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中学生に対するストレスマネジメント教育に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)中学生に対するストレスマネジメント教育に関する研究 −リラクセーション技法の実践を通した検討− キーワード:ストレスマネジメント教育,リラクセーション. 人間共生システム専攻 下田. 【問題と目的】 Lazarus & Folkman(1984)の心理社会的ストレスモ デルの実践応用という観点,及び学校不適応の背景に 「学校ストレス」の存在を指摘する研究の流れ(岡安,. 芳幸. 1986)等が挙げられるが,短時間で実施可能という点は とりわけ,カリキュラムの自由度が低いわが国の実情に 即したものであると思われる. 多岐に渡るリラクセーション技法のうち本研究では,. 1994)を受けて近年,ストレスマネジメント教育(以下. 先行研究の動向(例えば三浦,2002)を考慮し,漸進弛. STM 教育)が注目を集めている.. 緩法(以下 PrR) ,自律訓練法(以下 AT) ,ペアリラクセ. STM 教育とは「ストレスに対する自己コントロールを 効果的に行えるようになることを目的とした教育的な. ーション法(以下 PaR)を取り上げ比較検討することを 目的とする.. 働きかけ(山中,2000)」などと定義される,ストレス. 次にリラクセーション技法の効果評定について述べ. に対する予防的,健康教育的な働きかけの包括的な概念. る.先行研究(Bernstein & Carlson,1993)からこれ. である.. らリラクセーション技法は,ストレス反応の低減のみな. STM 教育は,海外で早くからその取り組みがなされて. らず,対象者の認知的側面にも影響を及ぼす可能性が考. いるが,海外の先行研究においては包括的なパッケージ. えられる.ストレス規定要因における認知的側面として. の実施が先行しており(例えば Gilbert & Orlick,1996) , は認知的評価があるが,ストレス緩衝要因としては パッケージを構成するいずれの技法が,どの要因に効果. Self-efficacy(嶋田,1996) ,Self-esteem(川西,1995). を及ぼしたかは明らかとなっていない.. との関連が検討されている.従って,ストレス関連要因. また,学校教育のカリキュラムの自由度が高い海外の. として,ストレス反応,認知的評価,Self-esteem,. STM 教育をそのまま日本に導入するのは困難であり(寺. Self-efficacy を効果評定として取り挙げることとす. 嶋・日高・宮田・岡田・田中,2002),さらにストレス. る.. の文化差も指摘されている(萩原,1994)ことから,日. なお先行研究(例えば竹中・児玉・田中・山田・岡,. 本の実情に即した STM 教育の検討の必要性が指摘され. 1994)では STM 教育の実施直後に評定がなされており,. ている.しかしながら,わが国においてはストレスの基. 場面状態的な変化とストレス耐性の強化との判別が困. 礎研究が近年なされ始めたばかりであり,STM 教育に関. 難であるため,本研究においては実施直後でない状態で. する研究は極めて少ない.. 測定を行う.. また,日本における先行研究では効果評定を不安尺度. ところで,リラクセーション技法のストレス低減効果. で行う場合が多い(例えば山中、1999)が,STM 教育が. のメカニズムを検討するため,リラクセーション技法に. Lazarus らの心理社会的ストレスモデルに基づくアプ. よるポジティブな感情を検討する必要性が指摘されて. ローチであるという特徴を鑑みると,全般的なストレス. いる(Smith,Amutio,Anderson, & Aria,1996)もの. 反応,あるいはストレッサーに対する認知的評価などへ. の,これまでのところ有効な検討はなされていない.. の効果も検討する必要が考えられる.. 従って本研究では,リラクセーション技法によって生. 以上のことから,STM 教育を構成する技法の効果を心. 起するポジティブな感情を「リラクセーション感」と定. 理社会的ストレスモデルから検討する必要性が明らか. 義し,リラクセーション技法によるリラクセーション感. となったが,STM 教育を構成する技法は多岐に渡る.本. の差異,及びリラクセーション感のストレス低減効果に. 研究ではそれらの中から今回,リラクセーション技法を. ついて検討することを試みる.なおリラクセーション感. その検討対象とする.. の尺度は先行研究をもとに作成し,各回の前後に実施す. その理由としては,波及効果の大きさや取り組みやす さ,効果の実感のされやすさ(Hillenberg & Collins,. る..

