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都市機能高度化に伴う複合建築のエネルギー  消費量に関する調査研究

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都市機能高度化に伴う複合建築のエネルギー  消費量に関する調査研究

 

Energy Consumption of Multi-Purpose Architecture With Sophisticating Urban Functions

2006 年 2 月 

韓  珺 巧 

Junqiao, HAN

(2)
(3)

早稲田大学  博士論文    

 

都市機能高度化に伴う複合建築のエネルギー  消費量に関する調査研究

 

Energy Consumption of Multi-Purpose Architecture With Sophisticating Urban Functions

2006 年 2 月

早稲田大学大学院理工学研究科 建築学専攻 都市環境研究

韓  珺  巧

Junqiao, HAN

(4)

はじめに

環境の世紀と言われる21世紀は地球の温暖化、ヒートアイランド化、資源の枯渇、

森林の減少、土地の砂漠化等様々な地球規模の環境問題が深刻化し、大きな危機に直面 している。これらの問題は、エネルギーと深く関連している。先進諸国を中心とした資 源やエネルギー消費は年々増加している。発展途上国では、急激な人口の増加などを背 景として、急速な発展・開発に伴い、エネルギー消費の急激な増加等の発生が懸念され ている。エネルギー消費の増大に伴う温室効果ガスや廃熱放出の増大を引き起こし、さ らに地球温度を上昇させるという悪循環をもたらす。世界人口の約2%を占める日本で は、温暖化を進行させている主要な原因物質の二酸化炭素の排出量は世界第4位であり、

世界総排出量の約5%を占めている。

今後、地球温暖化を緩和し、資源循環、持続可能な社会発展実現のために、環境保全 措置、省エネ手法を大きく問われている。1997 年 12 月に国連気候変動枠組条約第 3 回締約国会議(COP3)において採択された「京都議定書」は、先進国の温室効果ガス 排出量削減約束が規定されている。日本では、2008 年から 2012 年までの第一約束期 間に、基準年(原則的1990年)レベルから6%の温室効果ガス削減が定められている。

現状としては、8.3%(2003年度)上回っており、目標達成には、15.2%の温室効果ガ スを削減しなければならない。産業部門の排出量は斬減傾向にあるものの、運輸、民生 部門(業務、住宅等)の増加が目立つ。このような実情を踏まえ、産業部門の省エネル ギー対策を継続する同時に、運輸、民生部門において省エネルギー対策の実施は非常に 重要であると考えられる。

また、近年都市の魅力及び国際競争力を向上するため、機能集積の大型再開発活動が 進んできた。それに伴い、建築は高層化、多用途複合化、大規模化の傾向が示していた。

その結果、エネルギー消費形態が大きく変わってくると考えられる。一方、従来では単 一用途建物を対象としたエネルギー消費に関する研究調査はあったものの、複合建築に 対する調査研究例がまだ少ない。そこで、本研究では複合建築のエネルギー消費実態調 査に基づき、消費要因を分析し、建物及び設備の使用状況を把握した上で、21 世紀の 省エネルギー型建築及び都市のエネルギー供給システムの構築に提案したいと考えて いる。更に、環境負荷の低減・エネルギー高度利用の技術移転を促進し、国際協力、国 際支援により地球規模の都市環境向上の一助となれば幸いである。

2006年2月 韓   珺  巧

(5)

目        次

はじめに ... ⅰ 目  次 ... ⅱ 研究フロー ... ⅶ  

第 1 章 従来研究と本研究の位置付け 

1‑1 概要 ...1‑2 

1‑1‑1 研究目的... 1‑2 

1‑1‑2 研究対象の選定 ... 1‑2 

1‑1‑3 研究背景... 1‑4 

1‑2 本研究の基本的な考え... 1‑7 

1‑2‑1 地球規模の環境問題及び対策... 1‑7 

1‑2‑2 都市機能の高度化及び建築物の複合化... 1‑10 

1‑2‑3 本研究における複合建築のエネルギー消費実態を把握の考え方

... 1‑16 

1‑3 従来の研究... 1‑17 

1‑3‑1  エネルギー政策及び省エネルギー政策の変遷... 1‑17 

1‑3‑2 エネルギー消費量予測手法... 1‑20 

1‑3‑3 エネルギー消費に関する従来研究... 1‑22 

1‑4 結論と本研究の位置付け ... 1‑25 

(6)

第 2 章 床用途に基づく複合商業施設のエネルギー需要量の予測手 法に関する調査研究 

2‑1 概要 ...2‑2 2‑2 調査概要 ...2‑3 

2‑2‑1 調査対象... 2‑3  2‑2‑2 調査項目... 2‑4  2‑2‑3 調査手法及び期間 ... 2‑5  2‑3 調査結果... 2‑6  2‑3‑1 総合スーパーの床用途別分類に関する調査結果... 2‑6  2‑3‑2 月別総エネルギー消費量に関する調査結果... 2‑8  2‑3‑3 床用途別エネルギー需要量原単位作成... 2‑10  2‑4 床用途に基づくエネルギー需要量予測手法の提案 ... 2‑19  2‑5 床用途別エネルギー需要量原単位の検証... 2‑20  2‑5‑1  偏差による検証... 2‑20  2‑5‑2 推定値と実測値の相関分析による検証... 2‑21  2‑6 結論 ... 2‑23 

第 3 章 都心超高層住宅におけるエネルギー消費に関する調査研究  3‑1  概要 ...3‑2 3‑2 調査概要 ...3‑4 

3‑2‑1 調査対象... 3‑4 

3‑2‑2 調査手法及び期間... 3‑5 

3‑3 調査結果... 3‑7 

3‑3‑1  消費先用途別年間エネルギー需要量 ... 3‑7 

3‑3‑2 消費先用途別月別エネルギー需要量... 3‑9 

3‑3‑3 消費先用途別時刻別エネルギー需要量... 3‑9 

(7)

3‑3‑4 共用部分のエネルギー消費量 ... 3‑12  3‑4 エネルギー需要量とライフスタイルの変化... 3‑13  3‑4‑1  エネルギー需要量の変化... 3‑13  3‑4‑2 ライフスタイルの変化... 3‑14  3‑5 結論 ... 3‑20 

