• 検索結果がありません。

先天性四肢障害者の心理的特徴に関する研究 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "先天性四肢障害者の心理的特徴に関する研究 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)先天性四肢障害者の心理的特徴に関する研究∼自己受容と抵抗感の視点から∼ キーワード: 先天性四肢障害・ 自己受容・ 障害について触れる場面・ 抵抗感の理由. 人間共生システム専攻 古川 美咲 1.問題と目的. SAI は自己理解(自分のことがよく分かっていると自己認識. 先天性四肢障害とは「生まれつき手や足や指の一部(耳の. していること)、自己承認(現在の自己をそのまま承認して受. 場合もある)が欠損している、変形している、関節が拘縮し. け入れること)、自己価値(自己の人間的価値を疑わないこ. ている、などの形や機能の障害」である(先天性四肢障害児. と)、自己信頼(人生や物事に対する自己の対処能力に自信を. 父母の会,1984)。彼らの多くは特殊教育の対象とならず、周. もっていること)の4要因から構成されている。さらに、障. 囲に同様の障害をもつ人がほとんどいない環境で成長する。. 害者の自己受容について考える際には、障害が与える影響. 先天性四肢障害者の心理面に焦点をあてた先行研究(稲. について、本人の受け止め方と他者からの見られ方の両面. 波,1989,安岡・羽間,2004)では、彼らは自分自身への捉え方. から考慮する必要があるとする高山・石部(1975)にならい、. について、また周囲の人との関わりにおいて、彼ら固有の. 障害に関わる自己受容の項目を新たに追加する。以上の項. 経験や悩みを抱えているという点で共通した結果が得られ. 目を用い、先天性四肢障害者の自己受容の特徴を明らかに. ている。しかしこれらの研究はいずれも事例的であり、ま. することを、本研究の第一の目的とする。. た両者の関連については述べられていない。そこで本研究. (2)先天性四肢障害者の周囲の人との関わりについて. では先天性四肢障害者の自分自身への捉え方及び周囲の人. 先行研究からは、先天性四肢障害者が、周囲の人との関. との関わりに焦点をあて、より詳細に検討する。. わりにおいて、他者が自分をどう思うかを意識しながら生. (1)先天性四肢障害者の自分自身への捉え方について. 活していることがうかがえる。特に安岡・羽間(2004)では、. 安岡・羽間(2004)によると、彼らは障害をもつことで自. 彼らは自分の障害について、周囲の人に話せない状況にあ. 分とは何者なのかを考えることが思春期の課題として前面. ることが分かった。障害を持っている自分を周囲の他者に. に出やすく、大きな苦痛を経験する。しかしそこを乗り越. どのように示し付き合っていくかということは、彼らの周. えると、自分の障害について「良いものではないが仕方が. 囲の人との関わりを考える上で、大切な問題といえるので. ない」という肯定・否定どちらか一方に当てはめるのでは. はないだろうか。本研究では、先天性四肢障害者が周囲の. ない両方の思いをもつようになる。そのように思えるよう. 人との間で自分の障害に関することを話題にしたり意識さ. になることが心理的成長の表れであると考察されている。. れたりする場面を障害について触れる場面とし、そこで彼. この知見は、健康な人間は欠点をすべて認めた上で、理想. らがもつ抵抗感の理由について検討する。. の姿とは食い違っていることを承知しながらも自身の人間. 自分の問題について他者との間で触れることに対して抵. 性を受け入れることができるとした Maslow(1954)と一致. 抗を感じる理由については、自己開示の視点で数多くの研. している。従来の研究では、身体障害はその当事者の体験. 究がなされている(遠藤,1995,片山,1996)。そこでは自己開. や自己概念にネガティブな影響を与えやすいとされている. 示に抵抗を感じる理由は、自分に向かう対自的なものと相. (高山・石部,1975)が、先天性四肢障害者の自分自身への捉. 手に向かう対他的なものに大きく分けられるということが. え方を検討する際には、自己の諸側面についての考え方が. 明らかにされている。. 肯定的であるかという視点ではなく、自分の良いところも. 障害について触れる場面も自己開示に含まれるといえる。. 悪いところも認めたうえで自分全体を価値あるものとして. 障害について触れることへの抵抗感の理由も大きくは対他. 受け入れているかという視点をもっておくことが重要と思. 的側面と対自的側面に分けられると推測される。しかし、. われる。本研究では、彼らが欠点を認めた上で自身の人間. 従来の自己開示抵抗感の研究とは異なる理由も存在してい. 性を受け入れていくことを、自己受容の視点から検討する。. るのではないだろうか。. 自己受容の定義や測定方法には様々なものがあるが、本. 本研究では先天性四肢障害者が障害について触れる場面. 研究では本研究の自己受容の捉え方に近いと思われる宮沢. で感じる抵抗感の理由について検討することを第二の目的. (1980)の作成した自己受容性測定スケール(SAI)を用いる。. とする。.

