度 の 計 算 方 法 と全 く同様 で あ るの で 重 複 を避 け る. (D) 各部 へ の流 入 割 合 につ いて こ こでせ ん 断 面 面積,す くい 面,逃 げ 面 に お け る接 触 面積 をA1,A2, A,と し,Cは 実 験 よ り得 られ る単 位 時 間 当た りの発 熱 量 で 次式 の よ う に示 され る.. 1068. 精密 工学 会誌 Vol. 64,. (b) Flank contact length Fig2. No.. 7,. 1998. Variation. in contact. length.
(3) 平尾 ・寺 島 ・朱 ・自瀬 ・安井:高 速切 削時における切削熱の挙動 に関す る研究. Fig.4. Relation between each length and shear angle (Cutting. speed : 214m/min). 4。 デ ー タ 整 理 に 必 要 な事 項 Fig.3. 32. Experimental. apparatus. 4.1 熱 量 計 の熱 容 量 につ い て 熱 量計 の うち,水 と接 す る実 験器 具 に つ い ては,そ の接 し方 に よ っ. 実験装置. 図3に 本 実 験 で 使 用 した 実 験 装 置 の概 略 を示 す.断 熱 材 を巻 い た熱 量 計 に1rの 水 を 入 れ,切. 削 中 に 発 生 した 切 削 熱 を 水 に吸 収 させ る.. そ して,そ の 聞 の上 昇 温度 か ら総 発 熱 量 を求 め る 。ま た,温 度 セ ンサ を切 屑 か ら守 るた め に,防 護 ネ ッ トを取 り付 けた.被 削材 に はS45C, Aluminum(5052)の2種 30㎜. 類 を 用 い,そ れ ぞ れ 外 径32,34mm,内. の パ イ プ状(切 削 幅 は1㎜,2㎜. る.使 用 した 工 作機 械 はS45Cの. 実 験 で は 汎 用数 値 制 御 ボー ル 盤(砥 々. 産 業 製 νRND‑1003形),Aluminumを (松浦 機 械製 作所 製:FX‑1)で. 径. で あ る)}こ 仕 上 げ た もので あ. て水 に 相 当す る熱 容 量(水当量)と して考 慮 した.実験 器 具 の水 当量 を表 1に 示 す.番 号2‑4は 浸 水 部 分 の水 当量,番 号6は 水没 部 分 の 水 当量,物 性値 は 室 温(20℃)の値 で あ る. これ はS45Cを 用 いた 実 験 にお け る熱 容 量 で あ るが,Aluminumに. つ. い て も同様 に考 慮 して い る, 熱 容 量 が 班000オ ー ダ の もの を 無視 す る と,熱 薫 計 の 熱 容 量〃 は次 の値 を持っ. M=水. 用 い た 実 験 で は マシ ニ ングセ ン タ. の熱 容 量+熱. 量 計 の水 当量. あ る.こ れ をエ ン ドミル(東 芝 タ ンガ ロ. イ 製=TCB‑390)と ス ロー ア ウ ェイ チ ップ(同 社 製:超 硬,す くい 角5 ° ,逃 げ角6°)1枚 刃 で 切 削 を行 う.水 の 上昇 温度 は,位 置 と深 さ. 4.2. を変 え た4本 の 温 度 セ ン サ で水 温 を測 定 し,そ の 平 均 上 昇温 度 を用 い. 切 削 中の 上 昇 温度Δ7(℃),切 削時 間 τ(s)および熱 量 計 の 熱容 量M(J/. る.温 度 セ ンサ は,白 金 測 温抵 抗 体 で あ り,熱 電 対 な どに比 較 して 精. 切 削理 論 との 比 較 心. kg・K)か ら,こ の 閥 の総 発 熱 量 ρ(W)は,. 度 が 高 く,1!1000℃ の分 解 能 を持 っ.温 度 校 正 は4本 の 白金 測 温 抵 抗 体 (7). をそれ ぞれ3種 類 の 沸 点 の 異 な る 液 体(蒸 留水(100℃1,ア セ トン(56.3 ℃),エ タ ノール(78.3℃))と. 蒸 留 水 の 融 点(0℃)の 合 計4点 で 行 っ た.. ま た,切 削 と同 時 に切 削 抵抗 と して ス ラ ス ト,ト ル ク をKisder動 力 計(typc9272)で 測 定 す る こ とに よ り切 削 理 論 か らも発 熱 量 を算 出 し, 実 際の 温 度 上昇 との比 較 を 行 っ た.. と表 され る. ま た,籾 削理 論 か らせ ん断 面 お よび す くい面 で 発 生す る熱 量q1,q2 を計 算 す る場 合,主 分 力 はM2/rに,送 る。 こ こで,〃2は. り分力 はス ラス トF2に 相 当す. トル ク(N・m),rは 被 削材 の 半 径(m)で あ る.. Table I Water equivarent of the calorimeter (S45C). 精密工学会誌 Vol. 64, No. 7, 1998. 1069.