第 4 章 中規模オフィスビルにおけるエネルギー消費に関する調査 研究 

4‑1 概要 ...4‑2 4‑2 既存オフィスビルの現状 ...4‑4 

4‑2‑1  日本における民生部門建築面積の推移... 4‑4  4‑2‑2 東京都 23 区におけるオフィスビルの概況 ... 4‑4  4‑3 調査概要... 4‑6  4‑3‑1  調査対象及び期間... 4‑6  4‑3‑2 調査内容... 4‑6  4‑4 調査結果... 4‑11 

4‑4‑1  中規模オフィスビルの属性... 4‑11 

4‑4‑2 省エネルギー意識及び取り組む対策 ... 4‑14 

4‑4‑3 エネルギー消費量... 4‑17 

4‑4‑4 省エネルギー対策の効果に関するケーススタディー... 4‑21 

4‑5 省エネルギーポテンシャルの評価... 4‑22 

4‑5‑1  ケース A... 4‑22 

4‑5‑2 ケース B... 4‑22 

4‑5‑3 ケース C ... 4‑23 

4‑6 結論 ... 4‑24 

(8)

第 5 章 都心 SOHO のエネルギー消費と使用実態に関する調査研究  5‑1 概要 ... 5‑2 5‑2 調査概要 ... 5‑3 5‑2‑1 SOHO の定義... 5‑3 5‑2‑2 調査対象... 5‑5 5‑2‑3 調査方法及び内容... 5‑7 5‑3 調査結果 ... 5‑8

5‑3‑1 SOHO における年間・月別エネルギー消費... 5‑8  5‑3‑2 SOHO における時刻別エネルギー消費... 5‑10  5‑3‑3 SOHO 利用者の活動状況... 5‑14  5‑4 時刻別エネルギー消費量に関する多変量解析... 5‑16 5‑5 SOHO、住宅及びオフィスのエネルギー消費量・水消費量比較 ... 5‑19  5‑6 結論 ... 5‑22 

第 6 章 SOHO の負荷平準化と省エネルギー効果に関する研究  6‑1 概要 ...6‑2 6‑1 比較に用いるデータ概要 ...6‑3 

6‑2‑1 比較対象 ... 6‑3  6‑2‑2 月別・年間エネルギー消費量... 6‑5  6‑2‑3 時刻別エネルギー消費量... 6‑6  6‑3 結果 ... 6‑10 

6‑3‑1 負荷平準化率と省エネルギー率の定義... 6‑10 

6‑3‑2 負荷平準化率... 6‑11 

6‑3‑3 省エネルギー率 ... 6‑12 

6‑3‑4 SOHO の環境性に関する定性評価... 6‑12 

6‑4 結論 ... 6‑13

(9)

第 7 章 結論と展望 

7‑1 結論 ...7‑2 7‑2 展望 ...7‑5

謝辞 ... A‑1

引用・参考文献 ... A‑3

博士論文審査報告書 ...A‑18  

履歴書 ...A‑22

研究業績 ... A‑23  

(10)

研究フロー

研究背景・目的エネルギー実態調査・分析比較・評価結論と展望

第 1 章 従来研究と本研究の位置付け 

第 2 章 床用途に基づく複合商業施設のエネルギー 需要量の予測手法に関する調査研究 

第 3 章 都心超 高層住宅におけ るエネルギー消 費に関する調査

研究 

第 4 章 中規模 オフィスビルに おけるエネルギ ー消費に関する

調査研究 

第 5 章 都心 SOHO のエネルギ

ー消費と使用実 態に関する調査

研究 

第 6 章 複合建築の省エネルギー性及び負荷平準化効果に関 する研究 

第 7 章 結論と展望 

(11)

第 1 章 従来研究と本研究の位置付け 

(12)

1−1 概要

1−1−1 研究目的 1−1−2 研究対象の選定 1−1−3 研究背景

1−2 本研究の基本的な考え

1−2−1 地球規模の環境問題及び対策

1−2−2 都市機能の高度化及び建築物の複合化

1−2−3 本研究における複合建築のエネルギー消費実態を把握の考え方 1−3 従来の研究

1−3−1 エネルギー政策及び省エネルギー政策の変遷 1−3−2 エネルギー消費量予測手法

1−3−3 エネルギー消費に関する従来研究 1−4 結論と本研究の位置付け

(13)

1−1 概要

1

1

1

 研究目的

本章では、複合建築におけるエネルギー消費調査及び分析に関して研究の位置付け及 び必要性を明らかにするため、産業構造の変化に伴い都市構造の変遷について述べ、複 合建築のエネルギー消費に関する研究の意義を明らかにすることが目的である。

1

1

2

 研究対象の選定

都市は人間がつくったものであり、これからも人間がつくっていくものである。そし て、都市は人間のためのものでなければならない。第一次産業社会は農林水産業を中心 に、生産階級たる農民の生活様式は働き場と住み場が一致する「職住一体」或いは「職 住近接」であった。その時代に生まれた都市(城下町)は現代都市の前身と位置付けら れ、宗教的、防衛的機能及び商業の役割を果たしていたことに過ぎなかった。十九世紀 後半から二十世紀前半に起こった産業革命により、機械化と工業化が進み、農村からの 労働力が加速的に都市へ集約し、都市人口は急速に増加してきた。増加する人口の受け 皿として、都市近郊の農業用地は急激に宅地化し、産業構造と都市構造が大きく変え、

各地に大都市が発生した。しかし、急速に発展してきた工業化と都市化は大気、水、騒 音などさまざまな公害を引き起こした。国民の健康問題に端を発し、都市計画規制によ り、工業建設地域は郊外或いは地方に分散を誘導した。この時期は、工場による公害を 避け、鉄道など交通施設の整備、自動車などの普及、スプロールなど原因で、住宅は主 に離れた場所で建設した。いわゆる「職住分離」になった。ところが、時代が変わり、

1950年ごろから出現し、1980年代以降急速に発展したコンピューター・情報通信技術 は社会や生活のあり方に劇的な変化をもたらした。インターネット環境や情報通信手段 の急速普及により、人間が時間と空間の制約から解放され、分散オフィスや在宅勤務な どが可能になった。また、経済発展と共に、人々が質の高い生活を追求し、職住遊憩近 接の新しいライフスタイルが生み出し、再び社会構造や都市構造の転換をもたらし、い

(14)