(2) (3)障害について触れることへの抵抗感の理由と自己受容の. 小グループと 6 つの中グループに分類された。さらに「言. 関連について. いたい」気持ちと「言いたくない」気持ちという 2 つの大. 従来の研究では自己開示における抵抗感の理由は、自己. グループができた。. 意識特性や自尊心などによって、どういう点をより強く意. ③本調査:予備調査 2 の結果より、抵抗感にあたる「言い. 識するかが異なっていることが明らかにされている。自己. たくない」に含まれる要因のうち、気持ちが自分に向かっ. 意識特性や自尊心はいずれも自分への捉え方の一側面であ. ているものを対自的側面、相手に向かっているものを対他. るため、自己開示における抵抗感の理由は、その人の自己. 的側面とした。それらに含まれる回答や遠藤(1995)、片山. 受容とも何らかの関連があるかもしれない。. (1996)を参考に、各側面 12,3 項目からなる計 25 項目を作. 以上のことより、先天性四肢障害者が自分の障害につい. 成した。教示には「あなたがこれまでにあなたの身近にい. て触れる場面で感じる抵抗感の理由と、自己受容の関連を. る障害をもたない人に、自分の障害に関することを話しづ. 検討することを、本研究の第三の目的とする。. らく感じた経験について1つ思い浮かべてください。その. 2.方法 (1)対象者・調査方法 高校卒業以上の先天性四肢障害者 365 名に質問紙を郵送. ときあなたが話しづらく感じたのはどういうことを意識し たからですか」という文を用い、各項目について、4 件法で 回答を求めた。. した。質問紙を回収した 125 名(回収率 34.2%)のうち回答. 3.結果と考察. に欠損のない 117 名を分析の対象とした。質問紙は、自己. 分析 1:先天性四肢障害者の自己受容. 受容についてと、障害について触れることへの抵抗感の理. 平均点±標準偏差が回答の範囲(1∼4)を超える項目を天. 由についての、2 種類の質問から構成されていた。. 井(フロア)効果を起こしたものとして削除した。結果、 「私. (2)質問項目の作成. は生まれてこない方が良かった」などの自分の人間的価値. ⅰ.自己受容について:自己受容の尺度としては、 宮沢(1980). に関わる項目や「私は自分の障害とそれに伴う困難なこと. の SAI(27 項目)を用いた。新たに加えた障害に関わる自己. をきちんと理解している」など、障害に関わる項目のうち. 受容の項目は羅・大野(1986)を参考に作られ、SAI を構成. 自分の障害について理解していると認識しているかを表す. する4つの要因に対応する項目と、他者との関係に関わる. 項目の多くが削除された。. 項目の、計 17 項目で構成されていた。以上の計 44 項目に. それらの項目を除いた 23 項目について因子分析(主因子. ついて、 4 件法で回答を求めた。. 法、プロマックス回転)を行った。単純構造を得るため 3 項. ⅱ.障害について触れることへの抵抗感の理由について. 目削除した後、再度因子分析を行い、解釈可能性から 6 因. ①予備調査 1:彼らが経験する障害について触れる場面には. 子を得た(Table.1)。. どのようなものがあるかを知るために、 先天性四肢障害者 3 名に、半構造化面接を行った。質問項目は主に、過去や現. 『自己理解』は自分のことがよく分かっていると自己認 識していることを表している項目に高い負荷を示した。. 在の学校生活や日常生活の中で、周囲の人と自分の障害に. 『自分への満足感』は主に容姿や障害を含めた自分自身. ついて話をした経験についてであった。結果、できないこ. への満足感に関する項目に高い負荷を示した。 「私は性格を. とがあって助けを求める、自分から障害に関することを話. 全く別の性格に変えたい」などの自分の全般的な特徴につ. す、他者から自分の障害について聞かれる、自分の障害を. いての満足感に関する項目は天井効果で削除され、自分の. 知らない人に説明する、の4つの場面が、彼らが抵抗感を. 容姿や障害についての満足感に関わる項目が多いことが特. もつことが多い場面として抽出された。. 徴的である。彼らは全体としての自分や自分の性格には概. ②予備調査 2:彼らが障害について触れる場面で感じる抵抗. ね満足しているが、彼らが自分に満足しているか否かには. 感の理由にはどのようなものがあるかを知るために、先天. 障害に対する考え方が大きく関与しているのかもしれない。. 性四肢障害者 12 名に質問紙調査を行った。予備調査 1 を元. 自分の問題は自分で責任をもって解決したいという姿勢. に作られた4つの場面を提示し、各場面で手足に障害をも. を表す『自己責任』は、自己の対処能力への自信を表すと. つ架空の人物 A さんが話すことにした場合と話さないこと. いう点で、人生や物事に対する積極的な姿勢を表す『積極. にした場合のそれぞれについて 「A さんはどんな気持ちで. 的な生き方』と意味合いが近いと思われるが、この 2 つが. そうしたと思いますか、どんなことを気にしたと思います. 別因子として抽出されたことは彼らの特徴といえるかもし. か」という質問を行い、自由記述で回答を求めた。得られ. れない。障害のため周囲に助けを求めなければならないこ. た回答について、筆者以外の臨床心理学を専攻する大学院. とはその人の自己概念にネガティブな影響を与える可能性. 生 2 名で KJ 法を行った。結果、総数 126 の回答から 24 の. がある(高山・石部,1975)。自分のことは極力自分で解決し.

