著者
呉 正培, 松本 一見
雑誌名
言語科学論集
巻
17
ページ
59-72
発行年
2013-12-01
URL
http://hdl.handle.net/10097/57266
日本人大学生の韓国人イメージに関する質的研究
呉
正培・松本一見
キーワード:韓国人イメージ、形成要因、直接経験、韓国語学習、日本人 要旨 本研究では、 PAC分析を応用した面接法を用いて日本人大学生の韓国人イメー ジを検討した。その結果、まず韓国人の特性に関するイメージが多いことや、韓国 人イメージを形成する主要因を明らかにした。次に、個々人のイメージにみられる 特徴として、1)反日という認識が心配と不安をもたせていること、 2) 個人の中に韓 国人への反感と好感が共存していることを見出した。最後に、直接経験によって不 安や警戒心が払拭され親密感が生まれることや、韓国語の言語的特徴も韓国人イ メージにつながっていることを浮き彫りにした。 1.研究の背景と目的 われわれは特定の集団に対して何らかのイメージを抱いている。「黒人は身体能力 が高い Ji女性は繊細である」といったものがその具体例である。社会心理学の対人認 知研究 (Brewer,1988;Fiske&Neuberg
, 1990) では、人が他者を判断する際に個人に 関する情報よりもその人が所属する集団に関する情報を利用しやすいことが明らか になっている。これは集団に対するイメージが当該集団の構成員への先入観として 作用しうることを示唆する知見といえる。集団の特徴はそれに属するすべての人に 当てはまるとは限らない。また、集団の捉え方を個人に適用することには、個性を考 慮せず、画一的に認識してしまい、個人に対する判断を歪める側面がある。 本研究は、日本人の韓国人イメージが韓国人との接触場面で先入観として作用す る側面に注目し、面接法を用いて日本人大学生の韓国人に対するイメージが形成さ れる多様な事例を検討したものである。具体的な目的は次の3点である。第一は韓国 人イメージの内容と影響要因についての具体的な情報を明示することである。どの ようなイメージが何によって形成されているかを明らかにする。第二は個々人のイ メージに共通してみられる特徴を記述することである。インフォーマント 11名の多 様な事例に共通してみられる傾向を導き出す。第三は直接経験と韓国語学習の影響のあり方を検討することである。どのような経験や側面がイメージの形成や変化に つながっているか、またどのような方向に影響しているかを浮き彫りにする。 2. 先行研究と本研究の特徴 日本人が韓国人に対してどのようなイメージを抱いているか、そのイメージに何 がどのように影響しているかについてはこれまでも多くの研究が行われてきた。代 表的な研究を表l に示す。 表1 日本人の韓国人イメージに関する主要研究 先行砂F究 調査方法 調査対象者 主な結果 -内容:戴勉、集団主義的、閉鎖的、非民主的 辻村・金・生田 質問紙法 東京・大阪の居住者 -影響要因 (1982) (1350名) 一韓国人との欄蜂撒 一訪韓経験:イメージの好転 書有名元(1991) 個人面接法 日本全国の20歳以上 -内容:感情的、毅勉、集団主義、非友安荷旬 (質問嗣 (1243名) -内容:気刺虫い、集団主謝号、穀勉、何を考 えているかわからない、感情的、攻撃的 原・塩田@∞0) 個人面接法 日本全国の18歳以上 -影響要因 (質問紛 (1341名) 一世代:若年層ほど好意的 テレビと新聞以外のメディア: 好静旬なイメージ 河野・原 (2010) 個人面接法 日本全国の'20歳以上 -内容:気が強い、感情的、戴勉、集団主器包 (質問紛 (14η名) -内容: 24カテゴリー 日;椅大学の学部生 -影響要因 呉(2012) 質問紙法 (511名) 一謝童話学習(韓国語能力) 対人関係のあり方に関するイメージの形成 ステレオタイプ的なイメージの君事化 日本3大学の学部生 -内容 6 因子) :気さくな隣人、熱い表現者、 呉(2013a) , 想ν強き者、反日家、有能な毅勉者 呉(2013b) 質問氏法 (内容調査白 11名, -影響要因: r想し哩皇き者」を除いた4因子の 構造調査 621名) 因果モデル 従来の研究は、そのほとんどが集団レベルでの傾向を統計的に分析し、より一般的 な知見を求める量的研究であった。