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『石清水物語』第三系統諸伝本に関する研究(二)

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

『石清水物語』第三系統諸伝本に関する研究(二)

宮﨑, 裕子

九州産業大学国際文化学部 : 講師

https://doi.org/10.15017/1445859

出版情報:文獻探究. 51, pp.5-12, 2013-03-30. 文献探究の会 バージョン:

権利関係:

(2)

『 石 清 水 物 語 』 第 三 系 統 諸 伝 本 に 関 す る 研 究 ( 二 )

宮 﨑 裕 子

1しつかならさりしに此御事も又大殿もことなくておはしつるう」 2れしきことにおほされつるにまたかくおはすれはいかなるへきと」 3おそろしくおほしおとろくとりわきおとろ/\しくなとはあら」 4ていつとなくおなしさまに日数のみつもりてくるしうし給へは」 5みたてまつる人/\いかにをはせんと歎くに中納言の君を御あたり」 6さらすおほしたれはこまかによろつあつかいきこえ給ふあまた物し」 7給はんたにをろかなるましき人の御さまを大将殿は大かたもおも」 8/\しくものし給へははちらいてこまかなる御思ひは中納言を」 9思ひまさり給へり御心ちのなくさめには御あたりさらすとおほ」 10したり東のたいの君もかゝる御心ちの程はわたり給てあつかひ」 11聞え給此きんたちのおはするにもつゝましけならす大将殿」 12なとさはかりもの/\しくはつかしけにけたかき御まみなとの」

【35オ】

1さしむかひにくけなるにもへたてたるけしきなくおもなくつき/\」 2しくあいしつらひ給へるを中納言は人しれす思ひくらへられて」 3ほゝゑまれ給心のうちそはつかしかりける文はたえすつかはす」 4とのもその後は御心にかゝりてゆかしくおほさ○れとこの御なや」

5みによろつことさめて文はかりそたへすある同しさまにて」 6月頃に成ぬいかなるへき御事にかとおほしなけくいはけなきひ」 7いなあそひの頃よりわくかたなく思ひかはし給へる御なかなれはた

ゝ」

8物えんしのかた一ツこそさかなしともいはれ給へ大方はあかぬこと」 9なくおはすれは浅からすのみ思ひきこえさせ給へるに御とし」 10の程もいまた盛にきよらにおはしませは大将殿なとはたゝ」 11御はらからのやうにおかしけにおはすれはおしくあたらしと」 12みなおほしなけきたり大将殿の二らうわか君とりはなち」【35ウ】 1てこなたにてやしなひたてまつり給五六はかりにていとうつ」 2くしけにてかゝる御心ちの程もあたりはなれすかなしとおほし」 3たるを今しはしも見きこゆましきこそあはれなれとて」 4なき給へは御顔をうちまほりてすてゝはいつちへおはすへきそ」 5まつくしておはせとてなき給へは誰もあはれにかなしくてなくさめ」 6聞ゆあに君はけんふくして少将ときこゆ中はひめ君にて今」 7よりけしきことにかしつき聞え給ふ中納言のいまゝてかゝる人の」 8物し給はぬかさう/\しきこといかならんあたりにてもさることあら

(3)

は」 9とのみつねはの給はすれとめつらしけなる事はおほしもうけすか

く」

10おなしさまにわつらひたまふほとに月日によそへてよはりまさり」 11給てたのみなくなり給へはさき/\もしるし有しかはとてよ河の」 12僧都をよひ聞え給へとみたりかくひやうにとりこめられてえをき」

【36オ】

1ゐる事もなしと申給へはたのみなくおほしなけきて山/\」 2寺ゝに願たてあしをそらに思しまとへとかひなくて神無」 3月朔日に終にはかなく成給ぬ思ひまうけたる事なれとさし」 4あたりたるかなしさは誰もうつし心おはせんや殿はたゝおなし」 5さまにならひふし給てことはりにも過たる御けしきを今はいふかひ」 6なき御事はさる物にてまた是をもてはつらひきこえてとかくな」 7くさめ聞え給扨しもあらぬわさなれはけふりとなし奉るほとの」 8かなしさ思ひやるへし内春宮大殿をはしめ奉りて御つかひとも」 9たちこめはいとさはかしとのはうつし心もおはせすほれまとひなけ