(3) Table.1 自 己 受容 因 子 分析 結 果(主因 子 法 ・プロマックス回 転 ・累 積 説 明率 =47.23%) 因子 1. 2. 3. .827. .127. .057. - .019. 4. - .059. 5. .059. 6. 共通性. .676. .709 .625 - .532. - .241 .118 .162. - .019 .267 .084. .091 - .089 .062. .226 - .093 .191. - .192 - .040 - .040. .571 .549 .528. .080 - .113 - .108 - .040. .664 .570 .519 - .506. .156 .087 .039 .126. .272 .077 - .219 - .175. - .201 .069 .254 - .058. - .029 - .021 - .018 - .068. .359 .445 .526 .395. .287. - .480. .071. .123. .136. .095. .488. 30. 私は 自 分の 特 徴 がわ か る. .177. .013. .754. - .005. .112. .054. .676. 1. 私は 自 分の 性 格 を知 っている #21. 私は 自 分の ことが わ か らない 因 子 4 周 囲 か らの特 別 扱い (α =.62). .004 - .014. .135 .298. .646 - .389. - .063 - .064. - .009 .125. .068 - .064. .380 .428. - .045. .087. .121. .760. .023. - .197. .598. .025 .052. .027 .173. - .291 .000. .594 .373. - .051 .218. .190 .071. .480 .331. - .158. - .135. .142. .020. .607. - .061. .354. .285 - .102. .068 .078. - .166 .024. - .065 .188. .485 .460. .145 .039. .302 .403. - .144. - .072. .239. .032. .028. .716. .584. .017. .003. - .016. - .069. .030. .618. .372. 因 子 1 積 極 的 な生 き方  (α =.79) 17. 私は 困 難にぶつか ってもそれを克服 できる 41. 私は 目 標に向か って生 活 している 32. 私は 自 分の 才 能 を生 かした人 生 を送 ることが できる #37. 私は 自 信が ないため物 事 をあきらめ がちである 因 子 2 自 分 へ の満 足 感 (α =.72) #33. #12. #3. 29.. 私は 自 分の 容 姿 (すがたか たち)の 悪 い面 が わ かる 私の 容 姿(すがたか たち)には 変 えたいところが 多い 私は 今 の自 分 に不 満 である 私は 障 害や それ に付 随した多 くの 困難 をあまり気 にせ ず,自 分に満足 している. 49. 私は 障 害の ために困 難 な状 況 にあっても自 分 なりに工 夫 して解 決 していける 因 子 3 自 己 理 解 (α=.67). #39. 私は 障 害が あることで,周 囲 に気 を使 わせ ていると感じることが ある #36. 周りの 人 は私 の ことを自 分 たちとは 違 う障 害 者とみているだろう #47. 私は 障 害が なけれ ば もっと上 手に人 と付 き合 えたは ずである 因 子 5 人 の 目 を気にしない (α =.52) #14. 周りの 人 にできることで私 にできないことが あったとき悲 しくなる #31. 周りの 人 から障 害 者として見 られ たり気 を使 わ れると嫌 な気 持 ちになる #43. 外に出 ると人 から見 られ るの が 気 になる 因 子 6 自 己 責 任 (α=.61) 48. 私は 自 分で決 めたことには 責任 をもつ 4.. 私は 自 分の ことは 自 分 で解 決する. #は 逆 転項 目. 因子相関行列(自己受容). Table.2 抵 抗 感 の 理 由 因 子 分 析 結 果 (主 因 子 法 ・オ ブ リミン 回 転 ・累 積 説 明 率 =48.55%). 因 子 1 相 手 の 反 応 へ の 不 安. 因子 2. .854 .731 .723 .685 .595 .522. - .022 .099 - .037 .069 - .089 .022. - .078 - .135 .124 .027 .138 .241. .663 .508 .601 .523 .414 .458. - .077 - .149 .311 .221 .309. .906 .808 .527 .420 .379. .019 .011 - .031 .340 .087. .794 .603 .459 .571 .370. - .147 - .136 .227 .095 .202 .119 .074 .302 .318. - .036 .057 - .026 .256 .041 - .063 .226 .114 .002. .684 .660 .611 .554 .534 .482 .438 .409 .378. .384 .398 .537 .547 .447 .276 .360 .441 .355. 