(2) 【方法】 対象者. Table 1 リラクセーション感測定尺度の 各下位尺度に含まれる項目. STM 教育実施条件:A 県内 B 中学校 3 年生,4 クラス 164 名(PrR 条件 2 クラス,AT 及び PaR 条件は各 1 クラス) 統制条件:A 県内 C 中学校 3 年生,1 クラス 33 名. <心理的リラクセーション感> Ⅰ爽快感(4 項目、α=.86、寄与率 45.08%). 実施時期. いきいきとした気分だ. 2002 年 10 月下旬∼12 月上旬. 楽しい気分だ. 測定材料. Ⅱ安堵感(4 項目、α=.83、寄与率 6.92%). ①中学生用ストレス反応尺度(岡安・嶋田・坂野,1992). くつろいだ気分だ. の短縮版,②中学生用認知的評価尺度(三浦・坂野,1996) ,. ほっとした気分だ. ③Self-efficacy 尺度(桜井,1987),④Self-esteem. Ⅲ爽快感(3 項目、α=.68、寄与率 4.39%). 尺度(高山訳,1992),⑤リラクセーション感測定尺度. 何事にも集中できそうな気がする. (成瀬(2001) ,多面的感情尺度(古賀・岸本・寺崎,. 気持ちにゆとりがある. 1992),先行研究(山中・冨永,2000)の感想などから 作成). <身体的リラクセーション感>. 手続き. Ⅰ疲労感(3 項目、α=.69、寄与率 30.25%). STM 教育の実施: ①導入授業(概念教育+技法の実施. 体がだるい. (第 1 セッション) ,50 分:筆者が実施)②リラクセー. 体がすっきりしている(逆転項目). ション技法の実施(週 1 回,15 分×4 週,第 2∼第 5 セ. Ⅱこわばり感(3 項目、α=.57、寄与率 10.27%). ッション:15 分程度の教示をテープに録音し、実施). 体を動かすと痛いところがある. 効果の評定 ①リラクセーション感測定尺度:各セッシ. 肩がこっている. ョン前後、②その他の尺度:STM 教育の前後 <気づきとコントロール> 【結果】 ①リラクセーション感測定尺度の分析 リラクセーション感測定尺度の因子分析結果の要約. (5 項目、α=.77、寄与率 40.38%). からだが動かしやすい感じがする からだの感覚がはっきりしたように思う. を Table 1 に示す. 各下位尺度に含まれる項目は、それぞれ因子負荷量の高いも. ②各技法の特徴の検討. のから 2 項目をのせた. α=.05 に設定し,ストレス反応の合計得点の上位 75% をストレス表出者として以降の分析対象とした.. リラクセーション感の分析 リラクセーション感の各下位尺度得点を従属変数,技. 自由記述による感想の分析. 法,実施前後,回数を独立変数とする,3 要因 4[実施条. 自由記述の感想を技法ごとに分類した結果,「眠気」. 件]×2[実施前後]×5[回数]の分散分析を行った( 「気づ. 「リラックス」 「技法に関して」 「否定的」の内容に大別. きとコントロール」のみ 2 要因 4[技法]×5[回数]).. され、 「眠気」と「技法に関して」は PrR と AT で, 「リ. 交互作用の多重比較結果を Table 2 に示す.. ストレス関連要因の分析. ラックス」では PrR で,「否定的」では PaR で,それぞ れ記述が多かった.. ストレス関連要因の各下位尺度得点の,実施後から実 施前を減じたものを効果得点として従属変数とし,実施. 【考察】. 条件を独立変数とする 1 要因 4 水準の分散分析を行った. リラクセーション感測定尺度について その結果,学業に対するコントロール可能性において, AT 条件が PaR 及び統制条件より高かった. その他の従属変数においては、いずれも有意な実施条 件の効果は示されなかった.. 併存的妥当性、再検査信頼性を検討した結果,一定の 妥当性と信頼性を備えているものと思われる.また先行 研究結果(Kemper,1987;Lazarus,1991;門地・鈴木, 2002)を鑑みると,妥当な因子が抽出されたものと思わ.