き」

10ふし給へは大将殿そ所ゝの御かへりもきこえ給ふ中納言はわれに」 11もあらぬけしきにておはする○ころは一すちに御いのちのふへき」 12よしの事のみかしかましきにてゆすりみちたりしにひき」【36ウ】

1かへあらぬさまにをこなひたる宵あかつきのれいしせんほうをは」 2りのゑかうのさまなといつよりの御名にかあるときくたひに」 3なみたのもよほし也みむろ戸の僧正も御忌にこもり給て大」 4かたのさほうしとりもちをこなひ給ふ七日/\のこと御このかすに」

5たいのひめ君もいとなみ給たのもしきかけにかすまへられ給るに」 6かくうちすてられ給ていと心ほそくたゝよはしき御身なめり」 7何事をもしめ/\と思ひいれぬ御けしきなるはかりそ心やす」 8けなりける中納言君はさらてたにそこはかとなく物のみなけ」 9かしくよしなき事にしみにし心はあるましきすちにしもあや」 10にくなる物なれは心にかゝりておほさるゝにかゝる御歎さへあれは」 11いとゝ世もあちきなうおほしつゝけられていつとなくすゝもちて」 12御きやうにのみ心を入つゝ明しくらし給くろき御そにやつれ給」

【37オ】

1るしもそみるかひは猶まさりけるとそうせにしひたちのかみか」 2子はおさなくてかしまといひし今はおとなひていよのかみと言国

/\」

3をめくらしてさるへきつはものならひとして三月つゝ京にの」 4ほりて大はんといふ事をつとむる事むかしより今にたゝふな」

5らひなりけれはかのいよかすへきにあたりて長月のすゑよりみや」 6こにのほりてしたかへたる物かすしらすくにのうちにも外のこほりに

も」

7ありけれはかゝるおりにあへとていくらといふことなくつゝきの」 8ほりけるをはこゝのへのかためにすくりとりて京にをきわか身は」 9まゝ母の住こわたに屋かすなとあまた有けれは中のついちをへ」 10たててなん住ける日ころすくるに心ほそけ成しに引かへ馬くるま」 11ひまなくいて入しけくなりてこゝかしこのあれたりし所/\」 12つくろはせなとしてこよなくたのもしくみゆくにの物とて色ゝ」

【37ウ】

1のきぬかさねやうの物おほくあまうへにもとらせ中によろしき」 2をはひめ君の御かたへとて奉なとしてよろつにはくゝみけれは」 3けにかゝる人なからましかはたれをたのもしきかけにも思はましと」 4あまうへは思ひけりさまかたちをはしめて心さまなさけ/\しく」 5何ことのあかぬとおほゆることなくすくれたりけれは身を分た」 6らんにもまさりてかなしき物になん思ひけるとしの程よりもしつ」 7まり心にくゝかたちはあくまてあい行つきて心のおくゆかしきさ」 8まは人にこと也けり春秋とさためかねてめてのゝしられ給とのゝ」 9君たちはさいへと人からにしたかひて思ひなしもけたかくなまめき給

へ」

10ることこそおはすれこれはやうかはりてあい行こほるはかりにて」 11いかにそやみるにたゝならすそゝろに思はしきさまかたちなと」 12はたれはかりの人にもをとるましうみゆるをゐなかにのみおひ」

【38オ】

1いてたれとかたほならすさはかりいとあら/\しかるへきおくのゑ

ひ」

2すの名をとりなからいかはかりのつとめによりてかくしもむまれい」 3てけんとさきの世ゆかしき人のさま也くにのかみなる人おさなくよ

り」

4いひちきりてかしつくむすめにあはせけれといかなるにか心さし」 5思やうならてよのつねはうちかたらふにさもせすすさましけなる」 6なからいにてのみ過しけるをくちをしき事に女は思ひなからみるめ」 7のなつかしきによろつ思ひなくさみてうらみをもつみなきさま」 8にしのひ過しけるのとや○なるひるつかたいよのかみあまうへの」 9かたへ行たるにみえ給はねはいつくにおはするかといへは十はかり」

10なるわらはひとりゐたるかひめ君の御かたへ参給ひぬるこのゑ」 11御らん○とて爰にもまかさせ給といひてまきよせたるをみれは」 12いみしきゑのさま也うつくしき女のかみなかきをかきたる所を」