わゆる「職住遊憩近接」の大きな転機を迎えてきた。

日本では、中心市街地の整備・改善、商業等の活性化を図り、「大規模小売店舗にお ける小売業の事業活動の調整に関する法律」 (以下「大店法」という)は 2000年 3月で廃 止されることとなり、これに代わって「大規模小売店舗立地法」(以下「大店立地法」とい う)を新しく制定され、2000年6月から施行された。それを機に商業施設は「営業時 間」が延長され、「休業日数」が減少する店舗が増え、かつより魅力を作り出し、広域 から集客するために、シネマコンプレックスや温浴施設、ボーリング場やゲームセンタ ーなどのアミューズメント施設、さらには行政サービスまで、エンタテインメントや生 活にかかわるサービス機能、オフィス機能等を複合させた大規模化、複合化、都心化に 拍車をかけることになった。東京の「六本木ヒルズ」や「汐留シオサイト」等、大阪の

「なんばパークス」等施設はその典型的な事例だと言える。また、産業構造の変革を踏 まえ、急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対応した都市機能 の高度化[1]及び都市の居住環境の向上を図り、2002 年「都市再生特別措置法」を施行 し、日本全国各地に業務、商業、文化、情報発信、居住等の多機能複合市街地の形成を 目指し、都市再開発活動は行われている。

東京では、1980 年代後半にバブル経済によって都心部地価が高騰しつつ、国民の居 住生活に大きな影響を与え、都心人口は1987年から10年間わたり減少し続けてきた。

バブル経済崩壊後、東京の地価は1990年代を通じての長期的下落期に入り、21世紀に 入り2003年にいたるまで、例外的な地点を除き、東京都心の地価の下落傾向はとまっ てなかった。一方、都心地価の下落及び1996年に都心6区で実施した「住宅付置義務 制度」により、1997 年から都心人口が再び増加に逆転した。増加する居住ニーズを満 たし、都心部に小規模に分散する低未利用土地を有効かつ高度利用するために、超高層 マンションが近年増加しつつ、今後もますます注目されていくことは推測される。また、

インターネット環境や情報通信技術の普及によって、人々は時間と空間の制約から解放 され、在宅勤務が広く注目されている。特に、「2003年問題」ともいえる中小オフィス ビル空室率上昇の背景の下に、オフィスから住宅やSOHOにコンバージョンする例も

[1] 都市機能の高度化とは、日常生活を営む圏域を越えた広範な地域のたくさんの人々を対 象にした、質の高いサービスを提供する機能のこと。

(15)

見られた。職住混在の都市構造になりつついている。

以上述べたように、業務、商業、文化、情報発信、居住等の多機能複合市街地が形成 していく中で、建築自体も大規模化、複合化してきている。都市の便利さを活用し、職・

住・遊・憩の機能を持つ建物はますます複合化していくと推測できる。そこで、本研究 は複合建築を対象として選定した。

1

1

3

 研究背景

他方、地球温暖化、ヒートアイランド現象、資源枯渇等地球規模の環境問題はますま す深刻になってきた。これらの問題はエネルギー消費と密接な関係がある。しかし、経 済成長と共に、エネルギー消費は着実に増加すると予測される。図1−1に示すように、

国際エネルギー機関(IEA) の見通しによれば、2030年の世界の一次エネルギー需要 は、152.7億TOE(2000年比で66%増)に達すると予測されている。日本エネルギー 消費は、図1−2に示すように、1970年代までの高度経済成長期には、国内総生産(GDP) よりも高い伸び率で増加してきた。1970 年代の二度にわたる石油危機を契機に産業部 門での省エネルギー化等の努力の結果、エネルギー消費はある程度抑制しつつ経済成長 を果たすことができた。しかし、その後石油価格の低下に加え、豊かさを求めるライフ スタイルなどを背景に、1980 年代後半からエネルギー消費は再び増加に転じた。特に 民生部門及び運輸部門のエネルギー消費はほぼ倍増していた。

エネルギー消費の増加に伴い、温室効果ガス排出量の増加につながる。「気候変動に 関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)」の第3 次評価報告書は、観測データにより、全球平均地上気温は20世紀中に0.6±0.2℃上昇 していること、全球平均海面水位が20世紀中に10cmから20cm上昇していることな どを明らかにした。日本においては、20 世紀中に平均気温は約1℃上昇した。また、

近年、一部の高山植物の生息域の減少、昆虫や動物の生息域の変化、桜の開花日やカエ デの紅葉日の変化など、生態系の分布に変化が現れており、豪雨の発生頻度の増加など も観測されている。このような気象や生態系の変化の原因の一つとして地球温暖化が指 摘されている。

(16)

51% 47% 43% 40%

11% 11% 11% 10%

11% 12% 13% 14%

17% 19% 19%

4% 20%

5%

5%

6%

3% 3%

4%

5%

4%

4%

5%

5%

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

ルギ需要見通し [単位:石油換算百万トン]

中東 367 445 658 763

アフリカ 275 334 527 763

中南米 367 557 658 916

アジア(日韓含む) 1,560 2,115 2,502 3,053

中国 1,010 1,336 1,712 2,137

旧ソ連等 1,010 1,225 1,448 1,527

OECD(日本、韓国を除く) 4,681 5,232 5,662 6,107 2000年 2010年 2020年 2030年

(IEA「World Energy Outlook 2002」のデータより作成)

図1−1 世界における地域別一次エネルギー需要予測

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0

1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001

年代 ルギ費量 [単位1018 J]

0 100 200 300 400 500 600

GDP位:95年価格兆円)

運輸 民生 産業

実質GDP (単位:95年価格兆円)

(内閣府「国民経済計算年報」、(財)日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統 計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」のデータより作成)

図1−2 日本におけるエネルギー消費量及び国内総生産の推移

(17)

地球温暖化対策として、京都議定書は1997年に採択され、2005年2月16日に発効 した。同議定書において、日本は 2008 年〜2012 年における温室効果ガスの排出量を 1990 年比で 6%削減することが求められている。一方、日本環境省により公表された 2003年度の温室効果ガスの総排出量は13億3,900万トン(二酸化炭素換算)であり、

前年度の総排出量と比べると0.7%の増加、京都議定書の規定による基準年(原則1990 年)の総排出量と比べ、8.3%上回っている。従って、議定書の目標達成には、14.3% の温室効果ガスを削減しなければならない。

