壺イメージ法に関する研究 [ PDF
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(2) 研究 1. 心の容れ物イメージに関する調査. の結果とほぼ一致するものであり、イメージされる心の. <方法>. 容れ物の個数の一般的傾向を示すことができたといえる. 対象:X県内の大学生及び短大生 119 名(女性 82 名,. だろう。. 男性 37 名) (平均年齢:19.92 歳,SD=1.11) 調査時期:2002 年 11 月∼12 月 材料:①卒業論文をふまえて筆者が作成した質問紙。. 2)イメージした容れ物の種類について 最も多くイメージされた容れ物は箱(63 名;51.2%) であり、ついで壺と引き出し(各 13 名;10.6%) 、宝石. 壺イメージ法関係マニュアル(田嶌,1997)を参考に. 箱(9 名) 、瓶(6 名) 、袋とゴミ箱(各 5 名) 、タンス(3. 教示文を作成し、自分の心の中のことが入っているいく. 名) 、缶(2 名) 、金庫(1 名)の順であった。また、選. つかの容れ物をイメージさせ、イメージした容れ物の個. 択肢以外の容れ物をイメージした人が 21 名(17.1%). 数、種類、特徴、印象を尋ねた。個数、種類については. おり、その種類は多岐にわたっていた。. 選択肢を用意した。特徴、印象については、本人にとっ. 以上の結果から、心の容れ物としてイメージされるも. て印象の強いものを3つまで選ばせ、それぞれについて. のは実に様々であることがわかった。これは、イメージ. 各 18 個の形容詞対がどれぐらい当てはまるかを 7 件法. された容れ物にその人の心の状態やパーソナリティが反. で尋ねた。形容詞対は卒業論文で得られた特徴・印象に. 映されており、心の比喩として機能しているためだと思. ついての自由記述と壺イメージ法に関する文献を参考に. われる。また、特にイメージされやすいのは箱であり、. 作成した。. これは卒業論文(福嶋,2000)の結果と一致するもので. 角張っている−丸みがある 2. 形容詞対:特徴 1.. あった。箱という分類が宝石箱・金庫・ゴミ箱などの多. 厚みのある−薄い 3.深い−浅い 4.明るい−暗い. 様な「箱状」の容れ物を包含する大きな分類であるとい. 5.派手な−地味な 6.透明な−不透明な 7.大き. うこと、箱が日常的なものであり、普段から生活の身近. い−小さい 8.かたい−やわらかい 9.人工的な−. にあるなじみぶかい容れ物であるということなどが関係. 自然な 10.丈夫な−壊れやすい 11.つるつるした−. していると考えられる。. ざらざらした 12.重い−軽い 13.整理しやすい−整. 3)イメージした容れ物の特徴・印象について. 理しにくい 14.実用的な−実用的でない 15.新しい. ① 平均的な特徴・印象と特性不安の関連. −古い 16.きれい−きたない 17.フタが開いている− フタが閉まっている 18.入り口が広い−入り口が狭い. 特徴・印象の各項目ごとに、得点の上位 25%を high 群、下位 25%を low 群とし、独立変数を各項目の得点. 形容詞対:印象 1.感じのよい−感じの悪い 2.. (high 群/low 群) 、従属変数を STAI の得点とする分. あたたかい−冷たい 3.うれしい−悲しい 4.日常. 散分析を行った。その結果、特徴では、9.人工的な−. 的な−非日常的な 5.頑丈な−繊細な 6.大切な−. 自然な、16.きれい−きたない、18.入り口が広い−入. どうでもいいような 7.なじみやすい−なじみにくい. り口が狭いにおいて5%水準の有意差があり、4.