【38ウ】

1見てかゝらん人をみつけはやといへは是をたにさの給かひめ君のおま

へは」

2こよなくまさりたる物をみたてまつり給へりやといふにみゝとゝま」 3りて見まくほしくは思ひきこゆれとえみす見えぬへき所あらはみち」 4ひき給へかしといへはまろこそ物よくみる所はしりたれいさ給へみせ

きこ」

5えんといふかおかしくてさは道ひき給へ人にしらせてみせたらはひい

なも」

6おほくたてまつらんといふをうれしと思ひたるけしきにてあしおと」 7せておはせといひてさきにたちてゆくおさなきものゝいふにしたか

ひ」

8てあふなけれとゆかしき心はすゝみてやをらあゆみよれはひやうふ

を」

9たてふたきたるうちへいれて中のさうしにむしくひとをしたる」 10あなの有をおしへおきてわれはありつるゑまきはてゝもちて参り」 11ぬよりてのそけはまことによくみゆやうたいかしらつきよりはしめて

すへ」

12ていひつくすへきやうもなくみるめもかゝやくはかりなる人のねひ とし」【39オ】 1のをりてかみのつやなとかけ移るはかりにてらうたくにほひやかに

は」

(4)

1のきぬかさねやうの物おほくあまうへにもとらせ中によろしき」 2をはひめ君の御かたへとて奉なとしてよろつにはくゝみけれは」 3けにかゝる人なからましかはたれをたのもしきかけにも思はましと」 4あまうへは思ひけりさまかたちをはしめて心さまなさけ/\しく」 5何ことのあかぬとおほゆることなくすくれたりけれは身を分た」 6らんにもまさりてかなしき物になん思ひけるとしの程よりもしつ」 7まり心にくゝかたちはあくまてあい行つきて心のおくゆかしきさ」 8まは人にこと也けり春秋とさためかねてめてのゝしられ給とのゝ」 9君たちはさいへと人からにしたかひて思ひなしもけたかくなまめき給

へ」

10ることこそおはすれこれはやうかはりてあい行こほるはかりにて」 11いかにそやみるにたゝならすそゝろに思はしきさまかたちなと」 12はたれはかりの人にもをとるましうみゆるをゐなかにのみおひ」

【38オ】

1いてたれとかたほならすさはかりいとあら/\しかるへきおくのゑ

ひ」

2すの名をとりなからいかはかりのつとめによりてかくしもむまれい」 3てけんとさきの世ゆかしき人のさま也くにのかみなる人おさなくよ

り」

4いひちきりてかしつくむすめにあはせけれといかなるにか心さし」 5思やうならてよのつねはうちかたらふにさもせすすさましけなる」 6なからいにてのみ過しけるをくちをしき事に女は思ひなからみるめ」 7のなつかしきによろつ思ひなくさみてうらみをもつみなきさま」 8にしのひ過しけるのとや○なるひるつかたいよのかみあまうへの」 9かたへ行たるにみえ給はねはいつくにおはするかといへは十はかり」

10なるわらはひとりゐたるかひめ君の御かたへ参給ひぬるこのゑ」 11御らん○とて爰にもまかさせ給といひてまきよせたるをみれは」 12いみしきゑのさま也うつくしき女のかみなかきをかきたる所を」

【38ウ】

1見てかゝらん人をみつけはやといへは是をたにさの給かひめ君のおま

へは」

2こよなくまさりたる物をみたてまつり給へりやといふにみゝとゝま」 3りて見まくほしくは思ひきこゆれとえみす見えぬへき所あらはみち」 4ひき給へかしといへはまろこそ物よくみる所はしりたれいさ給へみせ

きこ」

5えんといふかおかしくてさは道ひき給へ人にしらせてみせたらはひい

なも」

6おほくたてまつらんといふをうれしと思ひたるけしきにてあしおと」 7せておはせといひてさきにたちてゆくおさなきものゝいふにしたか

ひ」

8てあふなけれとゆかしき心はすゝみてやをらあゆみよれはひやうふ

を」

9たてふたきたるうちへいれて中のさうしにむしくひとをしたる」 10あなの有をおしへおきてわれはありつるゑまきはてゝもちて参り」 11ぬよりてのそけはまことによくみゆやうたいかしらつきよりはしめて

すへ」

12ていひつくすへきやうもなくみるめもかゝやくはかりなる人のねひ とし」【39オ】 1のをりてかみのつやなとかけ移るはかりにてらうたくにほひやかに

は」

(5)