(3) Table 2 リラクセーション感の下位尺度得点の多重比較結果. <心理的リラクセーション感> 条件×回数. AT:Ss1>Ss3 ; PaR:Ss1>Ss3,4,5, Ss2>Ss4. 爽快感 実施前後. 実施前:Ss1,2>Ss3,4 ; 実施後:Ss1>Ss2,3,4;Ss3<Ss5. ×回数. Ss1,4,5:実施前<実施後. 条件×回数. Ss1:AT>PaR ; Ss2,3,4,5:PrR,AT>PaR AT:Ss1>Ss3 ; PaR:Ss1>Ss3,4,5, Ss2,3>Ss4, Ss4<Ss5. 安堵感. 覚醒感. Ss3:PrR>PaR ; Ss4,5:PrR,AT>PaR. 実施前後. 実施前:Ss1>Ss4 ; 実施後:Ss1>Ss2,3,4. ×回数. Ss1,2,3,4,5:実施前<実施後. 条件×回数. Ss1:AT>PaR ; Ss4,5:PrR,AT>PaR. 実施前後. 実施後:Ss1>Ss2,3,4. ×回数. Ss1,4,5:実施前<実施後. <身体的リラクセーション感>. 疲労感. こわばり感. 条件×回数. PaR:Ss1<Ss3,4. 実施前後. 実施後:Ss1<Ss2,3,4. ×回数. Ss1,2,3,5:実施前>実施後. 実施前後. Ss1:実施前>実施後. ×回数. <気づきとコントロール> Ss4,5:PrR,AT>PaR. 条件×回数. PaR:Ss1<Ss3,4,5, Ss2>Ss4,5, Ss3>Ss4. れるが,構成概念等の検討や発達的観点からの検討が課. ンではリラクセーション感は安堵感にとどまったもの. 題である.. の,その後再び爽快感や覚醒感まで至るようになった ことが推察される.その理由としては,実施環境などの. リラクセーション感に対するリラクセーション技法の. 要因も考えられるが,体験様式(成瀬,1988;田嶌,1987,. 効果の特徴について. 1992,2002)など,リラクセーションに対する認知的な. 各技法の共通点として,心理的リラクセーション感の. 側面の変化も考えられ,今後の検討課題である.. 安堵感については,効果は次第に低減する可能性がある. 一方身体的リラクセーション感に関しては,疲労感に. ものの,いずれの技法も一定の安堵感をもたらすことが. は一定の効果が期待されるものの,こわばり感の緩和効. 示唆された.一方爽快感及び覚醒感については,継続実. 果などは期待されないものと思われる.なお,PrR は身. 施の第 2,3 セッションに一時その効果が示されなくな. 体的リラクセーションから心理的リラクセーションに. るものの,第 4,5 セッションで再び効果が示された.. いたり,AT は心理的リラクセーションから身体的リラ. 先行研究(門地・鈴木、1998,2000)では,安堵感から. クセーションへ移行するとされる(例えば山口,1998). 爽快感や覚醒感にいたるというリラクセーション感の. が、この知見を支持する結果は得られなかった.これは. 経時的変化が指摘されているため,第 2,第 3 セッショ. 中学生における特徴か,尺度の弁別妥当性の問題である.