辻村・金・生田(編) (1982) 、謝名元(1991)、原・塩田 (2∞0) 、河野・原 (2010) は世論調査の性格が強く、質問紙を用いて広範囲に大規模な 調査を実施した。一方、呉 (2012) 、呉 (2013a) 、呉 (2013b) は日本人大学生を対象に質 問紙調査を行ったものであり、本研究と対象者が一致している。呉 (2012) は韓国語の 学習経験者と未経験者の比較を通して韓国語学習の影響を検討した。呉 (2013a) は自
由記述のデータに内容分析と構造分析を行い、 24 カテゴリーと 5因子を導き出してい る。呉 (20l3b) は呉 (2013a) のデータに回帰分析などの統計分析を加え、イメージの形 成に関する因果モデルを提案した。これらの研究は、日本人が韓国人に対してどんな イメージをもちやすいか、そのイメージはどのような情報源や経験によって形成さ れやすいかといった、一般的で抽象的な情報を提供するものである。そのため、その 結果を日本人個人のレベルに還元することは難しい。たとえば、呉 (20l3a) は日本人 大学生が韓国人に対して複合的な認識をもっていることを指摘したが、同研究の分 析方法ではそれが個人レベルでもいえるかどうかまではわからない。また、先行研究 の影響要因に関する情報は抽象的なレベルにとどまっている。たとえば、呉 (2013b) の因果モデルは特定の情報源や経験(直接経験,韓国語学習)がイメージに影響して いることを統計的に示したが、どのような情報や経験がイメージにつながるかと いった具体的な情報は含んで、いない。 本研究は、個人レベルでの多様な事例を分析し、より具体的な知見を探っている質 的研究である点で従来の研究と異なっている。従来の量的研究で明らかになってい る知見を個人レベルで検証するとともに、質的データをフルに活用し、イメージの内 容と形成メカニズ、ムに関するより多様で具体的な情報を提供するところに特慨があ る。 3. 研究方法 3-1. 調査の方法と内容 今回の調査では PAC分析を応用した半構造化面接法を用いて、日本人大学生の韓 国人イメージに関する多様な事例を検討した。 PAC
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個人別態度構造)分析は、自由連想、クラスター分析、インフォーマントによる解釈な どを通じて、個人ごとに態度やイメージを分析する方法である(内藤, 2006) 。本研究 ではデータ収集において面接者の関与をできるだけ排除する目的で、面接に PAC分 析の「自由連想」と「インフォーマントによる解釈」の技法を組み入れた。 質問項目はイメージの内容、形成要因、直接経験の影響、韓国語学習の影響、属性の 5つの部分に分けられる。イメージの内容については、各連想項目に対して具体的な 説明を求めた後、そこから浮かび上がるイメージを尋ねた。形成要因については、連 想項目に関わるエピソードをもとに、各イメージに影響を与えた情報源や経験を挙 げてもらった。直接経験の影響については、韓国人との接触と訪韓経験によるイメージの形成と変化について質問した。韓国語学習の影響については、学習そのものによ る影響と、学習に伴う環境(対韓情報源,直接経験,対韓関心)の変化がもたらす影響 を聞いた。属性としては年齢、専攻、学年、直接経験、韓国語の学習経験を確認した。 3-2. インフォーマント 調査は却08年 10 月 30 日 -11 月 21 日に宮城県のT大学で学部生 11名を対象に実施し た。調査協力者を募集する際に、簡単な属性調査を行い、インフォーマントの属性が 偏らないようにした。