2つかしけなるまみうちかほりてけたかさもあつめいはんかたなし中納

言」

3の御もとより参らせられたるうつほのゑなりけりあまうへにことは」 4よませて見給なひきかゝりたるひたひかみはをくれたるすちなく何こ

と」

5にかあらんこと葉をきゝてうちゑみたる御くちつきあい行はあたり」 6まてこほれちりてめもおとろかれて思ひわきたるかたなくやかて」 7むねはふたかりぬみるとも/\あく世あるましきをゑとも見はてゝ」 8人ゝたちのきなとすれはみつけられやせんとおそろしくてたちのき

ぬ」

9むけにいはけなくものゝ心しらさりしほとはとき/\もみたてまつ

り」

10いま五はかりのかみにおはすれはもてあそはれたてまつりしもわつか

に」

11ゆめのやうに思ひいてらるれと御かたちなといかなりしとおほゆる

ま」

12てはなかりつるをおとなひ給てのちはこよなくけとをくのみならひ」

【39ウ】

1てまたおなし処にもすますなりにしかはかけをたに見きこえさり」 2しに何ことにかゝることをみてよしなき物思ひつきぬへき身にも」 3なりぬるかなとこしかた行末思ひつゝけられてなかめられぬれと」 4さらぬさまにもてなしてあまうへのかたへまいりて侍つれとみえさ

せ」

5給はさりつるといへは御せうとの中納言殿よりうつほのゑまいら」 6せ給つるをこと葉よむやくにかゝりてひさしかりつゝと何こゝろ」

7なくいへときく人は心はこゝろとしてむねのみさはくをしつ」 8めてそも/\いかにしてかくとはしられたてまつり給へるにかとゝ」 9へはわか心にうとからすへたてなきもさる物にてかの御身にもよろ

つ」

10たのもしきかけにはこれをのみこそしてすくひ給へはあらぬ」 11さまにいひかくしてもをのつからあることはもれきゝてへた」 12て有けると思はれんもあいなかるへけれはおほえなかりし」【40オ】 1程にみたてまつり給ていひわたり給し春のことよりうち」 2はしめありのまゝにかたりきかすれはあやしうもふみまよひ」 3給へるをたえのはしかなとほゝゑみたるいはんかたなくあい行」 4つきて物をはいひなから心はそらなれはまきらはしきはこの御こと

に」

5みゝとゝめてのとかにゐたれはめつらしくおほえてとのゝの給へる」 6ことなとかたり出つゝいつしかたいめんも心もとなけにの給ひしを」 7みやのうせさせ給てよろつもおほしたゝぬさまになん御いみは」 8てはむかへたてまつらんとていつとなく埋木にてのみ過させ給」 9しにかくしられ奉りてかすまへられ給はんはいとうれしけれとかた」 10時たさらすならひきこえてわかれたてまつらんのみこそ忍ひかたか

る」

11へきとてめをしのこへはわれしもすゝみ出る涙はついてもとめ」 12せられてこほれおつるもはしたなくおほえてまきらはしくて」

【40ウ】

1けにおやこの御ちきりと成なからけふまてしられたてまつらせ給」 2はさりつるとし月のことはいふせくて過させ給ぬるかたも御うれへ」 3浅からぬと女はらからたに又たくひもおはせさらんにまことのお」 4やならぬとこ宮かくれ給て後おとこ君たちはかりおはする処へ」

5むかへられさせ給てんむけにたつきなくすみにくゝこそおほさ」 6れめさたかにしられたてまつらせ給なは何事にもさたまらせ」 7給はんほとはたゝ中/\かくて物せさせ給へかしと猶ちかくて吹かふ