このような状況の中、対策として更なる省エネルギー対策が急務となっている。特に

1990 年度比二酸化炭素排出量の増加が著しい業務その他部門(オフィスビル等)(約

36.1%)と家庭部門(約31.4%)においては、徹底的にエネルギー消費の増加傾向に歯 止めをかける必要がある。しかし、近年都市機能の高度化及び地域の活性化を図る大規 模都市開発が進行中、若しくは計画中である。これらの大規模、複合建築が次々に竣工 することにより、大量なエネルギー需要をもたらすことは間違いない。このような背景 の下、建築の現状及びエネルギー消費量の実態を把握することは、建物の省エネルギー 促進に重要な課題となっている。

そこで、今後温暖化効果ガスを削減し、更なる複合建築に適切な省エネルギー対策を 提案するため、建物及び設備の現状と変遷傾向、年間・月別・時刻別のエネルギー消費 の実態を明らかにする必要があり、本研究の必要性を示した。

(18)

1−2 本研究の基本的な考え

1−2−1 地球規模の環境問題及び対策

現在、世界人口の約半分は都市部に居住している。国際連合の中位推計によれば、

2050 年までに 65%に達すると予測されている。急激な工業化、都市化の進展に伴い、

大気汚染、水質汚濁、廃棄物問題、ヒートアイランドや騒音問題、地球温暖化問題、オ ゾン層破壊、エネルギー供給問題等様々な地球規模の環境問題を引き起こしている。

1972 年に環境についての初めての国際会議(国連人間環境会議)がストックホルム において開催され、113ヶ国と多くの関係者が参加し、現代の環境保全主義にとって重 要な分岐点となった。それから、環境政策、新しい法制度、組織が生まれ、世界の国際 的レベルから地域レベルまでの様々な環境保全行動が行われてきた。しかし、環境は人 類には複雑すぎて十分に対処することができず、また、社会経済発展優位の考え方の下 に、「環境保全」、「持続可能な開発」について認識と行動のレベルは未だ今日の地球環 境の状況と釣り合っておらず、環境は悪化し続けている。

地球温暖化問題の解決に向けた近時の世界規模の取り組みとして、1997年12月、京 都において、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3:The third Conference of the Parties)が開催された。七年後のロシアの締結により発効要件[2]が満たされ、2005年 2月 16 日に発効された。同議定書では、排出の抑制及び削減に関する数量化された約 束の対象となる温室効果ガスを二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、

ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六ふっ化硫黄(SF6) としている。これら温室効果ガスの排出量を2008年から2012年までの第一約束期間 において先進国全体で1990年レベルと比べて少なくとも5%削減することを目的とし

[2] 第25条に定められている二つの条件:1)条約の締約国55カ国以上の国が締結するこ と;2)締結した条約附属書Ⅰ国における1990年の二酸化炭素の排出量を合計した量が、

全附属書Ⅰ国における二酸化炭素の総排出量の55%以上を占めること。

附属書Ⅰ国とは、気候変動枠組み条約の附属書Ⅰ国に列挙されている国であり、京都議 定書附属書Bに掲げられた排出削減に関する数量目標を有している。いわゆる先進国、旧 ソ連・東欧等の移行経済諸国がこれに該当し、2003年11月現在、41ヶ国が附属書Ⅰ国に なっている。なお、附属書Ⅰ国であるが、附属書Bに該当する数値目標を有していない国 も少数ではあるが存在する。マラケシュ・アコードでは、京都メカニズムを利用できるの は「附属書Bに掲げられた数値目標を有する附属書Ⅰ国」とされている。

(19)

て、各国ごとに法的拘束力のある数量化された約束が定められ、日本については6%削 減が定められた。京都議定書の約束達成のため、締約国は様々な対策を講じた。二酸化 炭素や硫黄酸化物等の排出に最も直接的に関わるものである化石燃料の使用抑制や効 率的利用によって環境への負荷を軽減するエネルギー施策の推進が重要な課題となっ ている。

一方、経済成長と人口増加はエネルギー消費の大幅な増加をもたらすと予測される。

国際エネルギー機関(IEA) の見通し(「World Energy Outlook 2002」)によれば、

2030年の世界の一次エネルギー需要は、152.7億TOE(2000年比で66%増)に達す ると予測されている。地域別に見ると、先進地域における2000〜2030年の年平均増加 率が 1.0%にとどまるのに対し、アジアを中心とする開発途上地域では 2.9%とほぼ 3 倍の増加率が予測されている(図1−1)。エネルギー源別に見ると、主力エネルギー源 の中で最大の伸びを示すのは天然ガスで、今後 30 年間で平均 2.4%増加すると見られ ている。一方、石炭、原子力は低めの需要増加が想定されている(図1−3)。部門別に エネルギー源を見た場合、運輸部門においては、依然として、石油が9割以上のシェア を持つと予測されている。発電部門においては、石油の割合は現状から半減の4%程度 にまで落ち込む一方で天然ガスの割合が大幅に増加し、31%に達すると予測されている。

また、産業部門、民生部門では電力のシェアが増大すると予測されている(図1−4)。

24%

24%

26% 24%

29%

38%

38% 38%

39%

49%

28%

25% 27%

23%

18%

5%

6%

7%

7%

0%

2%

3%

3%

3%

0%

4%

4%

3%

3%

3%

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000

ルギ量見通し [単位百万TOE]

再生可能エネルギー等 150 275 334 527 611

水力 0 275 334 395 305

原子力 0 643 779 790 763

天然ガス 900 2,111 2,783 3,555 4,274

石油 2,450 3,580 4,230 5,003 5,801

石炭 1,450 2,387 2,672 3,160 3,664

1971年 2000年 2010年 2020年 2030年

(IEA「World Energy Outlook 2002」のデータより作成)

図1−3 世界におけるエネルギー源別一次エネルギー需要予測

(20)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

要構成比率[%]

その他 6.8 4.5 3.9 0.6 4.0 7.1 2.6 1.5 1.7 2.7 2.8 2.8 

電力 17.6 26.8 30.9 16.5 38.1 45.4 

原子力・水力 11.0 24.8 16.4 

ガス 17.1 19.9 31.1 24.1 23.2 25.2 22.9 29.2 27.3  石炭 49.0 42.8 40.7 20.3 20.3 16.8 16.3  5.5  3.3  石油 93.2 95.5 96.1 22.3  8.5  4.8  35.4 28.2 25.4 41.5 24.4 21.3  1971年 2000年 2030年 1971年 2000年 2030年 1971年 2000年 2030年 1971年 2000年 2030年

(IEA「World Energy Outlook 2002」のデータより作成)