(4) 平尾 ・寺島 ・朱 ・白瀬 ・安井:高 速切 削時における切削熱 の挙 動に関する研究. Fig.5. Temperature. Fig.6. of 4 sensors. Relation between torque and cutting speed (S45C). 5,3 切 削抵 抗 5.. 実. 験. 結. 果. 図6に 切 削 速度 に対 す る トル クの 変化 を,ニ ュ ーチ ップ お よび逃 げ 面 を加 工 した チ ップ ご とに表 した もの で る.籾 削 速度 の 上昇 と と もに. 5.1 切 削機 構. トル ク の値 が減 少 して い る.同様 に ス ラ ス トにつ い て も傾 向 を示 した.. 各接 触 面 を変 化 させ るに 当 た って 切 削機 構 が 同一 でな けれ ば比 較 で. また,切 込 み の 変化 にお い て も これ と同様 の傾 向 であ っ た.. き ない.す な わ ち,せ ん 断 角 が 一 定で な けれ ば な らない.切 削 後 の切. 5.4. 屑 厚 さよ りせ ん 断 角 を算 出 した 結 果 を 図4に 示 す.. 図7は 各 接 触面,す なわ ちせ ん断 面,す くい 面 にお け る 単位 時 間 、単. 逃 げ 面接 触 長 さ を変化 させ た実 験 に お い て は25.5。 で一 定 で あ り, また 切 込み の 変 化 で は最 大で2.の. 違 い と な り,ほ ぼ 同一 の切 削機 構. を持 つ とい え る.よ っ て,切 込 み お よび逃 げ 面接 触 長 さを 変化 させ る こ とで発 熱 量 を求 め る こ とが で き る. 5.2. 位 面 積 にお け る発熱 量q1,q2の グ ラ フで あ る.な お,逃 げ 面 にお ける 発熱 量93に つ い て は,こ こで は省 略 した. 理 論 値 と実験 値 では ほ ぼ 同 じ傾 向 を示 して い る.ま た,中 ・ 低速域 にお い て せ ん断 面,す くい面 の発 熱 量 は せ ん断 面 の 方 が切 削 速度 に対. 温度 上昇 測 定. 図5は,切. 各熱 源 に お ける 発 熱 量. す る増 分 が 大 きか った.し か し,高 速 切 削 域 にお い て それ らの傾 向は. 削 速度214m/min,送. り速度0。12mm1τevに お け るニ ュー. み られ ず,逆 にす くい 面 の方 が 切 削 速度 に 対 して 増 分 が大 きい よ うで. チ ップ を用 い,被 削 材 と して アル ミニ ウム を切 削 した際 の 温度 上 昇 を. あ る.. 測 定 した 結果 で あ る.切 削 終 了後 は,主 軸 に よ る撹 搾 が な くな る ため. 5,5. に ば らつ きがみ られ るが,温 度 の上 昇 す る とき の傾 きは,4本. のセ ン. サ と も,ほ ぼ 一 致 して い る.. 各 部 へ の流 入 熱 量. 図8は 各 部へ 流 入 す る熱 量 を 示 した もの で あ る.前 節 で得 られ た各 熱源 にお ける発 熱 量 を2章 で述 べ た熱 的 解 析 を用 い て発 熱 量 の分 配 を. この条 件 に お い て,4本 の セ ンサ の上 昇 温度 を平 均 す る と1435℃ に. 算 出 し,式(6)よ. り切 屑 ・工 具 ・被 削材 へ 流 入 す る熱 量 を求 め た.. な り,こ れ を切 削上 昇温 度 とす る.ま た,切 削 中は,工 具 の 回転 と送. ほ ば理 論 値 と実験 値 が 一致 して い る が,切 削 速度 の 増加 とと もに理. りに よ る撹 搾 に よっ て水 温 は 均 一 に な るが,わ ず か なが ら水 温 は上 昇. 論 値 と実験 値 が 逆転 して い る部 分 もみ られ る.こ れ は,切 削理 論 で は. す る(0.073℃).こ の こ と を考慮 した 結 果,切 削 の み にお け る上 昇温 度. 逃 げ 面 の発 熱 をな い もの と してい るが,実 際 は 高速 にな るにつ れ,逃. は切 削 上 昇温 度 と撹搾 上昇 温 度 との 差 とな り,この 条件 では1.362℃ で. げ面 で の接 触 に よる被 削 材表 面 との 摩擦 が大 き くな り,そ こ での発 生. あ った.よ って この 条件 にお ける 総発 熱 量 は66L5Wと. 熱 量 も大 き くな る た めだ と考 え られ る.. な る.. (b) Aluminum. (a) S45C Fig.7. 1070. 精 密工 学会 誌 Vol. 64,. No.. 7, 1998. Generated. heat on shear. and crater.