風」

8もなつかしかりぬへきまゝにおとなしくいへはあまうへもけに」 9さることゝ思ふはらからなりともいはけなくよりそひならはし」 10たることなくて今はしめてみつけたらんか猶よそ人と思ひてし」 11みかへりなん心はあるましき中ときゝなすともさりとてひたみ」 12ちに心きよくはなりかはらしをとをしはからるゝにはこの【41オ】 1御有様のみる人たゝなるましきにうしろめたきなるへし」 2うつほのゑを参らせ給へるもことしもこそあれとおもひあは」 3せられてなかすみの侍従に思ひよそへ給にやと心のうちに」 4あんせらるゝもかれは何さまにもあれけちかく見たてまつり」 5給はんにもなくさみて過給へしわれこそ雲のよそにたに」 6たのむかたなき歎はそひてかすならぬ身一をくたくとも」 7さりとて露のあはれをかゝるへきにもあらぬを何につけてか」 8なくさむかたのあらむなと思ひつゝくるに人しれす物のみかな」 9しくておもふ事なくて過にしむかし也さらてたに昨日となれ」 10は恋しき物なるにしるへせしわらはさへうらめしく覚えて」 11なかめふしたりよのつねのわかうとのやうにあた/\しき」 12所なくとしのほとよりもしつまりてよろつ思ひ入たる物にて」

【41ウ】

1われよりとしのかすもつもりたる人たにおやたちそひてたのも」 2しけなるおほかめるになとしもひとりならすほとなく別け」

3んと身を心ほそく思ひしりてよのつねはさらしかちにて」

4おやたちの後の世をとふらひ我とてもかきりあるいのち」 5のうちにいまはのゆふへをのとかにまつへきのみならすいか」 6なるさはきもあらはたゝ今にかきる命にてもやと世はかり」 7そめにのみおほゆれはこんよにたにいかてうれへなからん大せう」 8せんこんの道に入て人をも利やくせんと思ひつゝ法の道を」 9ならひさとりけり木の葉をさそふ嶺のあらしはけしく吹」 10おろして時雨かあらしかときゝ分すあらましき風のおとにそゝ」 11ろに物あはれ也さるへきゝはならんにてたにその道には」 12まとふ人おほくこそむかしも今もいひならはしたる物なる」【42オ】 1に及なきことをしも心にはなれすさるはかくとたにしられたて」 2まつるましき身のほとも今さら心うく思ひつゝけられて夜もす」 3からうちもまとろます俤にのみおほえて恋しく思ひいて聞るを」 4こはいかなる物思ひのつきぬるにかあらんわか心なからいみしくいま

し」

5むれとかなはぬわさ也けり殿には限ある日数はてぬれは人/\も」 6かたへはまりて僧ともゝ出ちりぬれは又今更ことに御心さし深かり

し」

7かは殿はつきせす覚し入てほれ/\しきまてみえ給へはたれも心くる

しう」

8みたてまつりあつかふこわたのさとへも常にをとつれ給てたいめんも

心許なき」

9をかゝる歎のほとにとゝこほりぬるこの程過してときこえ給へり五せ

ち」

(6)

4やならぬとこ宮かくれ給て後おとこ君たちはかりおはする処へ」 5むかへられさせ給てんむけにたつきなくすみにくゝこそおほさ」 6れめさたかにしられたてまつらせ給なは何事にもさたまらせ」 7給はんほとはたゝ中/\かくて物せさせ給へかしと猶ちかくて吹かふ

風」

8もなつかしかりぬへきまゝにおとなしくいへはあまうへもけに」 9さることゝ思ふはらからなりともいはけなくよりそひならはし」 10たることなくて今はしめてみつけたらんか猶よそ人と思ひてし」 11みかへりなん心はあるましき中ときゝなすともさりとてひたみ」 12ちに心きよくはなりかはらしをとをしはからるゝにはこの【41オ】 1御有様のみる人たゝなるましきにうしろめたきなるへし」 2うつほのゑを参らせ給へるもことしもこそあれとおもひあは」 3せられてなかすみの侍従に思ひよそへ給にやと心のうちに」 4あんせらるゝもかれは何さまにもあれけちかく見たてまつり」 5給はんにもなくさみて過給へしわれこそ雲のよそにたに」 6たのむかたなき歎はそひてかすならぬ身一をくたくとも」 7さりとて露のあはれをかゝるへきにもあらぬを何につけてか」 8なくさむかたのあらむなと思ひつゝくるに人しれす物のみかな」 9しくておもふ事なくて過にしむかし也さらてたに昨日となれ」 10は恋しき物なるにしるへせしわらはさへうらめしく覚えて」 11なかめふしたりよのつねのわかうとのやうにあた/\しき」 12所なくとしのほとよりもしつまりてよろつ思ひ入たる物にて」