明る. 8.普通の−変わった 9.好きな−嫌いな 10.現実. い−暗いでは有意傾向があった。印象では、9.好きな. 的な−非現実的な 11.母性的な−父性的な 12.現代. −嫌いなにおいて5%水準の有意差があり、2.あたた. 13.遠くにみえる−近くにみえる. かい−冷たい、15.逃げ腰になる−ゆったりとしている. 風の−古めかしい. 14.鮮明にみえる−ぼんやりとしている 15.逃げ腰に なる−ゆったりとしている 16.安心な−不安な 17.. では有意傾向があった。 以上の結果から、人工的な容れ物、きたない容れ物、. 安定した−不安定な 18.扱いやすい−扱いにくい. 入り口が狭い容れ物、暗い容れ物をイメージする人は、. ②日本版 State-Trait Anxiety Inventory (水口ら,. 不安が高い傾向にあることが示唆された。また、イメー. 1991;以下 STAI)の特性不安尺度。. ジした容れ物に対して、嫌いだと感じたり、冷たいと感. 手続き:上記の質問紙を授業時間内に配布し、持ち帰っ. じたり、逃げ腰な気持ちを抱く人は、不安が高い傾向に. て各自で記入するように求め、後日回収した。. あることが示唆された。きたない、暗い、嫌い、冷たい. <結果と考察>. といったネガティブなイメージを浮かべる人が高不安傾. 1)イメージした容れ物の個数について. 向にあるということは、松本(1999)の「高不安者は快. 大部分の人は何らかの心の容れ物をイメージすること. イメージを想起することが少ない」という指摘と関連が. ができ、しかも複数の容れ物をイメージすることが示唆. あるものだといえる。. された。具体的には 2∼5 個の容れ物をイメージする傾. ② 種類別の特徴・印象. 向が強いことがわかった。これは卒業論文(福嶋,2000). ここではイメージされやすかった上位 3 つの容れ物.
(3) (箱/壺/引き出し)について検討した。独立変数を容. 複数の容れ物をイメージすることが示唆された。具体的. れ物の種類(箱/壺/引き出し) 、従属変数を特徴・印象. には 2∼5 個の容れ物をイメージする傾向が強いという. の各項目の得点とする分散分析を行った。その結果、特. ことがわかった。. 徴では、1.角張っている−丸みがある、2.厚みのあ. 2)イメージした箱/壺の特徴・印象について. る−薄い、4.明るい−暗い、7.大きい−小さい、15.. ① 箱/壺の平均的な特徴・印象. 新しい−古いにおいて5%水準の有意差があり、8.か. 独立変数を容れ物の種類(箱/壺) 、従属変数を特徴・. たい−やわらかい、16.きれい−きたない、17.フタが開. 印象の各項目の得点とする分散分析を行った。. いている−フタが閉まっているで有意傾向があった。印象. (Table.3)その結果、特徴では、1.角張っている−丸. では、12.現代風の−古めかしい、13.遠くにみえる−. みがある、4.明るい−暗い、5.派手な−地味な、6.. 近くにみえるにおいて5%水準の有意差があり、4.日. 透明な−不透明な、8.かたい−やわらかい、11.つる. 常的な−非日常的なで有意傾向があった。多重比較の結. つるした−ざらざらした、12.重い−軽い、13.整理し. 果では、壺と他の容れ物(箱/引き出し)との間に有意. やすい−整理しにくい、14、実用的な−実用的でない、. 差がみられることが多かった。一方、特徴では 18 項目. 15.新しい−古い、16.きれい−きたない、17.フタが開. 中 10 項目、印象では 18 項目中 15 項目と多くの項目で. いている−フタが閉まっている、18.