松本が面接者となり、一人当たり 50-80分の調査を行った。イ ンフォーマントの詳細を表2 に示す。 都インフォーマントの属性 インフォーマント 性別 年齢 専攻 学年 韓国人との 訪韓 韓国語 韓国語 欄蜂轍 経験 学習歴 能力 A 男性 22歳 工学部 4年 有 無 。 O,~ B 女性 20歳 教育学部 2年 有 値 。 0点 C 男性 23歳 文学部 4年 有 有 。 。点 D 女性 21歳 経済特ß 3年 有 有 。 0,長 E 男性 20歳 経済学部 l年 有 無 8 ヶ月 4点 F 男性 20歳 工学部 l年 有 有 4 ヶ月 5点 G 女性 19歳 教育学部 l年 有 壷E 5 ヶ月 6点 H 男性 21歳 経済学部 2年 有 無 I年7ヶ月 7,県 女性 19歳 法学部 2年 有 無 I年 8点 J 男性 20歳 経済特E 2年 有 無 8 ヶ月 10点 K 女性 22歳 工学部 3年 有 有 1年 10点 韓国舗肋は「読む・聞く・書く・話すj の4技能への自己開面(各5閣稽)を20点満点に換算. 3-3. 面接の手順 面接は事前に行った属性調査の回答を確認するところから始めた。直接経験や韓 国語の学習経験がある人には、どのような経験をどの程度したかを尋ねた。次に、「韓 国人j という刺激語を与え、思い浮かぶことを自由にカードに書いてもらった。その 後、各連想項目に対して具体的な意味や関連するイメージ、を語ってもらい、各イメー ジに何が影響しているか内省してもらった。次に、連想項目をそれが表すイメージの 内容を基準にグループ分けしてもらい、その理由を説明してもらった。続いてグルー プ聞の関係を解釈してもらい、自分のもつイメージ全体についてまとめてもらった。 最後に、直接経験、韓国語の学習経験がある人には、各経験のイメージへの影響につ いて答えてもらった。
4. 結果と考察 4-1. 韓国人イメージの内容 (1)結果 インフォーマントによる連想項目の解釈に基づき、韓国人に対するイメージを 10 カテゴリーにまとめた。さらに 10 カテゴリーをその性質より特性に関するもの(特 性)、対日態度に関するもの(対日)、外見に関するもの(外見)、能力に関するもの(能 力)、晴好に関するもの(噌好)の 5領域に分類した。その結果を表3 に示す。 10 カテゴリーのうち 5 カテゴリーが特性に関する内容であり、日本人大学生が韓国 人の内面的特徴に目を向けていることがわかる。対日態度に関する内容も 2つ現れて おり、日本や日本人との関連性を意識している様子もうかがえた。具体的には、韓国 人の特性について「礼儀や伝統を大切にし、親和性と積極性が高く、自分を表に出す」 イメージを抱いていた。対日態度については「日本への反感や好感を抱いている」イ メージ、外見と能力については「美人が多く、能力が高い」イメージをもっていた。 表 3 韓国人イメージの内容 区分 韓国人イメージ インフォーマントの回答 出現頻度(人) 特性 I 礼儀や倒舵劃見し、 礼儀正しし、/目上の人を大切にする/ 63.6 (7) 団結力が強い 伝統を重んじる/グループの結束が強い 特性 2 明るく、やさしい おもしろい/陽気である/ 63.6 (7) やさしい/親切である 特性 3 意見・主張・感情を表す はっきり言う/自己主張をする/ 54.5(6) 感情を外に出す/人の目を気にしない 特性 4 積極的で、向上心がある 積極的である/向上心がある/ ラ45 (6) 情熱的である/新しいものが好きである 特性 5 まじめである まじめである/まっすぐで、ある 27.3(3) 対日 I 過激で、反日感情問齢、 気十生が荒しゾ反日感情をもってし、る/ 455 (5) 日本が嫌し、である/日本人に対抗している 対日 2 日本に友好的で、日本人 日本文化に興味がある/日本に友女詩句である/ 36.4(4) と変わらない 日本人と変わらない/親しみゃれ、 外見 美人が多く、美容に関心 美人が多い/肌がきれいである/ 545 (6) が高い 美容についての関心が高い/よく整形する 能力 能力やスキルが高い 頭がし、い/闘すが進んでいる/ 455 (5) 日本語が上手である/英語が得意である 噌女子 辛い食べ物を好む 辛いものが好きである/キムチをよく食べる 27.3(3) 出現頻度防~. N=lL (2) 考察 本研究では、日本人大学生が韓国人に対して内面的な特徴に関するイメージを多