【41ウ】

1われよりとしのかすもつもりたる人たにおやたちそひてたのも」 2しけなるおほかめるになとしもひとりならすほとなく別け」

3んと身を心ほそく思ひしりてよのつねはさらしかちにて」

4おやたちの後の世をとふらひ我とてもかきりあるいのち」 5のうちにいまはのゆふへをのとかにまつへきのみならすいか」 6なるさはきもあらはたゝ今にかきる命にてもやと世はかり」 7そめにのみおほゆれはこんよにたにいかてうれへなからん大せう」 8せんこんの道に入て人をも利やくせんと思ひつゝ法の道を」 9ならひさとりけり木の葉をさそふ嶺のあらしはけしく吹」 10おろして時雨かあらしかときゝ分すあらましき風のおとにそゝ」 11ろに物あはれ也さるへきゝはならんにてたにその道には」 12まとふ人おほくこそむかしも今もいひならはしたる物なる」【42オ】 1に及なきことをしも心にはなれすさるはかくとたにしられたて」 2まつるましき身のほとも今さら心うく思ひつゝけられて夜もす」 3からうちもまとろます俤にのみおほえて恋しく思ひいて聞るを」 4こはいかなる物思ひのつきぬるにかあらんわか心なからいみしくいま

し」

5むれとかなはぬわさ也けり殿には限ある日数はてぬれは人/\も」 6かたへはまりて僧ともゝ出ちりぬれは又今更ことに御心さし深かり

し」

7かは殿はつきせす覚し入てほれ/\しきまてみえ給へはたれも心くる

しう」

8みたてまつりあつかふこわたのさとへも常にをとつれ給てたいめんも

心許なき」

9をかゝる歎のほとにとゝこほりぬるこの程過してときこえ給へり五せ

ち」

(7)

10臨時のまつりなと大宮人のいとまなき頃もとのゝ君たちはまし」 11らひ給はねはいとつれ/\になかめくらし給まゝにいひかはし給」 12所ゝへも御ふみ計はたえすひめ君の御許へもおかしき絵物語なと」

【42ウ】

1たてまつり給かきりなかりしさまもいみしく恋しくてわたり給」 2はんと思したつ其ころはいよかのほりて人しけかなるをさのみ忍」 3ひても今さへ人わろかるへしと思して引つくろひてわたり給うとか

ら」

4ぬとも人ともあまた参る殿上人なと御ともにてけしきことにておはす

る」

5よそおひ山かつのめをとろきぬへし入給て御せうそこしたれは新殿

の」

6南に御くるまよする程かしかましくおいのゝしりたるすいしんのけし

きしたり」

7かほにうけはりてみゆ入給けしきいひしらすけたかくなまめきておほ

ろけ」

8ならん人ならひきこえんはまはゆかりぬへしにふめる色にやつれ給へ

る」

9しもかくてこそ光はそふ物なりけれいひしらすあてにみえ給をいよ

も」

10かくれみ奉る御はらからとてむかひきこえ給ふらんにけにたとしへな

から」

11ぬ御あはひなめりと思ひくらへらるゝにもまつむねはふたかりては

ゝ」

12かる所なくさしむかひ見奉り給ふらんと思ふも浦山敷なとしも」 【43オ】

1数ならぬ身にしたかはておほけなき物思ひのそひぬらんと心をいま

し」

2むるにしもあやにななる物なれはいや増りにのみ思えて物なけかし

き」

3より外の事なしひんかしのもやのおましにしとねまいりて相の君」 4入奉るあま君たいめんし奉りて宮の御事なととふらひ聞えてこの」 5御事も行衛しられたてまつり給はさりしも中/\心うつくしうあつ」 6け聞えさせ給なはめさましとも思ひきこえさせ給はしと思ひ聞え」 7させしを折しもかゝる御事にせめて女おやにそひ聞え給ふましき」 8御ちきりもうらめしくなとけはひよしつきてめやすくみゆけに」 9みたてまつり給なはおろかにはよももてなしきこえ給はしさる人も」 10たらぬかそう/\しとてとりむすめして侍しも打すてられて心」 11ほそけに侍めりたいめんなくて過給ぬるいとほひなくなとの給ひ」 12ていつらと心えなけに思たれはそゝのかし聞ゆみしかき木丁に」