入り口が広い−入り. は有意傾向はみられなかった。. 口が狭いにおいて5%水準の有意差があった。 印象では、. 以上の結果から、心の容れ物としてイメージされるも. 1.感じのよい−感じの悪い、2.あたたかい−冷たい、. のの形状やみかけといった特徴は容れ物の種類によって. 3.うれしい−悲しい、4.日常的な−非日常的な、9.. 左右されることが比較的あるものの、容れ物に対する感. 好きな−嫌いな、12.現代風の−古めかしい、16.安心. じ方である印象は種類によって左右されることは少ない. な−不安なにおいて5%水準の有意差があった。一方、. ことが示唆された。 これは、 イメージされた容れ物に個々. 有意差がみられなかった項目が特徴では 18 項目中5項. 人の心の状態やパーソナリティが反映されているためで. 目であったのに対し、印象では 18 項目中 11 項目と多く. あると思われる。種類の如何にかかわらず、イメージさ. の項目では有意差がみられなかった。. れる容れ物は心の比喩としての機能を果たしているとい. 以上の結果から、心の容れ物としてイメージされる壺. えるだろう。また、壺が他の容れ物(箱/引き出し)と. /箱の形状やみかけといった特徴は指定される容れ物の. 顕著に差があるのは、丸みのある形と古めかしい感じを. 種類(箱/壺)によって左右されることが多いが、イメ. 抱くことであった。. ージされた箱/壺に対する感じ方である印象は種類によ って左右されることは少ないことが示唆された。したが. 研究 2. 心の箱イメージ/壺イメージに関する調査. って、 「箱」と指定した場合でも、 「壺」と指定した場合. <方法>. でも、イメージされる箱/壺は心の比喩としての機能を. 対象:X県内の女子短大生. 果たしているといえるだろう。. 箱イメージ∼55 名(平均年齢:19.31 歳,SD=0.81). 有意差のあった項目をみてみると、心の容れ物として. 壺イメージ∼58 名(平均年齢:19.30 歳,SD=0.89). イメージされる壺は、箱に比べて、丸みがあり、暗く、. 調査時期:2002 年 11 月∼12 月. 地味で、不透明であり、かたく、ざらざらとしており、. 材料:①研究 1 で作成した質問紙を改変し、あらかじめ. 重く、整理しにくく、実用的でなく、古く、きたなく、. 箱イメージ/壺イメージを行うように教示した質問紙。. フタが開いており、入り口が狭いという特徴があることが. ②日本版 State-Trait Anxiety Inventory (水口ら,. わかった。また、感じが悪く、冷たく、悲しく、非日常. 1991;以下 STAI)の特性不安尺度。. 的な感じで、嫌いで、古めかしい感じで、不安な印象が. 手続き:上記の質問紙を授業時間内に配布し、持ち帰っ. あることがわかった。これらのことから、心の容れ物と. て各自で記入するように求め、後日回収した。. してイメージされる壺は、箱に比べて、感じが悪い、冷. <結果と考察>. たい、悲しい、嫌い、不安な感じなどのネガティブな感. 1)イメージした箱/壺の個数について. 情が反映されやすいことが示唆された。一方、心の容れ. 心の容れ物の種類を「箱」と指定した場合でも、 「壺」. 物としてイメージされる箱は、壺に比べて、整理しやす. と指定した場合でも、イメージされる容れ物の個数とそ. く、実用的であるという特徴があり、ネガティブな感情. れを思い浮かべた人数の関係はほぼ同じであった。大部. は反映されにくいということが示唆された。 したがって、. 分の人は心の箱/壺をイメージすることができ、しかも. 箱は表面的で現実的なことを取り扱ったり、整理したり.