く抱いていることが明らかになった。「礼儀や伝統を大切にし、親和性と積極性が高 く、自分を表に出す」といった韓国人の「特性」に関する認識は抽象度が高く、「外見」 「能力 Jf曙好J よりも真偽を確かめることが難しいため、変化しにくい内容といえる。 よって、韓国人との接触場面で相手を判断する際にも大いに用いられると推測され る。その機能としては、まず異文化知識として働き、相手の行動を解釈する手掛かり となる側面が考えられる。一方で、先入観として働き、個性を無視した画一的な判断 を促す側面も看過してはいけない。 呉 (2013a) は日本人大学生の韓国人イメージに矛盾しているような内容が存在す ること、つまりイメージの内容が複合的であることを特徴として挙げている。本研究 で見出した 10カテゴリーからは、自国を嫌う存在としての反感 (f過激で、反日感情が 強い J) のみならず、自文化に興味をもっ存在としての好感と、自分たちと類似した存 在としての親密感 (f 日本に友好的で、日本人と変わらない J) も見受けられた。した がって、呉 (2013a) の主張は本研究の結果からも支持された。 4-2. 韓国人イメージの形成要因 (1)結果 インフォーマントが連想項目に関するエピソードをもとに自分のもつ各イメージ の形成要因として挙げたものを内容別 (10カテゴリー)、さらに領域別に集計した。そ の結果を表4に示す。 特性に関するイメージ (5 カテゴリー)はいずれも韓国人との接触経験を主な形成 要因としており、実際の交流経験を通して生成されていることがわかった。対日態 度に関するイメージは主に日本のテレビ放送(特にニュース)によって形成されて いた。 10 カテゴリーの主な形成要因 (24項目)を総合的に分析した結果、日本人大学生 の韓国人イメージを形成する 4つの主要因を見出した。第一は直接経験である。「明る く、やさしい Jf意見・主張・感情を表す」といったイメージは韓国人との接触経験、訪 韓経験(旅行)の両方から生み出されており、直接経験との関連が最も強かった。第二 は日本のテレビ放送である。「過激で、反日感情が強い Jf 日本に友好的で、日本人と変 わらない」といったイメージは主にテレビ(特にニュース)からの情報に起因するも のであった。第三は口コミである。友人や先輩から聞いた話が「能力やスキルが高い J 「積極的で、向上心がある J といったイメージの形成に寄与していた。第四は韓国語学 習である。授業で得る情報や韓国語に関する知識が「礼儀や伝統を重視し、団結力が
強い Jí積極的で、向上心がある J といったイメージにつながっていた。 表 4 韓国人イメージの形成要因 区分 韓国人イメージ 形成要因 出現頻度(人) 日本のテレビ前差(韓国紹介、ニュース) 57.1(4) 相生 l 礼儀や伝統を重視し、 韓国人との棚虫(留学生、交流会、教員) 42.9 (3) 団結力が強い的=7) 韓国語学習(教材、教員の話、敬語J 28.6 (2) 聞いた話(韓国人教員、韓国人知人から) 28.6 (2) 特性 2 明るく、やさしし、的=7) 韓国人との揃虫(交流会、友人、韓国語教員等) 71.4 (5) 韓国旅行 28.6 (2) 特性 3 意見・主張・感情を表す 韓国人との槻虫(留学生、友人、交流会等) 100 0 (6) 小~=6) 韓国旅行 33.3(2) 韓国人との欄虫(韓国語教員、交流会、友人等) 83.3(5) 特性 4 積極的で、向上心がある 日本のテレビ放送(ニュース、スポーツ中継) 50.0 (3) ω=唱) 韓国語学習(教員の言í'il 