【43ウ】

〈校異〉

35丁オ5行をはせん―石おはせん

6行あつかい―石あつかひ

7行をろかなる―石おろかなる

8行はちらい石はちらひ

35丁ウ1行あいしつらひ―石あひしつらひ

3行とのも―石とのと

おほさ○れ―石おほされ

4行たへす―石たえす

5~6行ひいなあそひ―石ひひなあそひ

7行一―石一 36丁オ5行まつ―射・石まつ

9行めつらしけなる事―石めつらしけなる事

おほしもうけす―石おほしもうけす

行かくひやう―石かくひやう

12

をき―石おき

36丁ウ1行たのみなく―石いとゝたのみなく

4行かなしさ―石かなしき

6行はつらひ―石わつらひ

行おはする○ころは―石おはするころは

11 行かしかましきにて―石かしましきにて

12

37丁オ4行をこなひ―石おこなひ

37丁ウ2行おさなく―石をさなく

3行つはものならひ―石つはものゝならひ

4行たゝふ―射・石たえぬ

6行したかへたる物―射したかへさる物

9行住こわたに―石住むこはたに

38丁オ5行何こと―石ゆこと

5~6行分たらん―わけたらん

6行程―石ほと

6~7行しつまり―射しなまり 7行あい行―石あい行

38丁ウ2行むまれ―石うまれ

3行おさなく―石をさなく

5行うちかたらふにさ―石うちかたらふわさ

6行なからい―石なからひ

7行うらみ―石くらみ

8行のとや○なる―石のとやかなる

行御らん○とて―石御らんせとて

11

39丁オ5行おかしくて―石をかしくて

7行おさなき―石をさなき

9行むしくひとをしたる―石むしくひともしたる

行おしへ―石をしへ

10

参り―石まゐり

39丁オ行~ウ1行ねひとしのをり―石ねひとゝのをり

12

39丁ウ1行らうたく―射らうさく

4行をくれたる―石おくれたる

何こと―石何く

行けとをく―石けとほく

12

40丁オ1行処―石所

4行まいり―石まゐり

5~6行まいらせ―石まゐらせ

6行ひさしかりつゝ―石ひさしくりつる

7行さはく―石さわく

行すくひ―石すくい

10

行をのつから―石おのつから

11

(8)

おほさ○れ―石おほされ

4行たへす―石たえす

5~6行ひいなあそひ―石ひひなあそひ

7行一―石一 36丁オ5行まつ―射・石まつ

9行めつらしけなる事―石めつらしけなる事

おほしもうけす―石おほしもうけす

行かくひやう―石かくひやう

12

をき―石おき

36丁ウ1行たのみなく―石いとゝたのみなく

4行かなしさ―石かなしき

6行はつらひ―石わつらひ

行おはする○ころは―石おはするころは

11 行かしかましきにて―石かしましきにて

12

37丁オ4行をこなひ―石おこなひ

37丁ウ2行おさなく―石をさなく

3行つはものならひ―石つはものゝならひ

4行たゝふ―射・石たえぬ

6行したかへたる物―射したかへさる物

9行住こわたに―石住むこはたに

38丁オ5行何こと―石ゆこと

5~6行分たらん―わけたらん

6行程―石ほと

6~7行しつまり―射しなまり 7行あい行―石あい行

38丁ウ2行むまれ―石うまれ

3行おさなく―石をさなく

5行うちかたらふにさ―石うちかたらふわさ

6行なからい―石なからひ

7行うらみ―石くらみ

8行のとや○なる―石のとやかなる

行御らん○とて―石御らんせとて

11

39丁オ5行おかしくて―石をかしくて

7行おさなき―石をさなき

9行むしくひとをしたる―石むしくひともしたる

行おしへ―石をしへ

10

参り―石まゐり

39丁オ行~ウ1行ねひとしのをり―石ねひとゝのをり

12

39丁ウ1行らうたく―射らうさく

4行をくれたる―石おくれたる

何こと―石何く

行けとをく―石けとほく

12

40丁オ1行処―石所

4行まいり―石まゐり

5~6行まいらせ―石まゐらせ

6行ひさしかりつゝ―石ひさしくりつる

7行さはく―石さわく

行すくひ―石すくい

10

行をのつから―石おのつから

11

(9)