3. 共通性. 1 2 3 4 5 6. (α =.86). 3. 相 手 に 嫌 わ れ た くな い 26. こん な 話 を す る と,相 手 は 驚 くか もしれ な い 12. 話 を す る ことで ,今 ま で の 関 係 性 が 変 わ って しま うか もしれ な い 28. こん な 話 を す る と,相 手 が 困 って しま うか もしれ な い 5. 相 手 に 受 け 入 れ て もらえ な か った とき に 傷 つ き た くな い 29. 話 を す る ことで ,相 手 に 迷 惑 を か け た くな い 因 子 2 相 手 へ の 不 信 感 (α =.82) 23. この 人 に は 分 か って もらえ な くて も良 い 16. この 人 は 信 用 で き な い 27. この 人 は ,私 の 話 す ことを しっか り聞 い て くれ な い か もしれ な い 24. 障 害 の な い 相 手 に は ,話 した ところ で 分 か って もらえ な い か もしれ な い 18. この 人 に 話 す とあ とで うわ さに な って しま うか もしれ な い 因 子 3 話 す 内 容 へ の 抵 抗 (α =.84) 22. 6. 9. 13. 7. 19. 11. 2. 17.. 1. 話 を す る ことで ,人 に 頼 って しま い た くな い 障 害 に つ い て 話 す ことで 同 情 され た くな い 障 害 に つ い て 私 が こん な ことを 考 え て い る な ん て 相 手 に 知 られ た くな い 相 手 に 話 した ところ で ,ど うに もな らな い か もしれ な い こん な ことは ,人 に 話 す ことで は な い か もしれ な い 話 を す る ことで ,自 分 が 障 害 を もった 存 在 で あ る と,自 分 で 認 め た くな い 人 に 話 さず に ,自 分 で 何 とか した い 話 して も分 か って くれ な い か もしれ な い 上 手 く相 手 に 伝 え る ことが で き な い か もしれ な い. たいという姿勢が、彼らの自己受容にとって大きな意味を もちうるのかもしれない。 障害に関する項目の中で他者との関係に関わる項目は周. 1 1.000 - .567 .397 - .017 - .353 .278. 2. 3. 4. 5. 6. 1.000 - .392 .140 .521 - .099. 1.000 .051 - .224 .131. 1.000 .323 .257. 1.000 .107. 1.000. 因子相関行列(抵抗感の理由) 1 2 3. 1 2 3 1.000     .317 1.000   .458 .359 1.000. 対他的側面はさらに、話した後の相手の反応や関係の変 化を不安に思う『相手の反応への不安』と、この人は信用 できないなどと感じて話したくないと思う『相手への不信. 囲から特別な目で見られていると感じているかを示す『周. 感』に分かれた。. 囲からの特別扱い』とそれについてどのように感じるかを. 分析 3:自分の障害について触れることへの抵抗感の理由. 示す『人の目を気にしない』の 2 つの因子に分かれた。周 囲から特別な目で見られていると感じることと、それに対. と自己受容の関連 自己受容全体の得点および自己受容の各因子の下位尺度. する本人の感じ方は、分けて考える必要があるといえる。. 得点によって対象者を高群と低群に分け、自己受容(高群・. 分析 2:自分の障害について触れることへの抵抗感の理由. 低群)×抵抗感の理由(相手の反応への不安・相手への不信. 25 項目について因子分析(主因子法、オブリミン回転)を 行った。単純構造を得るため 5 項目を削除した後、再度因 子分析を行い、解釈可能性から 3 因子を得た(Table.2)。. 感・話す内容への抵抗)の 2 要因の分散分析を行った。 自己受容全体の得点で群分けした分析(Fig.1)では、抵抗 感の理由の主効果が有意であった(F(2,230)=45.158,p<.01)。. 『話す内容への抵抗』は障害について話すこと自体に対. 多重比較を行った結果、 「相手の反応への不安」が「相手へ. して抵抗を感じるものであるため、対自的側面といえる。. の不信感」(p<.01)、 「話す内容への抵抗」(p<.01)より高く、. 『相手の反応への不安』と『相手への不信感』は話をした. 「話す内容への抵抗」が「相手への不信感」より高かった. 後の相手の反応に関するものであるため、対他的側面であ. (p<.01)。交互作用はなく、自己受容の高低に関わらずこの. るといえる。抵抗感の理由が、対自的なものと対他的なも. 傾向は一貫しているといえる。安岡・羽間(2004)からは、. のに大きく分けられたことは、遠藤(1995)をはじめとする. 彼らは他者が自分をどう思うかを気にしていることが分か. 先行研究と同様であった。. る。相手の反応への不安が抵抗感の理由として最も得点が.