33.3(2) 閉し、た話(先輩、友人) 33.3(2) 特性 5 まじめである制=3) 韓国人との櫛虫(韓国語教員、友人) 100 0 (3) 対日 I 過激で、反日感情が強し、 日本のテレビ放送(ニュース、スポーツ中網*l 80.0 (4) 小~=5) 対日 2 日本に友好的で、日本人 日本のアレビ放送(ニュース、韓国紹介) 750 (3) と変わらない ω=斗) 韓国人との接触(韓国語教員、友人、交流会) 50.0 (2) 」 美人が多く、美容に関心 日本のテレビ放送(韓国紹介) 50.0 (3) 外見 が高い側当) 芸能人・スポーツ選手(チェジウ、キムヨナ) 50.0 (3) 韓国防行 33.3(2) 能力やスキルが高い 韓国人との欄虫(韓国語教員、留学生友人等) 100 0 (5) 能力 日本のテレビ放送(韓国紹介、ニュース) 60.0 (3) 的=5) 聞いた話伎人) 40.0 (2) 曙貴子 辛い食べ物を好む(N=3) 日本のアレヒ守放送(韓国紹介) 66.7 (2) 韓国の食べ物(キムチ) 66.7 (2) 出現頻度lおも. (2) 考察 韓国人の特性に関する認識が実際の接触経験を通して形成されることについて は、 2つのプロセスが考えられる。まず韓国人と交流してはじめて気づき、韓国人はこ のような特性をもっという認識が生み出されるケースである。特性に関するイメー ジはいずれも人に対する態度や人付き合いの仕方ともいえる内容であり、接触場面 で気づきやすいものと思われる。もう一つは事前にもっていた知識や情報が交流経 験を通じて維持・強化されるケースである。特性に関するイメージの形成には接触経 験のみならず、日本のテレビ放送、韓国語学習、口コミなどの要因も関わっていた。 よって、ほかの情報源や経験からそのような認識をもっている状態で実際の交流機 会を迎え、既存の認識に符合する情報が選択的に処理される可能性も考えられる。
呉 (20l3b) は回帰分析の結果に基づき、自分たちを嫌う存在としての否定的な認識 (f 反日家 J) がマスメディアの報道と学校教育から形成されることを示した。本研究 でも、日本のテレビ報道が「韓国人が日本や日本人をどう思うか」に関する認識を作 り上げていることを確認した。また、自分たちを嫌うといった認識のみならず、自分 たちに好感や親密感を抱くといった認識の形成にも寄与していることを浮き彫りに した。 4-3. 個々人のイメージにみられる特徴 (1)結果 インフォーマント 11 名の事例を個別に、また総合的に分析したところ、個々人のイ メージにおいて 2つの共通した傾向がみられた(表5) 。 第一に、反日という認識が心配と不安をもたせていた (6名)。日韓の歴史的な関係 や反日デモのニュースから日本や日本人を敵対視しているという認識をもつように なり、それが韓国人と接することへの不安として現れていた。第二に、個人の中に韓 国人への反感と好感が共存していた (3名)。韓国人の中には日本が嫌いな人もいれ ば、日本や日本文化に友好的な人もいると思っている人 (A と J) や、反日感情をもっ ていることへの不安と外見や文化が類似していることへの親密感をともに抱いてい る人 (G) もいた。 表 5 個々人のイメージにみられる特徴 特徴 事例(インフォーマントの回答) 出現頻度(人) -日の丸や首相の写真が燃やされているニュースを見る と、日本が嫌いなのがわかる(A)。 -歴史上であまり仲良くないということを学び、日本や 反日としづ認識が心配と不 日本人をよくは思っていないという考えがあり、留学 安をもたせている 生と接する際lこIt;配と不安があった (C) 。 54.5 (6) -反日デ、モのニュースを見て、皆日本人才i嫌し、なのかな と思った(I)。 -戦争のときに日本人がひどいことをしたから、恨んで いるのかなと思った (G) 。 -若者の中には、歴史問題に高い関心をもっている人 (日本が嫌しな人)と、日本の大衆刻じを受け入れて いる人(日本が好きな人)がいると思う(A)。 反感と員確が共存している -反日感情をもっているかもしれないとしづ不安がある 27.3(3) が、見た目と文化が似ているだけに親近感もある (G) 。 -日本が嫌いという人も多いけど、日本人と仲良くなり たいという人も多い(J)。