40丁ウ4行まきらはしきは―石まきらはしには

6行かたり出つゝ―石かたり出つる

行たさらす―石た○さらす

10

行をしのこへは―石おしのこへは

11

41丁オ3行浅からぬと―石浅からねと

3~4行おやならぬと―石おやならねと

4行おとこ君―石をとこ君

行をしはからるゝ―石おしはからるゝ

12 この―射こめ

41丁ウ1行たゝなるましき―石たゝならましき

42丁オ1~2行たのもしけなる―石たのもしけなるも

3行さらし―射さうし石さうし

6行さはき―石さわき

7行うれへ―射とれへ

42丁ウ3行のみ―射のと

4行いかなる―射いゝなる

6行まりて―射まりて石まかて

8行こわた―石こはた

をとつれ―石おとつれ

物語―石物かたり

43丁オ5行よそおひ―石よそほひ

をとろきぬ―石おとろきぬ

6行おいのゝしり―石おひのゝしり

43丁ウ2行あやにななる―石あやにくなる 3行まいり―石まゐり

5行行衛―石行へ

しも―石しかと

行ほひ―石ほい

11 行いつらと―射いつもと石いつらと

12

心えなけに―射心えなけに石心えなけに

〈付記〉

一本稿を成すにあたり、本居宣長記念館、射和文庫、石水博物館

には、貴重な資料の閲覧・掲載許可を賜りました。ここに記し

て、厚く御礼申し上げます。

一校本の作成に際しては、科学研究費補助金基盤研究()・研

C 究課題番号22500236 ・「文字列データ解析システムの構築と平

安朝文学の伝本と表現に関する総合的研究」(研究代表者・福

田智子氏、研究機関・同志社大学、平成二十二~二十四年度)

において、坂田桂一氏(同志社大学文学研究科博士後期課程)

が作成された「校本作成支援ツール」の提供を受けました。こ

こに記して、深謝の意を表します。

一本稿は、平成二十三~二十五年度科学研究費助成事業若手研究

()・研究課題番号23720111・「『石清水物語』第三系統諸伝 B

本に関する本文研究及び校本作成」による研究成果の一部であ

る。

(みやざきゆうこ・九州産業大学国際文化学部講師)

九 州 大 学 附 属 図 書 館 蔵 『 お ち く ほ 』 解 題 と 翻 刻 ( 二 )

梁 丹

翻刻

21・ウ)さてはとのゐ物

22・オ)

に、人のこふも、びなきはえいだし侍らじとおもひ

侍りてなん。さるべきや侍る。たまはせてんや。おり

はあやしき事なれど、とみにてなん」と、はし

りかきてやりたれば、「おとづれたまはぬをこそ、いと

こゝろうくおもひたまふれば、萬とゞめつ。いとあやし

けれど、ものし給ふらん。きちやうたてまつる」とて、

をん色のはりわたなどおこせたり。いとうれし

き事かぎりなし。とり出でみせたてまつる。

木丁のひもときおろすほどに、きみおはしたれば、

入奉りつ。女ふしたりがたくおぼゆれば、「くるしう

おぼへたまはんに、なにかをきたまふ。やがて」ふし給ぬ。

こよひは、はかまもいとかうばし。はかまもひとへもあれば、

22・ウ)

れいの人ごゝちしたまひて、おとこもつゝましから

ずふしたまひぬ。こよひは時々御いらへしたまふ。 いとよになう、あるまじうおぼへ給ひて、よろづにか

たらひたまふほどに、夜も明ぬ。「御車ゐてま

いりたり」と申せば、「いま雨やみて。しばしまて」とて

ふしたまへれば、あこき、御てうづ、かゆ、いかでまいらん

とおもひて、みづしにやかたらはましとおもへど、

大かたにもおはしまさねば、御かゆもよにもせじと思へ

ど、いきてかたらふ。「たちわきのともだちなん、よべ

ものいはんとてきたりしを、雨にとまりて、ま

だかへ らぬに、かゆくわせんとおもふをなん、なくて。

かはらせすこしたまへ。さてはひきぼしなどやの

23・オ)

こりたる。すこしたまへ」とのべば、「あないとおしさ。かへ

らせたまはんれう、いますこしあらん」といへば、「かへり

たまはんに、御としみおぞ したまはん」。北の方、けし

きよろしとみて、かたはらなるいじをあけて、

たゞとりにとれば、「すこしはのこしたまへ」といへば、

「さよ

」といひて、かみにとりわけて、すみとりに

いれて、ひきかへして、もていきて、つゆに、「御かゆいと

よくしてもてこ」とて、おはしげなる御だいもとめ

参照

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