運輸部門 発電部門 産業部門 民生部門

図1−4 世界における部門別エネルギー源別一次エネルギー需要構成比率

日本のエネルギー消費は、1970年代までの経済高度成長に伴い、増加してきた。1970 年代の二度にわたる石油危機を契機に産業部門での省エネルギー化等努力の結果、エネ ルギー消費の減少が実現できた。しかし、1980年代後半から、石油価格の低下に加え、

豊かさを求めるライフスタイルなどを背景にエネルギー消費は再び増加に転じた。

1980年代半ば以降、1998 年度と2001 年度に対前年度マイナスとなったのを除けば、

エネルギー消費は一貫して増加していた。部門別にエネルギー消費動向を見ると、石油 危機以後、産業部門がほぼ横ばいで推移する一方、民生・運輸部門がほぼ倍増している

(図1−2)。今後、生活水準の向上や情報化の普及等によって、この傾向は更に強まる と予想される。

日本環境省により公表された2003年度の温室効果ガスの総排出量は13億 3,900万 トン(二酸化炭素換算)であり、前年度の総排出量と比べると 0.7%の増加、京都議定 書の規定による基準年(原則1990年)の総排出量と比べ、8.3%上回っている。従って、

議定書の目標達成には、14.3%の温室効果ガスを削減しなければならない。その中に、

約9割はエネルギー起源の二酸化炭素である。このような状況を踏まえ、対策として省 エネルギー対策の強化が急務となっている。特に1990 年度比二酸化炭素排出量の増加

(21)

が著しい業務その他部門(オフィスビル等)(約36.1%)と家庭部門(約31.4%)にお いては、徹底的にエネルギー消費の増加傾向に歯止めをかける必要がある。2005 年 2 月、京都議定書の発効は本格的に各レベル、各部門に地球温暖化対策、省エネルギー対 策の取り組むに直面しなければならない。日本は「環境と経済両立」の基本考え方に基 づき、国、地方公共団体、事業者、国民、それぞれの立場に応じた役割を担うことが求 められる。具体的には、省エネルギー機器・自動車の普及、エネルギー効率の高い建築 物・住宅の導入、交通流対策・物流の効率化、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会 経済活動や生活様式の見直し等によって温暖化効果ガスの排出を削減し、省CO2[3]型の 地域・都市構造や社会経済システムの形成を促進する。また、積極的に CO2排出の少 ない太陽光発電、風力発電、廃棄物発電、未利用エネルギー等新エネルギーの導入を促 進し、省 CO2型のエネルギーシステムの実現を図る。同時に、都市緑化、森林づくり など、地表面被覆の人工化による熱環境の改善及び温暖化効果ガスの吸収源を整備する。

持続的な発展を図り、温暖化ガスの排出削減に向け、日本は省エネルギー関連法の策 定・改正、部門ごとに省エネルギー対策の促進、国民一人ひとりの環境意識の向上等様々 な努力を行ってきたが、京都議定書の目標達成には、まだ厳しい現状を直面し、今後一 層の省エネルギーの推進が必要ある。

1

2

2

 都市機能の高度化及び建築物の複合化

グローバル化の進展により地域間競争が激しくなる中で、都市がさらに発展していく ためには、国際的な都市機能[4]や質の高い居住環境の整備等が必要である。日本の総合 競争力の世界順位ランキングは、1990 年代後半から低下し続けてきた。環境、防災、

国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェクトの推進や土地 の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進することを目的として、

[3] 省CO2 とは、省エネルギーの促進等のエネルギー需要面での対策、あるいは原子力 の推進、新エネルギー等の導入等のエネルギー供給面での対策等により、二酸化炭素の 排出が抑制・削減されることをいう。

[4] 都市のもつ様々な働きやサービスのことで、業務、商業、居住、工業、交通、政治、行 政、教育等の諸活動によって担われる機能のことをいう。

(22)

2001年5月8日、閣議決定により内閣に都市再生本部を設置された。都市の再生に関 する施策を迅速かつ重点的に推進するため、急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社 会経済情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び都市居住環境の向上を図り、2002 年6月「都市再生特別措置法」を施行した。

同措置法に基づき、日本全国各地に多くの「都市再生緊急整備地域」を指定され、業 務、商業、文化、情報発信、居住等の機能複合化、高度化の市街地の形成を目指し、都 市再開発活動は行われている。東京都における指定された都市再生緊急整備地域及び地 域整備方針を表 1−1 に示している。各整備地域の位置は図1−5 に示す。このような 背景の下に、東京都心部では、2002年9月にオープンした丸の内ビルディングに始ま り、泉ガーデンタワー、電通本社ビル、汐留シティセンター、品川グランドコモンズ、

六本木ヒルズなど、超高層オフィスビルが次々に竣工している。これらのデザイン的に も優れた最新鋭のオフィスビルと魅力的なレストランやショップ、文化施設などとの複 合開発がはやくも東京観光の新名所となった。

 都市機能高度化、複合化の進展と共に建築物の複合化、大規模化も進んできた。上記 の大規模開発プロジェクトはその例である。また、東京都では1996年に都心6区で実 施した「住宅付置義務制度」、大阪府では1998年10月に策定した「複合化による効率 的な公共建築整備基本方針」等法制度は建築物の複合化を促進した。今後、職住近接や 生活の利便さやコミュニティー等様々な出発点から、建物の複合化による相乗効果を打 ち出し、多様性のニーズに対応できる複合建築は益々増えていくと予測される。

(23)

[大手町、丸の内、有楽町]

 東京都心において、我が国の 顔として、歴史と文化を活かし たうるおいと風格ある街並みを 備えた国際的な中枢業務・交流 拠点を形成

 この際、併せて、商業・文 化・交流などの多様な機能を導 入することにより、にぎわいと 回遊性のある都市空間を形成

中枢業務拠点にふさわしい高 次の業務機能の強化とこれを 支える商業・文化機能等多様 な機能の導入

・高次の業務機能の強化

・業務機能を支え、アメニ ティを高める商業・文化・交 流・宿泊機能等を強化 成田・羽田空港と直結する交 通拠点機能の強化

丸の内の仲通りに面した地域など においては、通りに面した壁面の 位置や高さを整えるなどにより、

風格ある街並みの形成に資する都 市開発事業を促進

東京駅などの未利用の容積を活用 しつつ、用途の配置や容積の配分 を適正に行うことにより、メリハ リのある高度利用を実現

日本橋川の沿川においては、水辺 環境を生かした都市開発事業を促

Bゾーン

[日本橋、八重洲、銀座]