(4) 高いという結果は、. (F(2,230)=40.154,. (得点). 4. p<.01)が、群の主効. 先天性四肢障害者の 障害に対する捉え方. 低群 高群. 3. として、他者との関 係の中でどう思われ. (得点) 4. 果は有意ではなか った。自分のこと. 低群 高群. 3. は自分でやろうと. るかということがよ. いう姿勢が強いと. 2. り重要であることを. かえって、人に心. 示しているのではな. 2. を開けず不信感を 1. いだろうか。. 相手の反応. また自己受容に主. 相手への不信感. 話す内容. もつことや、障害 について話すこと. Fig.1 自己受容全体×抵抗感の理由. 1 相手の反応. 相手への不信感. 話す内容. Fig.3 自己責任×抵抗感の理由. 効 果 が あ り. 自体に抵抗感をも. (F(1,115)=19.521,p<.01)、低群の抵抗感の理由得点が高群. つことにつながるのかもしれない。そのため、高群と低群. よりも高かった。交互作用はなく、抵抗感の理由のどの側. の間で得点に差がみられなかった可能性が考えられる。. 面においても、自己受容の低群の方が障害について触れる. 4.まとめと今後の課題. 際により気にしているといえる。自己受容の低群の人は、. 本研究では先天性四肢障害者の自己受容の特徴と、自分. 自分の障害をネガティブに捉えており、結果障害に触れる. の障害について触れる場面での抵抗感の理由、及び両者の. ことに対して様々なことを意識して抵抗を感じる可能性が. 関連について検討した。結果、自己受容と抵抗感の理由に. あると思われる。逆に、自己開示をすることが精神的健康. は関連があり、自己受容の得点の低い人は高い人よりも、. につながるという知見(片山,1996)もあり、自分の障害に触. 自分の障害について触れる際により様々なことを心配して. れられないことがその人の自己受容にネガティブな影響を. いることが示唆された。. 与える可能性も考えられる。. また彼らが、障害について触れる場面で抵抗感をもつ最. 以上の結果は、自己受容の各因子の下位尺度得点で対象 者を群分けした分析でも概ね一貫していた。. も大きな理由は、相手の反応に対する不安であった。さら にその不安は、自分が周囲の人から障害者として見られる. しかし『人の目を気にしない』で群分けした分析(Fig.2). ことに対する受け止め方と関連していることが分かった。. では交互作用があった(F(2,230)=6.710,p<.01)。低群におけ. 彼らの心理面での特徴や適応を考えていく上で、彼らが他. る抵抗感の理由得点の順番は受容全体の場合と同様であっ. 者からどう思われていると感じているかや、他者に自分を. たが、高群では「相手の反応への不安」(p<.01)と「話す内. どのように示しているかという視点から検討することには. 容への抵抗」(p<.01)が「相手への不信感」よりも高いこと. 意味があるだろう。障害について触れる場面での抵抗感の. は同様であったが「相手の反応への不安」と「話す内容へ. 