(5) 平尾 ・寺 島 ・朱 ・白瀬 ・安 井:高 速切削時 における切削熱の挙動に関する研究. (a) S45C. (b) Alminium Fig.8. Generating. heat of inflow. to each part. Fig.9. Ratio of heat flow. (a) S45C. (b) Aluminium. しか し,熱 量 の流 入 す る傾 向 と して は,従 来 言 われ て い る よ うに,. 謝. 辞. 切 屑 へ の流 入 が ほ とん どで あっ た.ま た,被 削 材 に残 存 す る熱 量の 増 分 は わず かで あ り,工 具 に は,切 削 速度 の 増加 に か かわ らず ほ ぼ一 定 の 値 を示 した.. 本研 究 を進 め る に あた り,実 験 用 チ ップ の製 作 を して いた だ い た東 芝 タ ンガ ロイ(株)の 関係 各 位,な. 5.6 流 入 熱 量割 合. らび に快 適 な実 験 環境 を提 供 を して. 頂 い た石 川 県 工業 試 験場 の広 崎 憲一 氏 に 深 く謝 意 を表 します.. 図9に 切 削熱 の流 入 割 合 を示 す.各 部へ の流 入割 合 は,被 削材 と工. ま た,実 験 に協 力 い た だ いた 金 沢大 学4年 の 三尾 俊 介氏,な らびに,. 具 の熱 伝 導 率,切 削条 件 な どに よって 変 わ るが,そ れ ぞれ の被 削 材 に. 多大 に有 益 な ご助 言 を頂 い た金 沢 大 学 の 浅 野久 志 技 官,儘. 対 す る理 論 値 と実験 値 は差 が あ ま りみ られ ず,よ く一 致 して い る.こ. (現 日立建 機(株))に 深 く感 謝 の 意 を表 しま す.. の ことか ら,こ の実 験 装 置 を使 用 しての 切 削熱 流 入 割 合 を求 め る こ と. 田知 憲 氏. なお 本 研 究 の 一 部 は,(財)ス ズ キ財 団 よ り助 成 を受 け て行 わ れ た こ とを付 記 し,感 謝 の意 を表 します.. は 妥 当で あ る と言 え る. 流入 割 合 の傾 向 と して は,従 来 言 わ れ て い る とお り,切 削 速 度 の 上 昇 とと もに切 屑 へ の 熱 量流 入 割 合 は 増 加 し,反 対 に 被 削材 ・工 具 へ の. 参. 考. 文. 献. 流入 割 合 は減 少 して い る. 6.. ま. と. め. (1)切 込 み や逃 げ 面接 触 長 さ を変 化 させ る こ とに よ り,切 屑,被 削 材,工 具 へ の 切 削熱 の 流 入 割 合 を求 め る こ とがで きた 。 (2)切 削熱 の切 屑 へ の流 入 割 合 は,切 削 速 度 の 上 昇 と とも に増 加 し,被 削 材,工 具 へ は 減 少 して い く. (3)高 速切 削 に な る につ れ て,逃 げ 面 で の 摩擦 に よる発 熱 は無 視 で きな くな る.. 1)A.O.Schmidt & J.R Roubik:Distribution of Heat Generated in Drilling, Trans. ASME, 71(1949) 2)A.O.Schmidt et al,A Thermal-Balance Method and Mechanical Investigation for Evaluating Machinability, Trans ASME, 67, 4(1945) 225. 3)E.G.Loewen & M.0 Shaw:On the Analysis of Cutting Tool Temperature,Trans.ASME(1954-2) 4)A.O.Schmidt,W.W.Gilbertand O.W.Boston A Thermal-BalanceMethod and Mechanical Investigation Machinability, Trans. ASME, 67,(1945). 精密工学会誌 Vol. 64, No. 7, 1998. 1071.
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