 東京都心において、老朽建築

物の機能更新や土地の集約化等 により、歴史と文化を生かした うるおいと風格ある街並みを形 成しつつ、業務・商業機能等が 適切に調和した魅力ある複合機 能集積地を形成

 特に、中央通りを中心とした 地域においては、魅力とにぎわ いにあふれた国際的な商業・観 光拠点を形成

○ 業務・商業機能等を高度化 また、居住機能を回復

・建築物の低層階に商業・文 化・交流機能等の導入により 商業機能を強化

・業務・商業機能との調和に 配慮した居住機能の回復を促

銀座の中央通り等に面した地域な どにおいては、通りに面した壁面 の位置や高さを整えるなどによ り、歩行者空間の充実と、魅力あ る商業空間の形成を図る都市開発 事業を促進

歴史的建造物の機能更新等にあ たっては、これを生かした都市開 発事業を促進

日本橋川の沿川においては、水辺 環境を生かした都市開発事業を促

環状二号線 新橋周辺・

赤坂・六本 木地域

(約590ヘク タール)

 中央官庁街に近接し、大使館 等が数多く立地する地域におい て、環状二号線の整備とその沿 道土地利用の促進を図るととも に、多様な機能を備えたにぎわ いにあふれた国際性豊かな交流 ゾーンを形成

 この際、緑豊かな地域特性を 生かしたうるおいのある都市空 間を形成

良好な住環境を備えた居住機 能のほか、業務・商業・文 化・交流等の多様な機能を誘

新橋駅、浜松町駅周辺の交通 結節機能の強化

環状二号線、環状三号線等の整備による広 域的な交通利便性を向上

東京モノレール浜松町駅の改良

その他、都市開発事業に関連した道路整備 により、地域内道路網を強化

○ 環状3号線と補助4号線にはさま れた区域(補助2号線の西側)及 び赤坂地区・六本木地区における 良好な住環境を備えた区域におい ては、周辺市街地との環境に十分 調和するよう配慮した都市開発事 業を促進

東京駅周辺において、東京駅舎を保存・復 元するとともに、駅前広場や街路等を整備 することにより、東京の顔にふさわしい景 観を確保するとともに、交通利便性を向上

・丸の内側については、駅前広場の整備や 行幸通りの景観整備により、我が国の顔と なる空間を形成

・八重洲側については、駅前広場を再整備

・駅周辺の回遊性を高めるため歩行者ネッ トワークを充実・強化

都営浅草線東京駅接着など空港アクセス強 化の早期実現について検討

大都市における環境の再生のモデルとし て、日本橋川の再生を検討

この際、あわせて首都高速道路のあり方を 検討

その他、以下を実施

・建築物の更新により整備される敷地内空 地などのネットワーク化等により安全・快 適な歩行者空間を確保

・大手町、丸の内、有楽町地域の駐車場に ついて、公共と民間、民間相互の連携など により、効率的なネットワーク化を地域に おいて検討

・銀座地域において、駐車場や荷さばき場 の集約的な整備を地域において検討 東京駅・有

楽町駅周辺 地域

(約320ヘク タール)

1-12 1 従来研究と本研究の位置付け

(24)

表1−1 東京都における指定された都市再生緊急整備地域及び地域整備方針(続表1)

地域名称 整 備 の 目 標 都市開発事業を通じて増進す べき都市機能に関する事項

公共施設その他の公益的施設の整備に関す る基本的事項

緊急かつ重点的な市街地の整備の 推進に関し必要な事項 Aゾーン

[晴海、豊洲、有明北、有明 南、台場、青海、東雲]

 都心に近接し、陸・海・空の 卓越した交通条件にある東京臨 海部において、物流機能の転出 等に伴い発生した低未利用地の 大規模な土地利用転換等によ り、職・住・学・遊の多様な魅 力を備え国際的に情報発信を行 う先導的な拠点を形成  この際、水辺の環境をいかし てアミューズメント・文化・商 業などの機能を導入し、都市観 光にも資するバランスのとれた 魅力的な複合市街地を形成

職・住・学・遊の多様な機能 の複合市街地の形成 この際、新しい産業の育成な ど先導的な機能を導入

・大学や研究所などと連携し た次世代型の産業・業務・情 報機能等の導入

・港湾機能や優れた空港アク セス機能を活かした首都圏の 物流・交通拠点機能の強化

・魅力とにぎわいを創出する アミューズメント、文化、商 業、交流機能の導入

・都心との近接性や水辺環境 を活かした居住機能の導入 首都圏の災害に対応する防災 拠点機能の強化

東京都心部へのアクセス機能等の強化など 広域的な交通利便性を向上するための幹線 道路や公共交通を整備

(幹線道路)

・環状二号線の整備

・放射34号線及び支線1の整備

・ 首都高速道路晴海線の整備

・ 国道357号線(東京港トンネル)の整 備等

(公共交通機関)

・新交通ゆりかもめの整備(有明から豊洲 まで)

・水上交通ネットワークの形成の検討 さらに、中長期的には、民間の開発状況や 広域的な交通ネットワークの形成等を勘案 しつつ、需要に応じた交通基盤の整備につ いて検討

計画的なまちづくりに配慮しつ つ、暫定的な土地利用への柔軟な 対応の促進

地域の市街地像を共有化し、一体 的かつ総合的に都市開発事業を促 進するための体制等を検討

Bゾーン[佃、月島、勝どき、

豊海、湊、入船、新富、明石 町、築地]

新たな中央卸売市場整備の促進 防災機能の強化

・首都圏の災害に対応する広域防災拠点の  個性を生かしたまちづくりと

計画的な大規模開発による機能 更新により、都心を支える居住 機能を強化した魅力的な複合市 街地を形成

○ 良好な居住機能を強化しつ つ、あわせて、業務・商業・

文化・交流機能の導入による 複合市街地を形成

・都心との近接性や水辺環境 を活かした居住機能の強化

・魅力とにぎわいを創出する 業務・商業・文化・交流機能 等の導入による複合的な都市 機能を強化

・防潮機能の確保、隅田川のスーパー堤防 の整備など、当該地域における防災施設の 整備促進

大規模土地利用転換にあたり、公共公益施 設の整備状況とバランスのとれた計画的な 開発を誘導するとともに、居住機能の配置 に伴い必要となる教育・福祉等の生活関連 の公共公益施設の整備方法を検討 その他、水際の遊歩道や歩道状空地等の確 保による親水性のある歩行者ネットワーク を形成