理由に焦点をあてた本研究は、その点で意義あるものであ. の抵抗」の間に差はなかった。また「相手の反応への不安」. ったと思われる。. (F(1,345)=25.160,p<.01) 及 び 「 話 す 内 容 へ の 抵 抗 」. しかし本研究では統制群を設置しなかったため、本研究. (F(1,345)=7.530,p<.01)では高群>低群であったが、「相手. で明らかになった先天性四肢障害者の特徴が、彼ら特有の. への不信感」では群間に差はなかった。 『人の目を気にしな. ものなのかは断定することはできない。先天性四肢障害者. い』の得点が高い人は他者から障害者として見られてもあ. の心理的特徴についてさらに検討を深めるためには、他の. まり気にしないた. 障害をもつ人や、健常者との比較を通して考えていくこと. め、自分の障害に. も必要だろう。. (得点) 4. ついて話す際にも、. 5.主要引用文献. 相手の反応があま り気にならないと. 遠藤公久 (1995). 低群 高群. 3. 思われる。 また『自己責任』. 自己開示における抵抗感の構造, カウンセリング研. 究,28,47-57. 宮沢秀次 (1980). 青年期における自己受容性測定スケールの検討, 日本教. 育心理学会第 22 回総会発表論文集,516-517. 2. で群分けした分析. 高山佳子・石部元雄 (1975). 肢体不自由児(者)の自己概念の研究に関する. (Fig.3)では、抵抗. 問題と今後の方向, 東京教育大学教育学部紀要,21,129-135.. 感の理由の主効果. 1. は有意であった. Fig.2 人の目を気にしない×抵抗感の理由. 相手の反応. 相手への不信感. 話す内容. 安岡香奈子・羽間京子 (2004). 先天性四肢障害をもち普通級に通う子ども たちへの援助についての一考察, 千葉大学教育実践研究,11,171-180..

(5)

参照

関連したドキュメント

 12.自覚症状は受診者の訴えとして非常に大切であ

Denison Jayasooria, Disabled People Citizenship & Social Work,London: Asean Academic Press

わが国の障害者雇用制度は、1960(昭和 35)年に身体障害者を対象とした「身体障害

在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自

For the adequate management of abnormal muscle tonus, it is important to first determine the underlying etiologies. These include primary causes such as

一般社団法人 美栄 日中サービス支援型 グループホーム セレッソ 1 グループホーム セ レッソ 札幌市西区 新築 その他 複合施設

共助の理念の下、平常時より災害に対する備えを心がけるとともに、災害時には自らの安全を守るよう

本章では,現在の中国における障害のある人び