(2) 考察 呉 (20l3a) は日韓大学生の相手国民に対するイメージを比較分析し、日本人の韓国 人に対する「反日家」としての否定的な認識が韓国人との接触場面で緊張感や警戒心 を助長しうる側面を指摘した。本研究では、日本人が韓国人に対して感じる心理的距 離はどのようなものなのか、それはどこから形成されるかについての具体的な情報 を提供している。また、呉 (20l3a) は日本人大学生の認識に好感 (í気さくな隣人 J) と 反感 (í 反日家 J) の両方が含まれていることを述べた。しかし、それは日本人大学生と いう集団レベルでの認識を示しており、個人の中にもそのような複合性がみられる かは明らかにされていなかった。本研究は日本人個人の中にも韓国人に対する好感 と反感の入り混じった複雑な感情が存在することを明確にした。 4-4. 直接経験の影響 (1)結果 直接経験の韓国人イメージへの影響を検討するために、どのような韓国人との接 触、どんな訪韓経験がイメージの形成や変化を促しているかを分析した。その結果を 表6 に示す。ある程度継続性のある接触のみを「韓国人との接触」とし、旅行での一度 限りの接触は「訪韓経験」と見なした。 インフォーマントが接触した韓国人は、友人、留学生、韓国語教員、高校・大学問交 流の相手など様々であった。 í4.2韓国人イメージの形成要因」の表4からもわかるよ うに、接触対象によって異なるイメージが形成されることはみられなかった。また、 訪韓経験はすべて旅行であり、旅行で、出会った人(店員,タクシーの運転手)の行動、 見かけた韓国や韓国人の様子がイメージの形成につながっていた。 直接経験によるイメージの変化については 2つの方向性がうかがえた。第一に、反 日という認識に伴った不安や警戒心が直接経験によって払拭されていた。反日感情 が強く、日本人が嫌いなのではないかという心配があったが、交流した相手にやさし く接してもらい、安堵している様子がうかがえた (C とI)。第二に、無関心が直接経験 を通して親密感に変わっていた。接する前はあまり意識したことがなく、イメージも なかったが、実際に行ってみて、日本人と変わらないことに気づき、身近に感じるよ うになるケースもあった (F) 。
表 6 酎妾経験の影響 直族経験 影響 事例(インフォーマントの回答) -韓国語の先生は質問にすぐ答えてくれ るし、学生のたどたどしい話もちゃんと イメージの形成(10 名)ー 聞いてくれる(I)
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r明るく、やさしし、」 -友人も留学生もやりたくないことははっ.
r意見・主張・感情を表すj きりと嫌と言っていた(B)。.
r積極的で、向上心がある」 -貴由亘の交流試合で相手は前に前に積極的.
rまじめである」など に攻めてきた0) 韓国人との -友人は勉強をやるとちゃんと終わるまで 接触 やる (F) 。 -日本人が嫌し、だから冷たくされるのかな イメージの変化。名)町 と思っていたが、韓国語の先生にやさし.
r過激で、反日感情カ2強いJ く接してもらい、そんなことないな、普通 =今「明るく、やさしし、J r 日本に友好的で、 におしゃべりできるなと思った(I)。 日本人と変わらなしリ -会う前はあまりイメージがなかったが、 -無関心司親癌感 友人や交流会を通して触れてみて、結構 接しやすし、人が多いと思った (F) 。 -コンビ、ニの店員、焼肉屋の従業員、タク イメージの形成 (4 名)・ シーの運転手などの親切な行動が嬉し かった (C) 。•
r明るく、やさししリ -カップルの密着度が高く、肩を組んだり、.