密集市街地においては、従前居住 者の居住の確保や周辺市街地の都 市環境との調和などに十分配慮す る都市開発事業を促進

月島地区などにおいては、良好な 街並みの形成、防災性の向上、

住・商・工が調和した魅力ある市 街地の形成に資する都市開発事業 を促進

環状四号線 新宿富久沿 道地域

(約10ヘク タール)

 環状四号線の整備による都心 部の交通機能の向上と沿道土地 利用を促進

 その際、併せて、土地の集約 化等により土地の有効利用と市 街地の安全性を向上

環状四号線の整備による交通 機能の充実

居住機能をはじめとする複合 市街地の形成

○ 環状四号線の整備により広域的な交通利便 性を向上

○ 従前居住者の居住の確保や周辺市 街地との都市環境の調和などに十 分配慮した都市開発事業を促進 東京臨海地

(約1,010ヘ クタール)

1-13 1 従来研究と本研究の位置付け

(25)

表1−1 東京都における指定された都市再生緊急整備地域及び地域整備方針(続表2)

地域名称 整 備 の 目 標 都市開発事業を通じて増進す べき都市機能に関する事項

公共施設その他の公益的施設の整備に関す る基本的事項

緊急かつ重点的な市街地の整備の 推進に関し必要な事項 秋葉原・神

田地域

(約160ヘク タール)

 秋葉原駅周辺において、大規 模低未利用地の土地利用転換等 により、電気街と連携した世界 的なIT関連産業拠点を形成  神田地域において、建築物の 更新に併せた市街地の再編整備 により、東京駅周辺等の都市機 能とも連携する多様な魅力を 持ったにぎわいのある安全で快 適な複合市街地を形成

秋葉原地域においては、IT 関連産業など新しい産業機能 の導入及びこれと連携する商 業・業務・交流機能を強化  また、常磐新線の整備に併 せた交通拠点機能を強化 神田地域においては、教育・

文化・交流機能を充実すると ともに、居住機能を強化

ターミナル機能の充実や拠点性の向上に資 する常磐新線を整備

秋葉原駅の交通結節機能を強化するため、

駅前広場、街路、駐車場等を整備

駅周辺の回遊性を高めるため歩行者ネット ワークを充実・強化

神田地域においては、歴史・文化 を伝える街並み形成や、学生街等 のにぎわい・回遊性の向上に資す る都市開発事業を促進

神田川・日本橋川沿川において は、水辺の環境を生かすよう配慮 した都市開発事業を促進

新宿駅周辺 地域

(約220ヘク タール)

 東京駅周辺などとともに我が 国の国際的な中枢業務機能を担 う拠点を形成

 併せて、商業、文化等の集積 による多様な魅力を備え回遊性 のある観光・交流拠点を形成

新宿駅の駅前広場周辺におい ては、商業・業務機能を充 実・強化

新宿駅周辺における歩行者交 通機能の改善・強化

放射6号線、国道20号線な どの幹線道路や都市高速鉄道 13号線の整備に併せた業 務・商業・文化・交流・居住 機能等の複合市街地形成 西新宿の業務地域に近接する 密集市街地においては、防災 機能の向上と居住機能をはじ めとする複合市街地を形成

幹線道路等の整備及び都市高速鉄道13号 線の整備により広域的な交通利便性を向上

(幹線道路)

放射6号線、環状5の1号線、国道20号

(新宿跨線橋の架け替え)等の整備 駅周辺の回遊性を高めるため歩行者ネット ワークを充実・強化

その他、以下を実施

・駅前広場など道路下の駐車場整備を地域 において検討

・都市開発事業に関連した道路整備によ り、地域内道路網を強化

密集市街地においては、従前居住 者の居住の確保や周辺市街地の都 市環境との調和などに十分配慮し た都市開発事業を促進

新宿駅の駅前広場周辺において は、地域の顔となる魅力的な景観 形成に配慮した都市開発事業を促

大崎駅周辺 地域

(約60ヘク タール)

 臨海副都心線の開通と埼京線 の接続によるターミナル機能の 強化を生かし、大規模低未利用 地の土地利用転換や既成市街地 の再構築により、東京のものづ くり産業をリードする新産業・

業務拠点を形成

 この際、魅力とにぎわいのあ る都市空間を形成

研究開発型産業を核とする業 務・商業・文化・交流・居住 などの複合機能を導入 臨海副都心線の整備に併せた 交通拠点機能の強化

臨海副都心線の整備により、拠点性の向上 とターミナル機能を充実

大崎駅周辺における交通結節機能や回遊性 を高めるため、駅前広場機能や歩行者ネッ トワークを充実・強化

その他、都市開発事業に関連した道路整備 により、地域内道路網を強化

目黒川沿川においては、水辺環境 を生かした都市開発事業を促進 密集市街地の整備においては、従 前居住者の居住の確保や周辺市街 地との都市環境の調和などに十分 配慮した都市開発事業を促進 地域の市街地像を共有化し、一体 的かつ総合的に都市開発事業を促 進するための体制等を検討

1-14 1 従来研究と本研究の位置付け

(26)

図1−5 東京都における都市再生緊急整備地域位置図

(27)

1

2

3

 本研究における複合建築のエネルギー消費実態を把握の考え方

 

以上、京都議定書の発効により、地球温暖化ガスの排出に拍車をかけた。基準年よ り 6%の削減目標達成するために、各部門、特にエネルギー消費の増加が著しい民生 部門に対して省エネルギー対策の実施は重要な課題となってきた。しかし、省エネル ギー施策には、まず民生部門における各種建築物のエネルギー消費実態の把握が必要 である。一方、近年都市機能の高度化、複合化に伴い建築物の複合化が進んできた。

また、高度情報化社会の進展及び生活水準の向上等によって人々のライフスタイルや 建物の使われ方が大きく変わってきた。これらの要素はエネルギー消費に大きな影響 を及ぼすと考えられる。従来の単一用途の建物エネルギー原単位[5]を用いて、現在の 複合建築のエネルギー需要を予測するのは実情にそぐわない恐れがある。