(4) するのに適しており、壺はネガティブな感情といった心. /引き出しの比較)でも研究2(箱/壺の比較)でも、. の深いものをも扱うことができる容れ物であるといえる。. 形状やみかけといった特徴は容れ物の種類によって左右. このことから、 「壺」は、単なる容れ物の課題例というわ. されることが比較的多いが、容れ物に対する感じ方であ. けではなく、独自の特性を有するものであることが明ら. る印象は種類によって左右されることは少ないことが示. かとなった。. 唆された。しかしながら、同じ「箱」/「壺」でも、教. ② 箱/壺の特徴・印象と特性不安の関連. 示の段階で容れ物の種類を指定した研究2においての方. 箱/壺それぞれの特徴・印象の各項目ごとに、得点の. が、特徴・印象ともに両者の違いが大きく出るというこ. 上位 25%を high 群、下位 25%を low 群とし、独立変数. とがわかった。これらのことから、教示の段階で容れ物. を各項目の得点(high 群/low 群) 、従属変数を STAI. の種類を指定しない方が、指定した場合に比べて、イメ. の得点とする分散分析を行った。. ージされた容れ物の種類にかかわらず、その人の心が反. a) 箱の特徴・印象と特性不安の関連. 映されやすいといえる。よって、種類を指定しない場合. 箱においては、特徴では、3.深い−浅い、13.整理. は、イメージされた容れ物自体がその人の心を理解する. しやすい−整理しにくいで有意傾向があった。 印象では、. のに役立ち、心理臨床において重要な視点である個別性. 1.感じのよい−感じの悪い、2.あたたかい−冷たい、. をより大切にできると考えられる。一方、種類を指定し. 4.日常的な−非日常的な、17.安定した−不安定なに. た場合は、指定しない場合に比べて、容れ物自体に反映. おいて5%水準の有意差があり、 3. うれしい−悲しい、. される個々人の特性やユニークさといったものは失われ. 11.母性的な−父性的な、16.安心な−不安なでは有意. やすいものの、 「箱」または「壺」の持つ特性を生かすこ. 傾向があった。以上の結果から、深い箱、整理しにくい. とで、面接者の意図によって両者を使い分けることがで. 箱をイメージする人は、不安が高い傾向にあることが示. きる可能性があることが示唆された。. 唆された。また、イメージした箱に対して、感じが悪い. 2)心の容れ物の特徴・印象と特性不安の関連について. と思ったり、冷たいと感じたり、非日常的であると感じ. 本研究によって、容れ物イメージからその人の特性不. り、不安定だと感じたり、悲しいと感じたり、父性的で. 安をうかがうことができるということが示唆された。イ. あると感じたり、不安だと感じる人は、不安が高い傾向. メージした容れ物に対して、ネガティブな印象を抱く人. にあることが示唆された。. は、不安が高い傾向にあることがわかった。また、研究. b)壺の特徴・印象と特性不安の関連. 1では、人工的な容れ物、きたない容れ物、入り口が狭. 壺においては、特徴では、13.整理しやすい−整理し. い容れ物、暗い容れ物をイメージする人は、不安が高い. にくいで5%水準の有意差があり、1.角張っている−. 傾向にあることがわかった。研究2では、本研究におい. 丸みのある、6.透明な−不透明な、8.かたい−やわ. て示唆された「箱」/「壺」それぞれの平均的な特徴・. らかいでは有意傾向があった。印象では、5.頑丈な−. 印象とは違うものをイメージする人は、不安が高い傾向. 繊細なにおいて5%水準の有意差があった。以上の結果. にあることがわかった。これらのことは、イメージ面接. から、整理しやすい壺、角張っている壺、透明な壺、や. において、イメージされた容れ物から不安傾向を把握す. わらかい壺をイメージしたり、イメージした壺を繊細だ. る指標となると思われ、 重要な知見が得られたといえる。. と感じる人は、 不安が高い傾向にあることが示唆された。. 3)今後の展望 今後は、より幅広い年代の人々を対象として、発達的. 総合考察. な視点を加えるとともに、様々な個人特性との関連につ. 1)心の容れ物の種類を指定することの有無がイメージ. いても検討していくことで、「容器イメージから見た人. に及ぼす影響について. の心の理解と分析(田嶌,1998) 」がさらに進んでいく. 本研究では、研究1においては種類を指定せずに「心. ものと思われる。. の中のことが入っている容れ物」とだけ教示したのに対 して、研究2では容れ物の種類を「箱」/「壺」と指定. 主要参考・引用文献. した教示を行った。. 松本明夫 1999. イメージされる心の容れ物の個数については、研究1 でも研究2でもほぼ同じであり、種類の指定の有無によ って変わるものではないということがわかった。 心の容れ物の特徴・印象については、研究1(箱/壺. 不安傾向とイメージ体験の関連−主. にイメージ体験の様式について− 催眠学研究,44, 2,3-8. 成瀬悟策監修. 田嶌誠一編. 1987. 壺イメージ療法−. その生い立ちと事例研究− 創元社..
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