(4) かは,今後の検討課題である.. 一方感想分析や三浦(2002)などから,PrR について. 次いで各技法の差異をまとめると,PrR は練習による. はリラクセーション感の効果が実感しやすく,手続きな. 技法の習得によらず,ほぼすべてのリラクセーション感. ども簡単で分かりやすかったという点が補助的な要因. に対して一定した効果が期待される.感想なども考慮す. として学業のコントロール可能性を高めるように作用. ると、最も取り組みやすいリラクセーション技法である. した結果,AT と PrR との間に有意差が検出されなかっ. ものと思われる.次に AT については,効果が次第に低. た可能性が推察される.. 下し,その後セッション 3 ないし 4 から増加に転じる可. また,高校受験期においては学業のコントロール可能. 能性が示唆され,練習による技法の習得が効果に影響す. 性はストレス反応の表出にあまり関連しない(三浦・上. る可能性が示唆された.STM 教育パッケージの構成技法. 里,1999)ことから,AT においても,学業のコントロ. という観点から、今後技法の習得回数などを検討する必. ール可能性を高める効果があったものの,他のストレス. 要があろう.一方 PaR は効果が次第に低下する傾向にあ. 関連要因には positive な影響を及ぼさなかったものと. ることが明らかとなった.その理由としては、先行研究. 思われる.. と異なり、外部の実施者であったという点も大きいもの. なお本研究からは、リラクセーション感がストレス関. と思われる.また,他の技法と異なり,同級生とペアに. 連要因には影響を及ぼさない可能性が示唆された.ただ. なって実施するという点が特徴であり,奏功すればスト. し,今回の対象者が中学 3 年生であり,高校受験という. レス反応の低減のみならず,認知的評価やコーピングに. 環境要因の影響は無視できないため、リラクセーション. も影響を及ぼす(山中・冨永,2000)が,実施の如何に. 感とストレス関連要因との連関については今後より慎. よっては他の技法と比べて効果が低いか,あるいは先行. 重に検討する必要がある.. 研究結果(例えば山中・冨永,2000)を加味すると,テ. 本研究のまとめとして、漸進弛緩法によるリラクセー. ープなどによる一定の教示による実施は奏功しない可. ション感は一定で対象者にも実感しやすく,自律訓練法. 能性が考えられる.. は一定期間の技法の練習が必要であり,ペアリラクセー ション法は実施者が状況や対象者間の雰囲気等に応じ. ストレス関連要因に対するリラクセーション技法の効. て臨機応変に対応する必要性のあることが明らかとな. 果の特徴について. った.また,これらリラクセーション技法のストレス緩. いずれのリラクセーション技法もストレス反応,認知 的評価の学業の影響性,友人の影響性とコントロール可 能性,Self-esteem および Self-efficacy に効果を及ぼ さなかった理由を説明するため,行動療法における不安 低減のメカニズムを説明する distraction モデル(生 月・山口,1996),心配の制御困難性の研究(杉浦,2001, 2002) ,気晴らし方略(及川,2002)の知見を援用した. すなわち,受験というきわめて大きな環境要因下では, リラクセーション技法によるリラクセーション感ない し一時的な気晴らしは体験されるものの,未解決の受験 という要因のため,心配思考は持続し,リラクセーショ ン感がストレスと拮抗する distraction として機能し なかったため,これらの要因に変化が示されなかったも のと思われる. 次いで,学業のコントロール可能性で AT 条件が PaR 及び統制条件と比較して高かった理由についてだが,一 般的に指示的アプローチに終始する PrR などと比較し て,言語公式を含む自律訓練法の方が不安拮抗力は高い (高石・東、1981 等) .従ってペアリラクセーション法 より自律訓練法の方が,コントロール可能性が高まった ものと思われる.. 衝効果は低い可能性が示されたが,高校受験期という影 響について今後検討する必要があるだろう. ただし,実施クラスの学級風土等が結果に影響した可 能性もあるため,今後も検討を加える必要があろう..

(5)

Table 2  リラクセーション感の下位尺度得点の多重比較結果  <心理的リラクセーション感>  Ss3:PrR&gt;PaR ; Ss4,5:PrR,AT&gt;PaR  条件×回数  AT:Ss1&gt;Ss3 ; PaR:Ss1&gt;Ss3,4,5, Ss2&gt;Ss4  実施前:Ss1,2&gt;Ss3,4 ;  実施後:Ss1&gt;Ss2,3,4;Ss3&lt;Ss5 爽快感 実施前後  ×回数  Ss1,4,5:実施前&lt;実施後  Ss1:AT&gt;PaR ; Ss2,3,4,5:

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