 そこで、複合建築に省エネルギー対策を提案するために、建物の使われ方やエネル ギー消費実態を把握する必要がある。従って、本研究は、①複合建築のエネルギー消 費実態調査により、エネルギー消費特性を明らかにし、都市再生等開発活動において より合理的な地域や建物単体エネルギー供給システムの構築の基礎的研究を行う。② 複合建築と単一用途建築のエネルギー消費の比較により、複合建築の省エネルギー効 果及び負荷平準化効果を評価、省エネかつ安全供給両立の都市エネルギー供給システ ムを構築するための基礎となるデータベース構築の基礎資料を作成する。

[5] エネルギー原単位とは、建物単位延べ床面積あたり消費した電気、ガス、オイルな どの一次エネルギー換算値をいう。

(28)

1−3 従来研究

1

3

1

 エネルギー政策及び省エネルギー政策の変遷

 

図1−6に日本におけるエネルギー政策の変遷を示している。戦後50年間、日本の エネルギー政策は、「経済成長のためのエネルギーの安定供給」を至上命題としてきた。

その間、第1期の戦後復興期には、「経済復興に必要なエネルギー供給」を達成するた め、石炭を軸とする傾斜生産方式が取られ、石炭増産に必要な資金が優先的に配分さ れた。第 2 期の高度成長期には、「低廉で安定的エネルギーの供給」を図り、石炭か ら石油への転換がなされた。また原子力開発と LNG(液化天然ガス)の導入も始ま った。その後、第3、4期の第1次、第2次石油危機の時代には、「エネルギー安全保 障の確立」を目指し、石油供給の確保と、石油代替エネルギーと省エネルギーの推進 が柱となっていた。そして、現在の経済グローバル化時代には、「エネルギー安全保障 と経済性のバランス」、「消費者ニーズに適合したエネルギーミックスの形成」を柱と し、原油価格の下落に加え、情報化、サービス化、都市化、高齢化が進み、民生、運 輸部門におけるエネルギー消費が伸びている。1990年代に入ってからのエネルギー政 策は、高まりつつある地球温暖化などの地球環境問題への対応を踏まえ、「経済成長、

環境保全、エネルギー需給安定」の調和を目指した、いわゆる「三体一体政策」とな っている。1990年10月に日本は、「地球温暖化防止行動計画」を決定し、2000年ま でに1人あたりの二酸化炭素排出量を1990年レベルで安定化するという目標を打ち 出した。1993年度からは、従来のサンシャイン計画、ムーンライト計画を一体化させ たニューサンシャイン計画(エネルギー環境領域国際技術開発推進計画)をスタート させ、太陽光、風力、燃料電池等の技術開発を進めている。また1993年 3月には、

1979年の省エネ法を強化した「エネルギー需給構造高度化法」、「省エネ、リサイクル 支援法」が成立した。1994年6月には、総合エネルギー調査会が、「長期エネルギー 需給見通し」の 改定を行ない、地球温暖化防止行動計画との整合性がとられている。

このように日本のエネルギー政策の変遷は、一貫して「経済成長維持」を前提とし、

そこから見込まれるエネルギーを安定的に確保することを、最重要の命題としてきた。

(29)

 

図1−6 日本におけるエネルギー政策の変遷

表1−2 日本における省エネルギー政策の歴史

昭和53年(1978) 通商産業省工業技術院(現:独立行政法人産業技術総合研究所)において

「ムーンライト計画」がスタート

昭和54年(1979) 「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)」制定/施行 省エネルギー法改正「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関 する臨時措置法(省エネ・リサイクル資源法)」制定/施行

「ニューサンシャイン計画」がスタート

平成9年(1997) 気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)

平成10年(1998) 改正省エネルギー法施行

平成14年(2002) エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律(2002年省エ ネルギー法)制定

平成15年(2003) 「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律(2002年省 エネルギー法)」施行

平成5年(1993)

日本の省エネルギー政策は石油危機を契機としてスタートした。1970 年代の 2 度 の石油危機により、経済は大きな影響を受け、省エネルギーの重要性が認識されると 共に、法制度の整備や各種支援等の省エネルギー政策を推進することとなった。表 1

−2に日本における省エネルギー政策の歴史を示している。

(30)

まず、法制度については、第二次石油危機直後の 1979 年に「エネルギーの使用の 合理化に関する法律」(省エネ法)を制定・施行した。省エネ法は、工場、建築物及び 機械器具に関する省エネルギーを総合的に進めるために、各分野において事業者が取 り組むべき内容とそれを支援する施策を定めたものである。省エネ法については、そ の後の国内外のエネルギーを巡る経済的・社会的環境の変化に対応するため、1993 年に改正し、省エネルギーに関する基本方針の策定や、エネルギー管理指定工場に係 る定期報告の義務付けなどが追加された。また、1997年に京都で開催された気候変動 枠組条約第3回締約国会議(COP3)の結果を受けて1998年に省エネ法の一部を改正 し、1999 年 4 月に施行した。改正の主な内容は、自動車の燃費基準や電気機器等の 省エネルギー基準へのトップランナー方式の導入、大規模エネルギー消費工場への中 長期の省エネルギー計画の作成・提出の義務付け、エネルギー管理員の選任等による 中規模工場対策の導入等である。更に、エネルギー消費の伸びが著しい民生・業務部 門における省エネルギー対策の強化等を目的として、2002 年 6 月に省エネ法を改正 し、2003 年 4 月から施行している。改正の主な内容は、大規模オフィスビル等への 大規模工場に準ずるエネルギー管理の義務付け、2,000m2以上の住宅以外の建築物へ の省エネルギー措置の届出の義務付けである。

また、1993年には「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業 活動の促進に関する臨時措置法」(省エネ・リサイクル支援法)を10年間の時限立法 として施行していた。この省エネ・リサイクル支援法は、省エネルギーや再生資源の 利用などの事業活動に積極的に取り組む事業者を支援する措置を定めたものである。

一方、省エネルギー関連技術開発については、1978年に通商産業省工業技術院(当 時:現独立行政法人産業技術総合研究所)において「ムーンライト計画」がスタート した。この計画では、エネルギー転換効率の向上、未利用エネルギーの回収・利用、

エネルギー利用効率の向上等エネルギーの有効利用を図る技術の研究開発を目的とし て、大型省エネルギー技術及び先導的・基盤的省エネルギー技術開発、民間における 省エネルギー技術の研究開発への助成等が推進された。1993年、「ムーンライト計画」

は、第一次石油危機直後の 1974 年に発足した新エネルギー関連技術開発に関する計 画である「サンシャイン計画」と統合され、「ニューサンシャイン計画」として引き続

参照

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