r意見・主張・感情を表す」 訪韓経験•
r美人が多く、美容に関心が高し、」など ベアルックを着たりしていた依)。 -化粧品売場、スキンケアの店、エステが 多かったの)。 イメージの変化時名) -ァレビで反日感情が幸街草されていたけど、•
r過激で、反日感情が多いI 実際に行ってみるとやさしい人が多かっ 斗「明るく、やさししリ た (C) 。 韓国人との接鵬職者は 11 名.訪韓経験者は 4 名. (2) 考察 直接経験によるイメージの変化の事例は少なかったが、すべての事例は直接経験 による認識の好転可能性を示しており、異なる集団の構成員が接触することによっ て両者の関係がよくなるという接触仮説 (contact hypothesis) を支持するもので あった。本研究で報告された事例は、日本人の韓国人への根強い反感(反日という認 識)が韓国人との接触経験や訪韓経験を通して低減されることを示唆している。一 方、交流した相手のインパクトが強すぎたため、イメージの変化が起こらなかった ケースもある。インフォーマント A は、同じ研究室の韓国人留学生に対して「彼の特 徴は個性だと思っているから、自分の韓国人イメージには反映されていない」と述べ ている。これは、集団のイメージに当てはまらない個人に出会っても、例外的な人だ と処理され、集団のイメージは変わらないというメカニズム、つまりサブタイプ化(subtyping) を示す実例といえる。 4-5. 韓国語学習の影響 (1)結果 学習そのものによる影響(直接的な影響)と学習に伴う環境の変化がもたらす影響 (間接的な影響)に分けて、韓国語学習の韓国人イメージへの影響を検討した。 ①直接的な影響 表 7 韓国官学習の直踊句な影響 韓国語学習 影響 事例(インフォーマントの回答) -韓国語教材(コラム)を通して韓国人は すぐに目上の人に席を譲るということを イメージの形成。名)・ 知った(I)。
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r制義や伝統を畳見し、団結カカ'5郎、j -韓国語の先生から韓国の大学生は授業中 授業.
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r積極的で、向上心がある」 に積極的に質問するという話を聞いた (B) 。 r 日本に友好的で、日本人と変わらなし、」 -韓国語の先生から韓国人の漢字学習 (教員の話, や韓国の流行についての話を聞いて、 耕オ,課魁 日本人と似ていると思った (G) 。 イメージの変化(1名)・ -日本人と大して変わらないと思っていた が、レポートのために韓国の食文化を調.
r 日本人と変わらなしリ べてみて、器をもたなし、で食べるなど、 二今「日本人と違う」 日本人と大分違うと思った包)。 -韓国語には尊敬語が多く、目上の人には イメージの形成 G 名) 必ず使うというイメージがある(E)。 韓国語.
r礼儀や伝統を覇見し、団結力刺虫し、」 -韓国語は敬語が発達しているので、目上 の人を大切にするイメージがある(I)。 (特徴) -言語が違うので遠い柄生だと思っていた イメージの変化(1名)。 が、勉強してみると日本語と韓国語は近.
r遠い存在J =今「身近な嗣宝」 いと思い、親近感がわいた ω 。 韓国語の学習経験者は 7 名. 学習そのものによる影響としては、韓国語の授業と韓国語の特徴がイメージの形 成を促していた(表7) 。授業については、教員や教材から獲得した知識、クラスメート の発表や課題を通して得た情報が韓国人イメージの形成に寄与していた。韓国語そ のものについては、敬語の発達など言語的特徴が韓国人イメージにつながっていた。 学習によるイメージの変化に関しては2つの異なる方向性がみられた。一つは類似し た存在という認識から違う存在という認識への変化である。調べ学習(課題)が日本 人と似ていると思っていた人に日本人との相違点(食文化など)に気づくきっかけを与えていた (E) 。もう一つは遠い存在という認識から身近な存在という認識への変 化である。使用言語が違うことから遠く感じていた人が、韓国語学習を通して両言語 の類似点に気づき、韓国人も身近に感じるようになっていた(J)。 ②間接的な影響 韓国語学習に伴って学習者の対韓情報源、直接経験、対韓関心にどのような変化が 起こるか、またその変化が韓国人イメージにどう影響するかを検討した(表8) 。 表 8 韓国語学習の間梯句な影響 プロセス 影響 事例(インフォーマント巨降) -韓国語の先生はまじめでまっすぐな印 イメージの形成(N=5) 象がある (E) 。 -韓国語の先生は授業で学生に積極性 韓国語学習 「まじめである J を求めてくる(I)。 「樹酎句で、向上心がある」 -韓国語の先生は授業で欧米の学生と 「能力やスキルが高し、J 韓国人との接触 「意見・主張・感情を表すJ など 流暢な英語で話していた(I)。 (韓国語教員) -韓国語の先生は発音が悪かったら悪 いとズパッと言ってくれる(I)。 韓国人イメージ イメージの変化制=1) -日本人が嫌いだから冷たくされるのか
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r過激で、反日感情料虫い」 なと思っていたが、韓国語の先生にや 司「明るく、やさしし、J r 日本に友責荷包で、 さしく接してもらい、そんなことないな、 日本人と変わらなし、」 普通におしゃべりできるなと思った(I)。 韓国語の学習経験者は 7 名 学習者の回答からは、学習に伴って新しい情報源(韓国ドラマ,韓国人韓国語教員 との接触など)が加わり、韓国人(韓国語教員)との接触が生まれ、韓国への関心が広 がる(同年代,大衆文化などへ)といった環境の変化が見受けられた。しかし、そのよ うな環境の変化がイメージの形成や変化につながる事例は多くなかった。確認され たのは、韓国語学習が韓国人(韓国語教員)と接する機会を提供し、その人から受けた 印象が韓国人イメージの形成や変化を促すケースのみであった。 (2) 考察 呉 (2006) は本研究と同様の方法で韓国人大学生の日本人イメージを検討し、日本 語学習の影響には日本語の授業による直接的な影響と学習に伴う環境の変化がもた らす間接的な影響があることを明らかにした。本研究は韓国語学習も韓国人イメー ジの形成に直接的・間接的に影響を及ぼすことを浮き彫りにしている。呉 (2012) は韓 国語の学習経験者と未経験者の対韓情報源及び韓国人イメージ全般の形成要因を比較し、学習経験者にとっては韓国のドラマや映画、韓国人との接触経験、韓国語の授 業といった要因の情報源としての比重や影響力が大きいことを示した。本研究は授 業のどんな要素が韓国人イメージに影響を与えるかを明確にしている。また、韓国語 の言語的特徴も韓国人イメージの形成に寄与していることを提示した。 本研究では、韓国語学習に伴う環境の変化がうかがえたものの、その変化はそれ ほど顕著ではなかった。つまり、情報源がドラマ以外の韓国メディアへ広がる様子 や、韓国語教員との接触以外にも直接経験が増加する様相などは観察されていない。 これはインフォーマントの韓国語能力の低さに起因しているものと思われる。呉 (2006) は日本語の学習経験者の事例を通して言語学習に伴う環境の変化が言語能力 の高い学習者で起こりやすいことを指摘した。本研究のインフォーマントの韓国語 能力は全体的に低く(全員 10点以下, 20点満点)、それが結果に影響した可能性があ る。 5. まとめと今後の課題 本研究では、日本人の韓国人に対するイメージが韓国人とのコミュニケーション を阻害しうる側面に注目し、 PAC分析を応用した面接法を用いて日本人大学生の韓 国人イメージが形成される多様な事例を分析した。その結果、まず韓国人イメージ の内容 (10 カテゴリー)と形成要因を明示した。 10 カテゴリーのうち特性に関するイ メージが多いことを明らかにし、イメージを形成する 4つの主要因(直接経験,日本の テレビ放送,口コミ,韓国語学習)を抽出した。次に、個々人のイメージにみられる特 徴として、1)反日という認識が心配と不安をもたせていること、 2) 個人の中に韓国人 への反感と好感が共存していることを見出した。最後に、直接経験と韓国語学習が韓 国人イメージに関わる事例を通して、両経験の何がどう影響するかについての具体 的な情報を提供した。直接経験によって不安や警戒心が払拭され親密感が生まれる ことや、韓国語の授業のみならず、韓国語の言語的特慨も韓国人イメージにつながっ ていることを浮き彫りにした。 本研究は大学生のみを対象としている。今後、より多様な階層を含めた調査を行 い、日本人一般にみられる傾向や世代による違いなどを分析する必要がある。また、 今後の調査では韓国語能力の高い人も盛り込み、韓国語学習の間接的な影響を再検 討することも求められる。
重量考文献
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